三浦哲郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【本の内容】
貧窮の中に結ばれた夫婦の愛を高らかにうたって芥川賞受賞の表題作ほか「初夜」「帰郷」「団欒」「恥の譜」「幻燈画集」「驢馬」を収める。
[ 目次 ]
[ POP ]
8月末、79歳で死去した作家の三浦哲郎さんには伝説がある。
30年ほど前、小説の原稿を編集者がなくしてしまい、再度書いた。
間もなくして元の原稿が出てきて、編集者が照らし合わせたところ一字一句同じだった――。
真相は、書き直す直前、元の原稿は見つかっていた。
クビを切られることを覚悟して謝りにいった編集者に、「見つかったのは残念。句読点すら同じに復元する自信もあったのになあ」と語った三浦さんの言葉が誤伝されたらしい。
とはいえ、伝説には説得力があった。
「小説は文章」と思い定め、とことん推敲する短編の達人だったからだ。
妻との出会いから結婚までを描いた初期代表作「忍ぶ川」も文章が端正で、〈読むたびに心の中を清冽な水が流れるような甘美な流露感をたたえた名作〉である。
1988年の「文芸春秋3月号」に発表された読者アンケート「思い出に残る芥川賞作品」では、「太陽の季節」に次ぐ第2位。
新潮文庫は86刷162万3000部のロングセラーになっている。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ネタバレ2012年のセンター試験の追試問題で「メリー・ゴー・ラウンド」に出会いました。
その話の悲しさに驚き、思わず周囲の友達に読ませたのを覚えています。
特にそういった描写がないのにぞっとさせられる文章に出会ったのは、小野不由美の「くらのかみ」以来です。
こちらの文章のほうがより洗練されている気もしますが。。
この短編集の中では、メリー・ゴー・ラウンドの次に「睡蓮」が好きです。
真っ暗な背景に、足まで泥に使った子供と、ぽっかり浮かぶ睡蓮の花。そのような情景がありありと思い浮かび、背筋が寒くなります。
子供の無邪気さ故の恐ろしさが丁寧にかつ簡潔に書かれています。
ただかわいいだけの存在ではなく、何をしでかすかわからない未知の存在であることを認識させられます。
他の話も胸を締め付けられるものばかりです。
短編ですぐ読めるので是非他の人にも読んでほしいですね。
特に中身のない小説ばかりを読んでいる人には是非。小説とはこういうものだと思ってほしいです。 -
Posted by ブクログ
昨年(2010年)逝去された三浦さんの長編小説です。自伝的小説のようです。 昨年の夏頃にそれまで病気がちだった三浦さんが創作への意欲を見せ書きたいと思っている題材について語っている記事を読んだのをきっかけにそれまで手にとってみたことのない、三浦さんの小説を読んでみようと思ったのでした。それがこの小説です。 しかし、その創作への思いも叶わず昨年のうちに逝去されたのでした。 本の帯には”読者リクエスト多数につき緊急復刊”とあります。 平成元年が初版なので今回の増刷がなかったら、確かに本屋さんで探してもみつからないものなのでした。
時代は昭和の初め、青森を舞台にして呉服店を営む山科家が背負った宿命を 追っていきます。その家には男の子が3人、女の子も3人、6人いるのですが長女と三女には色素欠乏の白子といわれる先天性の疾患がありました。何万人にひとりという確率の病気が一家に二人も出現したことが、裕福な一家の営みに少しずつ影を落としていきます。 年頃になり優等生だった次女にまずその矛先が向かい、総領の長男、そして先天性の疾患を持った長女が呑みこまれていきます。 東北の農村地帯に有る言い伝え、座敷堂子(わらし)が出ていった家はやがて没落する・・・それがこの小説を象徴しています。 年頃になった長女、二女に、自分たちが持つ血への不安と苦悩におののく夜「暮れるでもなく暮れぬでもなく、眠れるでもなく眠れぬでもない、寝苦しくて覚めぎわの白々しい夜」・・が訪れるのでした。 自殺、失踪と姉や兄が起こした暗い過去への旅路、作家三浦哲郎の創作の 原点といえるのでしょう。それにしてもこれほどの事を小説に仕上げてしまうのですから、作家とは因果な職業です。 三浦さんはその記事で確か、高齢の独り暮らしのお姉さんが最近亡くなった時の様子を万感の思いで述べていました。 姉は翌日食べるご飯を炊飯器に用意していた・・その姉の生き方を書いてみたいと創作への意欲を触発されたようなのでした。 これを読んで白夜の旅を終えた後にはどんな生き方があったのだろう・・と とても期待が膨らんだ題材だっただけに、本当に三浦さんの急逝は惜しまれました。 ご冥福をお祈り致します。 -
Posted by ブクログ
三浦哲郎の小説を読みました。主人公は小学校の6年生のユタこと勇太です。 東北地方でも北にある山間の村に転校してきたばかりでまだその土地になじめません。そのため、友だちもできず退屈で寂しい思いをしています。 村の温泉宿、銀林荘で風呂焚き用の薪割りをしている寅吉じいさんに悩みを打ち明けると、寅吉じいさんは思いがけないことをユタに告げます」。 座敷わらしに仲間になってもらえというのです。座敷わらしを知らないユタでしたが妖怪だと説明されると、いると信じて会いたくなったのでした。お母さんに意気地なしだと思われているので、それを利用して胆だめしだといって満月の夜にひとりで銀林荘のはなれに行ってみると・・・ ユタと9人の座敷わらしたちとの短い間ながらの心温まる交流の物語です。 座敷わらしたちの生い立ちに隠された歴史的な悲話もあるのですが、座敷わらしたちはみんな何となくユーモラスで愛すべきキャラクターとして書かれているので実際に会いたくなりました。 40年くらい前に上梓された作品ですが、今も上演されたりしているようなので児童文学には古いとか新しいとかの概念はあんまりないのかもしれません