小野一光のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
人の狂気と強さを感じる
死刑が確定した殺人犯へのインタビューと、著者が現場で集めた情報を元に、事件のあらましを書いている。
加害者側の言葉が乗っており、ニュースで内容を聞くよりも、ずっと現実味が強く、また、痛ましいと感じる。フィクションではなく、本当に起こったことであり、それが自分の住んでいる国で起きていると信じられない。
加害者の生い立ちを知ると、攻撃性が強い人格であったり、共感性に欠けていて自分以外を道具としか見れなかったり、社会性に欠けている。
また、幼少期に母親と愛着が上手く作れなかったケースも多い。
この2つの要因に、金銭への渇望が絡まると、犯罪が起きてしまうのだと感じた。
自分の近くで、もし、苦しんでいる人、特に子供がいたら、一言で良いから、
言葉をかけるべきなのかもしれない。
そんなに社会を怖がらず攻撃しなくても大丈夫だよ、と。 -
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連続殺人犯への面会や周囲の人への取材などにより、事件を追いかけるルポ。
後書きに「殺人犯の共通項を探していたがなかった」とあるが、いくつかのパターンはあると思う。
先天的に障害がありそうな者、生い立ちにより心を病んだ者、自己愛が強すぎて周囲を取り込んでいく者など。
そして加害者に子どもがいる場合も多い。被害者だけでなく、自分の子どもたちの未来も奪っている。
軽度の知的・発達障害などがある場合、認知の歪みなどにより当たり前が通じないことがあるそうだ。
殺人の動機が自分でもよくわかっていない、自分が何をしたかあまり理解していない者はこういった要因もあるのではないだろうか。
大阪姉妹殺人の犯人はその前に未成年で母親を殺している。罪は認めるが後悔はしていない。しかし周りは反省させようとする。だから余計に頑なになってしまったのかもしれない。
母を憎む気持ちに寄り添う人がいれば、その後の事件は起きなかったかもしれない。
家を乗っ取っていくタイプは、恫喝して支配し洗脳していく様が恐ろしい。目を付けられたら逃れられないではないか。
何とか逃げ出しても連れ戻され、警察に駆け込んでも民事不介入で相手にしてもらえない。その絶望を思うと恐怖でしかない。
いずれにしても、恐怖の上理不尽に命を奪われた被害者たちの無念と、遺族の悲しみが晴れることはない。 -
Posted by ブクログ
小野一光『連続殺人犯』文春文庫。
21世紀の10大連続殺人事件の闇に迫るノンフィクション。『殺人犯との対話』を改題し、新章に『筧千佐子 近畿連続青酸死事件』を増補。
同じ人間とは思えない残虐非道の凶行を繰り返した連続殺人犯たち。余りにも身勝手な犯人たちの声には反省や後悔は全く感じられない。
『CASE 1 北村孝紘 大牟田連続4人殺人事件』。金銭目的で4人もの人びとを簡単に死に至らしめた狂った家族。 家族ぐるみで凶悪犯罪に手を染めるなど有り得ない。
『CASE 2 松永太 北九州監禁連続殺人事件』。自らは手を下さずにマインドコントロールにより7人の一族を監禁し、殺し合わせた悪魔の所業。反省の色を全く見せない忌むべき悪魔。
『CASE 3 畠山鈴香 秋田児童連続殺人事件』。実の娘はおろか、無関係な近隣の男児までも殺めた秋田の鬼女。確かにテレビに出た段階で怪しかった。
『CASE 4 鈴木泰徳 福岡3女性連続強盗殺人事件』。3人の女性を強姦と強盗の目的で余りにも簡単に殺害した男の全くの身勝手。
『CASE 5 下村早苗 大阪2児虐待死事件』。 自らの遊興を優先し、幼い2児を真夏のマンションに閉じ込め、脱水と飢餓でにより死に至らしめた若い女性。最近はこうした育児放棄や虐待のニュースを耳にしない日は無いように思う。
『CASE 6 山地悠紀夫大阪姉妹殺人事件』。かつて実母を殺害した男が全くの無関係な姉妹を強姦の揚げ句に殺害するという快楽殺人。
『CASE 7 魏巍 福岡一家4人殺人事件』。
中国人留学生グループによる金目当ての一家4人惨殺事件。捕まったのは犯人グループの1人だけ。後の2人は帰国後、行方をくらましている。モラルが欠如した中国人には来日して欲しくない。
『CASE 8 高橋裕子 中州スナックママ連続保険金殺人事件』。保険金目当てで2人の夫を殺害し、交際した男たちを恐喝した魔性の女。
『CASE 9 角田美代子 尼崎連続変死事件』。金銭目的で8人を惨殺した主犯が獄中で自殺したことから、真相の完全解明は困難になった得たいの知れない複雑怪奇な事件。
『CASE 10 筧千佐子 近畿連続青酸死事件』。金銭目的で20年間で10人以上の高齢男性を殺害し続けた後妻業の女。 -
Posted by ブクログ
風俗というのが、日常の裏にある未知の世界で面白かった。本書はルポルタージュ形式で、この時をこういう人が生きていたことを記録する、ってスタンス。
風俗に関する社会学の本とか読んでからまた読み直したら抱く感想や本書から読み取れる世界が広がる気がする。本書でも書かれてる通り、風俗嬢が担うことはセックスワークだけでなく、「癒し」という精神的ケアの提供。実際利用してる男性も多い。だけど、その割に世間では風俗嬢という仕事はおおっぴらには言えないものだし、風俗を利用して恩恵を被ってるはずの男も風俗嬢のことを風俗に「堕ちた」って馬鹿にする風潮がある。本書ではそこらへんの社会的な矛盾には触れてないし、そういう趣旨の本でもないんだけど、それだけに尚更自分でちゃんと勉強したいな、と思った。
作者が風俗嬢の女の子たち(と言っても年齢は19〜42まで様々。女の子、は業界用語らしい)に真摯に向き合ってるから、被災地で生きる女の子たちの人間としての姿が浮かび上がってきてて面白かった。特に、5年に渡って取材した子は、震災2年後と5年後で人生観が変わってて、震災が色んな人の人生に与えた影響の片鱗が見えた。
インタビュー通じて特に印象的だったのが、風俗嬢が社会の中で担う、精神的なケア労働という役割。
震災で辛い目にあったお客さんの話を聞いたり人肌で癒してあげる中で「自分も励まされて前を向くキッカケになり逆に癒しをもらった」という女の子もいれば、「自分も震災から立ち直ってないのにお客さんの辛かった話を聞くのは重くてしんどい」という女の子もいたのが興味深い。感じ方は本当に人それぞれで違うんだな。
あと、「震災を経験して人肌が恋しいからつまりとセックスしたいけど、避難所の壁は薄いし子供もいるし、出来そうにない。とはいえ自分から妻をラブホに誘うのは恥ずかしいから風俗に来た」というお客さんの話にびっくりしたんだけどどういう心理なんだ…心細い時にヤれたら誰でも良かったのか…?
心理的ケア労働としての風俗嬢、という側面から考えると、「男は弱いところを見せられないから辛いんだ」とか言いながらも、性風俗という男の弱さを受け入れて心理的なケアをしてくれる受け皿が用意されてるの、世の男性諸君は甘やかされてんなー、と思わなくもない。インタビューを受けた女の子に、地震後PTSDになって生活に支障をきたした子がいた。その子はその後、精神状況が良くならず、だんだん風俗にも出れなくなっていったとか。そういう弱い、男性のケア労働を担わされていた風俗嬢の心は誰がケアするんだろう。勿論風俗嬢の皆がそういうタイプの人間じゃないし、さっきも書いた通り、お客さんに励まされて力をもらったって女の子もいるから一元的に語れない問題だけれども。
筆者によって語られる、被災地を取材する罪悪感や、被災地の風俗産業を取材する罪悪感…というのもなるほどなと思う。けれど罪悪感を忘れないあたり作者は誠実な人間そうだし、なによりやはり現場を伝えるのには大きな意味があると思う。
震災を機に命の儚さや当たり前と思っていた日常、周囲の人への有り難みが増した、という被災者の話はよく聞くし、実際、インタビューをうけた女の子にも、そういう風に人生観が変わったという子が多い。
うまく言えないけれど、改めてあの地震は物凄い出来事だったんだなと感じる… -
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未曾有の怪事件「尼崎連続変死事件」の真相を追うノンフィクション。
事件現場に密着した執念の取材により、新たに発覚した真実を文庫化にあたり追加編集。
・・・つーか、こんなに入り組んでたのね~。。。
頭、こんがらがるわ!マジで!!
んで、主犯の角田美代子が留置所で自殺って・・・マジ、ありえね~!警察なにやっとるんじゃ!?って感じだし。
この本の中で、一番心に残ったのが、谷本さん。
谷本さん一家は、壮絶な運命をたどる。
谷本さんは奥さんと離婚させられたうえ、奥さんと長女を殺され、実の兄も殺され、高校生だった次女は角田に取りこまれ、加害者として服役中なのだ。
それでも谷本さんは、事件を知る者として証言し、次女の帰りを待ち続けている。
角田らと関わりさえしなければ、幸せに暮らしてたであろう一家を思うと、本当に「どうしてこんなことに?」と思ってしまう。
逃げては捕まえられ、連れ戻され、恫喝され、金銭を要求され、家族間で暴力を振るいあうように仕向けられ、親族にも容易には相談できず、地獄に引きづりこまれる・・・。
怖くても、毅然とした態度、とれるかな?
弁護士などに相談するなどした人は、関わりから逃れられたらしい。優しい人、弱い人、お金で片づけようとした人がどんどんつけ込まれた感じ。
幼少時から関わって角田家の養女、美代子の妹になった三枝子さんなんかは実子を美代子に取られたうえ、犯罪者にさせられ、自身は売春しながら美代子の贅沢三昧のな生活を支えてきたというのだから、なんともはや。
事実は小説より奇なりというけれど、いやはや・・・なんとも理解しがたい。
こんな常軌を逸した人々と関わりにならずに一生を平凡に暮らしたいものである。。。 -
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わたしは今慄然としている。少なくとも10人以上の連続変死事件が起きたこの尼崎事件の内容を読めば読むほど、わたしが事件を知るキッカケになった北九州監禁連続殺人事件との関連性があぶり出されるのである。北九州は7人の死者を出している。ただ、わたしが気に入らないのは、主犯角田美代子の自殺を隠れ蓑にして、角田ファミリーの7人が、果たして強制されて殺人したのか、或いは進んで自らの親族を殺したのかわからないことだ。その全容の解明がまだ明らかにされていないまま、どうやら次々と結審しているらしいことだ。
この本は、尼崎事件について書かれた詳しいルポの中の一冊である。それでも著者の認めている通り、事件の全容は不明のままだし、角田美代子の生い立ちは分かっても、彼女の人心コントロール方法はヒントぐらいしか書かれていない。読んだあとは、わたしは北九州事件のように裁判で明らかにするのだと思っていた。しかし、少しネットでググると兵庫の検察も裁判所も、兵庫県警や香川県警の失態を隠すかのように早々と幕引きを図ったようだ。それを汲んでか、ほとんどの容疑者が控訴しなかった。もしかしたら、もっと大きな闇が隠されているのかもしれない。
わたしがこのワイドショーネタのような事件に興味を持ったのは、遺族には申し訳ないが被害者に対する義憤からではない。このような、親族が親族を殺すような、しかも連続殺人をする人間の「システム」に興味があるからである。
北九州事件は、究極のマインドコントロールだったと思う。密室性、絶対的な権力者、通電による思考能力をなくさせる環境、それぞれを疑心暗鬼にさせ密告を奨励し孤立化させる仕組み、罪の意識の植え付けと殺人に無感覚になる価値観の変換。小さな綻びで事件は表面化したが、ひとつ間違えれば永遠に事件化されなかった可能性もある。一方尼崎事件は、被害者並びに被害親族が倍化しているし、容疑者も多くなり、「民事不介入」という新たな技も使っているという「新味」もある。しかし、全ての家族が何回も脱走していて、北九州のような徹底的なマインドコントロールではなかったのは明らかである。だから、いつかは事件は表面化したと思う。
わたしが空恐ろしく思うのは、徹底していなくても、子供が親を殺し、親族が姪を殺すような殺人が、この「密室性、絶対権力、環境、孤立化、価値観の変換」というシステムでは可能だったということだ。
わたしの問題意識は何処にあるか。そうです、これは戦時における「兵士の作り方」と同じだと思うのである。教育基本法の改悪、秘密保護法の成立、そして教師の政治活動の密告を奨励するような現政権のもとでは、この本にあるように価値観の変換が起こり、「戦時環境下」での「敵を殺す」事をなんとも思わない時代が来ないとも限らない。いくつかの条件が揃うと、人間という者は「やってしまう」のだ。わたしはホントに身の毛がよだつ想いだ。 -
Posted by ブクログ
★角田美代子がみせた「民事不介入」と「集団心理」の闇
尼崎連続変死事件のルポ。ルポライターの著者が、手探りで事件の情報を集め断片がどんどん繋がる形で話が展開するので、臨場感はあるが、解釈や学術的な観点はない。ルポなので当然と言えば当然だが、期待していた部分もあったので少し残念。
主犯格である角田美代子を中心にした家系図、すなわち親族の誰がどう関係して誰が誰を殺したのか、を整理して説明されているのが良い。この事件は、それが複雑すぎてその闇の深さがなかなか見えない側面があるが、この本を読むことで家系図がある程度頭に入った状態になるので、話を読み進めたり他の記事を見るとさらに理解が深まりやすくなる。
読んでいると、角田の直感的な「他人の足元を見る才能」をビシバシ感じる。おそらく、角田は考えてこの方法を編み出したのではない。
警察に何度かお世話になりながら、本能的に警察がどこまで自分が起こす問題に介入し、介入できないのかを掴んできたのだろう。いわゆる「民事不介入」だ。
最近DV法などが出てきてはいるが、それでも未だに家族・親族間の問題に対しては司法も行政(警察)も<役に立たない>ということは、この国の殺人事件の半数以上家族・親族間のものであるということが証明している。強い絆が生み出すのは愛だけではない。愛は憎しみと両輪だ。そういう意味で、ストーカー法も同じだ。ここ数年でこの手の法律が立て続けに出てきたということが、この「民事不介入」の闇に飲み込まれ犠牲になってきた人間が今までいかに多かったのかを象徴している。
警察に対する直感と同じように、自分以外の人間をどのように自由にし服従させるのかも本能的に学んだのだろう。どこまで踏み込み、どこまで自由にすれば、どんな風に自分の都合の良いように操れる人間に「教育」できるか。角田の用いた相手を徹底的に恐怖と緩和で服従させる人心掌握術は、ミルグリム実験で証明された人間の本質的な心理を、巧妙に利用している。しかし、彼女は集団心理学を学び論理的に戦術としてそれを取り入れたのではないだろう。
「家族」と聞いて思い描くイメージ。世の中には「家族」や「絆」という言葉に対して良いイメージを持つ人が、想像以上に多いと感じる。そういう人には、角田やこの事件は理解できないものなのかもしれない。
「民事不介入」という恐さを身をもって経験しているか否かは、この事件の恐怖を理解する上である程度必要な素養なのかもしれない。家族・親族間でなくても良いが、どうやら「民事不介入」と直面した時にようやく人は「社会は自分を守ってくれるわけではない」という重大な真実に気が付くらしい。非常に愚かだが、この感覚は犯罪に関するルポを読みく際には役立つ。
格差は、産まれた時から始まっている。どんな場所に、どんな家庭に、どんな身体と能力を持って産まれるか。角田は、自分がうまれたその場所で、最低な方向に才能を開花させたのだろう。いや、劣悪な環境の中だからこそ開花した才能なのかもしれない。その才能で、彼女は本当に恐ろしい事実に辿り着いたのだ。「最も効率の良く安全な金の儲け方は、家族や親戚からむしり取ること」だと。