あらすじ
遅々として進まないパビリオン建設。肩透かしを食らう機運醸成。理念なき中、喧伝される経済効果。夢洲の開発にかける維新の思惑。過去の成功体験に引きずられながら、詰めが甘いまま進行してしまった大阪・関西万博。現状のまま開催されれば、「成功」とは到底言えないだろう。なぜこうした事態に陥ったのか。その真相を深掘りする。
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Posted by ブクログ
松本創編著. 2024. 大阪・関西万博「失敗」の本質. 筑摩書房 / ちくま新書 (1808).
- 結果的には万博行った後に読み切ったことになる。行った直後に交通機能麻痺の事件が起きて(2025-08-13)、不謹慎ながら維新および万博協会が無策すぎて笑ってしまった。
- 色々な問題点が語られているが、特に
(1) CFOが2024年まで割り当てられておらず、割り当てられたときにはもう予算の大半が肥大仕切った後だった
(2) 電通の非協力は東京五輪汚職事件が直接のきっかけではあるものの、電通が自民党以外の政党および大阪府・大阪市に対して相対的に冷淡であり、謹慎期間が解けた後も万博に非協力的だった
(3) 松本人志スキャンダル直後から吉本が公的事業への進出に完全に及び腰になった
(4) 司令塔の役目を果たすべき人物がおらず、その役目を果たすべきだった石毛博行事務総長が極めて無能だった
などの指摘が興味深かった。
(1) … 同書 pp. 149–151
(2) … 同書 pp. 112–126
(3) … 同書 pp. 138–146
(4) … 同書 pp. 146–149
この4つの指摘部分は全部3章(西岡研介による)に入っている。他の部分が面白くない・重要でないわけではないのだが、気になっていた「こういう感じだろう」に対して「実はそうでもない」部分と「もっとひどい」部分が特に多かったのがこの民間企業の関わりの部分だったので、特に印象付けられた。
とても良い本だったので★5としたが、個人的には「では大阪関西万博にとっての失敗の“本質”とは結局どれが要因として一番大きいのか」については適切に回答できているか、よくわからなかった点は気になった。もちろん、情けないレベルの欠陥が大小無数にあることはよくわかったのだけれど。
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以下余談:
ところで、2027年には自民党およびその盟友たる電通肝煎りの「横浜花博」(2027年国際園芸博覧会;神奈川県横浜市・旧上瀬谷通信施設跡地にて開催)があるらしく、それを大阪関西万博2025より盛り上げていこうという動きすらあるらしい。しかしこの座組は結局東京五輪2020(からの2021)のやり方と同じなわけで、ある意味で出力としては統率力が弱くてぐだぐだに終わりそうな大阪・関西万博2025の方が、結果的に現場の direction の自由度が高くて良い面もあるのかもしれない。東京五輪の開会式直前のごたごたみたいなことが来年から再来年にかけて聞こえてこないか、今から気になるところだ。
Posted by ブクログ
夢洲という場所がそもそも悪いという章が最高に面白い。杭打ちしなくちゃいけないとか、各国のパビリオン建設が極めて困難な現場であったり。
地下建設が難しい理由。読んでてワクワクしてくるぐらい最悪なことばっかり。
東京オリンピックが何となく終わったように関西万博も何となく始まって終わるのかと思ったけど…どーなんのかな。
Posted by ブクログ
大阪・関西万博関連の法律が次々と(異例とも言える強引なやり方で)衆参様々な委員会で決まっていく様子をインターネット中継のこちら側で目撃してきたひとりとして、何度も何度も、「だから言ったのに!」と机ドンドンしたくなる。ほんの数日前には、これ以上は無かったはずの“追加予算”が計上された。それもやっぱり“誰か”が強引に夢洲に決めたからなのでは?でもこれは大阪・関西だけのことじゃない。目を背けず日本社会全体で見届けなければならないのだろうな。つらい。
Posted by ブクログ
万博が別の意味で楽しみになってくる裏ガイドブックだった。ま、それは冗談としても、大阪という地の背景から維新との関連から建築の観点からと様々な視点から深掘りできる。
Posted by ブクログ
この本を読むと、絶対行きたくなくなるか、興味を持って行きたくなるか、どちらかだろう。
私は前者。
確かにここ5〜10年の間に、世界は大きく動いてしまった。
万博誘致を考える段階では、まだ経済成長に夢を託す気持ちも分からないでもないが、それでも上に立つものは未来を見据えて、行動して欲しいと思ってしまう。
地盤の脆弱な夢洲に決まってしまったこと、広告代理店やアンバサダーの撤退など、散々な内容ではあるが、そもそもなんのために万博を誘致するか、というところが一番頭の痛くなる話だった。
もしかすると為政者や権力者は、自分の夢や、利益や、力の誇示のために行動している人が、結構な数でいるのかもしれない。
哀しいかな、昨今の世界情勢を見ても、その考えは強くなる。
Posted by ブクログ
一般人にとって何が真実かわからないまま時間は過ぎていく。それと同時にどことなく対岸の火事である。しかし他山の石として捉えておかなければならないことでもある。直感で進めていいこともあるが、災害対策はリハーサルを含め時間をかけなければならない。万博は成功してほしいが、現段階ではまだ興味すら持てずにいる。
Posted by ブクログ
良書。
大阪維新の会から始まり、IRありきの後付開催。
夢洲は交通、地盤に問題多。
責任者が明確でない。政府自民党が積極的でない。唯一ノウハウを持つ電通が参加していない。
表沙汰にならない裏事情がよくわかった。
Posted by ブクログ
いよいよ今年の春に大阪・関西万博の開催が開催される。
このレビューを書いてる段階でもう残り2ヶ月なのだが、未だに連日問題が浮上する。
最近も入場券の売れ行きの悪さから「並ばない万博」という理想を降ろさざるを得ない当日券の導入や、テーマ事業プロデューサーとして名を連ねている著名人が「万博はコスパ悪い」発言をしたり、と言った問題が出てきている。
本当にこのままいって大丈夫か? と思い続けたままもう後戻りできないところまで来てしまった。
本書は大阪・関西万博がなぜ失敗したのか(まだ開催されてもいない万博を失敗というのは反発も大きいだろうし、実際そこを批判されているが)を5人の論者が5つの視点から語っていく。
正直、本書で記される問題の殆どが、回避できそうな問題を無理に通したがために失敗に向かっていってるように思える。その様と、本書のタイトルにも題されている「失敗の本質」というタイトルからも、かつてのインパール作戦を思い起こしてしまう。
もうここまできたら更なる大きな問題が出ないことを祈るばかりである。
Posted by ブクログ
第1章 維新「政官一体」体制が覆い隠すリスク―万博と政治 木下功
第2章 都市の孤島「夢洲」という悪夢の選択―万博と建築 森山高至
第3章 「電通・吉本」依存が招いた混乱と迷走―万博とメディア 西岡研介
第4章 検証「経済効果3兆円」の実態と問題点―万博と経済 吉弘憲介
第5章 大阪の「成功体験」と「失敗の記憶」―万博と都市 松本創
上記の通り5人の識者が、チケット販売が予定通り進まない大阪万博の失敗の原因を語っている。
いろいろ書いてあるが、、
・東京五輪汚職で広告代理店の腰が引けたこと
・自民と維新の確執で、自民べったりの電通が動かないこと
(もともと維新は自由民主党の若手グループが反旗を翻して作った)
・五輪招致に失敗して夢洲を使いたかったが、そこに無理があったこと
(2025万博を提唱していた堺屋太一氏は1970と同じ場所での開催をと言っていた)
・そもそも総花的な万博の意義、役割はおわったということ
てなところだろうか。
日本酒飲み仲間は自営業の合間を縫って万博に行くという。まあ話のネタにはなろう。
私は行きたいと思わないなあ。ラン旅優先だからだけど。
匿名
過去の戦争のような万博
読んでいて思ったのは、これだけ問題点が上がっても、万博が太平洋戦争の経過のようなものになっていること。
色々な問題があっても、突っ走る、隠ぺいする。色々と先延ばし、あるいは対策してこなかった結果、引き返せないで被害を大きくする。
責任の所在が分かりにくい、個々の感情や意見で重要なことが決まってしまう。
これって、太平洋戦争の経過だなと思ってしまった。
Posted by ブクログ
どんなことになっているのか知りたかったので読んでみた本。大きな仕事は力技で引っ張っていかないといけないことは理解するものの、意思決定に日本独特の空気が支配していた感も否めないんだなと。
いざやるとなったところで、仕切り役が不在という現実。やっぱりこれだけの仕事になってくると大手広告代理店やゼネコン、商社など実績や経験、人材が集まっているプロの仕切り役、取りまとめ役が必要になってくるもの、、政治やステークホルダーとの関わりも含めて座組の作り方というか、考えさせられます、、
ものごとの本質を見極める示唆になります。
Posted by ブクログ
大阪の今日と、今回の万博へのうねり、は切っても切れない関係にありそうだ。
電通の章、経済効果の章、建設は少し専門的だったけれど、
いろいろと知れて興味深かったです。あと1か月、無事まずは終わるといいですね。
Posted by ブクログ
万博は、まだ「失敗」とは言えず、予想より人が入っている印象だが。だが、当初予算を大幅に超える建設費や、維持費の高騰。メタンガスによる事故などの影響による不安、広告塔である吉本のゴシップなどで、どうも「失敗」の印象が根強い。最近も、虫がわいている、海外パビリオンの工事が遅れている、トイレが使いにくいなど色々あるようだ。
間接的には私も他人事ではない関係もあり、超遠目には見ていたが、パビリオンの予約が取れなかったり、ウェブ手続きが高齢者には難しい、行列解消の課題など多々課題はあるようだ。個人的には、イベントの成否を特定政党の利害と結びつけ、政党支持者以外が、反対意見に与し易い構図も良くないと感じている。
ー 近年、世界の五輪開催地や候補地で反対運動が激しくなっているように、都市の財政や居住環境が悪化し、経済的格差が拡大していく時代にあって、「祝賀資本主義」(J・ポイコフ)の推進装置であるメガイベントはデメリットの方が大きいと人びとは気づき始めているのではないか。だが、大阪ではそんな時代潮流に関係なく、過去の成功体験にとらわれた一部の人たちが「成長の起爆別」だと喧伝し、不都合に目をつむって万博を強行する。それでも大半が無関心のまま、誰も止めることができない。そして、維新首長の下で府市が一体化し、政治と行政の間の線引きも失われた今の状況では、おそらく誰の責任も問われない。大阪が置かれたその状況こそ、大阪・関西万博「失敗」の本質であろう。
本書は開催までの評価、総括といった所だろうか。まあ著者は維新批判論者なので、割り引いて読めば良いのだが。ポジショントークは、いつも片手落ちで残念だ。
Posted by ブクログ
万博の大成功を願っているし、行った人の楽しかったTweetに羨ましいしかない。
同時に始まったカジノ・IRの建設工事。
個人的には夢洲のカジノ計画には大賛成。
ギャンブル依存症で困るのは、その人らが市井に溢れることであって、むしろ夢洲に集中させて、駅前のパチンコなどなくなれば良い。
日本の誇る文化なのに、外国人に溢れ、日本人が行きたくないところになってしまった、京都、東京、大阪ミナミ、博多。
文化に理解を示してくれる外国人にはどんどん日本を知ってもらいたいが、大半は変な国で安くてメシウマな日本に行って騒ぎたいだけ。なら、夢洲に、エセ日本テーマパークとカジノとリゾートと吉本エンタメ作って、そんなオーバーツーリズムの掃き溜めにしたら良い。
そう思ってる身なので、5篇に亘る、万博ディスりは、これまでの歴史と経緯の勉強として極めて有用な本だった、以外には何もないかな。
既に、吉本が去り、維新は自民党の予算に協力して軍門に降った。電通も直前のPR業務には見事復活。
既にスタートをきったIR。
日本人のための、日本の京都や大阪を手に入れるための、第一歩大阪万博。(違)
海外パビリオンに行くのが楽しみです。
(あ、書物としての感想はありません。真逆の立場ですので。)