震災風俗嬢

震災風俗嬢

小説・文芸
1,650円 (税込)

8pt

3.2

東日本大震災からわずか一週間後に営業を再開させた風俗店があった。
被災地の風俗嬢を五年にわたり取材した渾身のノンフィクション。
【本文より】
チャコさん(仮名)が相手にした客のほとんどが、地震と津波の被害に遭っていたという。
「家を流されたり、仕事を失ったり。それでこれから関東に出稼ぎに行くという人もいました。あと、家族を亡くしたという人もいましたね」
「えっ、そんな状況で風俗に?」
思わず声に出していた。だが彼女は表情を変えずに続ける。
「そんな場合じゃないことは、本人もわかっていたと思いますよ。ただ、その人は『どうしていいかわからない。人肌に触れないと正気でいられない』って話してました」

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震災風俗嬢 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    風俗というのが、日常の裏にある未知の世界で面白かった。本書はルポルタージュ形式で、この時をこういう人が生きていたことを記録する、ってスタンス。

    風俗に関する社会学の本とか読んでからまた読み直したら抱く感想や本書から読み取れる世界が広がる気がする。本書でも書かれてる通り、風俗嬢が担うことはセックスワークだけでなく、「癒し」という精神的ケアの提供。実際利用してる男性も多い。だけど、その割に世間では風俗嬢という仕事はおおっぴらには言えないものだし、風俗を利用して恩恵を被ってるはずの男も風俗嬢のことを風俗に「堕ちた」って馬鹿にする風潮がある。本書ではそこらへんの社会的な矛盾には触れてないし、そういう趣旨の本でもないんだけど、それだけに尚更自分でちゃんと勉強したいな、と思った。


    作者が風俗嬢の女の子たち(と言っても年齢は19〜42まで様々。女の子、は業界用語らしい)に真摯に向き合ってるから、被災地で生きる女の子たちの人間としての姿が浮かび上がってきてて面白かった。特に、5年に渡って取材した子は、震災2年後と5年後で人生観が変わってて、震災が色んな人の人生に与えた影響の片鱗が見えた。

    インタビュー通じて特に印象的だったのが、風俗嬢が社会の中で担う、精神的なケア労働という役割。
    震災で辛い目にあったお客さんの話を聞いたり人肌で癒してあげる中で「自分も励まされて前を向くキッカケになり逆に癒しをもらった」という女の子もいれば、「自分も震災から立ち直ってないのにお客さんの辛かった話を聞くのは重くてしんどい」という女の子もいたのが興味深い。感じ方は本当に人それぞれで違うんだな。

    あと、「震災を経験して人肌が恋しいからつまりとセックスしたいけど、避難所の壁は薄いし子供もいるし、出来そうにない。とはいえ自分から妻をラブホに誘うのは恥ずかしいから風俗に来た」というお客さんの話にびっくりしたんだけどどういう心理なんだ…心細い時にヤれたら誰でも良かったのか…?

    心理的ケア労働としての風俗嬢、という側面から考えると、「男は弱いところを見せられないから辛いんだ」とか言いながらも、性風俗という男の弱さを受け入れて心理的なケアをしてくれる受け皿が用意されてるの、世の男性諸君は甘やかされてんなー、と思わなくもない。インタビューを受けた女の子に、地震後PTSDになって生活に支障をきたした子がいた。その子はその後、精神状況が良くならず、だんだん風俗にも出れなくなっていったとか。そういう弱い、男性のケア労働を担わされていた風俗嬢の心は誰がケアするんだろう。勿論風俗嬢の皆がそういうタイプの人間じゃないし、さっきも書いた通り、お客さんに励まされて力をもらったって女の子もいるから一元的に語れない問題だけれども。

    筆者によって語られる、被災地を取材する罪悪感や、被災地の風俗産業を取材する罪悪感…というのもなるほどなと思う。けれど罪悪感を忘れないあたり作者は誠実な人間そうだし、なによりやはり現場を伝えるのには大きな意味があると思う。

    震災を機に命の儚さや当たり前と思っていた日常、周囲の人への有り難みが増した、という被災者の話はよく聞くし、実際、インタビューをうけた女の子にも、そういう風に人生観が変わったという子が多い。
    うまく言えないけれど、改めてあの地震は物凄い出来事だったんだなと感じる…

    0
    2018年12月21日

    Posted by ブクログ

    あまり刺さらなかった
    地震の時にまだ途中だから逃げないって言われ、返金してようやく逃げた話は呆れた
    風俗でなくても誰かを亡くした後や大きな災害の時はやはり人肌恋しくなるのだろう
    焼き鳥屋の20代の女性が震災とは無関係の火災で亡くなったエピローグが一番心にきた

    0
    2026年09月09日

    Posted by ブクログ

    被災地で食うに困って、風俗に「堕ちた」話ではない。

    元々、風俗があって、いろんな事情があって、震災後も実のところ早々にというか、状況が許し次第、営業を開始しているのだ。
    それは、普通に、様々な仕事が再開してくのと変わらない。
    そこで生きていく、数人の当事者へのインタビューをまとめた内容。
    そう、まとまったものではないが、やはり、風俗という内容から、いろいろなものが見えてくる。
    主体的に描かれているのは、「風俗」の側にいる人たちが、もちろん、そこを利用する人たちがいる。

    癒されるんだ。
    やはり、人の肌というのは大事なんだと思った次第。
    それが、家庭の中にあるのかどうか、そことは違うのか、勿論、状況からして、「単身」で来ている男たちもいるだろうが。

    色々考える。

    あまり描かれては来なかった分、考えさせられる。

    0
    2023年08月10日

    Posted by ブクログ

    癒しを求める男性たちってのは分かるけど、だったら当然癒しを求めたり人肌を恋しく思う女性たちもいたと思うんだけど、そういう人たちはどうしてたんだろう。

    0
    2018年02月10日

    Posted by ブクログ

    東日本大震災が起きた時、その後、のある一つの記録。
    〝あの時〟に何が起きていたのか、〝その後〟何を思い、どう暮らしていたのか。
    生きる為に、誰かのために働く女性たち。
    興味深く読んだ。

    0
    2016年07月28日

    Posted by ブクログ

    「喪失以後」の人のこころの穴埋めの仕方について考えさせられてしまう。人を失った人の気持ちを癒すことができるのは最後は人なのだと。あとやっぱり大切なことは「忘れない」ということ。

    0
    2016年04月30日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    人間の本能として、生きるために性は必要なんだなと、改めて考えさせられた一冊です。
    被災地で風俗を再開するにあたり、多くの客が自我を保てて、救われたのではないだろうかと、震災と風俗という一見対極にあるような2つの事柄が、こんなにも近くに結びついているという事実を突きつけられて、素晴らしい職業であることを再認識しました。
    自分は震災時は出張で青森にいましたが、今でもあの悲惨な状況は忘れられません。
    昨今、南海トラフ巨大地震が騒がれていますが、備えあれば憂いなしで、何もなければと願いながら避難グッズを用意しました。

    0
    2026年06月25日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    うむ、興味深かったです。面白い、と言っては、ちょっと、語弊があるかな、と思いますので、興味深い内容だった、というのが適切な表現ではなかろうか?と思う次第かな、というところでしょうか。

    東日本大震災。2011年3月11日。近年の日本において、未曽有の大災害であったことは、間違いのない事だと思います。多くの人々の生活を、根こそぎ、変えたのだろうな、と。2021年4月28日現在の、新型コロナウイルス禍の猛威が全く衰えを感じさせない今も、やはりそうなのでしょうが。

    人間の性欲に対する思いの強さ、ってのは、シミジミと感じましたね。性風俗産業。それの存在の善し悪しを論ずるのは、また別の問題として、それはもう、人々の社会生活の中に、間違いなく存在するものなのでしょうし。性風俗産業は、間違いなく、この世の中に、存在する。まずはその存在を認知する。

    未曽有の大災害が起こった地域で、その災害後、まだ間もない時期に、こうした性風俗産業の動きが再開した。という事実こそが、とても重要なことだと、思うのですよね。人々が、それを、必要とした、という事ですものね。

    著者の小野一光さんは、まず、なによりも自分自身が、「何故にこのような事態が起こるのか?」という事を、「自分が」知りたかったんだと思います。何よりも「自分が」納得したい。何故にこうなのか。何故にこういう世の中なのか。「この事は、どうしても、世の中に知らしめねばならん」という社会的意義を考えた、とは、思えないのですよね。

    まずは、なんとしても、自分の気持ちを納得させたい。という思いから、この著書を書いたのだと、思うんですが、完全に自分の推測でしかないので、違っていたら誠にすみません。

    でも、その、「なにがどうあれ自分が知りたいんだよ納得したいんだよ」って思う事は、個人的には、とても正しい、と、思うんですよね。動かしがたい事実として、このような現実が、目の前にある。何故にそれがあるのか?それをまずは知る。「ある」ということを理解する。事の善し悪しを論ずるのは、そこから先だ。まずは「ある」ことを理解する、という、そういうことかなあ、とね、思いましたね。

    小野さんが、なじみの焼き鳥屋で、常連さんのナカムラさんとかわす会話が、好きですね。

    ナカムラさんは、最初は「風俗嬢のインタビュー!?なにしょーもないことしとんねん。今はもっと、伝えなきゃいかんことが他に沢山あるだろうが」って、小野さんにバンバン否定的なんですよ。

    でも、途中からは「この地域の事が、忘れられて欲しくない。どんなことでも取材して話題にしてよ」っていう態度にね、変わるんですよね。その変化って、とてもこう、腑に落ちる、って気が、したんですよね。あの感じが、分かるなあ、、、ってね、なんだか、思ったんですよね。

    なにしろ、良い本でした。これはまさに実際に起こっている事なのだ、起こっていたことなのだ。という事は、ヒシヒシと感じましたね。

    0
    2021年04月28日

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