三浦哲郎のレビュー一覧

  • みちづれ 短篇集モザイクI
    宝石のような短篇を百篇綴り、壮麗なモザイクに組上げる、著者独創の連作シリーズ第一巻。――文庫裏より

    大学の授業でこの本を取り上げるというので、授業中に二篇読んだところ、その上手さにしみじみ感動した一冊。
    その授業とは、生徒がそれぞれ文章を書いてきて、授業中に読みあうというものである。当然素人の作品...続きを読む
  • 肉体について
    さて、これを「小説」とカテゴライズしたが、果たしてふさわしかったか。

    昨年夏に急逝するまで「群像」に連載されていた、痛風の痛みに悩む老いた夫とその妻のやり取りを書いた表題作(無論未完)と、表題作のヒントにしたと思われるメモ「老いてゆく自分に好奇心を。」、「文学的自叙伝」はその名の通り著者の半生記で...続きを読む
  • 忍ぶ川
    「忍ぶ川」のみの感想
    大好きすぎて何度読んだかわかりません。
    特にラストが好き。スケールが大きいわけでも長編ってわけでもないのに、読んだ後は壮大な気持ちになる。ピュアで胸が打たれる小説。
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    1回目は、2011年2月4日に読み終えました。

    2回目、読み終えました。
    (2012年10月2日)
  • ユタとふしぎな仲間たち
    劇団四季の舞台を見たのは小学生の頃だった。奇しくも本屋で手に取ったのは三浦哲郎氏の追悼記念フェアで、『ユタと不思議な仲間たち』の文字を見て、この作品は彼のだったのかと初めて知った。あの舞台を見て演劇をやりたいと思い、声楽を深めていきたいと思った私にとっては心に残る作品の一つである。
    児童小説によくあ...続きを読む
  • 忍ぶ川
    この本には「忍ぶ川」を含む7つの短編がおさめられている。
    「忍ぶ川」は昭和初期の男女の愛情の在り方、また、家族愛
    などが悲しく、切なく、雄々しく、書き連ねられており、胸をうつ
    素晴しい作品だった。まだ若い主人公の人生に胸が熱くなるほどの
    感動を覚えた。
    他の6作品もそれぞれに勉強させられたが、内容が...続きを読む
  • 白夜を旅する人々
    末の娘、れんの最終的な決断の引き金はありきたりな事だ。
    ありきたりだがそれ以上の絶望はそうそう無いのだ。
    その絶望が美しかった。

    ゆっくりゆっくり確実に、希望が閉ざされていったと感じたのだろう。
    若いときは世界が狭すぎる。
    羊吉に最後に語りかける会話が素晴らしい。
  • ふなうた 短篇集モザイクII
    2008.10.07. よい、よいよ。なんだか心に染み入って、読み終わってしばらぼうっとなる。切なくなるものあり、可笑しみのあるものあり。どの短編も日本の味がする。方言がまた、いいなぁ。
  • 白夜を旅する人々
    私の通った高校の国語には、「課題図書」とよばれる制度があり、3年間の在校中に100冊を読み切るというものがありました。しかも、読んだ本の内容は中間・期末の試験で問題にでるのだから、読まないなんて点数を捨てる無謀な行為だと思われたのです。

    そんな強制力の働く読書が楽しかったどうかはべつにしても、10...続きを読む
  • 忍ぶ川
    著者が青森県八戸出身の芥川賞作家ということで買ってみました。調べてみると、歴代の同賞受賞作の中でも上位にランクインしてました。ほぼ実話だそうで、それだけに胸に詰まる切なさがあった。
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    この人の話は奥が深い。
    単語をひとつとって、それがこの話とどうつながってくるのか考えるのが楽しい。
    短編だから読みやすいし、とてもおススメです。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    劇団四季の映像から入ったので、登場人物や風景は映像として浮かびやすかった。
    児童文学ということですいすい読み進めることができたが、ふとした描写の表現などは大人が読んでもいいなぁと思うものもたくさんある。
    座敷童子との別れが突然かつ案外あっさりしたところも、児童文学らしい感じがする。だからといって幼稚...続きを読む
  • モーツァルト荘
    snowdropで買った。三浦哲郎のこんな本まであるなんてすごいや。さすが。

    解説で進藤が言っていた通り、なぜ「病舎まで」の時期にこれを書いたかは気になる。三浦は寝る前によくモーツァルトを聴きながらミステリを読んでいたというから、その影響なのだろうなとは思いつつもね。
  • 拳銃と十五の短篇

    三浦哲郎はとても好きな作家の1人。
    正直特筆する様な文学表現も持たず、刺激のある物語を創る訳でもないが、どの作品も滲み出る様な喜びや哀しみがあり感情豊か。
    たまにゾッとする怖い話もあり飽きない短編集。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    のんびりした話と思いきや、いちいちディティールが妙な設定というか、座敷わらしの生い立ちやら生き方やら、なんだか一筋縄ではいかないわけですよ。これが子ども向けと思いきや、大人の方がじんわりくるんじゃないか。
    しかし座敷わらしのおかげで一気にスターダムに成り上がるわ努力も欠かさないわで、やっぱそこらへん...続きを読む
  • 忍ぶ川
    芥川賞受賞作品を読みたかったので購入した。表題作は話の筋こそありふれているが、丁寧な文体と情景描写によって何倍にも魅力ある作品になっている。特に、故郷に戻った「私」が車窓に映る雪景色を眺めるシーンは印象的である。

    すべての収録作品が「死」を扱っている点も見逃せない。これは作者の育った家庭環境、特に...続きを読む
  • 木馬の騎手
    「メリー・ゴー・ラウンド」が好きだと、好きな人が言っていた。私もそれが1番好きだった。


    子供の心情と「喪失の瞬間」を描くのが上手いと思う。
    文体も大変読みやすく、するすると進められる。
  • おふくろの夜回り
    ひさしぶりに読んだ三浦哲郎。最後に掲載されている姉についての話「地唄〈黒髪〉の想い出」がとてもよかった。八十六歳の姉、その会話がゆっくりとしていて、愛情にみちあふれている。さりげない一つ一つの言葉にこの姉弟が歩んできた道程、そしてつよい絆というものをひしひしと感じた。この一編があるだけで、ああよかっ...続きを読む
  • 百日紅の咲かない夏
    すごいおもしろかった。たぶん三浦の言う北の悲劇に該当する話なのだろう。当たり前なのだが現代小説として読んでいけるその当たり前さに、この作家が生涯現役で作家として居続けた事実をおもわずにはいられない。昔の作品を読んでいる、ないし今の時代でないものを読むときの硬さがなく、それでいて作家性をかんじる。僕は...続きを読む
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    わくらばと大分雰囲気のちがう作品が多い。書かれた時期が十年くらいちがうからだろうか。モザイクの最初の短篇集であるこの作品集は三浦自身も試し試しで色んなものを書いている気がして面白い。
    かきあげがいちばん好きだったかもな。
    三浦の短編は最後に人が死ぬことが多いのだけれど、なぜかそこに魅力を感じる。本人...続きを読む