松本創のレビュー一覧
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2005年4月発生したJR西日本福知山線の車両脱線事故。107名の犠牲者を出す戦後最悪クラスの列車事故の原因は、JR西日本の組織風土にあるのではないか。
その検証のために、一個人として巨大なJR西日本に立ち向かい、気が遠くなるような対話を経て、徐々にJR西日本に自らの組織の問題を直視させた遺族がいた。妻と妹を亡くし娘が負傷した都市計画コンサルタントの淺野氏という男性がその人である。本書は彼に長年寄り添ったライターが、彼の10年あまりに及ぶ長い闘いを描いたノンフィクションである。
本書では、JR西日本が組織風土が問題の一因であるということを直視するまで、あくまで運転手という一個人の適性やヒュ -
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福知山線脱線事故の被害者の目線から事故を追ったルポ。
事故で、妻と娘を失った淺野さんは、JR西日本を感情的に弾劾するのではなく、二度とこのような事が起こらないように、事故が何故起こったのか、二度と起こさない為にどうすべきか、というスタンスで西日本に接する。
民営化による利益追求。阪急など強い私鉄との熾烈な競争。過激なサービスの向上は結果として、安全面を犠牲にする事になる。
資本主義、利益追求のなか、人の命を預かる基幹業務との安全性をいかに意識しなければならないか。
官僚的な大規模な組織は硬直し、現場でも責任の所在は曖昧に。失敗すると個人が責められる。
最近はヒューマンエラーを責めない -
Posted by ブクログ
ニュース映像を見て絶句した福知山線脱線事故。事故のその後と、その要因を被害者家族の一人を起点に書き上げたノンフィクション。
こういった大企業が起こした事故についてのルポは犯人が誰かということに終始することが多い気がするけれど、本作では趣が異なる。
もちろんJR西日本が当事者として一番の責任があるのは間違いないけれど、被害者遺族にもこの事故を社会化させ、二度とこのような惨事を引き起こさないようするために会社と一丸になって問題の抽出と事故の教訓を引き出すのが責務があるとしている。
妻と妹を失いながら、そのような冷静な判断と行動ができる本作の遺族に畏敬の念を感じる。
ニュースでは懲罰的な日勤教育ばか -
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死亡者数107人、負傷者数562人を出した福知山線脱線事故を題材にしたノンフィクション。
著者は、元神戸新聞記者で現在はフリーランスのライター。
この事故で最愛の妻と妹を失い、娘が重傷を負うという悲痛な体験をした都市計画コンサルタントの淺野弥三一氏の「肩越し」に、淺野氏ら遺族会とJR西との闘いを追った書です。
この種の本は、加害者(ここで言うJR西)を断罪して終わることが多い。
だが、本書はそうではありません。
JR西を真に安全を最優先する組織に変えようという淺野氏に共感し、そこからブレずに文字通り1つの軌道を走ります。
はじめは通り一遍の謝罪でその場をやり過ごし、事故の責任を運転士1人に負わ -
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万博は、まだ「失敗」とは言えず、予想より人が入っている印象だが。だが、当初予算を大幅に超える建設費や、維持費の高騰。メタンガスによる事故などの影響による不安、広告塔である吉本のゴシップなどで、どうも「失敗」の印象が根強い。最近も、虫がわいている、海外パビリオンの工事が遅れている、トイレが使いにくいなど色々あるようだ。
間接的には私も他人事ではない関係もあり、超遠目には見ていたが、パビリオンの予約が取れなかったり、ウェブ手続きが高齢者には難しい、行列解消の課題など多々課題はあるようだ。個人的には、イベントの成否を特定政党の利害と結びつけ、政党支持者以外が、反対意見に与し易い構図も良くないと感じ -
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万博の大成功を願っているし、行った人の楽しかったTweetに羨ましいしかない。
同時に始まったカジノ・IRの建設工事。
個人的には夢洲のカジノ計画には大賛成。
ギャンブル依存症で困るのは、その人らが市井に溢れることであって、むしろ夢洲に集中させて、駅前のパチンコなどなくなれば良い。
日本の誇る文化なのに、外国人に溢れ、日本人が行きたくないところになってしまった、京都、東京、大阪ミナミ、博多。
文化に理解を示してくれる外国人にはどんどん日本を知ってもらいたいが、大半は変な国で安くてメシウマな日本に行って騒ぎたいだけ。なら、夢洲に、エセ日本テーマパークとカジノとリゾートと吉本エンタメ作って、そん -
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最悪の大事故の原因は、企業風土・膠着的な組織がもたらした?
【感想】
なぜ、福知山脱線事故は起こってしまったのか。それには、JR西日本の膠着的な企業風土が起因していた。短期的な賞罰教育と、常に内向きの理論で意思決定を行ってしまう大企業。そのために、過去にあった事故から、再発防止の仕組み・育成方式を作り上げることができていなかった。自社の責任から目を背け、外部や特定の個人に問題を擦り付けようとした。作中に筆者も取り上げているが、まさに「失敗の本質」で語られているような、旧日本軍的な空気による支配・意思決定が横行する組織となってしまっていたのである。107人もの死者をもたらした未曽有の大事故は -
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ある日突然自分の肉親を失わなければならないような事故に遭遇した際、どのようにその事実と向き合い、その事実をどう自分の中で咀嚼して行けばいいのかということは、実際にそのような事実を目の前にした者に突きつけられる大きな難題であろう。
ましてや、その事故を起こした加害側がひときわ大きな組織体である場合は、どのようにそんな組織と向き合っていけばいいのか、肉親を失った悲しみも手伝って感情的になりがちな状況で、正常な判断などなかなかできるものではないということは想像に難くない。
それでも、「何が鎮魂になるのか」ということをひたすら自身に問い続けることによって、巨大な組織とどう向き合ってきたのかという事実、