安達正勝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
フランス革命の勃発前夜からナポレオンの戴冠までを記述した良書。フランス革命と言うとバスティーユ監獄襲撃、ルイ16世の処刑、ロベスピエールの恐怖政治くらいしか知らなかったのでとても勉強になった。ルイ16世やマリーアントワネットの庶民を顧みない政治体制に嫌気がさした庶民の起こした革命とばかり単純に思っていたが、実際にはルイ16世はむしろ開明的な国王であり、またフランス革命後もむしろ王権はそのままにしようと考えてい革命家が多かったなど、知らない事が多いが、どんな歴史でもそうだが、ささいな行き違いや抗えない流れみたいなものに翻弄されて、人の運命が決まっていくという事をつくづく思わされる。その後は結果からみて演繹的に歴史的な解釈がなされていくので、ルイ16世やマリーアントワネットが極めて暗愚で革命を起こされても仕方がなかったという通説ができあがったのだと思う。まあ、アントワネットが暗愚であったのは確かなようだが、しかしながらハプスブルグ家の血統を引いた極めて気高い人物であったらしいし、そういう家に生まれた以上はその当時では庶民とかけ離れているのは仕方ないことなので生まれた時代が悪かったという事だろう。いずれにしても、フランス革命自体も庶民が起こし人権宣言を高らかに謳っている割には、実際には王権や貴族に牛耳られている権利を奪いたいブルジョワの思惑や、なんだかんだ言って女性の権利の拡大には消極的な革命家たちなど、そんなに威張れたものでもない。逆にロベスピエールはむしろその革命の精神を純粋なまでに守り抜こうとして不器用にも結果的に恐怖政治となってしまいテルミドールのクーデターで処刑されることになり、革命というものの難しさを改めて思う。
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Posted by ブクログ
これぞ中公新書の物語シリーズの真骨頂。一つのテーマに沿って歴史を学びつつ、取り上げられる人物の人間臭い部分も同時に知る。歴史を読むこと、物語を楽しむことが共存している感覚がとてもいい。それでいて筆者は歴史の仔細について全く妥協していず、自分の立場や意見もはっきり述べる。その態度がかっこいい。コラムを挟んで無名の人々に対して言及するスタンスについても冒頭で自ら立てた旗をしっかり見据えている行為で感心させられる。
フランス革命って偉大だな。いまの自分があるのはこれのおかげかも?と思いながら読んだ。「フランス革命」という字面をみただけでお腹いっぱいという感覚がするくらいにはその出来事の自体の偉大さはよく知っているつもりだったが、実際に何が起きたか、誰が関わったか、いつも勝手に想起されてくるルイ16世やマリーアントワネットらとの関わりは?という点がわかった。この年末もしっかり良書に出会えた。
良いお年を! -
Posted by ブクログ
フランス革命について人物を中心に、題名通り「物語」のように書かれており、あまりヨーロッパの歴史に詳しくない自分にも非常に分かりやすく面白く読むことができた。
フランス革命期の対応のまずさから無能なイメージが付き纏うルイ16世。実際には革命まで優れた治世を行い、優れた啓蒙君主であったからこそ革命が成立した。寧ろ「国王の革命」が端緒であった。三部会も第三身分である民衆の声が無視できなくなって招集されたのではなくルイ16世の発案であったり、革命も当初は王政を否定するものではなかった。革命の象徴のイメージがある三色旗の「白」はブルボン家の色でありパリと王家の和解の象徴であるなど、今まで自分が捉えていたフランス革命と全く違うものだった。歴史を含めてしっかりと事実を学ぶ大切さを感じた。「人間の平等」と「人道的な処刑法」としてギロチンが考案、昔と違って効率的な処刑方法だったため恐怖政治期におぞましい活躍をした。後に恐怖政治で数々の人々をギロチン送りにしたロベスピエールがかつては死刑廃止の強行論者だったのも興味深く、ギロチン一つを取っても様々な学びがあった。
「人間の自由と平等」を謳いながらも女性の政治的権利を認めない(一方で政治犯として断頭台には送った)事や、この理念と完全衝突する植民地経営を行うなど、理念が自己都合的で一貫していなかった面は否めないが、やはりこの思想が今の私達の世界を作った事は間違いない。その一方、理念や思想、正義感はフランス革命の恐怖政治期に見られるようにしばしば暴走し、簡単に人の命を奪う。ヒトラーですら私心はなく自身が信じる正義感でホロコーストを実行した。正義感は本当に恐ろしく厄介である事を再認識した。それはそれとして、ルイ16世やマリー・アントワネット、ロベスピエール、ナポレオン、その他の多くのフランス革命に関わった人達のお陰で今の民主主義社会がある事を考えると、彼らに感謝の念を覚えた。 -
Posted by ブクログ
ベルばらでフランス革命に興味を持ち、より詳しくフランス革命について知りたいと思って読んでみたが、わかりやすくかつテンポが良く、同時にワクワクさせるような文章であっという間に読んでしまった。
特に印象に残ったのは、革命時に活躍した女性のについての話。フランス革命では明治維新と違い、沢山の女性が公の場で活躍する。男社会で活躍する女性の存在は、男性社会で働く200年後の私にも勇気をくれた。是非、この後ロラン夫人の回顧録も読みたい。
ルイ16世もベルばらでの印象を覆えされた。優柔不断で内向的であまり印象よく描かれてなかったが、思慮深く聡明で教養があり、技術者としてのセンスも優れる。さらには革命派の一面があったとは!
あとはなんと言ってもナポレオン!こちらももっと詳しくその生涯を知りたいので、漫画や関連小説を探してみたい。 -
Posted by ブクログ
高校の世界史の先生がフランス革命を抒情的に語った神授業を今でも覚えているが、まさにこの本のように人間ドラマとして歴史を追う魅力はどの世代にも共感してもらえるだろう。本書によりルイ16世の人物像がパラダイムシフトした。国民思いで暴力や弾圧を避けたかった人格者で革命に肯定的な優れた王様だった。民衆を武力で鎮めていればまた歴史は違っていたかもしれない。フランス留学の経験もある鄧小平はフランス革命の事例をよく知っていたこともあって、天安門での決断を下したのではないかと思ってしまった。バスティーユは襲撃時に7人しか収監されておらず、しかも政治犯がいなかったとは…象徴が人に及ぼす力はすごい。ルイ16世の7/14日記Rienも有名だが、趣味の狩猟の獲物がRienだったとは・・ ロベスピエールも恐怖政治のイメージが怪物のような人物を思わせるが、死刑廃止を唱えるなど、人道的な偉人だったのだなぁと感心した。国民主権の自由で平等な国家を目指して、専制君主から世界を救って人類の発展に寄与するんだという、「国民・国王・国法」をスローガンにした古き良き革命の時代は何と夢とロマンに溢れる時代だったのだろうか。フランス革命が時代を超えて人々を魅了するのもよく分かる。チャールズ・ディケンズの二都物語を読み返したくなった。
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Posted by ブクログ
6代にわたり国王のもとで死刑執行人を勤めたサンソン家。その4代目シャルル・アンリ・サンソンがこの本の主人公。国王ルイ16世を崇拝していたにも関わらず、その首を断頭台の上で切り落とす役目を果たさなくてはいけなかった男。
フランスの歴史をよく知らないので、びっくりする話が多かった。
ルイ16世は拷問や残酷な死刑(八つ裂きとか)に反対しており、死刑そのものも極力なくしたい考えをもっていたこと。
死刑執行人の腕や、罪人が暴れたりすることによって打ち首が一刀のもとにできなかった場合、罪人はのたうちまわる。(斬首は基本的に上流階級、下層階級は吊し首) そんな惨状をなくしたいとの人道的な理由からギロチンが発明されるわけだが、試作品では半月形の形だった刃の角度を、数学的な観点から、それではうまく切り落とせないから斜めにするように、と改良を指示したのはルイ16世だったらしい。
ルイ16世は最初は革命に賛成で、民衆の多くは国王中心とした自由平等を実現する体制を考えていたが、国王が国外に逃亡しようとしたために王家に対する国民感情が一気に悪化した。(国王の感覚としては国外の親戚の王族に保護を求めるのは当たり前という感じだが、民衆からしたら国を外国に売り渡す行為に映った)
死刑執行人の家系は、その職業がバレると忌み嫌われるため、家長はなすすべもないが、家族に関してはなるべく身分を隠そうとしていたらしい。子どもも地元の学校には入れないので、遠く離れた学校に身分を偽って通わせた。一応、国王の任命なので給料はだいぶ良かった。だから普段は貴族のような身だしなみで過ごし、サンソン自身はとてもイケメンで頭が良かったのでモテた。
ある夜に食事をともにした貴族の女性から、身分を隠して同席したことを「穢らわしい!」と訴えられたのだが、執行人という身分のため弁護を引き受けてくれる弁護士を見つけられなかった。仕方なく自分で自分を弁護するのだが、その論旨のまあ見事なこと!
国王の権威のもとに、あなたがた判事が下した判決によって、私が刑を執行しているだけ。私は国の秩序を守っているだけだ。それを穢らわしいと訴えるとは、法というものをご存知なのか!?
という感じ(本文はもちろんもっと長い)で訴えを棄却させた。
このくだり、う~ん、と唸るくらい、面白い。
サンソン、教養も、信仰心も、人格も申し分ないくらいできた人なんだけど、それ故に、執行人という仕事に苦悩する。
それでも革命前は、死刑執行自体がそんなに多くなく、多いときでも日に数人、何かしらの犯罪を犯したものを手にかけただけなので、精神的な均衡は保てていたが、革命後の恐怖政治で、明らかに無実の人が処刑台に送られてきた。皮肉にも人道的見地から発明されたギロチンが、一日で4,50人もの死刑執行を可能にしてしまった。
サンソンは英邁な国王ルイ16世を慕っていた。ギロチン台まで送る際、なんとか国王を救い出す手だてがないかと苦悩する姿は痛ましい。(実際に救出しようとする勢力が一部にあったらしい)
ルイ16世は、贅沢三昧で国民の苦痛には目も向けない専制君主というイメージが強いため、サンソンの心情が理解しにくいかもしれないが、実際は下々の者のことも気にかけていて、改革をしようとはしていたようだ。
なんか、フランス革命の見方が変わった。