安達正勝のレビュー一覧
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6代にわたり国王のもとで死刑執行人を勤めたサンソン家。その4代目シャルル・アンリ・サンソンがこの本の主人公。国王ルイ16世を崇拝していたにも関わらず、その首を断頭台の上で切り落とす役目を果たさなくてはいけなかった男。
フランスの歴史をよく知らないので、びっくりする話が多かった。
ルイ16世は拷問や残酷な死刑(八つ裂きとか)に反対しており、死刑そのものも極力なくしたい考えをもっていたこと。
死刑執行人の腕や、罪人が暴れたりすることによって打ち首が一刀のもとにできなかった場合、罪人はのたうちまわる。(斬首は基本的に上流階級、下層階級は吊し首) そんな惨状をなくしたいとの人道的な理由からギロチンが発明されるわけだが、試作品では半月形の形だった刃の角度を、数学的な観点から、それではうまく切り落とせないから斜めにするように、と改良を指示したのはルイ16世だったらしい。
ルイ16世は最初は革命に賛成で、民衆の多くは国王中心とした自由平等を実現する体制を考えていたが、国王が国外に逃亡しようとしたために王家に対する国民感情が一気に悪化した。(国王の感覚としては国外の親戚の王族に保護を求めるのは当たり前という感じだが、民衆からしたら国を外国に売り渡す行為に映った)
死刑執行人の家系は、その職業がバレると忌み嫌われるため、家長はなすすべもないが、家族に関してはなるべく身分を隠そうとしていたらしい。子どもも地元の学校には入れないので、遠く離れた学校に身分を偽って通わせた。一応、国王の任命なので給料はだいぶ良かった。だから普段は貴族のような身だしなみで過ごし、サンソン自身はとてもイケメンで頭が良かったのでモテた。
ある夜に食事をともにした貴族の女性から、身分を隠して同席したことを「穢らわしい!」と訴えられたのだが、執行人という身分のため弁護を引き受けてくれる弁護士を見つけられなかった。仕方なく自分で自分を弁護するのだが、その論旨のまあ見事なこと!
国王の権威のもとに、あなたがた判事が下した判決によって、私が刑を執行しているだけ。私は国の秩序を守っているだけだ。それを穢らわしいと訴えるとは、法というものをご存知なのか!?
という感じ(本文はもちろんもっと長い)で訴えを棄却させた。
このくだり、う~ん、と唸るくらい、面白い。
サンソン、教養も、信仰心も、人格も申し分ないくらいできた人なんだけど、それ故に、執行人という仕事に苦悩する。
それでも革命前は、死刑執行自体がそんなに多くなく、多いときでも日に数人、何かしらの犯罪を犯したものを手にかけただけなので、精神的な均衡は保てていたが、革命後の恐怖政治で、明らかに無実の人が処刑台に送られてきた。皮肉にも人道的見地から発明されたギロチンが、一日で4,50人もの死刑執行を可能にしてしまった。
サンソンは英邁な国王ルイ16世を慕っていた。ギロチン台まで送る際、なんとか国王を救い出す手だてがないかと苦悩する姿は痛ましい。(実際に救出しようとする勢力が一部にあったらしい)
ルイ16世は、贅沢三昧で国民の苦痛には目も向けない専制君主というイメージが強いため、サンソンの心情が理解しにくいかもしれないが、実際は下々の者のことも気にかけていて、改革をしようとはしていたようだ。
なんか、フランス革命の見方が変わった。 -
購入済み
フランス革命たるや
フランス革命・ギロチンとなればサンソンである。死刑執行人という独特な響き。これを家業とする者。その背景。
単なるサイドストーリーではない -
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かねてよりフランス革命は、世界にもっとも大きな影響を与えた史実という認識を持っていた。それゆえに関心もあったが、通史的な本を読んでも、他の史実と似たような濃度で書かれてしまう。だから、いつかフランス革命のみに言及した本を読みたいと思っていた。
随分と時間がかかったが、その間フランス革命の本は常に渉猟していた。そして、ついに本書を手にした。タイトルに「物語」の冠がついている。加えて新書版なので、量的にも読みやすい。物語の仕立てで書かれているので、革命に関わった人々の息遣いや怒号やため息まで聞こえてくるようである。だから、本書はまず読んでいて楽しかった。楽しみながら、フランス革命という世界的かつ歴史的な出来事を学べたのは、本書と出会ったことによる僥倖と言うしかない。
フランス革命は一言で言えば、絶対王政という封建制度から共和制、つまり国民に主権を委譲する革命である。封建制度を倒した革命という意味では、日本ではよく明治維新と比較される。時期的にも明治維新から遡ること一世紀も経っていない頃の出来事なので、それも比較されやすい理由かもしれない。
しかし、革命の中身や革命がもたらした結果は随分と異なる。フランス革命は、まだヨーロッパ諸国が悉く絶対王政であった時代に、いち早く「国民主権」を取り戻す革命が勃興し、あまつさえその一方で今や「民主主義」の代表であるアメリカ合衆国の独立運動をも支援していたというのだから、民主意識にあふれた革命であった。一方で明治維新は、当時長らく日本を掌握していた武家から朝廷、すなわち日本の王家へ政権を返上する革命であり、日本が「国民主権」を取り戻すには、第二次世界大戦での敗戦を待たなければならない。そう考えると、軽々に明治維新とフランス革命を比較するのは、革命後の社会が乖離しすぎていて、とても比較できるものではないという気がしてくる。なぜなら、日本が「民主化」を達成できたのは、フランスの助けを得て独立を果たし、世界の「民主主義」の旗印を掲げたアメリカに戦争で敗れた結果だからである。
今や日本は民主主義国家を標榜しているけれども、著者があとがきで記している「日本も明治維新によって近代社会に移行し、戦後は「国民主権」の国に生まれ変わったはずであったが、政府や高級官僚諸君のやっていることを見ていると、今の日本で国民本位の政治が行なわれているとはとうてい思えない」という言葉に全面的に賛同せざるを得ない。さらには、諦めなのか、日本人的な長いものに巻かれる社会的特性なのか、国民本位の政治が長らく行われることなく、戦後のどさくさからくる一党独裁的な世の中が未だに当たり前に継続していることを思えば、今からでも日本版「フランス革命」を期待したくなる。 -
Posted by ブクログ
マンガ化されるのもうなずける。映画化されなかったのが不思議だ。日本女性は『ベルサイユのばら』でフランス革命に詳しくなっているから、少女マンガ化もありだろう。
立ったまま固定されていない受刑者の首を一刀で斬ったサンソンの腕前は、わが国の首斬り朝右衛門に比肩する。
わずかな心の動揺で斬首に失敗するというのは、不謹慎だがゴルフのパターを連想してしまう。
ギロチンの刃を斜めにしたのはルイ16世のアイデア、というのはこれまで散々聞かされていた。その発案の時期は1792年3月というから驚いた。てっきり革命の前だろう、と思い込んでいたもので……。
サンソン家に生まれた美少女が活躍する山田風太郎『明治断頭台』を再読したくなった。 -
Posted by ブクログ
#一度読んだら絶対に忘れない世界史 を読んだ中で、一番興味を持った出来事、#フランス革命 。
「物語」というだけあって、人物に焦点を当て、非常にその時代を生々しく描いているのが素晴らしいと思う。教科書では革命の象徴的に記載されるバスチーユ陥落も、よくよく見たらただのノリしゃねえか!と思ってしまう。そういう意味では、今、SNSでいろいろ盛り上がるのと大差なく、人間も進歩しねえなと思ってしまう。
この革命の右往左往ぶりは凄まじく、これだけ国内が混乱している中で、旧体制との戦いとしてヨーロッパの周辺国をほぼ敵に回して戦争しているのだから国民はたまったもんではなかっただろう。
著者の大前提《フランス革命は世界史の新しい時代を切り開いた輝かしい革命であり、フランス革命を抜きにして現代世界を考えることはできない》のはその通りであり、この多大な犠牲の結果、(いろいろあるけど)国民主権の世の中になってきているわけである。 -
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しっかりした評伝。ツヴァイクの名著『マリーアントワネット』の誤りも正していて有益。ベルばらとか好きな人は楽しいのでは。
革命勃発のころ,マリーアントワネットは王太子であった長男を7歳で亡くし,悲歎に暮れていた。そして,それに国民が無関心であることにも深く傷ついた。
国民はそれどころではなかったから当然だが,彼らが全く違う世界に生きていたことをよく示すエピソードだと思う。パンがないなら云々よりも。
ヴェルサイユ行進,パン不足を訴える女達が国王夫妻に掛け合ってパリに連れ帰ったって何となく良さげな話だけど,もっと血なまぐさいのな。
掛け合うというより宮殿内になだれ込んでの実力行使による強要で,近衛兵が何人も惨殺され,その首が槍の穂先に掲げられパリへの行進の旗印になったという…。
1789.7.14のバスティーユ襲撃でも守備隊司令官の首級が同じ扱いをされていて,初めて知ったときはドン引きだった。
1791年夏至のヴァレンヌ逃亡事件も,捕らえられてパリへ戻るとき,挨拶にやってきた地方貴族が目の前で群衆に殺されたりしていて,イメージだいぶ変わるんですけど…。
かといって,ヴァレンヌから連れ戻されたマリー-アントワネットの髪が,35歳の若さにもかかわらず真っ白になっていた,というのはさすがに誇張だろうと思う。
他にも歴史のエピソードに散見される「一夜にして白髪に」って生理学的にあり得るんだろうか?一種のレトリックとして捉えてるのだが。
革命裁判所で死刑判決が下った後,数時間の猶予の間にマリーアントワネットは王妹エリザベートに宛てて手紙を書いた。
感謝と誇りに溢れたその手紙は結局届けられず,エリザベートも恐怖政治の中断頭台の露と消え,手紙を止めたロベスピエールも二ヶ月後に同じ運命を辿る。
数奇な手紙すぎる…! -
Posted by ブクログ
マリーアントワネットファンとして関連本は何冊か読んではいたけど、この本は大好きな花總まりさんが帝劇舞台1789でアントワネット役を演じるにあたり読んでいるとブログで知り、(1789観に行く身としても)絶対読みたい!!と思って購入してみたものだったが、想像以上の良書で、読んでよかった。
今までのアントワネットとフェルゼンの関係性や、特にルイ16世像の捉え方が違っていて興味深く面白かった。
マリーアントワネットという人は、あの時代のフランス王家にさえ嫁がなければどんなに幸せで愛された一生を送れたか、、、と思うと胸が痛む。母性、愛情に溢れ、一女性としては本当に魅力的な人物。ただ、賢さが少し足りなかった。マリーアントワネットもルイ16世も今までの負の遺産を一身に背負わされた不幸の王と王妃だった。
いたるところで、ここで違う判断をしていれば助かったし、違う未来があったのに!とやきもきさせられもした。
しかし、この本のテーマ「いかに美しく敗れるか」をその身をもって体現し、気高く王妃として断頭台の露と消えたことで後世こんなにも名を残し後に愛される王妃として蘇ったのかと実感した。 -
Posted by ブクログ
フランス革命に関する人物伝を数多く発表している著者によるマリー・アントワネット伝。著者は歴史学者ではなく、フランス文学者。おそらく、本書にも独自の想像が含まれているのだろうが、読み物として割り切れば、歴史の世界に没頭させてくれる良書だ。
本書のマリー・アントワネット評は、あまりに王妃のプライドを持ちすぎ、フランスを統治するのはフランス王室以外にあり得ないという観念に縛られた悲劇のヒロイン。そんな頑固な姿勢が、夫ルイ16世をフランス脱出に駆り立ててしまった。その失敗が理由で、夫妻は革命政府によって監禁され、その後処刑される。
しかし、当時の社会では人が生まれながらの身分を持っていることは当然であり、王室の下に国民が位置するのも当然。フランス革命で唱えられた人権主義、平等主義なんてことは想像外だし、それは国民だって同じ。今になってマリー・アントワネットをコチコチの王室原理主義者と批判するのはかわいそうだ。フランスからの脱出も彼女にすれば、単に実家オーストリア王朝に力添えを頼むだけの軽い気持ちによるものだった。
結局、彼女はそれほど優秀でもないが、劣悪でもない、平凡な王妃であった。たまたま、在位中にフランス革命が起こったために、後世から注目される存在になってしまった。 -
Posted by ブクログ
歴史的にも著名な王妃であるマリー-アントワネットの伝記です。彼女を読めば、そのままフランス革命を知ることができるという位に、フランス王室そのものだったのだなと思いました。王政が倒される過程において、国王と王妃は確かにいくつか間違いを犯し、そのために滅んでしまったのですが、国王にも正しいところもありました。それを滅ぼしてしまった、血を流してしまったところに、フランス国民もまた間違いを犯してしまったのだと思います。その後、第五共和制になった現代も、フランスは栄光というものには届いていないように感じます。それはこの歴史の転換点での選択に原因があったのだとわかりました。
王妃として優雅に生きた前半と、囚われてからの王妃としての使命に目覚めていく過程が、とても魅力的で読ませてくれました。