三浦哲郎のレビュー一覧
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⚫︎受け取ったメッセージ
川の流れのように、粛々と流れる時間。
一緒にいてくれる人を思う気持ちが、
水面を輝かせる。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
大学生の私は、料亭「忍ぶ川」で志乃としりあった。それぞれの家族とのかかわりやいたましい生い立ちを乗り越え労わりながら逞しく生き抜こうとする。くり返し読み継がれていく名作 第44回芥川賞受賞作品
⚫︎感想
素直で、わかりやすい日本語で書かれている。その表現が、話の美しさ、慎ましさを引き立てていると思った。主人公二人は家族とのかかわりで、それぞれ苦しみをもっていても、それが二人の性格を捻じ曲げることなく、素直で美しい。悪人も、ズレた人も出て -
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ネタバレこの人しか書けない小説とは、なんとすばらしいのだろう。
北の地の厳しさが人を死なせていた。土地をこんなふうに書ききるすごさがまず、この小説にはある。
歴史小説はあまり読まないが、そんなこと関係なしに文章の凄まじさで読めてしまったなあ。
すこし前に読んだ剥製が男女が死ぬ話だとしたら、おろおろ草紙の四篇は土地の厳しさで人が死ぬ話である。より三浦哲郎の奥をみたのは今回のおろおろ草紙だった。形式としては物語なのだけど、その中で三浦しか知らない東北の感覚が書かれていたと思う。
ちょっと確認してみたら二篇目の「暁闇の海」は、けっこう歴史寄りの話だったみたい。でも四篇を総合して、北の厳しさを知らせてくれるよ -
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ネタバレ六人きょうだいのうち、二人の兄が失踪、そして二人の姉が自殺する。生きつづけたのは三姉と末弟の哲郎のみだった。
創作の初期から一貫した家族のテーマと向き合い続けた作者が、体験した当事者としてでなく、ひとりの作家として書き切った小説なのだとよくわかる。初期の作品はもっと等身大で、作中に出てくる兄弟のように、他の兄姉の死に影響されている姿が作品の中に良くも悪くも表れていた。死んだ兄姉をひとりの他者として見つめたからこそ、このような小説が生まれたのだと思う。
この作品は、三浦哲郎と思しき〈羊吉〉という男の子が生まれてから六年間にわたる話である。
公平叔父として出てきた母の弟と三浦哲郎がどんな関わり -
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ネタバレ三浦哲郎を研究するのでもいいかもしれないと思った。それくらい心打たれたということなのかもしれない。忍ぶ川を錯覚させるような良さで、彼の書く家族の話はどれもすごく良いに違いないとこの一冊を読んで確信した。
表題作の『愁月記』は母の死の前後を描いた話。食卓を囲んでいる中で母が突然泣く場面からはじまる。まだどんな話か分からないのにその場面がすごくいい。その後読み終わるまで母があのときなんで泣いていたのかをずっと考えていた。この話は葬式で母の骨を壺に入れる場面でおわる。
自分の母のことが頭に思い浮かんだ。母について書かれた小説は他の作家でも読んできたが、こんなに鮮明になったのははじめてだ。親がもし亡く -
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野山で生きる人々の生老病死を瑞々しい風景描写と、細やかな心理描写で写し取った短編集。
著者が自分の著作の中で最も好きな作品というだけあって、どの作品も伸び伸びとした筆さばきで書かれているように思える。
特に「楕円形の故郷」は、東京が舞台にも関わらず、盆栽という意外な装置を使って都会と故郷の「野」を曲芸的に繋いだ、かなり意欲的な作品に思えた。
平易な言葉を使いながら、目を洗われるような美しい情景描写が連続する「泉」は、主人公の妊婦の所作が、著者の出生時に母親が死産を願って取った行動と対称を成しており、ただ綺麗な物語というだけでなく、深くも読めてしまう。
けれど本書で一番衝撃的だったのは、私がこ -
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三浦哲郎短編集モザイク2冊目「ふなうた」
性、糞尿、生命を嚥み込む、自死…、1冊目より生々しさがあり、体がムズムズ〜っとするお話も。(((=_=)))
80歳のお祝い、傘寿の席で孫が披露したロシア民謡”舟歌”。しかし彼の耳に残る”舟歌”とは違う歌だった。それは戦地ロシアで聞いた美しい歌だった。もう生きては帰れないと思ったあの夜に、この世の最後に聞く歌だと思った歌だったのに。/『ふなうた』
夫婦の睦み合い。異国で自分だけに囁くように聞こえてきたアナウンス。妄想状態の女から10年受け続けている電話の。それらの声。/『こえ』
田舎の山道にできた夜の店。クリーニング屋の要は一人の女に目を留 -
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三浦哲郎によるモザイクのような小品集の1冊目。10ページ前後で日常のふとした瞬間や、人の心の機微など、流れていきそうな事柄が紙面に留められている。
命日になると連絡船に乗り、親戚が飛び込んだ海に花を投げ入れに来ていた。その連絡船も廃止になる。同じ船いたやはり花を持った老婦人は、私にみちづれを見るような眼差しを向けるのだった。/『みちづれ』
寺に入門する前日に少年と母親は宿屋でとんかつを食べた。修行明けまで会えないかと思ったら、一年後に息子が入院することになったと言って母親が宿屋に現れた。久しぶりに出会った二人が食べたのは、寺では禁止されている、とんかつ。/『とんかつ』
入院中の彼は -
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ネタバレ初めの短編「愁月記」を読み了える。
故郷に長病む母の最期を看取りに、故郷へむかう列車で、以前によく上京していた母の、食事時に急に泣き出したり、作家の仕事部屋を眺めまわして満足していた時を、回想する。不遇な宿命を背負った子供たちのうち、末弟の作家が成功して穏やかに過ごしている事に満足だったのだろうと、文中にはないが察せられる。
目が弱くて琴の師匠をしている姉、母を長く世話している世話上手の付添婦さんなど、他の小説にも現われる人物が、心優しい。親しんでくれた若い看護婦の話もある。
作家がいったん実家に戻って休んでいる間に、母の容体が急変し亡くなる。死に目には会えなかったが、作家は喪主として -
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ネタバレこのお話は、父親を事故で亡くした主人公勇太が、母の地元である湯ノ花村に引っ越してきて、たくましく成長していく物語です。
ある日勇太は寅吉爺さんと座敷わらしのことを話します。気になった勇太は座敷わらしに会うことを試みます。結果勇太は座敷わらしと友達になりました。
この物語で出てくる座敷わらしは、江戸の飢饉の時代に生まれ、すぐに親に間引きをされた子供達の霊のなりそこないです。作者はこの座敷わらしたちを通じて命の大切さを伝えたかったのだと思います。
私はこの物語を読み、命の大切さを実感しました。
また、どんどん成長してたくましくなっていく勇太もかっこいいなぁと憧れました。