片野ゆかのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
動物好き、生き物好きならば面白くないということはあるまい。ただ特に前半のペンギンやチンパンジーの章辺りは、なんだか筆致が単調でメリハリがないように感じられて、取材は丹念なのにちょっともったいないなあ…なんて思っていたが、アフリカハゲコウで少しリズムが出てきて、最終話のキリンまできたら序盤で感じた瑕疵がまったく気にならなくなったというか、しっかり娯楽性を備えた読み物に仕上がっていたと思う。
確かに動物園と言えば、生き物が好きな人ほどその存在に抵抗を感じる、という一面があることは否定できない。
野生動物の捕獲が困難になっている情勢等を考えると、その未来に不安を感じるし、存在意義を保っていけるのかすら怪しかったりもする。
そういった事情は我々以上にもちろん深く骨身に染みながら、動物たちのいわばQOLを何とか高めようと知恵を絞る人たちの奮闘がここには描かれている。
生き物相手の仕事は、大変なことも多くまた喜びを感じるであろうことも多く、振れ幅の大きいダイナミックな世界なんだなあ、ということがよく分かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ動物保護の現状について詳しく知りたいと考え、この本を手に取った。なぜなら地元で30年間動物保護ボランティアをしている女性に話を聞いたから。
★動物の引き取りを依頼する身勝手な飼い主の言い訳一覧
・歳をとって番犬として使えなくなった・かわいくなくなった
・吠える・噛む
・経済的に厳しくなった
・引っ越しで飼えなくなった
・世話が面倒臭い
・最期を看取るのが辛い etc..
★思いついた対策
・犬税。将来的には安易に動物飼育をする人は減るだろうが、現状捨て犬の増加が懸念される。
・マイナンバー制度とマイクロチップを連携させ、飼育歴に基づき動物倫理の有無を可視化する。経済状況、転居の可能性、動物倫理の有無を検討し、基準を満たしていれば飼育が可能になる。
・アニマルポリス
★概要
・現場の大変さとやりがい
・動物管理センターから動物愛護センターへ名称変更
・去勢不妊手術、迷子札
・闇のペットビジネス(ペットショップ、ブリーダー)
・保健所=殺処分イメージを払拭
・居住空間の衛生面向上
・殺処分の苦しみ軽減(ガス→注射)
・獣医師の矛盾、命を救うのではなく殺さねばならない仕事
・メディアの活用(写真、収容時期・場所、性格、特徴)
・安易な引き取りはしない
・安易な譲渡をしない
・動物を飼う事の責任や知識の周知徹底
・譲渡会の実施
・業界内の情報共有と連携、相互理解
(行政、動物愛護団体、ペットショップ、トリマー)
・野良猫問題
-
Posted by ブクログ
動物園版<プロジェクトX>、<仕事の流儀>といった雰囲気(おそらく意識している)のノンフィクション。四つの動物園における、4動物(ペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウ、麒麟)と奮闘する飼育員達の奮闘記といったところ。最近、動物園が面白いなぁと思っていたら、動物園の裏側でこのようなことが進展しているとは。動物園でも動物たちができるだけ本来の姿で生き生きと生活できるように飼育員の人たちが手探るで奮闘している姿が垣間見られます。動物園における環境エンリッチメントと言うらしい。行ったことのある京都市岡崎動物園にもう一度行ってみたくなったし、機会があれば埼玉の緑のペンギン島も一度訪れてみたい。
-
Posted by ブクログ
動物ものってどうも苦手だ。安易な擬人化がされていたり、予定調和的に感動方面に持って行ったり、勘弁してよ~っていうのが多いように思う。しかし、これはそういうものではなかった。動物園の飼育員に密着した、まさに「リアルストーリー」で、面白さに一気読み。
動物園って矛盾や葛藤に満ちた存在だ。飼育員さんが、少しでもその動物本来の生息環境に近づけ、動物のストレスを減らしたいと願うのも自然な成り行きだろう。現実には公立・民間問わず、予算をはじめとする制約は大きい。その中で奮闘する四例がとりあげられている。きれいごとで終わらず、厳しい現実がきっちり書き込まれているところが良かった。これは片野ゆかさんの著作に共通する美点で、シビアに現実を直視しつつ、おおらかさ、あたたかさを失わない姿勢がいいなあと思う。
出てくるのは、ペンギン・チンパンジー・アフリカハゲコウ・キリン。それぞれに味わい深い話がいろいろある。自分が見たことがあるのは京都市動物園のキリンだけだが、あの新施設への引っ越しにこんな苦労があったとは知らなかった。是非また行って、今度は飼育員さんたちの苦闘に思いをはせながらじっくり見てこようと思う。
しかしまあ、同じ動物とは言え、犬や猫のペットと野生動物ではまるきり違うのだなあとつくづく思い知らされる。あるベテラン飼育員さんの「深い愛情を感じているし、信頼関係も築けていると思うけど、フェンスもないところでは絶対に背中を向けません」という言葉が紹介されていた。簡単に理解とか交流とか言えるものではないのだなあと感じた。 -
Posted by ブクログ
こんなかわいらしい表紙だけれども、内容はかなりハードなものだった。ショックだった。ただ可愛いから、流行っているからと、生き物を衝動買いする人間がいて、いらなくなった、面倒くさくなった、引っ越す、ペットが年を取った、かわいくなくなったからと簡単に捨てる鬼畜がいる。可愛そうだから避妊をしない。でも、生まれてきた新しいたくさんの命の面倒は見られないから、引き取って(代わりに殺して)っていう飼い主や動物愛護の人たち。かわいそうの基準は一体なんだろう。猫の子殺しでは、某女性の作家もたたかれたことあったね。かわいそうだから避妊しないけど、子猫は生まれてきたその場で殺すってしゃーしゃーと書いて。私もいずれ犬がほしいな、って思ってるけど、15年も生きる動物。Tierheim(動物保護センター)で貰い受けよう。この本に書かれていた状況よりもうちのまちの動物保護センターはずっと頭数は少なかったけど、大きな犬達は目がどよんとしていた。希望がないような顔だった。愛玩犬あるいはペットという存在を作るのならば、人間には大変な責任が生まれることになるのを絶対に忘れてはいけない。こちらのTierheimでもやっぱり老齢犬の貰い手をよく探している。施設ではみんなの面倒をみるのにも限りがあるからと、医療費がかかるからのようだ。
-
Posted by ブクログ
犬を処分する壮絶な仕事に疑問を持った保健所職員が殺される動物を減らすために改革をはじめる。殺処分ゼロを達成した熊本市動物愛護センターの奮闘。
------------------
今では多くの自治体が犬猫の殺処分ゼロを目指した方向にシフトしていますが、その流れが起きたのはここ10年ほどにすぎません。熊本市の保健所では2000年ごろから方針が徐々に変わっていきます。それは殺処分ゼロを目指した保健所の走りといえるかと思います。
こうした動きというのは、他の地域では市民団体などが行政に働きかけることから始まるのが普通かと思いますが、熊本では内部の職員(公務員)から始まったというのはけっこう特筆すべきことではないかと思いました。大抵の公務員は現状維持を続けることが固定されたメンタリティのように感じます。その中で変革を起こしていこう、というのは大きなエネルギーが必要でしょう。しかも動物行政というはじっこの仕事では役所の中の注目度も低いでしょうから、成果を出して社会から注目され、ようやく役場内部から評価されるまでの道のりは長かったし、大変だったのではないかと想像しました。
この本ではその経緯を掘り起こしてまとめたものですが、内部の職員たちの心象が丁寧に語られていて、よく取材されたということがわかります。序盤のドリームボックスに犬を追い込む時の心情や、犬を持ち込む理不尽な飼い主への怒りなど、(今でも)本当にやるせない仕事なのだろうな、と思いますし、そこを支える人々にも尊敬の念を禁じえません。殺処分自体がなくなったわけではないですし、TNRを含む保護動物への活動はどこまでも人間の都合に沿ったものに過ぎません。いつか犬や猫たちの本当の意味での幸せと人間の暮らしが折り合う日は来るのでしょうか。
作者の片野さんは北里大学の犬部のドキュメントなども書いている、気鋭のライターですので、他にも色々読んでみようと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレダ・ヴィンチで紹介されていたのをきっかけに。
競走馬のうち、引退後も種牡馬などとして競馬業界に残れるのは僅かで、多くは「行方不明」になっているという現状があった。このことは国際的にも問題となっており、近年、引退競走馬が活躍できるセカンドキャリアを整備していこうという活動が拡大してきている。確かに、最近はJRAのCMなどでも、競馬以外の色々な馬事文化を紹介しているのを見かける。
セカンドキャリアとして色々な道があり得るのだろうが、本書ではセラピーホースに重点を置いて紹介されている。支援が必要な子供などに、馬との触れ合いの機会を提供する事業。犬や猫などとは違う、馬ならではの効果があるという。
馬の飼育には多くのお金がかかるため、馬自らが稼げる仕組みを作らないといけないという。私は乗馬クラブのような場所がセカンドキャリアとして真っ先に浮かんだが、そこにも既に馬がいるので、既存の馬を追い出すような形になってしまい、あまりよい”転職先”ではないとのこと。
セラピーホースであれ乗馬クラブであれ、競走馬が転身するためには、そのためのトレーニングをし直さなければいけないらしい。どちらも人を乗せて歩く(走る)のだから同じようなものだと考えてしまうが、求められるものが全く異なるとのこと。F1レーシングカーを乗用車に改造するようなもの、という喩えが分かりやすかった。このリトレーニングも、ノウハウの蓄積段階にあるようだ。
日本の競馬業界に関する記載も良かった。日本の競馬は国際的にも類を見ないほど大規模らしく、経済的影響は競馬会のみならず日本の農業全体に波及しているとのこと。(たとえば農水省の予算の一部はJRA経由らしい。)馬の福祉を考えるうえで、そもそも競馬などやめてしまえばいいというのは一つの主張としてあり得るが、現状を見ると現実的ではないというようなことが書かれていた。
全体として非常に興味深く読んだが、不満な点が1つ…。引退競走馬の行く先を「行方不明」と書き、それ以上はあまり踏み込んでいないところが少しモヤモヤした。
勝手な想像だが、たぶん、引退競走馬の多数派は食肉になっているのではなかろうか。本書にも引退競走馬を食肉用に肥育する業者が登場するが、全体として競走馬が肉になっているという記載は「匂わせ」程度にとどまるし、量的な議論はされていない。このあたりのバッシングに関する記載もあったので繊細な話題ではあるのだろうが、しかし、真正面から書いてほしかったという気はする。競走馬を食肉に転用するということのそもそもの是非についてとか、議論のポイントは多くあるような気がする。
本書の中で、能登にある厩舎が紹介されていた。本書の刊行は2023年の年末。災害の影響はどうだったのだろうか・・・ -
Posted by ブクログ
著者片野さんが、着物を着始めてから浮かぶ、さまざまな疑問を専門家の方に伺ってひとつひとつ解決していくエッセイ。
なぜ着物を着ると老ける?着物警察を撃退するには?無料着付け教室の謎•••など、着物初心者が思ういろんな謎を解き明かしていく。
かと言って初心者用かと思えばそうでもなく、なるほどー!と思うこともたくさんあった。
そして着物の奥深さについても、改めて勉強になった。教わった一辺倒の着付けを卒業し、楽しめるところまで進めたら楽しいだろうなーと思う。
犬の散歩に着物ででかけるという片野さん。
そんな風に普通に着物を着ることができる人が増えたらいいと思う。
難しいとか敷居が高いと思わせてしまった業界も、方向転換して、もっと広めやすく、尚且つ職人を守っていくよう頑張ってほしいと思う。 -
Posted by ブクログ
『優駿』に毎号紹介されており、気になったので読んでみました
映画『今日もどこかで馬は生まれる』が問題提起メインの作品とすれば、本書は問題解決の糸口になる活動の紹介が中心です
今年から競馬を見始めた者なので引退競走馬事業のことは多少知っていましたが、本書が執筆、刊行された当時はまだまだメジャーでは(もちろん今も大多数の人は知らないでしょうが)なかったんだろうなと感じました
著者が取材した活動内容がわかりやすく書かれていて読みやすい反面、文体が平易すぎて大学生の課題レポートのような印象を受けるのが残念かも
競馬に楽しみを与えてもらった者として、これからは少しでも引退競走馬の力になることができればと思います