奥田亜希子のレビュー一覧
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思春期の性への認識の物語
まず、本作は語り口に劣等感がにじんでいて、共感性羞恥がすごい。自己評価が低く冴えない基哉が、クラスのカースト上位の生徒にバカにされるシーンは見ていてつらい。さらに、大学デビューを果たしたと思われていた基哉の兄が、サークルで下っ端扱いされていることにショックを受けるシーンでは、基哉自身も居たたまれなさに押し潰されそうになる。その他にも、思春期特有の劣等感や優越感がリアルに描かれており、他人と比較して自分を保とうとする少年たちの歪さが痛々しい。
そして、本作の中心となるテーマは性だ。性的な話で盛り上がる大学生。そういったものを嫌悪しながらも興味を捨てきれない中学生。大人も子どもも、性やセックスに振り回される。
経験値の差が大きい思春期の子どもは、それが友人関係にまで影響を及ぼす。これらがリアルな中学生の心理で描かれていてビターな読み応えがある。(なお、男子校出身の身としては、この共学特有の距離感や空気感に対する未知の驚きもあったが)
また、本作は動物愛護をテーマとした側面もある。獣医である基哉の両親や保護団体の知人の影響で、基哉は犬猫の飼育について明るい。飼育放棄や去勢の選択などについても語られる。性は生殖や生命のあり方に通じていることを改めて実感させてくれる。 -
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ネタバレ3年以上前に買った積読本で、自分でもどんな内容の本を買ったかを完全に忘れていて、タイトルから承認欲求が満たされない強欲な人の物語かなと思っていたけど、違った。
自分の中で、こうであってくれと願う形を後押ししてほしい、他の人の良い評価によって自分の想いに輪郭を持たせたい、自信を持ちたい、揺らいでる気持ちを支えて欲しいみたいなどことなく孤独感を纏った物語だったように感じる。
最初の章、キャンディ・イン・ポケット。
自分を日陰の人間だと認識する女子高生沙耶、沙耶からすると雲の上の人間だけども通学の電車だけちょうど空いているから一緒に行ってくれる人気者の子。
自分があたかも下かのように感じ腰が低くて遠慮げに振る舞うけれども、沙耶には表出させるまいとしてる独占欲もある。
卒業時にあることがきっかけで沙耶が思ってた2人の関係性ではないことを知り、自責の念に駆られると共に友情を知る。 -
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大人の部活(趣味)は楽しい!
でも楽しいだけではない。それぞれの事情や時には出来ない自分と向き合う事もある。それでも好きだから皆自分の時間を遣り繰りしてやっている。年齢、職業関係なく趣味の話しが出来る仲間はやっぱり得難い。
仕事や子育て等日々の生活は慌ただしい。気分転換や、自分の心をリセットする時間は心の潤いには大切な時間だ。趣味があるから頑張れるし、行かせてくれる家族にも感謝する。
子供の「やってみたい!」はどんどん出て来て移り変わるけど、郁登みたいにいつか再び始めるきっかけになる種だと思えばそれもまたよし。
子供が小さい頃は、子育てとは私を滅する事を知る事か…と思う時もあったけど、だんだん子供は大きくなって趣味を頑張ってる親を応援してくれるようになった。
私が〈いま〉を〈はる〉にする。
序歌を改めて味わうととても力をもらえる良い歌ですね。 -
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高校のときに書いた小説で新人賞を獲得し、出版までこぎつけた美緒。それから6年、小説を書くことが出来ず、まったく売れない自分の本が本屋に置かれているのを見届けるのが習慣になっていた。そんなある日、若い青年が美緒の本を購入した。彼をつけていくとあるマンションにたどり着いた。それから遠回りで彼に接触していく…。
本を買ってくれた青年のことを調べ、おそらく自分のファンだろうと彼のためだけに書いた小説をポストに投函し、付き合っている女性経由で彼に接触する。
ほぼストーカーとして、かといって彼とどうにかなろうということもなく、日々淡々とアルバイトをこなしつつ、小説の書けない自分を変えようと全裸で生活してみたりする、ある意味、”痛い”女性を描く。
途中の大半の部分は、不器用な自分の生活と、春臣の天真爛漫な彼女いづみとの華やかな日々が描かれるので、あのストーカーみたいな話はなかったのかな?と錯覚してしまう。一方で、そんな関係はどこかで壊れてしまうのだろうと気がつくのだ。
不器用な女性、世間的な基準がこなせない女性という意味では『コンビニ人間』『ふくわらい』なんかも想起させるが、妙に希望が見える文章なのが、寂しさを助長している。
厚みよりは短めの小説で、前半は会話もなく閉塞感が伴って読みづらいかなと思いきや、そうでもない。
惜しむらくは、こんなライトノベルみたいなタイトルにしなくてよかったんじゃない?というところだけ。 -
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ネタバレ人に施しを与えること、それに対して見返りを求めること。
正しさとは何か、正しいことが正義なのか。
このあたりのテーマについて描かれていて、めちゃめちゃ面白かった!!
SNSの普及によって正しくない人が詳らかにされ、糾弾されるような世の中になった。みんなが相互に正しくない人がいないか目を光らせているようで、非常に窮屈さを感じる今日この頃。
私もかつては愛奈のような真面目ちゃんタイプの人間だったのだが、社会人になってかなり変わった。
どこまでだったらリスクを許容できるのか考えながら、一定のリスクを飲んでグレーを許容すること。
正しさだけを拠り所にして正しいもの以外は即拒絶するような姿勢は、人としてあまり評価されなさそうだし、とても生きにくいんじゃないかなぁと思う。
また、施しと見返りの話について。
施しをしてくれた人が見返りを期待することは正しいのか。
個人的にはお礼をするのは当たり前だと思いつつ、人によって温度感は違うし、それが生活に必要なものか、嗜好品なのかによっても判断が変わりそうだなぁと思う。
最終的に愛奈はかなりいろいろな人に物を与えまくっていた。
もちろんお金は有限なので、かなり危うい行動のように見える。
彼女なりの正しさを追究する過程なのかもしれないが、人に与え続ける日々の中で、彼女は何かに気づくことができるのだろうか。 -
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一穂ミチさん目当てで読み始めた一冊。
序盤は、読んでいる間はそれなりに気分が高揚して、まさにタイトル通り「ほろよい気分」にはさせてくれる。だけど、いざ読み終わってみると、あとに残る余韻があまりにもサラリとしすぎていて、どこか物足りなさが残る読後感だった。
お目当ての一穂ミチさんの一編を読み終えたときは、思わず「やったね!」と心の中で思った。やっぱりこの作家の描くものは毒薬だ!「ほろよい」どころか悪酔いしそうな、人間の不穏な心理描写は健在で、この強烈な一杯は楽しめた。
他にも、下戸だと言い出せない青年の葛藤を描いた一編には、男だからこそ「飲めない」と言えないリアルな空気感を感じて、身につまされるところもあり、そこまでは良かったのだが……。
後半に進むにつれて、お酒そのものの捉え方に大きな疑問と物足りなさが募った。
感情を吐き出すためだけでなく、嬉しいとき、お祝いのとき、純粋にその味を楽しむときなど、お酒にはもっとポジティブなパワーがあるはず。本作はお酒自体を好むというより「料理」や「その場の人間関係」を際立たせるための引き立て役として扱われている印象が強すぎる。
女性作家陣によるアンソロジーということもあってか、お酒そのもののこだわりや深い味わいをじっくり描くよりは、シチュエーションや食とのペアリングに全振りの世界観。お酒そのものが主役の描写を期待していた身としては、少しがっかりさせられた。
一穂ミチさんの“毒”は味わえたものの、お酒好きとしては深みや余韻がもう少し欲しかったな、と感じてしまう一冊だった。 -
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「いきたくない」
そう思っちゃダメなのかな。
自分は不出来なのかな。
そんな気持ちがなんだか浄化された1冊。
ピンポンツリースポンジ。ロボットと心。対極にあるものだと思ってたけど、実は違うのかも。ロボットが抱く気持ち。ほんとはあるのかも、と思うと、不思議な感覚となんだか心があったかくなる感じがした。
シャイセ。日常の少しずつのストレスは、まわりの人が包んでくれる感覚で緩和されてて、その感覚がなくなった瞬間、耐えられなくなる感じ。すごーく沁みる。「いきたくない」って当然だよ、のシャイセの言葉に救われた。
週末のアクアリウム。普通と普通じゃないの、境目。平常心と狂気の境目。人って、絶妙なバランスで立ってる。足元がグラグラする感じの怖さを感じました。 -
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力のある女性作家の皆さんが恋と食に関する小説とは、贅沢な本だった!
特に「ワタシノミカタ」と「SUMMER STREAMER」が良かった。「SUMMER STREAMER」では、70近い婦人が大ファンの大谷翔平さんのプレイを観たくて単身でアメリカに行く話。その中で、大谷選手はどんな人と結婚するのだろうかと。あれこれあげて、最後に一番悔しくない人は「彼の母親に似ている女性」とあり、まさしくその通りの女性と結婚していた。結婚発表より前に書かれた小説で見事言い当てていたので驚いた。大谷夫妻は素敵!嫌いと言う人はまずいないだろうな!
この本を通して、いろんな作家さんを知ったので、読書が広がりそうで嬉しい! -
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一章を読んで、不妊治療中の追い詰められメンタルあるあるの主人公にこちらも辛くなった。
夫は優しくて支えてくれて完璧だけど、あらすじからこの夫が間もなく消えることが分かっているからか、どことなく漂う不穏な空気。
他に好きな女性がいるのか?
単純に不妊治療にのめり込む妻に嫌気が差したのか?
ある日突然いなくなった夫に怒りを覚えた。
が、二章を読んで愕然とする。
夫、そんな感じだったの?
二章を読んでからまた一章を読み返したら、切なくなった。
三章はちょっと呆気なかったように感じた。
一章、二章、三章の途中まででかなり気持ちが盛り上がってしまったので、ラストもう一捻り何か欲しかったような気がする。
ただの読者のワガママだけど。
面白かったな。