松本創のレビュー一覧
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2005年4月25日、JR西日本管内福知山線で起きた脱線事故のノンフィクション。
奥さまと妹を亡くされ次女が大ケガを負った、淺野氏。事故直後から、事故や遺族に対するJR西日本の姿勢に疑問を持ちはじめる。
そして私的な感情は差し置いて、真っ正面から巨大組織にぶつかり、組織の問題点を浮かび上がらせ体質改善にまで導いたノンフィクション。
これまで個人の問題として精神論で捉えがちだった事故原因を、収集・科学的分析を加え「ミスは起こりうる」という前提で組織の再構築を促していく。
これを時系列にまとめ、淺野氏のそれまでの仕事の仕方とシンクロさせ、なぜそこまでの情熱を維持して巨大組織を変えることができたかを分析している。
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Posted by ブクログ
2005年4月発生したJR西日本福知山線の車両脱線事故。107名の犠牲者を出す戦後最悪クラスの列車事故の原因は、JR西日本の組織風土にあるのではないか。
その検証のために、一個人として巨大なJR西日本に立ち向かい、気が遠くなるような対話を経て、徐々にJR西日本に自らの組織の問題を直視させた遺族がいた。妻と妹を亡くし娘が負傷した都市計画コンサルタントの淺野氏という男性がその人である。本書は彼に長年寄り添ったライターが、彼の10年あまりに及ぶ長い闘いを描いたノンフィクションである。
本書では、JR西日本が組織風土が問題の一因であるということを直視するまで、あくまで運転手という一個人の適性やヒューマンエラーが原因であるということが示される。そこから、いかにヒューマンエラーを起こさせないような組織風土、起きてもリカバリー可能な鉄道運行システムをどう構築するかという認識の変換が発生するわけで、JR西日本という極めてディフェンシブな大企業を動かした背景に一遺族の行動があるということに驚かされると同時に、淺野氏の「事故に対する怒りと原因究明を切り分ける」という常人にはなかなか真似ができない思想が突破口となったことがよく理解できる。
一つの企業が自らが見たくない現実を直視し、そこから変化を遂げるということはどういうことなのか。グロテスクなまでの組織防衛の生々しさも含めて、本書は大組織で働く人に対して、様々な思いを抱かせてくれると思う。 -
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福知山線脱線事故の被害者の目線から事故を追ったルポ。
事故で、妻と娘を失った淺野さんは、JR西日本を感情的に弾劾するのではなく、二度とこのような事が起こらないように、事故が何故起こったのか、二度と起こさない為にどうすべきか、というスタンスで西日本に接する。
民営化による利益追求。阪急など強い私鉄との熾烈な競争。過激なサービスの向上は結果として、安全面を犠牲にする事になる。
資本主義、利益追求のなか、人の命を預かる基幹業務との安全性をいかに意識しなければならないか。
官僚的な大規模な組織は硬直し、現場でも責任の所在は曖昧に。失敗すると個人が責められる。
最近はヒューマンエラーを責めない会社が増えて来ているとの事。
人はミスを犯すものだからこそ組織的な安全の仕組みが必要だ。
何よりも前半の事故の生々しい描写、悲惨な様子に衝撃を受ける。
筆者は長年淺野さんの近くに居たとの事。
だが、そんな筆者も淺野さんのスタンスを図りかねてこの本をどうまとめれば良いかわからない時期があったとの事。
想像もしなかった事に出会い、一瞬で大切なモノを失う。
当事者としても整理がつく事はないのでは、と思う。
その中で今までの活動の延長で事件と向き合う。
社会性の面とプライベートのどうしようもない喪失感が、カオスの様に個人の中でも渦巻いてあるような状況なのではないのだろうか。 -
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ニュース映像を見て絶句した福知山線脱線事故。事故のその後と、その要因を被害者家族の一人を起点に書き上げたノンフィクション。
こういった大企業が起こした事故についてのルポは犯人が誰かということに終始することが多い気がするけれど、本作では趣が異なる。
もちろんJR西日本が当事者として一番の責任があるのは間違いないけれど、被害者遺族にもこの事故を社会化させ、二度とこのような惨事を引き起こさないようするために会社と一丸になって問題の抽出と事故の教訓を引き出すのが責務があるとしている。
妻と妹を失いながら、そのような冷静な判断と行動ができる本作の遺族に畏敬の念を感じる。
ニュースでは懲罰的な日勤教育ばかりが問題視されていたと思うけれど、ことはそれほど単純ではなく、会社の成り立ちや地域性、国の政策等が絡み合った結果このような事故が引き起こされたのだと気付かされた。 -
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死亡者数107人、負傷者数562人を出した福知山線脱線事故を題材にしたノンフィクション。
著者は、元神戸新聞記者で現在はフリーランスのライター。
この事故で最愛の妻と妹を失い、娘が重傷を負うという悲痛な体験をした都市計画コンサルタントの淺野弥三一氏の「肩越し」に、淺野氏ら遺族会とJR西との闘いを追った書です。
この種の本は、加害者(ここで言うJR西)を断罪して終わることが多い。
だが、本書はそうではありません。
JR西を真に安全を最優先する組織に変えようという淺野氏に共感し、そこからブレずに文字通り1つの軌道を走ります。
はじめは通り一遍の謝罪でその場をやり過ごし、事故の責任を運転士1人に負わせたJR西。
だが、淺野氏ら遺族会の粘り強い交渉で、利益重視偏重や極端なトップダウンなど組織的な問題であることをJR西に認めさせます。
そして、遺族会とJR西が同じテーブルに着き、お互い納得のいく、合理的で実効性のある安全対策を立案するに至るのです。
そこがまずもって本書の大きな読みどころでしょう。
これは、淺野氏ら遺族会の地道な努力によるところが大きい。
ただ、それだけではJR西という巨大な組織を変えることは難しい。
実は、事故後に社長に就任した山崎正夫氏の存在が大きかったと本書は指摘します。
事務屋の指定席だった社長ポストに、技術屋として初めて就いたのが山崎氏。
同じ技術屋として、淺野氏も「話せる相手」として山崎氏に信頼を置きます。
これが先述した安全対策へと結実するのです。
いろいろと考えさせられる逸話です。
懲罰的な日勤教育は、実は事故の抑止にはほとんど効果がないなど、安全について考えるうえでも本書は非常に有用です。
ぜひ多くの方に読んでいただきたい1冊です。 -
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万博誘致から開催までの経過がよく分かる本書
IRと計画時期が入れ替わってしまったのは知らなかったが、本書を読んで開催前の盛り上がりのなさは、なるほどそういうことだったのかと納得できた
電通のことがなければ初めからもっと盛り上がったのかな?と思うが、猪瀬直樹と東浩紀の対談を見るに「万博開催の物語」という大きな物語を誰も語れない、芯を貫くコンセプトがないというのが根っこにあるように感じた。それは本書の中にも書かれているが、今の日本が持つ問題が端的に現れているように思う。
ただ、参加してみての感想としては、本書に書かれているほど悪い万博ではなかったということ(開催前に書かれているので致し方ないが…)。
パビリオンは趣向が凝らされていたし、様々な国のことを知る機会にはなったと思う。単純に楽しかった。
ただ、大屋根リングが統一感を担保しているものの、その中身は旅行パンフレットの集まりのようなパビリオン。どれだけ立派なパビリオンを作れるかはその国の文化資本次第で、お客の取り合いをしているようにしか見えなかった
身も蓋もなく国家間の繁栄の差が出ていた万博だったと感じる。
そういう意味では、世界はもう二度と一つになることはない、一つになることを夢見ることさえできない時代に来てしまったんだなという寂しさに向き合わされた万博体験であったし、本書を通じてその感覚の端緒を言語化してもらえた。 -
Posted by ブクログ
万博の大成功を願っているし、行った人の楽しかったTweetに羨ましいしかない。
同時に始まったカジノ・IRの建設工事。
個人的には夢洲のカジノ計画には大賛成。
ギャンブル依存症で困るのは、その人らが市井に溢れることであって、むしろ夢洲に集中させて、駅前のパチンコなどなくなれば良い。
日本の誇る文化なのに、外国人に溢れ、日本人が行きたくないところになってしまった、京都、東京、大阪ミナミ、博多。
文化に理解を示してくれる外国人にはどんどん日本を知ってもらいたいが、大半は変な国で安くてメシウマな日本に行って騒ぎたいだけ。なら、夢洲に、エセ日本テーマパークとカジノとリゾートと吉本エンタメ作って、そんなオーバーツーリズムの掃き溜めにしたら良い。
そう思ってる身なので、5篇に亘る、万博ディスりは、これまでの歴史と経緯の勉強として極めて有用な本だった、以外には何もないかな。
既に、吉本が去り、維新は自民党の予算に協力して軍門に降った。電通も直前のPR業務には見事復活。
既にスタートをきったIR。
日本人のための、日本の京都や大阪を手に入れるための、第一歩大阪万博。(違)
海外パビリオンに行くのが楽しみです。
(あ、書物としての感想はありません。真逆の立場ですので。) -
Posted by ブクログ
最悪の大事故の原因は、企業風土・膠着的な組織がもたらした?
【感想】
なぜ、福知山脱線事故は起こってしまったのか。それには、JR西日本の膠着的な企業風土が起因していた。短期的な賞罰教育と、常に内向きの理論で意思決定を行ってしまう大企業。そのために、過去にあった事故から、再発防止の仕組み・育成方式を作り上げることができていなかった。自社の責任から目を背け、外部や特定の個人に問題を擦り付けようとした。作中に筆者も取り上げているが、まさに「失敗の本質」で語られているような、旧日本軍的な空気による支配・意思決定が横行する組織となってしまっていたのである。107人もの死者をもたらした未曽有の大事故は、その空気的な企業風土が最悪の結果として結実したと言える。
【本書を読みながら気になった記述・コト】
■大企業の組織的風土を変革していくことの難しさ。保守的になり、社会や消費者のことに目を向けられなくなる難しさ
■家族の大切さ。福知山脱線事故によって、大切にしていた家族を突然失った。家族のハブとなっていた母が亡くなってしまい、子どもや夫の関係性がより希薄になってしまった。家族の中に暗い影が落ちたこと
■事故でパートナーを失った女性が、後追い自殺をしてしまったこと。大切な人を亡くす辛さ。誰にでも起きうることだが、本当に辛く、苦しいものである
■独りで生きていく寂しさ、辛さ。最後は皆独りで死ぬことになる。そのこtに、どう向き合うか