奥田亜希子のレビュー一覧
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「身体の中で、人はみんな1人なんだよ。自分以外の人間が何をどう見ているかなんて、絶対に分からないし、寝返りをうちたくなったら、大事な人の手だって離してしまう。身体があるかぎり、人は一人ぼっちで、つまり、寂しいのは当たり前のことなんじゃないかって、最近僕は思う。」
こんなこじらせ哲学を語る吉住くんは、早希子の初恋相手。早希子はこの初恋が忘れられない。
初恋をいい思い出にできず「自分のことを分かってくれるのは吉住くんだけだ!」とか思っちゃう早希子も、こじらせ女子(笑)
ただこの作品は決して孤独に囚われた女の話でない。
この作品の1番の魅力は、
孤独という「価値観を共有できる人こそ真の理解者」だと思い続けてきた早希子が、
「自分とは考え方が根っから異なる」男性に出会い、惹かれていくところ。
とても可愛い恋愛小説でした。
でもわたしは、小学生でこんなこじらせた事をいっちゃう吉住くんがすき(笑)
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「家族」という言葉は、いつも重荷を感じる。
私は実母と折り合いが悪く、「母みたいなお母さんには絶対なりたくない」と言えるほど、母の存在はもはや立派な反面教師だ。
とはいえ肉親である限り、親子関係を切り捨てることはできない。そのせいで母が毎度電話をくれる度は応戦するが、終話後の疲労感はマラソン試合に出たほどしんどい。
親は子の心配をするのが当たり前。母親は自己犠牲は当たり前。この世の中の当たり前がたくさんあって、もしかして私も知らぬうちに「母親だからこうあるべきだ」というものを母に押し付けてしまったかもしれない。けれど、この世にたった一人の私のお母さんだから、他に比べようがない。
さて、「ファミリー・レス」は講談社ウェブマガジン「ミモレ」の編集部の @batayomu が、「真夜中の読書会、おしゃべりな図書室」というpodcastで紹介されて、購入した一冊。六つの短編が収録され、それぞれの家族風景を描いた連作。その中の家族たちは、ねじれた関係性も猟奇的なストーリーもなく、ごく普通(私にとっては)の家族風景だった。そんな家族風景はどれも愛おしくて、私のちぐはぐのような家族では生まれない、暖かく心に染みるような話に、ただただ羨ましかった。
それぞれの家庭に、それぞれの事情があるとは分かっていても、心底のどこかに「この家で生まれていなかったら」
考えたって仕方ない。そういえば一度友人から「読書は現実逃避ではなく、現実を向上させるという考えがあるよ。」と言って頂いた。あれから何度もこの言葉を咀嚼して考えていました。私は読書から、何を得てきたかについて。多分救いが欲しかったかもしれない。かつて少女の頃、無我夢中にほんの世界に浸って、ただただ現実から逃れたかったかもしれない。
現実を向上させるには、どうしたらいいだろう。
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人が嘘をつくと、匂いで敏感に察知してしまい、距離を置いてしまう。
そんな特質をもつ愛衣の、小学生時代から大人、そして母親になるまでの物語。
仲良くなりたくて嘘をついたこと。
デザインじゃなくてブランドを重視するようになること。
独りが嫌で”友人ごっこ”をすること。
友達になりたいけどなれない、遠い存在で憧れの女の子のこと。
ショッピングモールは「なかなかいけない夢の楽しい場所」から「遊ぶにはダサい場所」になること。
「学校以外の場所で会う友だち」という、宝石のような存在。
それぞれの世代での女の子の友情の「あるある」が描かれていて、それぞれに共感した。
「本物の友だち」を、幼い頃の私もずっと切望していた。
いや、大人になったはずの今もなお、求めている。
流行やニュースから、各時代がわかって、あの曲だとかあの事件のことだとかピンとくるのも楽しかった。
短編の中では、「ブラックシープの手触り」が好きだった。
この作者のほかの著書も読んでみたい。 -
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ここで日々星をつけている者にとっては、なんとも言えない気持ちになるタイトル。それだけに、刺さる部分の多い一冊でした。
なんといっても設定といい心理描写といい、絶妙かつそして鋭い。奥田亜希子さんの作品は初読でしたが、絶妙かつ鋭い今を切り取る感性と、それを生かした心理描写に感嘆した短編集です。
収録作品は6編。いずれもネットやSNSが話に関わってくる。そうした現在的なものを扱いつつ、そこから浮かび上がる人の普遍的な心理を鮮やかに描き切ります。
表題作『五つ星をつけてよ』は、ネットのレビューを読み込む女性が主人公。ある日自分の母の介護ヘルパーの悪い噂を耳にした彼女は……。
「五つ星をつけてよ」という感覚は自分にはよく理解できる。このサイトでもそうだけど自分がいいと思ったものが、ほかの人が低評価で、なおかつその低評価レビューにたくさん「いいね」がついてることがある。
『でも自分は面白かったから』と強がっても、心のモヤモヤは晴れない。
主人公は自分は好意を抱いているヘルパーさんの悪い評価を聞くにつけ、自分以外の誰かの物差し、肯定を求め「五つ星をつけてよ」と思うのだけど、身に覚えのある感情を場面を通して鮮やかに描いていて、非常に印象的だった。
他に印象的な短編だと多感な時期の少女を描いた2編『キャンディ・イン・ボックス』と『ウォーター・アンダー・ザ・ブリッジ』も良い。
高校の卒業式の日の女子高生の友情を描いた前者は、ある事実の隠し方と明かし方が上手く、そこから一気に彼女への共感の感覚が深くなる。
そして、語り手の少女が友人のある一面を知った時の感情の描き方の鮮やかさといい、青春小説として抜群に素晴らしい出来の作品。
後者の短編は、この時期特有の青臭さや、なんだか盛り上がってしまう感情と、それへのシニカルな描き方が好印象の短編。
上記三編は爽やかな印象が強い短編ですが、一方で苦みの残る後の三編も、それらとまったく遜色のない完成度。『ジャムの果て』で描かれる親子関係、「空に根ざして」の男女関係、そして『君に落ちる彗星』の閉塞感のあるそれぞれの人生の断片。
ネット、SNSと現代の道具を使い、今を生きる人の心理を鮮やかに切り取った、個人的に刺さるところの多い短編ばかりの一冊でした。 -
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主人公の神田早季子は都内の文具メーカーで仕事をしている26歳。小学校の同級生で大好きだった吉住君のことが忘れられずに、その時の刷り込みで孤独を抱えて生きています。他人に恋愛感情が持てずに、合コンで出会った男とその時だけの関係を結ぶこともあります。ある合コンの時に、吉住君と同じ片目を瞑る癖をもつ人の話が出て、紹介してもらいます。その同じ癖をもつ宮内は、女性アイドルを追っかける、早季子とは全く違う人でした。宮内と話をするために、福岡でのライブに同行し、なぜか度々アイドルイベントに同行するようになります。その度に、宮内と自分との違いを感じます。
早季子と3年間付き合った元カレは嫌なやつなので触れませんが、特に後半、甘くて幸せな感じが、心を満たしてくれます。 -
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ネタバレ04
めっっちゃすき。
誰もが持ってて、でも隠している暗いところを
ちくちくと攻撃してくる。
全部好きだけど、読み終わって二週間経ってもタイトルも内容も覚えているのは キャンディインマイポケット、ジャムの果て、五つ星をつけてよ。
高校生の時、自分よりレベルの高い友達と一緒にいると誇らしさと劣等感があるよね。でも対等じゃないって思ってるから、一歩引いたりしたよね。
ジャムの果てはもうつらい。つらいからこそ心にすごく残る。最後裸足でどこに行ったんだろうか。
五つ星をつけてよ はもーーわかるわかる!
これだけ情報も物も溢れる世界で、自分の評価に自信がなくなって失敗したくないからレビュー参考にして
そしたら自分の意見に自信がなくなっちゃった。
最後、自分自身の評価を下せてよかった。
20200116
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ネタバレどうしても行きたくないときだって、ある。を綴った6人の作家さんの物語。
内容紹介:誰に何を言われようと行きたくない場所もあれば、なんとなく気持ちがのらない朝だってある。 ふとしたきっかけでサボってしまうかもしれないし、人生を変えるような決意で回れ右をすることもあるかもしれない。 ひとはいつでも「行きたくない」気持ちを抱えている。 僕たちのそんな所在なさをそっと掬い上げる、刹那のきらめきを切り取った物語。
こちらの著書を購入したきっかけは、作家の一人の住野よるさんの作品が載っててそれで読んでみたいと思って購入したんですが、読んで見るとどの話も良かったです。特に心に残ったのが
阿川せんりさん・・・好き・嫌いどっち? 「あなたの好きな/わたしの嫌いなセカイ」
渡辺優さん・・・エラー?ロボットだって... 「ピンポンツリースポンジ」
小嶋陽太郎さん・・・人は見た目では。なんとなくホッ 「シャイセ」
住野よるさん・・・住野さんの空気が。幸せって... 「コンピレーション」
ほんとどれも良かったですが、やっぱり短くても住野さんワールドが一番良かった(^^) -
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奥田亜希子三冊目。
「プレパラートの瞬き」
幼い頃に母親に言われたのは、「否定的な言葉を口にするのは、自分の未来を自ら閉ざす」ということ。
それから希恵は、悪口を言わずに来た。
一方で、シェアハウスで共に住んでいる葉月さんは、朝から晩まで文句を言っているような人だ。
前向きに文句も言わずにやっていると、あの子はノリが悪いと言われ、飲み会に誘われない。
反面、あれやこれやと愚痴ばかり言うと、一緒にいても楽しくないと言われてしまう。
そんな正反対の二人が、お互いに救われる。
素直に、嬉しかった。
電車の中で、泣きそうになった。
悪い部分を、悪い部分とは思わない相手。
「私ね、鉄ちゃんと結婚できて、本当によかったと思ってるんだよ。私、愚痴とか、不満とかよく言うじゃない?すぐに怒るし」
「でも鉄ちゃんは、私のそういう話も楽しそうに聞いてくれるよね。出会ったときからずっと。だから私、会社では全然怒らないでいられるの。家に帰れば鉄ちゃんに聞いてもらえるって思うから」
続く、「指と筆が結ぶもの」の一台詞。
絵描きという、低収入のない婿を、彼女の親族は揃って批判する。
鉄平も親族や親戚付き合いを毛嫌いしていた。
その中で、彼女の祖父母宅に泊まることとなり、盲目の祖父だけが鉄平を受け止める。
キレイな部分さえ、汚してしまうような物語ばかりなのに、汚れていても、いいなあ、愛おしいなあと思わされてばかりだ。
他の話に出て来る離婚した後の娘とも、無愛想な同僚とも、実の娘のように可愛がってきた女の子とも、腹違いの弟とも、結局は分かり合えない。
いや、分かりきれない。
でも、そのザラっとした感じが、そりゃあそうだよなーと、すんなり思うのだ。
恐らく波長の合う作家さんと出会えて、しあわせ。 -
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初めて読んだ作家さんだけど、良かった。
ちょっと長くなるけど、お気に入りの話が沢山あるので、是非残したい。
冒頭「キャンディ・イン・ポケット」は、この短編集のモチーフになっているインターネットにまつわるアレコレこそ出てこないが、女の子同士の微妙な関係性に、グッと引き込まれた。
高嶺の花の女友達。
一緒に通学する、ただそれだけの関係が、卒業を機に終わってしまうことを沙耶は分かっていた。
憧れや恋心にも似た気持ちを秘め、卒業式を抜け出した沙耶は、椎子にあることを仕掛ける。
粘り気のある文章から、不穏な方に向かってしまうんじゃないかと、正直ハラハラした。
私は、関係を自分から続けていける根気のない人間だと思う。
だからこの時期の、たった一人に見捨てられることの怖さ、恋人が出来た友達への違和感、そして節目を迎えることの寂しさは、少し分かる気がする。
沙耶に光が当たって、良かった。
続いて「ジャムの果て」。
今度は、間違いなく不穏に突き進む。
夫に先立たれ、ジャム作りとブログ更新に励む母。
度々ジャムが送られて来る娘、息子夫婦は辟易して、離れて行ってしまう。
「家族」という形に囚われすぎて、見えていなかったそれぞれの心を、成人し、一人になった今になって突き付けられ、追い込まれてゆく。
結末の狂気が、上手い。
「五つ星をつけてよ」では、母を介護する娘からの視点が苦しい。
母の言うことや口コミを頼らなければ、信じて決断できずにきた彼女。
母を見てもらっている介護士に、実は虐待の噂があって……というあらすじ。
物がなくなった、怪我をした。
どちらの話が、本当か、嘘か、藪の中。
自分自身や、自分を作り上げてきた場所や人に、評価が下されることって、よく考えるとむごい。
モノにまつわる感情や人も、もはやモノと化して、評価されているんだよなぁ。
でも、今現在そんなシステムに浸っている自分がいて、再び傷付いてしまう。
「君に落ちる彗星」は、最後に相応しく、構成にゾワっとさせられます。
どの話も、短いけれど、ずしりと来る。
まだ、文庫化された作品は少ないけれど、他の作品にも手を出そうと決めた。
解説は彩瀬まるさん。ああ、なるほど!
彼女の作品が好きな方には、オススメしたい。