三浦哲郎のレビュー一覧

  • 忍ぶ川
    ⚫︎受け取ったメッセージ
    川の流れのように、粛々と流れる時間。
    一緒にいてくれる人を思う気持ちが、
    水面を輝かせる。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    大学生の私は、料亭「忍ぶ川」で志乃としりあった。それぞれの家族とのかかわりやいたましい生い立ちを乗り越え労わりながら逞しく生き抜こうとする。くり返...続きを読む
  • 白夜を旅する人々

    北方の一家が、それぞれ悲しみや不幸に打ち勝つでも避けるでもなく、ただ耐えながら生き抜いていく語。読み終えてみると、表題に付く“旅”という単語に前向きな意味合いが含まれていない事が分かる。
    大転換がある訳でもない、約700pに及ぶある種冗長にも感じるボリュームは、本作に込められた主題をよく表現してい...続きを読む
  • 忍ぶ川

    大好きかつ素晴らしい短編作品。
    男女が出会い家族となり生きていくまでが、清純で慎ましく描かれる。
    時代背景か若干の男尊女卑は感じるが、素朴な愛情が流れる数作が続く。
    ラストの『驢馬』は毛色の違う戦争モノだが、ずっと哀しみがこびりつく名作。
  • 忍ぶ川
     これはとても文学的な香りを愉しめる小説である。人がなぜ恋に陥るのか、家族に対する愛情とはどんなことを云うのか。そんなことがわずかな時間で感じることができる。
  • 拳銃と十五の短篇
    一週間くらい前に読み終わりました。
    幸せと幸せの隙間に業を、その逆も、仕込むのうますぎ。緩急がよくとても読みやすいし読み応えもある。がいっぺんに読めない。ぐらい重い。貸してくれてありがとう。
  • おろおろ草紙
    この人しか書けない小説とは、なんとすばらしいのだろう。
    北の地の厳しさが人を死なせていた。土地をこんなふうに書ききるすごさがまず、この小説にはある。
    歴史小説はあまり読まないが、そんなこと関係なしに文章の凄まじさで読めてしまったなあ。
    すこし前に読んだ剥製が男女が死ぬ話だとしたら、おろおろ草紙の四篇...続きを読む
  • 木馬の騎手
    小説家としての三浦の業をこの一冊でみた気がした。
    はじめの「接吻」がほんとうにすごいと思った。
    出稼ぎに出ているお父さんに東北から会いにきたキワは、上野駅のホームで見知らぬ女の人に自分の名前を呼ばれる。
    とにかく三浦哲郎の文章は一切の誤魔化しがなく、身を委ねられる。話がいいようにも思うのだけど、この...続きを読む
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    二分か三分くらいで読める掌編・短編集。
    老夫婦が祭りの後の夜、赤裸々に話し合い、何十年も前に妻に乱暴した男がいると知った夫が数夜を通して歩き続け、警察に保護された時、「自分はただ、過去へ向かって歩いていただけだ」と言う。その男に復讐しようとしたのだと。そういう言葉の選び方が良い。
    「さんろく」もエッ...続きを読む
  • 拳銃と十五の短篇
    この短編集だいすき。おまけに解説までいい。

    家族のこととその周辺のことが主に描かれている。
    三浦哲郎を心から好きと言えるきっかけとなった小説かもしれない。擦り切れるほど読みたいな。借りた本だから買わねば買わねば。

    内容のことについてひとつも書いていなくても、後でこの感想を読めばこの作品とどう触れ...続きを読む
  • 白夜を旅する人々
    六人きょうだいのうち、二人の兄が失踪、そして二人の姉が自殺する。生きつづけたのは三姉と末弟の哲郎のみだった。

    創作の初期から一貫した家族のテーマと向き合い続けた作者が、体験した当事者としてでなく、ひとりの作家として書き切った小説なのだとよくわかる。初期の作品はもっと等身大で、作中に出てくる兄弟のよ...続きを読む
  • 愁月記
    三浦哲郎を研究するのでもいいかもしれないと思った。それくらい心打たれたということなのかもしれない。忍ぶ川を錯覚させるような良さで、彼の書く家族の話はどれもすごく良いに違いないとこの一冊を読んで確信した。
    表題作の『愁月記』は母の死の前後を描いた話。食卓を囲んでいる中で母が突然泣く場面からはじまる。ま...続きを読む
  • 野

    野山で生きる人々の生老病死を瑞々しい風景描写と、細やかな心理描写で写し取った短編集。
    著者が自分の著作の中で最も好きな作品というだけあって、どの作品も伸び伸びとした筆さばきで書かれているように思える。
    特に「楕円形の故郷」は、東京が舞台にも関わらず、盆栽という意外な装置を使って都会と故郷の「野」を曲...続きを読む
  • ふなうた 短篇集モザイクII
    三浦哲郎短編集モザイク2冊目「ふなうた」
    性、糞尿、生命を嚥み込む、自死…、1冊目より生々しさがあり、体がムズムズ〜っとするお話も。(((=_=)))

     80歳のお祝い、傘寿の席で孫が披露したロシア民謡”舟歌”。しかし彼の耳に残る”舟歌”とは違う歌だった。それは戦地ロシアで聞いた美しい歌だった。も...続きを読む
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    三浦哲郎によるモザイクのような小品集の1冊目。10ページ前後で日常のふとした瞬間や、人の心の機微など、流れていきそうな事柄が紙面に留められている。

     命日になると連絡船に乗り、親戚が飛び込んだ海に花を投げ入れに来ていた。その連絡船も廃止になる。同じ船いたやはり花を持った老婦人は、私にみちづれを見る...続きを読む
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    やっぱり三浦哲郎の短編は、いい。
    短いなかでも、細かい情景や自分でも気づかないほどの心の動きを思い出させてくれるような。
    東北の空気を、本を読むことで吸える感じ。
  • 白夜を旅する人々
    再読です。

    昭和初期の東北の呉服店の三男三女の物語。
    先天性色素欠乏症(アルビノ)の長女と三女以外は
    なに不自由なく暮らしていたけれど、年齢を
    重ね、自分たちの世間での立ち位置を認識し、
    次女は投身自殺、次女を溺愛していた長男は
    失踪、アルビノの長女は服毒自殺をする。

    著者はこの呉服店の三男にあ...続きを読む
  • 愁月記
     初めの短編「愁月記」を読み了える。
     故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろう...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    ずっと気になっていた本で、ここのところ児童文学を読み始めたことを機に手にとった。東北に残る座敷わらしの言い伝えを生かし、主人公の少年が成長する話。妖怪のおどろおどろしい空気はなく、ユーモアあり、心打つ話あり。まさに小学高学年の子供たちに読んでほしい一冊。2018.6.8
  • 百日紅の咲かない夏
    十年ぶりの再会をした姉弟。会うたびにお互いへの愛の深さに慄く。しかし、そんな二人に危険な人間関係が絡みつく。
    清くて、切なくて、終始重苦しい雰囲気だけれどさらりと読める。ああ〜〜好きです…。比佐と砂夫は心の奥底では男女の気持ちでお互いを見ているけれど、最後まで姉弟の関係を貫いた。あのラストは今なら古...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    このお話は、父親を事故で亡くした主人公勇太が、母の地元である湯ノ花村に引っ越してきて、たくましく成長していく物語です。
    ある日勇太は寅吉爺さんと座敷わらしのことを話します。気になった勇太は座敷わらしに会うことを試みます。結果勇太は座敷わらしと友達になりました。
    この物語で出てくる座敷わらしは、江戸の...続きを読む