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あの栞というのは、下の方に髪の毛の赤い子供が蹲ってなにかしている絵のついた栞のことだが(いまになってみると、それがにんじんのスケッチだということがわかる)、その栞が忘れられないのは、余白のところに、ペンでこんな文句が書いてあったからである。家庭は愛し愛される者だけで作れぬものであらうか。
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Posted by ブクログ
さて、これを「小説」とカテゴライズしたが、果たしてふさわしかったか。 昨年夏に急逝するまで「群像」に連載されていた、痛風の痛みに悩む老いた夫とその妻のやり取りを書いた表題作(無論未完)と、表題作のヒントにしたと思われるメモ「老いてゆく自分に好奇心を。」、「文学的自叙伝」はその名の通り著者の半生記で...続きを読む、こちらは40年ほど前に書かれたもの、著者が師事した井伏鱒二について書かれた3編「亡き師を偲びつつ」「好悪をこえるもの」「鱒二論語のことなど」(いずれも20年から10年ほど前の、おそらく井伏氏の文庫作品に寄せた解説と思われる)、合計6編が収録されている。 恥ずかしながら三浦氏の本は初めて読んだのだが、最後の私小説家と呼ばれるほど(三浦氏は、その表現を良しとしなかったようだが)、彼の書くものは自伝的要素が多いらしい。 何と表現するのがふさわしいか、自分の語彙の乏しさに哀しくなるが、近頃の新進作家たちとは趣の全く異なる味わい深い文章が何ともいえず心地よく、新鮮な感動を覚えた。 特に「文学的自叙伝」が素晴らしく、全文を書き写したい衝動に駆られたほど。しばらく三浦作品を読み漁ってしまいそうだ。 著者が師事した井伏鱒二、影響を受けたと言われた太宰、上林暁など、ほんの数作しか読んだことがなかったが、これを機に手にしてみよう。 村次郎氏の四行詩もすごく気になる。 ところで「文学的自叙伝」の中で触れられている、大学を中退して郷里で教師をしていた時、教え子が三浦氏の書いた手本作文をそのままコンクールに出して入賞してしまったその作品、もう見つけることは出来ないのでしょうか。 実は三浦氏のデビュー前の作品だったとわかったら、価値が出たに違いないのに。もう氏の新しい作品は読めませんからね。
兄弟のほとんどが失踪したり自殺をしてしまっているこの著者だからこそ描ける死生観が詰まっています。 自分の中に流れる血や、老いや病気により自由にならない肉体を抱えているからこそ見える日常の風景がコミカルで悲しいです。 決して手に汗握る読み物ではないけれど僕はこの種の少し暗い話も好きです。
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