三浦哲郎のレビュー一覧

  • わくらば 短篇集モザイクIII
    晩年に描かれた短篇集。家族を題材にしたものから物語風のものなど様々だが、どの作品にも三浦哲郎作品に今までも登場した要素が散りばめられている。山麓の小屋、座敷童、中るなど、半生のなかで触れてきたものがちゃんと作者の一部になっているのだとおもった。三浦哲郎だから書ける山麓の小屋だし、座敷童であると。
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  • 結婚
    結婚、乳房、蜂、泉、聖夜、野の声。読んだことあるのが2篇。蜂、泉。
    結婚と乳房がすごく好きだったなあ。
    とくに乳房は三浦哲郎の短編のなかでもすごく好きなほう。すごい。
    野の声は三浦の小説ではじめて長いなと思って心折れそうになった。主人公が沖縄の人だったからかしら。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    三浦哲郎の描く児童文学。

    いままで読んだ彼の作品とちがうと思ったのは、喩えの言葉のセレクトで、いくつか目に付いた。

    p41 ぼくは、ちょうど閉店時間を迎えた銀行の玄関の自動シャッターのように、どうしようもない重たさで垂れさがってくる瞼を支えようとしながら、心のなかでそう叫んだ。

    またぼくは主要...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    東京育ちの少年・勇太は、父を事故で亡くし、母に連れられ東北の山あいにある湯ノ花村に移ってきた。村の子供たちになかなか馴染めず退屈な毎日を送っていたが、ひょんなことから不思議な座敷わらしたちと出会った。彼らとの交友のなかで、いつか勇太はたくましい少年へと成長していく――。

    息子が保育園の卒園式で「...続きを読む
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    昭和の香りのする短編集。
    一つ一つ、短いながらも登場人物たちの人生の一端が精緻に描かれることで、それ以前、それ以降に思いを馳せることができる。

    昼食時の読み聞かせ放送にどうかな…と思ったのだが、中1~中3、900人以上いる生徒に向けてとなると、情景を思い浮かべられる生徒がどれくらいいるか、難しいか...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    父親を不慮の事故で失い、母とともに東北の田舎に引っ越してきたの勇太。村の子どもたちにはモヤシっこといじめられ友達もいなく、日々眠気と戦う日々だった。

    母が働く旅館で薪わりを担当するおじいさんに座敷童の話を聞き、彼らに会うため旅館の離れで一人眠ることにした勇太。彼のもとに現れたのは?

    ユタと呼ばれ...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    父をなくした勇太が引っ越してきたさきで座敷わらしと出会う。勇太にもだんだん仲間ができ、成長していく。

    C0193
  • ユタとふしぎな仲間たち
    ネタバレ かな?
    少年の成長物語。日本の過去の飢餓によって亡くなった幼い命への愛しさ、哀しみ、鎮魂、供養を織り込んで描いている。作者三浦哲郎自身の、母親が産むか否かで迷った経験に基づいているそうだ。
  • 忍ぶ川
    「忍川」は出会い、交際し、結婚する過程を、未来へ向いた晴れやかな青春の一時が、対比して暗く引きずる過去を押し流しつつ描かれている。両親からも祝福されて幸せな気分を共感できる。深川の風景や夜行電車での情景描写もよいですね。その後の続編で暗い過去を浮き彫りにして、全編読後感は少し陰鬱なものになってしまう...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    三浦哲郎の本をどんどん読みたくて。
    舞台で内容は知っていたけど、原作での座敷わらしは9人もいたとは!
    座敷わらしが愛しい。
    もっと彼ら一人ひとりの物語を読みたいと思ってしまう。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    東京から東北の村へ転向してきたユタ(勇太)は周囲になじめず他の子供たちからはモヤシと呼ばれていた。
    そんなユタに旅館で働く寅吉じいさんは満月の晩に大黒柱のある部屋に一人で泊まると座敷わらしと出会えると話すのだった。
    ユタが意を決してその部屋に泊まると・・・。

    先日行ってきた金田一温泉を舞台にした三...続きを読む
  • 忍ぶ川
    テーマは暗いのに、人間の強さを感じさせる短編小説群であった。日々の生活の厳しさに家族で向かい合いながら、一方で、自殺してしまった家族の存在が負い目となる。豊かさの中で、共同体や家族の崩壊が進んでいる二十一世紀の日本との違いが際立っていた。
  • 木馬の騎手
    「接吻」「厄落し」「初秋」「遠出」「出刃」が気に入った。
    面白くない話が一つもない。
    こんな短編集滅多にない。
    出会えて感謝。
  • ふなうた 短篇集モザイクII
    18話からなる短編集。
    短い話がばかりだけど、深みを感じる。ときに落とし穴に突き落とされたような気持ちにさえなる。
    多種多様なの人生の一部が切り取られていて、まったく飽きがこない。

    「みのむし」は哀しい衝撃で、「メダカ」は予想外の衝撃だった。どちらも恐ろしい。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    勇太(ユタ)は父を事故で亡くし、母と二人東北の山間の村に越してきました。
    彼は東京もんとしてなかなか受け入れて貰えず、寂しい日々を送っていました。
    そんな時仲良しの釜焚きの寅吉爺さんから、座敷童の話を聞き母の働く宿の一室に一人で泊まる事にしました。
    すると座敷童のペドロ達が現れ、彼を仲間として受け入...続きを読む
  • 忍ぶ川
    表題作は、芥川賞受賞作。
    明治から昭和戦前までの古臭い空気をまとった様な作風だが、本作はそれがしっくりとして良い。メロドラマっぽくもある。
    「初夜」なんかも、続作に当たるのだと思うが、とても良かった。ただ、それまでで、他の短編は、「忍ぶ川」に散りばめられた要素を主題に書き下ろしたためか、味気無いとい...続きを読む
  • ユタとふしぎな仲間たち
    死に縁どられた、あたたかいファンタジー。
    お父さんが海難事故で死んだという設定は、ああ、三浦作品だな、と思ってしまう。

    お寺の鐘の乗り合いバスとか、エンツコのエレベーターとか、子どものころ読んだら、きっとわくわくしただろう。

    悲しさとおかしさが、絶妙なバランスでまじりあっているのも、この作品なら...続きを読む
  • 忍ぶ川
    7つの短編集。6つは連作、でいいのかな。

    『忍ぶ川』数奇な運命の6人の兄弟姉妹の末っ子が
    ある女性と付き合って結婚するまで。
    結婚式での両親がとても嬉しそうで微笑ましい。
    連作はその後の生活と過去を綴ったもの。
    昭和のつつましく暮らしている夫婦が清々しい。

    『白夜を旅する人々』(1985年)を以...続きを読む
  • 白夜を旅する人々
    短編を一通り読んでから、この長編を読んだので、じわじわとくる死と閉塞感がより強く味わえたような気がした。

    もう一度、短編を振り返り、この長編の断片を思い出したい。
  • おふくろの夜回り
    丁寧に、丁寧に、短い文章、他愛もない日常のことが綴られていて、おそらく自分の身の周りでも起こっているであろうに、こうして読まないと気がつかない。
    幼い頃、今を大切に思い、これからをゆったりとした目で見ていきたいと思う。