奥田亜希子のレビュー一覧
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同じ「白野真澄」という名前の、それぞれ全く違う境遇の主人公たちが送る日常を描く短編集。(全5編)
姓名判断ってあるけど、結局人生は「その人」でしかない。
同姓同名なら、性格も考えも能力も同じかと言われたら…
そうではないですよね。
なんなら、性別まで違う場合もある。
この「白野真澄」さん、この作品にピッタリのお名前ですよね。
中性的だし、かなり珍しいタイプのお名前でもない。
結局、名前はある種の記号みたいだなと思えて、肩の力が抜けるようでした。
(決して軽く捉えてるわけではないです!
我が子が生まれた時も、願いを込めて大事に名付けました。)
大きな事でも小さな事でも、自分で選択肢から選ぶのが人生。
でも、本書で一番響いたのは『選ばないことを選べばいい』という言葉。
「あ、そっか」なんだかストンと自分の中に落ちてきました。
「絶対に何か1つを選ばないとダメって、案外多くないのかもしれない」と考えたら、ちょっと気持ちが軽くなる。
そんな短編集でした。 -
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冒頭「理想のいれもの」では、悪阻に苦しむ主人公が登場する。
マタニティマークをつけることで、疎んじる敵よりも、ふと労ってくれる味方が圧倒的に増えた。
「でも、その世界に自分がいないような気がするのはなぜだろう」
理想のいれものになろうとして、なれないのは自分だと、目が覚めるような思いをすることがある。
以前に単行本版『魔法がとけたあとも』を読んでいて、ふと、なぜ改題されたのだろう?と思った。
そこに触れてくれていたのが、解説の瀧井朝世さんで、ちょっとビックリした。
「魔法がとけたあとも人生は続く」と彼女が解釈したことにも、納得した。
単行本版では、最後の「キャッチボール•アット•リバーサイド」の衝撃が大きくて、読み終えたあと、そればかりが残っていたようだ。
タイトルが変わって、知らずに二周目を開始したとき、どの話も良くて、やっぱりあっという間に読み終えてしまった。
人と人との「ギスギス」を、重苦しく書かない、と言えばいいのか。
それが、読んでいる側にも自然と染み込んでくるくらいの、優しさを持って「ギスギス」を描いてくれていると言えばいいのか。
難しい。
きっと、読んで嫌な気持ちで終わらないのは、主人公たちが「ギスギス」しながらも、開いていこうとするからなのだと思う。
理想ではなく、現実の自分を見据えて。 -
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オミクロンにかかり、暇すぎてひたすら小説を読んでいる。
この本は自分の境地と似ている部分があって面白かった。
僕も恋愛経験が多いわけでもなく、性格的にもとても難しい人間だ。
だから、主人公の早希子がいう「特定の誰かと付き合えないんじゃないか?」というフレーズは何度も頭の中を巡っている。少なくとも、早希子は合コンでたくさん出会いの機会があるだけマシなのではないかとさえ思う。
ただ、この本の中にある「不一致」というキーワードはとても参考になった。
どうしても人と話したり関係を築く時に、共通点や何か自分と似ている部分を探してしまい、その一致具合で親近感を覚えてしまう。けど、逆に「不一致」が心地よかったり、愛おしさが芽生えたりするなら、それが本当に通い合っているのではないかとも思う。
すごく新鮮な感覚だった。あとは、この文庫の解説がとてもわかりやすく、要点を捉えてて面白かった。良い本でした。
自分に自信がなかったり、迷いがある人は読んでみると良いかもしれません。 -
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「リバース&リバース」を読んでから、同一作者の作品をもっと読みたいと思って買ってみた。
この本も面白かった。基本的に奥田亜希子さんの作品はものすごく考えさせられるから好きだ。
たしかに、学生時代に「セックス」はジョーカー的役割を果たしていたし、それに憧れていたのは間違いない。けど、それだけを目的に付き合いをしようとしていただけで、本当に愛情があったかどうかと聞かれると、自信を持って答えられない。
「本当の愛って片想いなのかもね」というフレーズがこの本の中にもあったが、たしかに実らない恋が1番純粋で愛情深いものなのかなと思った。実際僕は自分が一目惚れしたり、自分から告白した人は付き合えたことがないですけど、その人達は本当に好きでした。
男性は特に読むべき小説だと思います。ちゃんと女性を愛し、性行為だけじゃなく、日常の小さなことを楽しめる人間になろうと思いました。そしてそういった小さなことを一緒に楽しめる人をパートナーにします。 -
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同世代だなぁーって。そうそう、消しゴムの交換とか、ウサギのお世話とか、SPEEDとか酒鬼薔薇聖斗とか、三木道三とか全部同じ時代に生きたので思わず唸るほど懐かしい。そして現代のポケモンGO。。わたしもハマったから、ここに飛んだかって。
本当に思ったよりも友達って選べない。いつの間にか友達になってるしなくなってる。失う方が多かったような気もするし、意外なあの人とまだ繋がってるってことも多い。
ウソの香り、さぞかし香ばしいんだろな。しんどいだろうな。
人付き合いの難しさをすごく丁寧に描いていて読んでいて苦しくなりながらもわたしは大好きでした。 -
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奥田亜希子さんの新刊に飛びつく。
ややネタバレ含むので、注意。
小学生時代から、章を追う毎に大人になってゆく愛衣は、他人が嘘をつくと、匂いで分かってしまう不思議な感覚を持っている。
そして、そんな感覚があるからこそ、友達という関係性に怯えてしまう。
小学生の愛衣が、憧れの女の子に合わせるために、嘘をついて、自ら匂いを発してしまうシーンは、読んでいて本当に辛くなった。
結局、その女の子には嘘がばれてしまい、そんな子とは友達になれない、とハッキリ断られてしまう。
愛衣のこの体験は、中学生になっても尾を引く。
でも、愛衣がしたことは、すごくよく分かる。
この頃、誰かと一緒にいるという事実は、とても貴重な意味を持っていたように思う。
今なら、そっと距離を置いたり、はたまた表面的に付き合っていけただろうという友達も、当時は従って離れないようにするしかない存在だった。
それは、クラスとか近所っていう、狭いコミュニティしか知らない頃だったからかもしれない。
同じクラスの数十人、家が近い数人、その中で確実な友達を見つけるなんて、今思えば無謀だよなー。
高校、大学になって愛衣の領域は広がっていく。
と同時にこの作品の年代設定も、ケータイの登場、ブログの普及、スマトラ沖大震災、ポケモンGOと平成の初めから終わりに向けて進んでいく。
母親になった愛衣が、娘に対して、友達について言葉にするラストシーンは、中学の時から随分成長していて、すごく良い。
友達になることばかり、慎重に試みてきた彼女が、友達であることに目を向けたんだなと思う。
レビューにすると、ストーリーを追ってしまっただけのように思うのだけど、描写がすごく上手い。
読んでいて、誰かとのズレを感じたときの、ザラっとした感じとか。ひゅうと温度が下がる感じとか。そういう、自分が味わってきた、あの距離感を、すごく的確に表している。
「テスト用紙のドッグイア」なんて秀逸な章タイトル、忘れられないわー。 -
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ネタバレ熱中して読んでしまって、一瞬で読み終わった。
とてもホッコリする話。
昔好きだった人を引きずってる系ね、と思わせてそれとは違う。一概には言えないけど、死んでしまった恋人とか死んでしまった好きな人っていうのは安易じゃないかという捻くれ心がありまして。死んだ途端に誰も敵わないもん。けど本当の死じゃなく表現しているところに好感を持てた。
誰しも?少なくとも私はものすごく好きだった人がいるけど、たぶんまたその人と会ってもたしかに好きじゃないだろうなと思う部分はある。私のこと好きだったその人が好きだったから、もう私のこと好きじゃないその人は好きではない。。自己愛もあるけど。愛されてる自分が好きだった。
まぁそんなのはどうでもよく、こちらは良き作品でした! -
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奥田亜希子に、相変わらず揺さぶられてる!
ティーン雑誌「Can•Day!」にある、お悩み相談室こと〈ハートの相談室〉の回答者「ろく兄」のパートと。
「Can•Day!」の読者である中学生の女の子、郁美のパートが交互に展開されていく。
二つのパートがどんな風に重なるかというのは、まぁ読んでのお楽しみなのですが。
個人的には、雑誌のお悩み相談室という存在と、時間感覚という組み合わせが秀逸だと思う。
こういう文通募集とか雑誌の投稿欄って、どんどんインターネット、つまりオンラインに換わっていっているわけだけど。(もはや文通は死語?)
本当に、即時即答が良いのかっていう疑問を提示してくれている。
「手紙なら、ものすごい力で一方向に流れていく時間に、少しだけ逆らえるような気がするんです」
この台詞、良いなぁって思って。
タイムラグがあって、届くこと、返ってくること。
それまでの時間、モヤモヤしたりもするんだけど、反対に整うものも、多分あって。
ついつい、直ぐに見てほしい、返してほしいって思いがちなのだけど。
そういう、時間がかかるから、間があるから、ストンと落ちたことや分かったことって、素敵だと思う。
それと、ろく兄にとって悩みに回答することが「いつかの自分への罪滅ぼし」になっていることの意味も、よく分かる。
あの時は傷つけてしまったこと、を、今度は救いに変えたいという思いは、自分勝手なのだけど。
償うことは自分への祈りでもあると思うから。
解説の朝井リョウさんの奥田亜希子レポ(笑)も、すごく的確で面白いので、ハードカバーで読んだ人も、解説読んでみて欲しいです。 -
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他の誰かと関係を持つときは誰もがその人の虚像を創り上げてしまう
どれだけ親密にしていたり濃密に情報を共有しても、その人の本質的な部分に触れることは難しい
ましてや、その人が観て聴いて味わって感じたことなんてその人にしか分からない。
人は誰しもが孤独である。
そのジレンマの狭間で繋がり、踠き、苦しんで、生きていて、何も考えずに生きている人はそんなジレンマにも気付かないけど、早希子や吉住くんはそんな構図にいることを気付いてしまっているから、本当に辛い。
孤独ぶって自分のことしか考えてない、周りの人は傷ついていると言われても、たぶんきっと一番傷ついてるのはその本人で、お気楽で一人で過ごしているわけではないと思う。
孤独を越えて繋がるのもしんどいし、孤独でいるのもしんどい。 -
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中学3年の基哉が、大学生になって変わった兄や両親、友人、好きな女の子、そしてBBQで知り合ったAV出演経験のある女子大学生との関係の中で成長していく青春物語。
性体験の有無がクラスのヒエラルキーを逆転するジョーカーなんだという表現は面白い。親の職業、年収、身長、体型、容姿、学力、運動神経等、人生は手持ちのカードがどれだけ豪華かによって大きく異なってくる。後から増やせるカードもあったりして、それらの使い方で異性からどれだけ受け入れられるかが決まる。ただし、そのカードだけでは決まらないところも人生の面白いところ。つらいところでもある。
猫の去勢手術と絡めて、使えないのにこんなもの(性欲)持っている方がつらいという中学生の思いはなんか懐かしい。でもこんなものがあるから満たされる瞬間もあるし、夜に出回る様々な物語に深みが増すということだ。
この作者の違う本も読んでみたくなった。