阿部昭のレビュー一覧
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小説っていうのか、エッセイというのか。
そういう分け方をそもそもしない方がいい気がしている、読書においては。
あの夏をうろうろとしている私には、ここに出てくる父にどうしても肩入れしてしまう。
この本では、父と言えば、阿部昭の父と阿部昭当人が出てくるので、前者はちらほらなのだけど。
どうして作者は、こういう風に父と、父の世界を見る事が出来たのだろう。
とても客観的、冷静で第三者の視点。正しい正しくないなどなくて、それが余計に、ウロウロしている私の足を掴んでくるんだけども。
何かで、大江健三郎がダメな人は阿部昭を好むと見かけて、私は大江健三郎は読んだことがないし、難しいと聞いていて手に取ろう -
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後藤明生。今だと完全にクズ扱いされる男性像だけど、この当時はまるで問題視されない「モテ自慢」の域だったのかと驚愕。そんなに昔ではないのに。
黒井千次。多人数視点の現代的な構成だが、いかにも小説的な登場人物の行動の突飛さにやや違和感を覚えるのはやはり時間の為せる技か。
阿部昭。私小説風だけど障害者の兄弟など現代にも通じるテーマを扱っていて、本書の中では一番印象的。
坂上弘。阿部昭にも通じる家族の葛藤を扱うが、近親相姦的な描写が生理的に無理。
古井由吉。現代的な視点でみると一番の問題作ではないか?男性作家による「女性」という主題の扱いがとにかく難しくなったと痛感する。
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ネタバレ結末よりも過程に読み応えがあるのではないかと、二作品目にしておもうようになった。どの短編・中編も最後の場面はふっと途切れるようにして終わる。たしか「未成年」で芥川賞候補作に入ったとき、選評で最後が良くないというふうにも言われていた。阿部昭の作品にはひとつの確かな流れはあるのだけれど、はじまりと終わりがないような印象を受ける。自分のうちの歴史のある一点にふと作家の眼差しがはいり(これが作品の一行目が書かれた瞬間とみる)、やがてはなれていくような。眼差しという、まるで落とし蓋のような透けたフィルターが作品の蓋をしているため、どの作品も背景に作家の歩んできた人生がありありと浮かんでみえる。
小説の -
Posted by ブクログ
『短編小説礼賛』が良かったので、本人の書く短編小説はどうなのかと読んでみた。
「猫」はシャム猫を飼って、蚤がいるだの、しょっちゅう腹を下す(胃腸が弱かったのだろう)だの文句を言い、「出来損ない」と呼び、挙句の果てにもがき苦しませた末死なせてしまう。小説としてみれば、味わいがなくはないのだが、この猫の扱いに心底腹が立つ。昭和の猫の扱いかたなんて、こんなもんだとは分かっているが。「散歩」でも、恩師の家の女中に劣情を抱く様子が描かれるが、インテリが、頭も容姿も悪い女を「こいつならやらせるだろう」と見くびるのが不快。まあ、振られるから、ちょっと間抜けなおかしみもなくはないのだけど。息子を描いた「言葉」