奥田亜希子のレビュー一覧
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「恋と食」 がテーマの、小説新潮に掲載された短編を収録したアンソロジー。甘やかで幸せなだけのお話が一編もなくて逆に楽しめた。
一穂ミチさんは、淡白な味を好む淡白そうに見えるカップルのまったく淡白ではない情念のお話。言われてみればポン酢ってしびしびしてるかも。
古内さんは、計算だけではないけど計算も働かざるを得ない大人の恋愛の話。旨味調味料はハマると駄目になる気がして避けて生きてます。
君嶋さんはこの中で最もオーソドックスな恋愛小説。キュンとします。
錦見さんの短編は語り手が料理上手なだけあって一番美味しそうな料理が登場した。不思議なお話で、恋愛だったの??という感想。
奥田さんは毒親を捨てる -
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「結婚も出産も幸せの保証にはならない」
なるほどそうかも、と思ってしまった。
大人の恋愛。一定の距離を置いていても、相手の事情に深く立ち入らなくても、付き合っているうちに関係は変わっていく。この変化は何かが新たに生まれたときから、どうしようもなく始まってしまうもの。
相手のことを知りたくなった時はもう恋に落ちているのかも。
「好きになった相手こそが、自分にぴったりの価値観を持ってるように勘違いするの。つまり、一等のくじを引くんじゃなくて、引いた紙くずが一等に見えるの」
上手い表現だなと思う。
普段、恋愛小説はあまり興味はなく、避けているぐらいだけど、この作品は妙にしっくりした感じ。 -
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ネタバレ高校教師と元生徒で、20歳年上の夫と結婚していた綾香。病死で夫を失い、一人娘は大学進学のため家を出た。未亡人といっても40歳、雑な恋愛をしたくてマッチングサイトを利用するが望み通りにはならず。偶然、店員と客として知り合った大地と付き合いはじめ、深く入り込まないをモットーに親しくなるが最後は一方的に綾香が大地に別れを突きつける。上下関係を作りたくないから、というあまり納得できない理由で。あまり好きになれない人が多かったが、娘の凪と友人のひかりちゃんの若く素直な感情が、すてきだった。
『ママ彼氏作ってもいいよ』から不機嫌になる様子。歳の差のある人との結婚について聞き『ぜんぜんわからへん』。
シング -
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『白野真澄はしょうがない』
奥田亜希子
著者の奥田亜希子さんは、1983年愛知県生まれ、愛知大学卒。2013年に『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞してデビューとあります。
タイトルや装丁の軽やかな印象から、軽い読み物として手に取りましたが。(いやいやいや。)久しぶりに新鮮な感覚を味わえました〜。特に最終話(表題作)に引き込まれました。(´ω`)
5話からなる短編集なんですが、主人公の名前は全て『白野真澄』です。年齢も性別も住まいも、全てが異なる5人の『白野真澄』のストーリー、興味が湧きますよね。(大矢博子さんの解説を読むと、また面白いですね。気付きがありますので、最後に解説を読ま -
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ネタバレこの本を読む前はね、
私は「使う派」でした。迷う余地なく。笑
だけど、そういうアイテムを介することで相手が見えなくなってしまうこともあるな、と、この作品を読んで思いました。
恋愛は特に、常に生身の人間同士のコミュニケーションだし、人のことなんて全て理解できるわけないので、だからこそ分かり合おうと言葉を尽くさねば、伝わるものも伝わらないですものね。
でも、そういう大事なことほどわかんなくなっちゃうんだよな〜!(自戒)
加藤千恵さんの解説に書いてあった、
「人の気持ちが、とうてい白黒つけられないものであることもまた、本作によって改めて気づかされた。気持ちはたいていグラデーションだ。」という一 -
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本作の求めよ、さらば(与えられん)というタイトルには、2つの意味が込められているように感じた。
1つは、実力・努力至上主義に対する疑念。
志織と夫の誠太は、不妊治療を進めるも子どもを授かれず、それでも妊娠にこだわる志織を見かねた誠太は離婚を考える。
志織には進学、就職と自身の努力で望むものを叶えてきたという自負がある。
パワースポット巡りや食事など、いわゆる妊活と呼ばれるものすべてを試すも妊娠には至らず、初めて自分の努力とは無関係に事が運ぶ様を見ることになる。
もう1つは、全力でものごとと向き合えば、少しの障害があっても優に乗り越えられるということ。
タイトルの原義は宗教的なもので、心の底か -