三浦哲郎のレビュー一覧

  • 忍ぶ川

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    ⚫︎受け取ったメッセージ
    川の流れのように、粛々と流れる時間。
    一緒にいてくれる人を思う気持ちが、
    水面を輝かせる。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    大学生の私は、料亭「忍ぶ川」で志乃としりあった。それぞれの家族とのかかわりやいたましい生い立ちを乗り越え労わりながら逞しく生き抜こうとする。くり返し読み継がれていく名作   第44回芥川賞受賞作品

    ⚫︎感想
    素直で、わかりやすい日本語で書かれている。その表現が、話の美しさ、慎ましさを引き立てていると思った。主人公二人は家族とのかかわりで、それぞれ苦しみをもっていても、それが二人の性格を捻じ曲げることなく、素直で美しい。悪人も、ズレた人も出て

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    2023年11月05日
  • 白夜を旅する人々

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    北方の一家が、それぞれ悲しみや不幸に打ち勝つでも避けるでもなく、ただ耐えながら生き抜いていく語。読み終えてみると、表題に付く“旅”という単語に前向きな意味合いが含まれていない事が分かる。
    大転換がある訳でもない、約700pに及ぶある種冗長にも感じるボリュームは、本作に込められた主題をよく表現している。
    白夜の様な世界に耐えながら、生きる事を辞めない家族に胸を打たれる。

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    2023年08月16日
  • 忍ぶ川

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    大好きかつ素晴らしい短編作品。
    男女が出会い家族となり生きていくまでが、清純で慎ましく描かれる。
    時代背景か若干の男尊女卑は感じるが、素朴な愛情が流れる数作が続く。
    ラストの『驢馬』は毛色の違う戦争モノだが、ずっと哀しみがこびりつく名作。

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    2023年08月16日
  • 忍ぶ川

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     これはとても文学的な香りを愉しめる小説である。人がなぜ恋に陥るのか、家族に対する愛情とはどんなことを云うのか。そんなことがわずかな時間で感じることができる。

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    2023年04月29日
  • 拳銃と十五の短篇

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    一週間くらい前に読み終わりました。
    幸せと幸せの隙間に業を、その逆も、仕込むのうますぎ。緩急がよくとても読みやすいし読み応えもある。がいっぺんに読めない。ぐらい重い。貸してくれてありがとう。

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    2022年09月03日
  • おろおろ草紙

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    ネタバレ

    この人しか書けない小説とは、なんとすばらしいのだろう。
    北の地の厳しさが人を死なせていた。土地をこんなふうに書ききるすごさがまず、この小説にはある。
    歴史小説はあまり読まないが、そんなこと関係なしに文章の凄まじさで読めてしまったなあ。
    すこし前に読んだ剥製が男女が死ぬ話だとしたら、おろおろ草紙の四篇は土地の厳しさで人が死ぬ話である。より三浦哲郎の奥をみたのは今回のおろおろ草紙だった。形式としては物語なのだけど、その中で三浦しか知らない東北の感覚が書かれていたと思う。
    ちょっと確認してみたら二篇目の「暁闇の海」は、けっこう歴史寄りの話だったみたい。でも四篇を総合して、北の厳しさを知らせてくれるよ

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    2021年09月08日
  • 木馬の騎手

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    ネタバレ

    小説家としての三浦の業をこの一冊でみた気がした。
    はじめの「接吻」がほんとうにすごいと思った。
    出稼ぎに出ているお父さんに東北から会いにきたキワは、上野駅のホームで見知らぬ女の人に自分の名前を呼ばれる。
    とにかく三浦哲郎の文章は一切の誤魔化しがなく、身を委ねられる。話がいいようにも思うのだけど、この作家はひとつひとつの文章が作品を作っているのだとやはりつよく感じる。
    自分が短篇小説を書くときに、これらの作品はお手本になるだろうな。

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    2021年08月01日
  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    二分か三分くらいで読める掌編・短編集。
    老夫婦が祭りの後の夜、赤裸々に話し合い、何十年も前に妻に乱暴した男がいると知った夫が数夜を通して歩き続け、警察に保護された時、「自分はただ、過去へ向かって歩いていただけだ」と言う。その男に復讐しようとしたのだと。そういう言葉の選び方が良い。
    「さんろく」もエッセイが小説に変わる魔術的な最後の一行にただただ感嘆。
    著者あとがきに、元は短編小説家を目指していたとあり、この作品集における腕の冴えにも納得。

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    2021年07月03日
  • 拳銃と十五の短篇

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    ネタバレ

    この短編集だいすき。おまけに解説までいい。

    家族のこととその周辺のことが主に描かれている。
    三浦哲郎を心から好きと言えるきっかけとなった小説かもしれない。擦り切れるほど読みたいな。借りた本だから買わねば買わねば。

    内容のことについてひとつも書いていなくても、後でこの感想を読めばこの作品とどう触れ合ったかわかる気がする。おしまい。

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    2021年06月30日
  • 白夜を旅する人々

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    ネタバレ

    六人きょうだいのうち、二人の兄が失踪、そして二人の姉が自殺する。生きつづけたのは三姉と末弟の哲郎のみだった。

    創作の初期から一貫した家族のテーマと向き合い続けた作者が、体験した当事者としてでなく、ひとりの作家として書き切った小説なのだとよくわかる。初期の作品はもっと等身大で、作中に出てくる兄弟のように、他の兄姉の死に影響されている姿が作品の中に良くも悪くも表れていた。死んだ兄姉をひとりの他者として見つめたからこそ、このような小説が生まれたのだと思う。
    この作品は、三浦哲郎と思しき〈羊吉〉という男の子が生まれてから六年間にわたる話である。

    公平叔父として出てきた母の弟と三浦哲郎がどんな関わり

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    2021年06月21日
  • 愁月記

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    ネタバレ

    三浦哲郎を研究するのでもいいかもしれないと思った。それくらい心打たれたということなのかもしれない。忍ぶ川を錯覚させるような良さで、彼の書く家族の話はどれもすごく良いに違いないとこの一冊を読んで確信した。
    表題作の『愁月記』は母の死の前後を描いた話。食卓を囲んでいる中で母が突然泣く場面からはじまる。まだどんな話か分からないのにその場面がすごくいい。その後読み終わるまで母があのときなんで泣いていたのかをずっと考えていた。この話は葬式で母の骨を壺に入れる場面でおわる。
    自分の母のことが頭に思い浮かんだ。母について書かれた小説は他の作家でも読んできたが、こんなに鮮明になったのははじめてだ。親がもし亡く

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    2021年05月09日
  • 野

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    野山で生きる人々の生老病死を瑞々しい風景描写と、細やかな心理描写で写し取った短編集。
    著者が自分の著作の中で最も好きな作品というだけあって、どの作品も伸び伸びとした筆さばきで書かれているように思える。
    特に「楕円形の故郷」は、東京が舞台にも関わらず、盆栽という意外な装置を使って都会と故郷の「野」を曲芸的に繋いだ、かなり意欲的な作品に思えた。
    平易な言葉を使いながら、目を洗われるような美しい情景描写が連続する「泉」は、主人公の妊婦の所作が、著者の出生時に母親が死産を願って取った行動と対称を成しており、ただ綺麗な物語というだけでなく、深くも読めてしまう。

    けれど本書で一番衝撃的だったのは、私がこ

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    2021年02月23日
  • ふなうた 短篇集モザイクII

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    三浦哲郎短編集モザイク2冊目「ふなうた」
    性、糞尿、生命を嚥み込む、自死…、1冊目より生々しさがあり、体がムズムズ〜っとするお話も。(((=_=)))

     80歳のお祝い、傘寿の席で孫が披露したロシア民謡”舟歌”。しかし彼の耳に残る”舟歌”とは違う歌だった。それは戦地ロシアで聞いた美しい歌だった。もう生きては帰れないと思ったあの夜に、この世の最後に聞く歌だと思った歌だったのに。/『ふなうた』

     夫婦の睦み合い。異国で自分だけに囁くように聞こえてきたアナウンス。妄想状態の女から10年受け続けている電話の。それらの声。/『こえ』

     田舎の山道にできた夜の店。クリーニング屋の要は一人の女に目を留

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    2020年07月28日
  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    三浦哲郎によるモザイクのような小品集の1冊目。10ページ前後で日常のふとした瞬間や、人の心の機微など、流れていきそうな事柄が紙面に留められている。

     命日になると連絡船に乗り、親戚が飛び込んだ海に花を投げ入れに来ていた。その連絡船も廃止になる。同じ船いたやはり花を持った老婦人は、私にみちづれを見るような眼差しを向けるのだった。/『みちづれ』

     寺に入門する前日に少年と母親は宿屋でとんかつを食べた。修行明けまで会えないかと思ったら、一年後に息子が入院することになったと言って母親が宿屋に現れた。久しぶりに出会った二人が食べたのは、寺では禁止されている、とんかつ。/『とんかつ』

     入院中の彼は

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    2020年07月25日
  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    やっぱり三浦哲郎の短編は、いい。
    短いなかでも、細かい情景や自分でも気づかないほどの心の動きを思い出させてくれるような。
    東北の空気を、本を読むことで吸える感じ。

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    2019年10月30日
  • 白夜を旅する人々

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    ネタバレ

    再読です。

    昭和初期の東北の呉服店の三男三女の物語。
    先天性色素欠乏症(アルビノ)の長女と三女以外は
    なに不自由なく暮らしていたけれど、年齢を
    重ね、自分たちの世間での立ち位置を認識し、
    次女は投身自殺、次女を溺愛していた長男は
    失踪、アルビノの長女は服毒自殺をする。

    著者はこの呉服店の三男にあたり
    物語では0~4,5歳。この三男と
    三女以外が細かく描かれています。

    読みたいフレーズがあったので再読しました。

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    2019年06月17日
  • 愁月記

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    ネタバレ

     初めの短編「愁月記」を読み了える。
     故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
     目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
     作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主として

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    2019年01月27日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ずっと気になっていた本で、ここのところ児童文学を読み始めたことを機に手にとった。東北に残る座敷わらしの言い伝えを生かし、主人公の少年が成長する話。妖怪のおどろおどろしい空気はなく、ユーモアあり、心打つ話あり。まさに小学高学年の子供たちに読んでほしい一冊。2018.6.8

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    2018年06月08日
  • 百日紅の咲かない夏

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    十年ぶりの再会をした姉弟。会うたびにお互いへの愛の深さに慄く。しかし、そんな二人に危険な人間関係が絡みつく。
    清くて、切なくて、終始重苦しい雰囲気だけれどさらりと読める。ああ〜〜好きです…。比佐と砂夫は心の奥底では男女の気持ちでお互いを見ているけれど、最後まで姉弟の関係を貫いた。あのラストは今なら古臭いと感じるけど、これが書かれたのは20年近く前だからね。何にしろ好きです。ただ、鳥子の父親はもうちょっと娘の身を案じよう??これ鳥子の父親がもうちょっと藤夫対策をしてくれればあの結末にはならなかったと思う…。

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    2017年10月30日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ネタバレ

    このお話は、父親を事故で亡くした主人公勇太が、母の地元である湯ノ花村に引っ越してきて、たくましく成長していく物語です。
    ある日勇太は寅吉爺さんと座敷わらしのことを話します。気になった勇太は座敷わらしに会うことを試みます。結果勇太は座敷わらしと友達になりました。
    この物語で出てくる座敷わらしは、江戸の飢饉の時代に生まれ、すぐに親に間引きをされた子供達の霊のなりそこないです。作者はこの座敷わらしたちを通じて命の大切さを伝えたかったのだと思います。
    私はこの物語を読み、命の大切さを実感しました。
    また、どんどん成長してたくましくなっていく勇太もかっこいいなぁと憧れました。

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    2017年06月29日