三浦哲郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレすごいおもしろかった。たぶん三浦の言う北の悲劇に該当する話なのだろう。当たり前なのだが現代小説として読んでいけるその当たり前さに、この作家が生涯現役で作家として居続けた事実をおもわずにはいられない。昔の作品を読んでいる、ないし今の時代でないものを読むときの硬さがなく、それでいて作家性をかんじる。僕は今まで三浦を読む時に、「忍ぶ川」や「白夜を旅する人々」のような彼の根底にあるテーマ性と直結したところで読みがちだったが、この小説はただただ読めた。すごくいい意味として。つい最近、「愛しい女」を読んでから、あそこに出てくる登場人物のことを時折ふとおもいだす。そうだそうだ、小説ってこんなだったかも、と忘
-
Posted by ブクログ
ネタバレ三浦哲郎の描く児童文学。
いままで読んだ彼の作品とちがうと思ったのは、喩えの言葉のセレクトで、いくつか目に付いた。
p41 ぼくは、ちょうど閉店時間を迎えた銀行の玄関の自動シャッターのように、どうしようもない重たさで垂れさがってくる瞼を支えようとしながら、心のなかでそう叫んだ。
またぼくは主要人物のざしきわらしの髪型のことを、ビートルズの頭と表している。
三浦哲郎がこんな表現をしてくるのかと、素直におどろいた。
p186 燃える離れから噴き上げた火の粉は、赤い河のようになって村の空を流れ、その先は村のむこうの野の方まで及んでいた。
こちらは簡潔で、それでいて美しいなと思う表現。
こ -
Posted by ブクログ
東京育ちの少年・勇太は、父を事故で亡くし、母に連れられ東北の山あいにある湯ノ花村に移ってきた。村の子供たちになかなか馴染めず退屈な毎日を送っていたが、ひょんなことから不思議な座敷わらしたちと出会った。彼らとの交友のなかで、いつか勇太はたくましい少年へと成長していく――。
息子が保育園の卒園式で「友だちはいいもんだ」を歌うことになった。劇団四季の舞台で歌われていると聞き、いろいろ調べていたら、芥川賞作家の三浦哲郎さんの小説が原作なのだと知った。
座敷わらしが出てくる話だと息子から聞いていたので、ちょっとおどろおどろしい内容になるのかと思ったが、座敷わらしたちの悲しい過去も含めて重すぎない読 -
Posted by ブクログ
東京から東北の村へ転向してきたユタ(勇太)は周囲になじめず他の子供たちからはモヤシと呼ばれていた。
そんなユタに旅館で働く寅吉じいさんは満月の晩に大黒柱のある部屋に一人で泊まると座敷わらしと出会えると話すのだった。
ユタが意を決してその部屋に泊まると・・・。
先日行ってきた金田一温泉を舞台にした三浦哲郎さんの児童文学。
そういえば、東北旅行してから甥っ子が少し逞しくなったみたいです。
オイラはオーブを写せただけで、ペドロみたいな座敷わらし達には出会えなかったけど、甥っ子たちは秘密にしているだけで座敷わらしに会って冒険してきたのかもしれないなぁ。 -
Posted by ブクログ
勇太(ユタ)は父を事故で亡くし、母と二人東北の山間の村に越してきました。
彼は東京もんとしてなかなか受け入れて貰えず、寂しい日々を送っていました。
そんな時仲良しの釜焚きの寅吉爺さんから、座敷童の話を聞き母の働く宿の一室に一人で泊まる事にしました。
すると座敷童のペドロ達が現れ、彼を仲間として受け入れてくれました。彼はそれから度々座敷童達と時間を共にし、彼らがどうして座敷童になったのかを知ります。
座敷童達は皆、村の凶作の時に口減らしとして行われていた「間引き」で命を奪われた子供達だったのです。
彼らは優しく、時に厳しくユタと接し、座敷童達の境遇や想いに触れたユタは次第に自分を鍛え、村の子ども -
Posted by ブクログ
死に縁どられた、あたたかいファンタジー。
お父さんが海難事故で死んだという設定は、ああ、三浦作品だな、と思ってしまう。
お寺の鐘の乗り合いバスとか、エンツコのエレベーターとか、子どものころ読んだら、きっとわくわくしただろう。
悲しさとおかしさが、絶妙なバランスでまじりあっているのも、この作品ならではの味わいだろう。
梅雨の時期は座敷わらしたちにとって、憂鬱な時期だということ。
彼らが永遠に子どもの姿である悲しい事情とは別に、おむつが乾かないという、リアルな「事情」には笑わされてしまう。
この物語を読んだ直後に、冲方丁の「光圀伝」を読んだ。
個人的な偶然といえ、「水子」にするという共通点が -
Posted by ブクログ
ネタバレ7つの短編集。6つは連作、でいいのかな。
『忍ぶ川』数奇な運命の6人の兄弟姉妹の末っ子が
ある女性と付き合って結婚するまで。
結婚式での両親がとても嬉しそうで微笑ましい。
連作はその後の生活と過去を綴ったもの。
昭和のつつましく暮らしている夫婦が清々しい。
『白夜を旅する人々』(1985年)を以前読んでいたので
その印象が強くスピンオフのように感じつつ読みました。
『白夜を旅する人々』は6人の兄弟姉妹の上の5人
(メインは次女、長男、長女)
『忍ぶ川』は末っ子が登場人物。
末っ子が上5人と比べると普通の人なので
『白夜を旅する人々』のほうがインパクトはあった。