三浦哲郎のレビュー一覧

  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    どこの書評で見たんだっけ?
    昭和の味わいですが、古びてはいない。

    廃止間際の青函連絡船に乗った男性と
    老婦人のささやかな邂逅を描いた表題作や
    修行僧になる息子と母親が泊まった
    北陸の宿でのできごと『とんかつ』
    年の瀬に田舎へ厄介払いされる老婆が
    一計を案じる『ねぶくろ』
    妾腹の女性がはじめて会った父親との
    ささやかなやりとり『じねんじょ』

    そのほか合わせて24編。
    どれも短い中に人の世の喜怒哀楽が
    ギュッと閉じ込められているような感じ。
    多少、下世話な話の時もあるけど
    それもまた社会の一面だね。

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    2025年05月25日
  • 忍ぶ川

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    芥川賞
    たまには過去の名作というものを読んでみようと手に取る。
    東北の裕福な呉服屋の六人兄弟の末子である作者だが、姉二人は自殺、兄二人は失踪、残された姉は弱視という凄まじい家庭環境。その血に怯える心情を描く私小説を中心とした中短編集。
    売れない小説を書いているだけで、働こうともしない夫に文句も言わず、義父の最期も献身的に看取る、遊郭街で育った妻のまっすぐな人柄が驚きだった。
    ふだん読み慣れているような現代の小説とはかなり異なった時代設定であり文章。大作家の初期の作品ということだが、文学を読んだという充実感はあるが、正直良さのわからないところもあった。

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    2024年11月15日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    児童文学というだけあって、とても読みやすい。嫌な気持ちになることもないし、めちゃくちゃ平和。現実に起こり得ないことなのかもしれないけど、実はこの世界のどこかでこんなことが起こってるんじゃないか、と楽しくなる。

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    2024年04月09日
  • 忍ぶ川

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    表題作の『忍ぶ川』と『初夜』以降の続編も良かったんだけど、最後に読んだ『驢馬』の衝撃が強かった
    張のこと思うとしんどくなっちゃうな
    『恥の譜』も印象的だった
    兄弟たちの自殺を恥ずかしく思ってた主人公が、父親が病気で亡くなっていくことを普通の死と認識して安堵するというような話。自然とそう思ってしまうのが分かるけれど悲しい。

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    2023年07月04日
  • はまなす物語

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    地方出身の姉弟たちの、ささやかな人生の一模様。あるいは、一つの結婚生活の終焉。はまなすの香りというものがわからず、なんだか核心を掴み損ねているような気分もあるけど、面白く読んだ。

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    2023年04月21日
  • 随筆集 下駄の音

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    ネタバレ

    1987年発行。三浦が外国に行っているときの随筆がおおい。同行しているSくんは佐伯一麦のことか...?
    末弟の道がとくによかった。

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    2021年07月07日
  • 白夜を旅する人々

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    三浦哲郎 「 白夜を旅する人々 」


    どのシーンも「白さ」「静寂さ」が印象に残る。風景の色彩や人物の躍動感を排除することで、生きることの厳しさや人間の内面の悲しみにスポットをあてたいのかもしれない


    私小説だけに、著者が小説を書く原点や決意を 綴った本だと思う。小説を書くことで、医者に治せない病気や遺伝への不安、自殺した家族の虚無感を 取り除き、自分や家族の生きる力を取り戻す というメッセージを感じる


    タイトル「白夜を旅する」は 「白くて静かな世界〜生と死の境界のない静寂の世界〜を生きていく」ということであり、死んだ家族と一緒に、その世界で生きていく
    ということだと思う


    著者の芸術

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    2020年10月14日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ネタバレ

    ユタという少年と座敷童子たちの短い日々を語った小説だった。
    都会から田舎へと下ってきたユタは村の人々となかなか馴染めずにいる。座敷童子たちは過去にとらわれ今を生きることができず、この時代に馴染めずにいる。この共通点が短いながらも彼らが仲間であるために必要だったことなのだろう。しかしユタは人間であり、変わっていく。座敷童子たちの協力もあり少しずつ村の子どもへと変貌を遂げていくのである。が、座敷童子たちにはそのように変化ができない。それは彼らが人間ではないからだろう。そうして変わっていくユタを見送りながら、馴染めない彼らはきっとこの先も様々な場所を転々としていくことだろう、というところまで考えて少

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    2020年07月08日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    座敷わらしの妖怪という存在を、日本の飢餓という歴史に結び付けてうまく体現している。子どもが主人公なので子どもでも読みやすい。田舎という特性もよく現していて、どんどんたくましくなっていく主人公のユタを見るのが楽しい。
    座敷わらしたちが、ユタの役に立つことが出来てよかった。

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    2019年07月13日
  • 忍ぶ川

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    貧窮の中に結ばれた夫婦の愛を高らかにうたって芥川賞受賞の表題作ほか「初夜」「帰郷」「団欒」「恥の譜」「幻燈画集」「驢馬」を収める。

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    2019年07月17日
  • 愛しい女

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    不倫の話なんだが、読んでて深みにはまっていく当事者たちの気持ちが手に取るようにわかる。

    割と男目線なので、わからない部分もあるが、なんともなしに男ってーのはこういて不倫の深みにはまるのか。

    と、何気に思う興味深い一冊です。

    そして、あんまり登場しないのですが、この不倫した男の妻。

    この妻が私的に密かに恐ろしいものがある。と、思わずにはいられません。

    いや、別に脅すとか暴れるとか全くない。笑顔であなた。と、言い続け、あなたの生きやすいよあに後ろに控える姿はなんとも慎ましいのだけど、だけど、だけど、ラストに笑顔で、不倫。知ってました。と。。。。。

    ね、なんか怖いでしょ。

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    2016年07月22日
  • おふくろの夜回り

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    昭和50年野犬。ニリンソウ・シドケ(モミジガサ)/トリカブト。昭和8年3月3日東北で津波。平成4年上海で竜巻。

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    2016年03月19日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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     『名作文学に見る「家」』という本を読んでいる。 小説の舞台となる家を記述から想像して絵に描き起こすという内容だ。その中に『ユタと不思議な仲間たち』が紹介されていたので、興味をもった。

     夜中の1時から読んで3時には読み終わってしまった。
     
     都会から家庭の事情で田舎に転校してきた小六生の勇太(ユタ)は、友達がなかなかできない。村の爺さんに、じゃあ、座敷わらしとでも仲良くしたらいい、とアドバイスを受け、満月の夜に座敷わらしが出ると言う銀林荘という旅館にひとりで泊まる。
     布団の中で眠気をこらえておきていたユタだが、次第にうとうと。夢か現かわからないまま、墨を流したように暗い部屋に白く浮き上

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    2017年08月15日
  • 忍ぶ川

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    第44回(1960年下半期)芥川賞受賞作。この回はなかなかに豊作で、候補作の中には倉橋由美子「夏の終り」や、柴田翔「ロクタル管の話」などもあった。ただし、選考委員のほとんどは本作を推している。作品の文体は私小説風であるが、そのようなタッチを意識して書かれた小説なのだろう。したがって、年代以上に古いタイプの小説という感じを受ける。第44回といえば、安部公房や大江健三郎よりも後なのだから。また、小説全体は、モノトーンに覆われ、ハッピーエンドであるにもかかわらず、ヒロインの志乃には薄倖そうなイメージが付き纏う。

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    2014年04月05日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    父親を亡くし母の故郷である東北の田舎町に引越してきた都会の少年と座敷わらしの風変わりな交流。蒸れたオムツのにおいがする座敷わらし…奇抜な発想だ。日本むかしばなしのエンディングの歌を思い出すような、切なくて心温まる話だった。

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    2013年09月24日
  • 百日紅の咲かない夏

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    読み終わった、と言うか、途中まで読んで、まどろっこしくなって一飛びに最後数ページまで飛ぶという荒技をしてしまった作品。
    もともと不幸な姉弟が最後まで救われない、と言うかむしろあの方法でしか救われないのが辛い。
    最後の日なんて最早悲壮感が無くて、肩の荷が下りた後の爽快感さえ感じる。
    でも哀しい。こんな決断をしてしまうこの姉弟が、ただただ哀しい。

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    2013年05月08日
  • 忍ぶ川

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    芥川賞受賞の「忍ぶ川」、その続編の4作を含む7作の短編集。忍ぶ川は昭和初期の作者の体験を基にしたお話らしい。好きな女性と出会い、問題を乗り越えながらも幸せに結ばれる。昭和初期という事もあり描写が細かく書かれているが少しイメージしにくい。何でもない日常のお話、という感想で個人的には何かを感じ取れる作品ではなかった。

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    2012年04月11日
  • おろおろ草紙

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    おろおろ草紙というタイトルが、この作品集全体の内容をとてもよく表している。
    何が悪いわけでもなく、誰かのせいでもなく、かといって虚無感に襲われるというのでもなく。ただ、何かがあって、そういう状況の中で右往左往して、それでも、ただ、生きて。

    流されているというわけではない。ぼんやり生きているというのとも違う。
    状況は壮絶だ。ばたばたと人が倒れていき、「死」がごろごろしている状況だったり、一歩違えば生死の狭間であったり、そして、他人を喰わないと自分が死ぬ状況だったり。
    とても日常的とは言えない。むしろ、地獄のような状況だ。しかし、それなのに、人はどこまでも人で、それ以上には決してならない。また、

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    2011年11月20日
  • 忍ぶ川

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    教科書に出てくるような本が

    読みたいと、見つけた本。

    短編なんだけど、続編でつながる一冊。

    最初の話が一番よかった。

    エラソーだけど、読み進めるほど、

    しりすぼみ?になってしまった気がする。

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    2011年11月10日
  • 忍ぶ川

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    ネタバレ

    恋愛という言葉は世の中にあふれているが、いざ自分がその主人公になったら、その途端に苦しく切なく、そしてひたすらに相手を思い続けるしか出来なくなってしまうのだ。人生の中の奇跡的な時間であり、人生からのプレゼントではないかと思う。初夜を迎える場面は、忘れられないくらいに鮮烈なイメージを与えてくれる。

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    2011年10月16日