工藤美代子のレビュー一覧
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友人の先祖であるという山本五十六。その生涯を息子である義正氏を初めとする生証人の証言をもとに綴られた一冊。過去になされた批判や評価を再検討しているなど神格化されることが多い五十六を中立的な立場から考察している点など評価できる点は多い。ただ太平洋戦争以前でのエピソードは若干偏っているかなぁという印象。
五十六の人となりについて印象的だったのは、太平洋戦争開始後大本営が戦果について過大に報道し始めた時放った「人は真剣になると自然に口数が少なくなるものだ。・・・中略・・・国の中でも同じこと、報道など静かに真相を伝えればそれで十分だ。太鼓を叩いて浮き立たせる必要はない。・・・中略・・・与論指導とか国民の士気振作とか口はばったいことだ・・・。」という言葉。日本人の美学としては「勝って兜の緒を締めよ」であって過大に国民感情を刺激し始めたことは日本軍の陰りを象徴してたんだなぁと思う。 -
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朝ドラ「ばけばけ」、ヘブン先生のモデル小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの伝記。
日本滞在時だけじゃなく、ハーンの生涯を生まれから死ぬまで丁寧・簡潔に読みやすくまとめてうれています。
というのも、本書は30年ほど前に、NHKの番組「人間大学」の講師として著者がラフカディオ・ハーンを扱った際に作成したテキスト『ラフカディオ・ハーン 漂泊の魂』が、朝ドラに合わせて新たに文庫として出版されたものとのことなので、だらだらと長くはないのも納得です。
「ばけばけ」の主人公はあくまでも妻のトキ(小泉セツ)なのでヘブン先生がどういう人なのか、なかなか明かされない。ドラマでも少しずつヘブン先生(ハーン)の過去や生い立ちが明かされそうですが、きになる人は本書で先取りすると、よりドラマも楽しめるでしょう。
正直、小泉八雲のことは名前ぐらいしか知らなかったのだが、そのあまり幸せではない生いたちや、アイルランドからアメリカへの渡航、各地を「漂泊」しながら、近代化に突き進む明治中期の日本にたどり着き、失われつつある日本文化に関する数々の作品を残して日本で54歳で亡くなった、その人となりを少し身近に感じられた気がする。 -
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『大山倍達との日々』真樹日佐夫(著)に次の様な記載がある。-- 笹川良一全空連会長が直接大山倍達に会って説得したいとのことで、会合の場として料亭を指定した。
技術部長として大山を遇する用意がある、といった話が持ち出され、1億円を提供するという話ががあった。大山は「
講道館と武徳会の2つがあった頃、日本柔道が一番レベルアップしたのと同じ様に、空手の世界に於いても、幾つかの流派が存続し合った方がプラスであろうと----」と答えたと。
笹川は「この話はこれまでだ。お互い裃は脱ぎ捨てようではないか」と応じたと。---
笹川良一という人間について、あまり知らなかったので読んでみたが、いゃー傑物であり、とてつもなく度量の広い人間であると分かった。特に第二次大戦後、巣鴨プリズンで東条英機に天皇処刑の防壁となるように、また自衛戦争であると主張しろと諭したり。A級、B級、C級戦犯の刑死、獄死した人達への慰霊・法要・遺族への生活支援に邁進していったそうだ。戦前・戦後とも一貫した姿勢は賞賛に値すると思う。
「戦争中は戦死者を始め遺家族は勿論将兵を優遇し、戦いすめば冷遇する。ーこれは即ち忘恩の徒である。死んだ人には特にそれは怪しからん。敗戦国日本も慰霊祭を盛大にやれ。なんの気兼ねがいるか」(P303) -
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「何か言う人がいるのなら、記者会見でも文書発表でもして
やるから行って来なさい」
東日本大震災の年の5月。オックスフォード大学での学位
授与式への出席を躊躇していた彬子女王殿下の背中を押した
のは、父上である「ヒゲの殿下」こと寛仁親王殿下だった。
この時の父上の言葉が、涙が出るほど嬉しかったと彬子女王
殿下が語っているのを読んで、もらい泣きしそうになった。
私が長老殿下と呼ぶ、三笠宮崇仁親王殿下の長男・寛仁親王
殿下は平成24年6月6日にご逝去された。
生前の寛仁親王殿下と親交のあった著者による追悼エッセイ
が本書である。提灯持ち評伝ばかり書いている著者なので
二の足を踏んでいたのだが、ご逝去後にトモさんのことを
記した作品って本書くらいしかないので読んでみた。
「名誉職は嫌だ」と札幌オリンピックでは本当に事務局で
事務員として働いたり、ラジオの深夜放送のDJをやったり、
アルコール依存症であることを公表したりと、私たち庶民が
抱く皇族像を打ち破ってくれたトモさんのエピソード満載。
だが、著者のトモさんへの思い入れがあまりにも強いせいか
信子妃殿下のご病気と別居関連の話になると妃殿下に対して
かなり辛口である。
私が信子妃殿下びいきなので余計にそう感じるかもしれない
のだが、妃殿下のご実家の麻生家(特に母上の和子さん)が
再三に渡る結婚の申し入れを拒否していたのを説き伏せて
妃殿下として迎え入れたのだから、ご自分の信念を貫くのも
大事かもしれないがもう少し妃殿下への労りがあっても
よかったのではないかな。
お子様のいらっしゃらなかった秩父宮・高松宮両殿下に可愛が
られ、トモさんも両殿下を尊敬し、型破りな皇族でありながら
も「国民に寄り添う」という皇族の在り様を常に考えて行動
されていたのかもしれない。
度重なるがんの手術。そして声帯を失っても発声器を手に
公務にお出ましになっていた、どこか痛々しいお姿は今も
私の記憶に鮮明に残っている。
満身創痍になりながらも、皇族としての務めを果たす。例えば
それは現在の常陸宮殿下のお姿にも重なる。車いすでのお姿を
多く目にするようになったが、それでも園遊会に出席され、
華子妃殿下と共に地方公務へもお出ましになる。
トモさんは一見やりたい放題・言いたい放題に見えても、
ノブレス・オブリージュを十分に務められたのだろう。
それだけに、やはり信子妃殿下との間に出来てしまった溝は
残念で堪らない。皇族に生まれたことの葛藤やストレスに
晒されて来たトモさんを、支えて来たのは信子妃殿下なの
だから。
トモさん、ヒゲの殿下。笑顔がとても魅力的な人だったな。
あの笑顔と、何事も本気で取り組まれるお人柄が、多くの
人を惹きつけたのだろう。 -
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ヒゲの殿下として親しまれてきた寛仁親王がご逝去されたのは一昨年のこと。
それ以前から皇室の枠には当てはまらない放埓なイメージは持っていたけれど、まさかラジオDJもされていたとの報道に驚いた記憶がある。
本書は生前寛仁親王と親交の深かった工藤美代子氏によって書かれている。
ノンフィクション作家の肩書を持つ彼女ではあるが、本書はノンフィクションと言うよりも随想といったところか。客観的と言うよりむしろ、“愛すべき殿下”という一貫したスタンスを取っている。
破天荒な立ち振る舞い、影での努力、愛すべき人柄、人知れぬ悩みやストレスだけにとどまらず、女性遍歴や信子妃との夫婦仲にまで話はおよび、文章こそ上品ではあるが下世話な話も満載。
私の知りたかった情報は余すことなく描かれていてその点では非常に満足だった。
でもどうだろう。
皇室の中でもかなり自由なお立場にあった寛仁親王をほめそやすのは構わない。
でも一方でDJはおろか、インタビューはもちろん自分の意見を発することさえ儘ならない皇太子を同じ土俵に上げて論じるのはいかがなものか。
それはさておき、皇室の異端児とも言える寛仁親王がご逝去された今、皇室の現状を内から発する人材がまた一人減ってしまったのは非常に残念なことである。
開かれた皇室が実現するのはまだまだ先の事になりそうだ。