阿部昭のレビュー一覧

  • 千年・あの夏

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    『千年』は後半で良さを発揮している印象だったので、当初は後半部分を削って載せていたとは驚きです。文章から伝わる静かな物悲しさが、読んでいて心地よかったです。

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    2022年07月27日
  • P+D BOOKS 単純な生活

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    大人になって、家族が増えても、ひとりで散歩を楽しんだり、仕事をするまでの気持ちを作ったり、子供の頃とあまり人は変わらないのかもしれないことに、読んでいて安心する。
    自分の子供のことで頭がいっぱいになったり、パートナーの老いやその先のことを心配したり、寂しさも認め、大変なことだったと綴る言葉の素直さがとても良いと思った。
    大変な時は、大変だと言って良いんだと思えた。
    この本の発行日付から、およそ5年後で作者のプロフィール欄が結ばれていて、読み終えてからその年月を想像してみたりした。

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    2022年01月01日
  • 未成年・桃 阿部昭短篇選

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    ネタバレ

    前半の話がとくに好きだった。
    いわゆる私小説系にジャンルされる話だと思うが、主人公が小説家の小説ってすごいなとふと思った。ある種、身分を露わにすることで自分の身の回りに起こることだけで勝負している気がする。それでいて彼の眼に映る景色がちゃんと面白く見える。すごい。

    おふくろがかなり好き。若い男が未成熟なまま女と関わりを持つ話は好きかもしれない。話としてはちがうところが多いけれど、安岡章太郎の「ガラスの靴」を感じる。そして母との話でまた新たなものを見た気がした。好き。

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    2021年10月25日
  • 千年・あの夏

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    小説っていうのか、エッセイというのか。
    そういう分け方をそもそもしない方がいい気がしている、読書においては。

    あの夏をうろうろとしている私には、ここに出てくる父にどうしても肩入れしてしまう。
    この本では、父と言えば、阿部昭の父と阿部昭当人が出てくるので、前者はちらほらなのだけど。

    どうして作者は、こういう風に父と、父の世界を見る事が出来たのだろう。
    とても客観的、冷静で第三者の視点。正しい正しくないなどなくて、それが余計に、ウロウロしている私の足を掴んでくるんだけども。

    何かで、大江健三郎がダメな人は阿部昭を好むと見かけて、私は大江健三郎は読んだことがないし、難しいと聞いていて手に取ろう

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    2017年11月11日
  • 無縁の生活・人生の一日

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    どこかなんか怖い本だった。
    お化けが出るわけでもないし、恐怖体験があるわけでもない。
    足元にある仄暗さが、一瞬真っ暗闇になるような。一瞬すぎてわからないんだけど、確実に囚われた、何かに、って思う怖さ。油断するとやられる。

    「それが大人になればわかる」

    日常の、目の前の現実を冷静に、一歩下がって眺める時、その冷たさこそが本当なのだと思う。
    世の中には、きらきらしたものやほかほかしたもの、そういうもので溢れているけれど。
    輝かしいもの優しいものに囲まれていたい人は、この本は読めないんだろうなぁ…とぼんやり思ったのでした。

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    2017年11月07日
  • 大いなる日 司令の休暇

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    ついついお父さんの立場になってしまって(笑)そういうことを書いている本じゃないんだけども。
    とてもよかったので、また再読したい本の一つとなった。

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    2015年10月17日
  • 大いなる日 司令の休暇

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    阿部昭の初期の5作品

    幼年詩篇
    大いなる日
    鵠沼西海岸
    司令の休暇
    明治四十二年夏

    をまとめた文庫です。

    中学生のころ学習塾で「幼年詩篇」 ”あこがれ”の一節 を読んで、それがずっと印象に残っていて、いつか通しで読みたいと思っていたのですが、10年近くたって作品名がわかり、ようやく読むことができました。

    収録された5作は独立した短編ですが、いずれの作品も作者とその家族の体験がベースになっています。

    余談ですが、阿部昭の地元藤沢のジュンク堂に彼の小説が一冊もなかったことには、少しさびしい思いがしました。

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    2013年12月20日
  • 無縁の生活・人生の一日

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    のっけからなんとなく飛ばしてる「自転車」が面白い!
    ゴミ溜めにかけこむ家族!
    「やめなさい!やめろ!」必死のお父さん(阿部さん)!
    学生時代の雨にまつわる切ないようなおかしいような話や、それちょっとヤバイ、とつっこみたくなるエピソード満載。
    静かながらも心が動かされるエッセイ集です

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    2009年10月04日
  • 天使が見たもの 少年小景集

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    短編というより詩的であった。少年から見た世界(戦争に負けて帰ってくる父親像)、父親から見た少年。全体を通して暗い印象はなく爽やか。
    星マークが好きだったもの。

    ⭐️「子供部屋」
    「幼年詩篇 1 馬糞ひろい 2 父の考え 3 あこがれ」
    「子供の墓」
    ⭐️「自転車」
    「言葉」
    「天使が見たもの」
    「海の子」
    ⭐️「家族の一員」
    「三月の風」
    「みぞれふる空」
    「水にうつる雲」
    「あの夏あの海」

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    2023年10月27日
  • 「内向の世代」初期作品アンソロジー

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    後藤明生。今だと完全にクズ扱いされる男性像だけど、この当時はまるで問題視されない「モテ自慢」の域だったのかと驚愕。そんなに昔ではないのに。
    黒井千次。多人数視点の現代的な構成だが、いかにも小説的な登場人物の行動の突飛さにやや違和感を覚えるのはやはり時間の為せる技か。
    阿部昭。私小説風だけど障害者の兄弟など現代にも通じるテーマを扱っていて、本書の中では一番印象的。
    坂上弘。阿部昭にも通じる家族の葛藤を扱うが、近親相姦的な描写が生理的に無理。
    古井由吉。現代的な視点でみると一番の問題作ではないか?男性作家による「女性」という主題の扱いがとにかく難しくなったと痛感する。


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    2023年03月10日
  • 新編 散文の基本

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    『Ⅰ 私の文章作法』では小説に限らず文章を書くということについての思索が展開されます。『Ⅱ 日本語について』にはいわゆる美しい日本語とか言葉の品格というようなものについて書かれた文章が集められ、『Ⅲ 短編小説論』には国内外の作家および自作短編について書かれた文章がまとめられています。文章というものは、その書き手が文章を書き始めた幼い頃から根本は変わらないのだ、という信念を、どの文章からも感じます。巻末に収められた荒川洋治さんとの対談と解説は、荒川さんのことを好きな方なら楽しめるのかもしれませんね。

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    2023年02月28日
  • 千年・あの夏

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    ネタバレ

    結末よりも過程に読み応えがあるのではないかと、二作品目にしておもうようになった。どの短編・中編も最後の場面はふっと途切れるようにして終わる。たしか「未成年」で芥川賞候補作に入ったとき、選評で最後が良くないというふうにも言われていた。阿部昭の作品にはひとつの確かな流れはあるのだけれど、はじまりと終わりがないような印象を受ける。自分のうちの歴史のある一点にふと作家の眼差しがはいり(これが作品の一行目が書かれた瞬間とみる)、やがてはなれていくような。眼差しという、まるで落とし蓋のような透けたフィルターが作品の蓋をしているため、どの作品も背景に作家の歩んできた人生がありありと浮かんでみえる。

    小説の

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    2022年08月03日
  • 天使が見たもの 少年小景集

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    短編集。小川洋子さんのメロディアスライブラリーで表題作の「天使が見たもの」が紹介されていた。主人公の少年がある日学校から帰ると、病気がちな母が亡くなっていた。「このまま病院へ運ばずに、地図の家に運んでください。家には母も死んでいます」というメモを残し、少年は投身自殺したという、実際の事件が題材。地図に書き込まれていた「やく二百五十メートル」。
    沢木耕太郎さんの、実際は母親は自殺であったにかかわらず病死に設定した点は、阿部昭の、少年に対するやさしさではないかという解説に胸を打たれた。
    他にも父として、息子としての阿部昭ワールドがあった。

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    2019年11月20日
  • 千年・あの夏

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    むかーし読んだ、福武の「18の短編」とは
    えらい印象が違ってびっくり。
    思い込みって怖いですね・・・

    きっと他にもこういう作家はいそうです。
    人様の感想を読ませていただいての気づきは
    貴重なんですなー

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    2014年11月04日
  • 千年・あの夏

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    「桃」の何だか分からないけどどこか立ち入ってはいけない、という大人世界への子供の勘と居心地の悪さ……するどいです。

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    2009年10月04日
  • 無縁の生活・人生の一日

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    『短編小説礼賛』が良かったので、本人の書く短編小説はどうなのかと読んでみた。
    「猫」はシャム猫を飼って、蚤がいるだの、しょっちゅう腹を下す(胃腸が弱かったのだろう)だの文句を言い、「出来損ない」と呼び、挙句の果てにもがき苦しませた末死なせてしまう。小説としてみれば、味わいがなくはないのだが、この猫の扱いに心底腹が立つ。昭和の猫の扱いかたなんて、こんなもんだとは分かっているが。「散歩」でも、恩師の家の女中に劣情を抱く様子が描かれるが、インテリが、頭も容姿も悪い女を「こいつならやらせるだろう」と見くびるのが不快。まあ、振られるから、ちょっと間抜けなおかしみもなくはないのだけど。息子を描いた「言葉」

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    2013年06月15日