松本創のレビュー一覧
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【2本のレールが交わるところ】2005年4月25日に発生し、107名の死者と562名の負傷者を出したJR福知山線脱線事故。当初の会社側の無機質な対応に風穴を開け、JR西日本と共に事故の原因究明と安全対策に乗り出した遺族を軸に、事件のその後を描いた作品です。著者は、神戸新聞の記者を経てフリーランスで活躍している松本創。
月並みな表現ですが、組織や社会の根幹はやっぱりどこまで行っても人なんだなと教えてくれる一冊。JR西日本と遺族との話し合いを通じ、読み手の側も、組織論や危機管理論を超えて幅広い教訓を得ることができるかと。
〜「被害者と加害者の立場を超えて同じテーブルで安全について考えよう。責任 -
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★鉄道の安全担保、儲からない先に★冒頭では、事故の前から知っていた遺族のいわば一員として事故に向き合い、徐々にJR西日本の経営へと視点を変える。井出元社長にも取材し、事故後の社長選任を巡る思惑も読ませる。取材の幅が広いのに感嘆した。この本は大阪に暮らす前に読んでおくべきだった。
後書きを読んではっきりしたが、著者は遺族の遺族の一人である浅野氏のスタンスに立っているとはっきり記したのはフェアと言える。鉄道の安全担保としてヒトではなく仕組みを重視すべきという浅野氏の主張に沿い、彼の活動がJR西日本を変えていったとする流れに違和感はない。JR西のこの事故への現在の対応の背景がよく分かった。
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この本を読むと、絶対行きたくなくなるか、興味を持って行きたくなるか、どちらかだろう。
私は前者。
確かにここ5〜10年の間に、世界は大きく動いてしまった。
万博誘致を考える段階では、まだ経済成長に夢を託す気持ちも分からないでもないが、それでも上に立つものは未来を見据えて、行動して欲しいと思ってしまう。
地盤の脆弱な夢洲に決まってしまったこと、広告代理店やアンバサダーの撤退など、散々な内容ではあるが、そもそもなんのために万博を誘致するか、というところが一番頭の痛くなる話だった。
もしかすると為政者や権力者は、自分の夢や、利益や、力の誇示のために行動している人が、結構な数でいるのかも -
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いよいよ今年の春に大阪・関西万博の開催が開催される。
このレビューを書いてる段階でもう残り2ヶ月なのだが、未だに連日問題が浮上する。
最近も入場券の売れ行きの悪さから「並ばない万博」という理想を降ろさざるを得ない当日券の導入や、テーマ事業プロデューサーとして名を連ねている著名人が「万博はコスパ悪い」発言をしたり、と言った問題が出てきている。
本当にこのままいって大丈夫か? と思い続けたままもう後戻りできないところまで来てしまった。
本書は大阪・関西万博がなぜ失敗したのか(まだ開催されてもいない万博を失敗というのは反発も大きいだろうし、実際そこを批判されているが)を5人の論者が5つの視点から語 -
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第1章 維新「政官一体」体制が覆い隠すリスク―万博と政治 木下功
第2章 都市の孤島「夢洲」という悪夢の選択―万博と建築 森山高至
第3章 「電通・吉本」依存が招いた混乱と迷走―万博とメディア 西岡研介
第4章 検証「経済効果3兆円」の実態と問題点―万博と経済 吉弘憲介
第5章 大阪の「成功体験」と「失敗の記憶」―万博と都市 松本創
上記の通り5人の識者が、チケット販売が予定通り進まない大阪万博の失敗の原因を語っている。
いろいろ書いてあるが、、
・東京五輪汚職で広告代理店の腰が引けたこと
・自民と維新の確執で、自民べったりの電通が動かないこと
(もともと維新は自由民主党の若 -
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ネタバレJR西日本の福知山線脱線事故。
平成17(2005)年4月25日のこの事故を知らない人も多いだろう。
けれど私は今でも覚えている。
テレビで見た、マンションに激突して大破した列車を。
どうやったら線路を走る電車がマンションに激突できるのか、どうしても理解できなかった。
これは、妻と妹をこの事故で亡くし娘も重症を負った、淺野弥三一(やさかず)氏の、被害者感情をひとまず横に置いて、事故の原因を究明し、再発防止策をJR西日本と考えていくまでの闘いの記録である。
もともと淺野氏は都市開発・都市計画を生業としていたのだけれど、その時に軸足は計画をする側ではなく生活する人の側に置くことを決めていたのだと -
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地方の新聞社・テレビ局によって、ここ数年で話題性のあった地方発の報道、ドキュメンタリーの担当者を取り上げたルポルタージュ。東京にいると全国紙やキー局が報道の中心と思い込んでしまいがちだが、地方にこそジャーナリズムの真髄と魂が気を吐いているということが伝わってきた。大手マスコミの地方支社の記者たちが中央に戻るための腰掛けになっていることや、特ダネを掴むためにセンセーショナルな仕掛合戦になっている背景もあり、地方メディアによる地域に目を向け耳を傾ける姿勢、凡事徹底で入念にファクトチェックを重ねることで大手メディアに"逆襲"し得るのだという筆者の想いを感じた。
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「ニュース砂漠」という言葉をきいたことがあります。アメリカの全3143郡のうち、新聞がないか、週刊の新聞が1紙しかない地域が半分を超えたという現象のことです。それはジャーナリズムという草の根の生えないニュースの砂漠地帯。日本はまだまだ地方紙が頑張っているのでしょうが、デジタルメディアの成長で、経営が厳しくなっているのは事実。アメリカと同じ道を歩んでいるかもしれません。そんな中、地方紙、地方局の踏ん張りのアンソロジーがこの新書です。本書にも登場する秋田魁新聞のイージスアショア計画についてのスクープは、新聞協会賞も受賞しましたし、NHKの番組にもなってました。「地方紙は死ねない」とのタイトルでした
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2005年4月25日、JR西日本管内福知山線で起きた脱線事故のノンフィクション。
奥さまと妹を亡くされ次女が大ケガを負った、淺野氏。事故直後から、事故や遺族に対するJR西日本の姿勢に疑問を持ちはじめる。
そして私的な感情は差し置いて、真っ正面から巨大組織にぶつかり、組織の問題点を浮かび上がらせ体質改善にまで導いたノンフィクション。
これまで個人の問題として精神論で捉えがちだった事故原因を、収集・科学的分析を加え「ミスは起こりうる」という前提で組織の再構築を促していく。
これを時系列にまとめ、淺野氏のそれまでの仕事の仕方とシンクロさせ、なぜそこまでの情熱を維持して巨大組織を変えることがで