三浦哲郎のレビュー一覧
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芥川賞
たまには過去の名作というものを読んでみようと手に取る。
東北の裕福な呉服屋の六人兄弟の末子である作者だが、姉二人は自殺、兄二人は失踪、残された姉は弱視という凄まじい家庭環境。その血に怯える心情を描く私小説を中心とした中短編集。
売れない小説を書いているだけで、働こうともしない夫に文句も言わず、義父の最期も献身的に看取る、遊郭街で育った妻のまっすぐな人柄が驚きだった。
ふだん読み慣れているような現代の小説とはかなり異なった時代設定であり文章。大作家の初期の作品ということだが、文学を読んだという充実感はあるが、正直良さのわからないところもあった。 -
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三浦哲郎 「 白夜を旅する人々 」
どのシーンも「白さ」「静寂さ」が印象に残る。風景の色彩や人物の躍動感を排除することで、生きることの厳しさや人間の内面の悲しみにスポットをあてたいのかもしれない
私小説だけに、著者が小説を書く原点や決意を 綴った本だと思う。小説を書くことで、医者に治せない病気や遺伝への不安、自殺した家族の虚無感を 取り除き、自分や家族の生きる力を取り戻す というメッセージを感じる
タイトル「白夜を旅する」は 「白くて静かな世界〜生と死の境界のない静寂の世界〜を生きていく」ということであり、死んだ家族と一緒に、その世界で生きていく
ということだと思う
著者の芸術 -
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ネタバレユタという少年と座敷童子たちの短い日々を語った小説だった。
都会から田舎へと下ってきたユタは村の人々となかなか馴染めずにいる。座敷童子たちは過去にとらわれ今を生きることができず、この時代に馴染めずにいる。この共通点が短いながらも彼らが仲間であるために必要だったことなのだろう。しかしユタは人間であり、変わっていく。座敷童子たちの協力もあり少しずつ村の子どもへと変貌を遂げていくのである。が、座敷童子たちにはそのように変化ができない。それは彼らが人間ではないからだろう。そうして変わっていくユタを見送りながら、馴染めない彼らはきっとこの先も様々な場所を転々としていくことだろう、というところまで考えて少 -
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不倫の話なんだが、読んでて深みにはまっていく当事者たちの気持ちが手に取るようにわかる。
割と男目線なので、わからない部分もあるが、なんともなしに男ってーのはこういて不倫の深みにはまるのか。
と、何気に思う興味深い一冊です。
そして、あんまり登場しないのですが、この不倫した男の妻。
この妻が私的に密かに恐ろしいものがある。と、思わずにはいられません。
いや、別に脅すとか暴れるとか全くない。笑顔であなた。と、言い続け、あなたの生きやすいよあに後ろに控える姿はなんとも慎ましいのだけど、だけど、だけど、ラストに笑顔で、不倫。知ってました。と。。。。。
ね、なんか怖いでしょ。 -
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『名作文学に見る「家」』という本を読んでいる。 小説の舞台となる家を記述から想像して絵に描き起こすという内容だ。その中に『ユタと不思議な仲間たち』が紹介されていたので、興味をもった。
夜中の1時から読んで3時には読み終わってしまった。
都会から家庭の事情で田舎に転校してきた小六生の勇太(ユタ)は、友達がなかなかできない。村の爺さんに、じゃあ、座敷わらしとでも仲良くしたらいい、とアドバイスを受け、満月の夜に座敷わらしが出ると言う銀林荘という旅館にひとりで泊まる。
布団の中で眠気をこらえておきていたユタだが、次第にうとうと。夢か現かわからないまま、墨を流したように暗い部屋に白く浮き上 -
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おろおろ草紙というタイトルが、この作品集全体の内容をとてもよく表している。
何が悪いわけでもなく、誰かのせいでもなく、かといって虚無感に襲われるというのでもなく。ただ、何かがあって、そういう状況の中で右往左往して、それでも、ただ、生きて。
流されているというわけではない。ぼんやり生きているというのとも違う。
状況は壮絶だ。ばたばたと人が倒れていき、「死」がごろごろしている状況だったり、一歩違えば生死の狭間であったり、そして、他人を喰わないと自分が死ぬ状況だったり。
とても日常的とは言えない。むしろ、地獄のような状況だ。しかし、それなのに、人はどこまでも人で、それ以上には決してならない。また、