三浦哲郎のレビュー一覧

  • 百日紅の咲かない夏

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    すごいおもしろかった。たぶん三浦の言う北の悲劇に該当する話なのだろう。当たり前なのだが現代小説として読んでいけるその当たり前さに、この作家が生涯現役で作家として居続けた事実をおもわずにはいられない。昔の作品を読んでいる、ないし今の時代でないものを読むときの硬さがなく、それでいて作家性をかんじる。僕は今まで三浦を読む時に、「忍ぶ川」や「白夜を旅する人々」のような彼の根底にあるテーマ性と直結したところで読みがちだったが、この小説はただただ読めた。すごくいい意味として。つい最近、「愛しい女」を読んでから、あそこに出てくる登場人物のことを時折ふとおもいだす。そうだそうだ、小説ってこんなだったかも、と忘

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    2022年02月26日
  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    ネタバレ

    わくらばと大分雰囲気のちがう作品が多い。書かれた時期が十年くらいちがうからだろうか。モザイクの最初の短篇集であるこの作品集は三浦自身も試し試しで色んなものを書いている気がして面白い。
    かきあげがいちばん好きだったかもな。
    三浦の短編は最後に人が死ぬことが多いのだけれど、なぜかそこに魅力を感じる。本人は話のオチに困ったら人物を死なせてしまうと対談で言っているけれど、しっかりとひとつの味になっていると思う。ちゃんといい小説の終わりとして死を描けるのは三浦のひとつの特徴なのではないか。

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    2021年10月30日
  • わくらば 短篇集モザイクIII

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    ネタバレ

    晩年に描かれた短篇集。家族を題材にしたものから物語風のものなど様々だが、どの作品にも三浦哲郎作品に今までも登場した要素が散りばめられている。山麓の小屋、座敷童、中るなど、半生のなかで触れてきたものがちゃんと作者の一部になっているのだとおもった。三浦哲郎だから書ける山麓の小屋だし、座敷童であると。
    主人公が男性のときは年嵩であることがおおいが、女性のときは若い人のときもある。妻のときもあった。

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    2021年10月28日
  • 結婚

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    ネタバレ

    結婚、乳房、蜂、泉、聖夜、野の声。読んだことあるのが2篇。蜂、泉。
    結婚と乳房がすごく好きだったなあ。
    とくに乳房は三浦哲郎の短編のなかでもすごく好きなほう。すごい。
    野の声は三浦の小説ではじめて長いなと思って心折れそうになった。主人公が沖縄の人だったからかしら。

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    2021年10月04日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ネタバレ

    三浦哲郎の描く児童文学。

    いままで読んだ彼の作品とちがうと思ったのは、喩えの言葉のセレクトで、いくつか目に付いた。

    p41 ぼくは、ちょうど閉店時間を迎えた銀行の玄関の自動シャッターのように、どうしようもない重たさで垂れさがってくる瞼を支えようとしながら、心のなかでそう叫んだ。

    またぼくは主要人物のざしきわらしの髪型のことを、ビートルズの頭と表している。

    三浦哲郎がこんな表現をしてくるのかと、素直におどろいた。

    p186 燃える離れから噴き上げた火の粉は、赤い河のようになって村の空を流れ、その先は村のむこうの野の方まで及んでいた。

    こちらは簡潔で、それでいて美しいなと思う表現。

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    2021年06月07日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    東京育ちの少年・勇太は、父を事故で亡くし、母に連れられ東北の山あいにある湯ノ花村に移ってきた。村の子供たちになかなか馴染めず退屈な毎日を送っていたが、ひょんなことから不思議な座敷わらしたちと出会った。彼らとの交友のなかで、いつか勇太はたくましい少年へと成長していく――。

    息子が保育園の卒園式で「友だちはいいもんだ」を歌うことになった。劇団四季の舞台で歌われていると聞き、いろいろ調べていたら、芥川賞作家の三浦哲郎さんの小説が原作なのだと知った。

    座敷わらしが出てくる話だと息子から聞いていたので、ちょっとおどろおどろしい内容になるのかと思ったが、座敷わらしたちの悲しい過去も含めて重すぎない読

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    2021年02月16日
  • みちづれ 短篇集モザイクI

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    昭和の香りのする短編集。
    一つ一つ、短いながらも登場人物たちの人生の一端が精緻に描かれることで、それ以前、それ以降に思いを馳せることができる。

    昼食時の読み聞かせ放送にどうかな…と思ったのだが、中1~中3、900人以上いる生徒に向けてとなると、情景を思い浮かべられる生徒がどれくらいいるか、難しいかな…と断念。別の機会があればと思う。

    三浦さんは「ユタと不思議な仲間たち」の原作者だったとは、知らなかった。
    劇団四季の公演を何度か観たが、いじめられっ子と座敷童の友情、命の輝きを感じる作品だったなあ。
    2020.8.26

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    2020年09月03日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    父親を不慮の事故で失い、母とともに東北の田舎に引っ越してきたの勇太。村の子どもたちにはモヤシっこといじめられ友達もいなく、日々眠気と戦う日々だった。

    母が働く旅館で薪わりを担当するおじいさんに座敷童の話を聞き、彼らに会うため旅館の離れで一人眠ることにした勇太。彼のもとに現れたのは?

    ユタと呼ばれる少年と飢饉に追われ間引きの結果座敷童となってしまった子どものお話。

    座敷童と暮らす中で体力をつけていく勇太の成長や、心の変化が良かった。座敷童たちもコミカルでかわいらしい。
    最後の別れのシーンも潔く、お涙頂戴な書き方でなかったのもよかった。

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    2020年01月24日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    父をなくした勇太が引っ越してきたさきで座敷わらしと出会う。勇太にもだんだん仲間ができ、成長していく。

    C0193

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    2019年03月25日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ネタバレ かな?
    少年の成長物語。日本の過去の飢餓によって亡くなった幼い命への愛しさ、哀しみ、鎮魂、供養を織り込んで描いている。作者三浦哲郎自身の、母親が産むか否かで迷った経験に基づいているそうだ。

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    2018年08月24日
  • 忍ぶ川

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    「忍川」は出会い、交際し、結婚する過程を、未来へ向いた晴れやかな青春の一時が、対比して暗く引きずる過去を押し流しつつ描かれている。両親からも祝福されて幸せな気分を共感できる。深川の風景や夜行電車での情景描写もよいですね。その後の続編で暗い過去を浮き彫りにして、全編読後感は少し陰鬱なものになってしまうが。
    「驢馬」のみ作者の私小説とは違いフィクションのようだけど、当時の事情を題材に何やらリアルで救いようがなく変に印象に残る。

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    2017年11月12日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    ネタバレ

    三浦哲郎の本をどんどん読みたくて。
    舞台で内容は知っていたけど、原作での座敷わらしは9人もいたとは!
    座敷わらしが愛しい。
    もっと彼ら一人ひとりの物語を読みたいと思ってしまう。

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    2017年11月02日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    東京から東北の村へ転向してきたユタ(勇太)は周囲になじめず他の子供たちからはモヤシと呼ばれていた。
    そんなユタに旅館で働く寅吉じいさんは満月の晩に大黒柱のある部屋に一人で泊まると座敷わらしと出会えると話すのだった。
    ユタが意を決してその部屋に泊まると・・・。

    先日行ってきた金田一温泉を舞台にした三浦哲郎さんの児童文学。
    そういえば、東北旅行してから甥っ子が少し逞しくなったみたいです。
    オイラはオーブを写せただけで、ペドロみたいな座敷わらし達には出会えなかったけど、甥っ子たちは秘密にしているだけで座敷わらしに会って冒険してきたのかもしれないなぁ。

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    2016年10月13日
  • 忍ぶ川

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    テーマは暗いのに、人間の強さを感じさせる短編小説群であった。日々の生活の厳しさに家族で向かい合いながら、一方で、自殺してしまった家族の存在が負い目となる。豊かさの中で、共同体や家族の崩壊が進んでいる二十一世紀の日本との違いが際立っていた。

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    2017年08月16日
  • 木馬の騎手

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    「接吻」「厄落し」「初秋」「遠出」「出刃」が気に入った。
    面白くない話が一つもない。
    こんな短編集滅多にない。
    出会えて感謝。

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    2016年01月28日
  • ふなうた 短篇集モザイクII

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    18話からなる短編集。
    短い話がばかりだけど、深みを感じる。ときに落とし穴に突き落とされたような気持ちにさえなる。
    多種多様なの人生の一部が切り取られていて、まったく飽きがこない。

    「みのむし」は哀しい衝撃で、「メダカ」は予想外の衝撃だった。どちらも恐ろしい。

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    2015年11月18日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    勇太(ユタ)は父を事故で亡くし、母と二人東北の山間の村に越してきました。
    彼は東京もんとしてなかなか受け入れて貰えず、寂しい日々を送っていました。
    そんな時仲良しの釜焚きの寅吉爺さんから、座敷童の話を聞き母の働く宿の一室に一人で泊まる事にしました。
    すると座敷童のペドロ達が現れ、彼を仲間として受け入れてくれました。彼はそれから度々座敷童達と時間を共にし、彼らがどうして座敷童になったのかを知ります。
    座敷童達は皆、村の凶作の時に口減らしとして行われていた「間引き」で命を奪われた子供達だったのです。
    彼らは優しく、時に厳しくユタと接し、座敷童達の境遇や想いに触れたユタは次第に自分を鍛え、村の子ども

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    2015年09月21日
  • 忍ぶ川

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    表題作は、芥川賞受賞作。
    明治から昭和戦前までの古臭い空気をまとった様な作風だが、本作はそれがしっくりとして良い。メロドラマっぽくもある。
    「初夜」なんかも、続作に当たるのだと思うが、とても良かった。ただ、それまでで、他の短編は、「忍ぶ川」に散りばめられた要素を主題に書き下ろしたためか、味気無いというか、既視感に近い引き伸ばしを感じた。
    そのためか、本作で独立した短編「驢馬」は、とても良かったと感じた。

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    2015年08月26日
  • ユタとふしぎな仲間たち

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    死に縁どられた、あたたかいファンタジー。
    お父さんが海難事故で死んだという設定は、ああ、三浦作品だな、と思ってしまう。

    お寺の鐘の乗り合いバスとか、エンツコのエレベーターとか、子どものころ読んだら、きっとわくわくしただろう。

    悲しさとおかしさが、絶妙なバランスでまじりあっているのも、この作品ならではの味わいだろう。
    梅雨の時期は座敷わらしたちにとって、憂鬱な時期だということ。
    彼らが永遠に子どもの姿である悲しい事情とは別に、おむつが乾かないという、リアルな「事情」には笑わされてしまう。

    この物語を読んだ直後に、冲方丁の「光圀伝」を読んだ。
    個人的な偶然といえ、「水子」にするという共通点が

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    2015年08月14日
  • 忍ぶ川

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    ネタバレ

    7つの短編集。6つは連作、でいいのかな。

    『忍ぶ川』数奇な運命の6人の兄弟姉妹の末っ子が
    ある女性と付き合って結婚するまで。
    結婚式での両親がとても嬉しそうで微笑ましい。
    連作はその後の生活と過去を綴ったもの。
    昭和のつつましく暮らしている夫婦が清々しい。

    『白夜を旅する人々』(1985年)を以前読んでいたので
    その印象が強くスピンオフのように感じつつ読みました。
    『白夜を旅する人々』は6人の兄弟姉妹の上の5人
    (メインは次女、長男、長女)
    『忍ぶ川』は末っ子が登場人物。

    末っ子が上5人と比べると普通の人なので
    『白夜を旅する人々』のほうがインパクトはあった。

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    2015年07月06日