今村仁司のレビュー一覧

  • 仕事

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    自分にとっては少し難しい内容だったが、労働の尊厳を殊更に主張し、労働社会を促進するという意味においては資本主義も社会主義も同じであるという視点がとても面白かった。古代に見られるような、人間が生きるために必要不可欠な仕事が蔑視されるという状況は、現代の倫理観では受け入れ難いが、今もエッセンシャルワーカーこそ低賃金で働くことを余儀なくされ、見下されるという状況に重なりを感じる。自由で民主的とも表現されてしまうような古代ギリシア社会も、この労働の差別ゆえに奴隷制を必要としていたという事実を知ると、極一部の選ばれた市民だけが自由を謳歌していただけに過ぎない。そして万人が労働者となった現代は万人が労働の奴隷となった社会である。しかしこれから先AI搭載ロボットという奴隷を万人が手に入れられるようになれば、また古代の労働観に立ち返るという方法によって人間が労働から解放される時がくるのかなと想像した。

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    2024年09月25日
  • 貨幣とは何だろうか

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     本書は貨幣を経済学とは異なる視座で考えていく。貨幣と人間の関係、また人間存在の条件を考えていき、そこから貨幣とはなにかを考える。本書を読むとわかるが、意外にも古典的な小説のなかにも、貨幣の本質について考えさせてくれる本もあり、貨幣そのものはいかに奥深いかを実感させる。

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    2024年08月13日
  • パサージュ論 五

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    ベンヤミンの断片集であった。特に他の巻との関連があるかどうかはこの巻だけでは不明であった。メディア論と関係があると思って読んだが特には関連は見いだせなかった。スマホからの記載ができなかった。

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    2021年11月08日
  • 交易する人間(ホモ・コムニカンス) 贈与と交換の人間学

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    人類学者のモースの思索などを参照しながら、人間の諸活動を「交易」という観点から解き明かす試みがなされています。

    従来の社会学や人類学においては、利益を中心とする相互行為が根幹に据えられてきました。たとえばレヴィ=ストロースは、贈与システムを当事者の神話的想像力から切り離し、社会システムの構造を科学的に認識することをめざしました。しかし著者は、こうしたレヴィ=ストロースの見方が、贈与体制の社会における当事者の意識を切り捨ててしまっていると批判します。

    交易は、人と人のあいだだけではなく、人間と自然のあいだでもなされています。さらに著者は、感情や信念、表象といったものの相互行為も交易という観点からあつかう必要があると主張します。本書におけるモースの贈与論の読みなおしは、このような立場からなされたものです。贈与体制のおこなわれている社会では、人びとはなにか大きなものから自己の存在を負っているという感情を抱いています。このことが、人と人、あるいは人と自然のあいだの交易を可能にしていると著者はいい、こうした人間学的洞察に基づいて、労働や宗教の形成が解き明かされていきます。さらに著者は、同様の立場から市場経済の成立まで説明しようと試みています。

    贈与から交換へという社会変動論的な視座からの考察ではなく、「交易」という普遍的な人間のありように基づく人間学的な社会論という、スケールの大きな議論が展開されており、著者の「第三項排除」の発想をさらに普遍的なものへと拡張した理論とみなすことができるように思います。

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    2019年08月15日
  • 貨幣とは何だろうか

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    本書のはじめに、著者は「とりあえずは、論証ぬきで「貨幣は人間存在の根本条件である死の観念から発生する」という命題を前提にして話をすすめる」と述べています。ここでいわれる「死の観念」とは、著者が『排除の構造』(ちくま学芸文庫)で論じた事柄が踏まえられており、本書はその応用編というべき内容になっています。

    媒介形式としての貨幣が「死の観念」をうちにかかえ込んでいることを明らかにしたのは、マリノフスキーやモース以降の人類学でした。著者は彼らの議論にもとづいて、贈与されたものを破壊する慣習に、原初的な経済的・宗教的現象にひそむ「死の表象」を見てとります。そのうえで、一見したところ近代の貨幣経済にはこうした「死の観念」は存在しないように思えるものの、やはりそこには「第三項排除」という「死の観念」がひそんでいると考えます。

    本書はこうした観点から、貨幣についての社会哲学的考察をおこなったジンメルの議論を読み解き、ゲーテの『親和力』とジッドの『贋金づくり』を「貨幣小説」としてとらえなおします。そのうえで、「死の観念」が刻印された貨幣を、デリダのエクリチュール論になぞらえる試みがおこわれます。プラトンからルソーを経て現代の超越論的純粋主義の哲学的立場にいたるまで、哲学者は媒介のない理想的関係を夢見てきました。これに対してデリダは、生き生きしたパロールではなく「死んでいる」エクリチュールの根源性を説きます。著者は、こうしたデリダのエクリチュール論を媒介一般に拡大することで、貨幣によって動かされる社会秩序を批判的に認識する視座を構築する可能性を見いだそうとしています。

    本書にかいま見ることのできる著者の思想は、『交易する人間―贈与と交換の人間学』(講談社学術文庫)でより全面的なしかたで展開されており、著者の思索の道筋のなかで重要な位置を占める著作のひとつではないかと思います。

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    2023年12月23日
  • 群衆――モンスターの誕生

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    近代以降「群衆」が思想的な問題となった経緯と理由について論じている本です。

    著者は、近代資本主義が市民社会の理念をも飲み込んでいくことで、寄る辺のないまま個人として投げ出されてしまった人びとが「群衆」を形成したという考えを提示しています。そのうえで、マルクスはこうした群衆が「階級的自覚」を獲得することで革命が実現すると考え、ニーチェは群衆への呪詛とともにその「超人思想」を立ち上げたことをとりあげ、近代から現代にいたる思想のなかで「群衆」というテーマが成立したことを明らかにしています。

    後半は、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を群衆についての寓話として読み解く試みが示されるとともに、トクヴィル、ルボン、タルドといった思想家たちが群衆についてどのように論じていたのかを解説しています。

    本書は、思想家たちが群衆の登場に驚き、それを論じるべきテーマとして認識したこと自体が、思想史上の大きな問題であったという視座に立って、思想としての「群衆」論の形成について考察しています。こうした著者の視座そのものにおもしろさをおぼえました。

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    2019年06月29日
  • 近代性の構造 「企て」から「試み」へ

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    1968年のパリとプラハで起こった資本主義と社会主義の双方に反対する市民の運動には、象徴的な意味があったと著者は主張します。資本主義と社会主義は対立するイデオロギーと考えられていましたが、世界史的な観点から見ると、両者はともに「近代性」の精神的構造に基づいていると著者はいいます。1968年の事件は、そうした「近代性」への懐疑が噴出した、象徴的な出来事だとみなされることになります。

    本書では、「近代性」の精神的構造とその問題が包括的に論じられています。まず、「近代性の根源」とされる近代的時間構造がとりあげられ、円環的時間が支配する近代以前には、人びとは伝統にしたがって日々の営みをおこなっていたのに対し、近代の意識を支配するのは、直線的時間の枠組みだと述べられます。近代においては、人びとはたえず未来を先取りし、未来に向けての「企て」をおこないます。こうした精神が個々人に内在化されるとき、ウェーバーのいう「労働のエートス」が人々の内に根づくことになったと著者は主張します。

    さらに著者は、近代における機械の誕生に、「作る」ことによって自然を征服する制作的理性の成立を見ようとしています。機械論的発想は、個人主義とそれに基づく近代市民社会の根底にも認められるものです。しかし近代においては、人びとは同質的な個人であることが求められ、そのために異質的なものを排除する動きも生じることになります。二十世紀が生み出した数々の悲劇は、こうした近代的精神構造が生み出した病と考えられることになります。

    本書のねらいは、近代の精神構造を大枠でとらえようとするものだといってよいでしょう。著者が論じてきたさまざまな問題を整理して、「近代」という大きな問題圏の中に位置づけた本だということができるように思います。

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    2019年06月11日
  • 群衆――モンスターの誕生

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    大衆批判本。

    2部構成。

    第1部は群衆のの理論的考察から始っており,
    少々(?)難解です。

    第2部から読み,群衆の具体的イメージを作ってから,
    第1部を読むとよい――あとがきにも,そのように書かれている。

    第2部のトクヴィルの民主主義論を読むだけでも,
    得るものは多いと思う。

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    2013年05月12日
  • マルクス入門

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    マルクスの思想の概説書というよりも、著者自身のマルクス解釈を展開する試みというべき本。アルチュセールの構造主義的マルクス主義の影響のもとで、社会認識批判の試みとしてマルクスの思考様式を読み解いている。

    著者は、「自由」と「共同体」についてのマルクスの理解が古代ギリシア的な理解に近いということを明らかにした上で、近代市民社会に対するマルクスの批判を検討している。マルクスは、ルソーの市民社会論の影響を受けながらも、利己的な「私人」と「公的人間」との分裂を解消する具体的な道筋を示していないことに不満を持った。そこでマルクスは、現実の一人ひとりの個人が、抽象的なままにとどまっている公民をみずからのうちに取り戻し、個人としての人間がその経験的生活、その個人的労働、その個人的諸関係の中で「類的本質」を実現するための、現実的条件を明らかにすることを、みずからの課題として引き受けることになる。

    マルクスはその条件をプロレタリアートに求めたのだが、著者はプロレタリアートが、もはや「一つの」社会的階級、「一つの」身分ではないという。それは市民社会から排除された存在であり、それ自身がすでに社会の解体そのものなのである。そうであればこそマルクスは、社会は社会自身がみずからを変革する条件を内部から産出しているときに、またそのときにのみ、社会変革は起きると言うことができたのである。

    本書の後半は、マルクスの貨幣形態論の中にヘーゲルの「止揚」(Aufheben)の発想がどのような形で引き継がれているかを論じている。「止揚」は、その結果のうちに、過去の経験を否定・保存・昇華する。それゆえ、マルクスの貨幣形態論は、貨幣の分析を通じて人類史における交易様式の歴史的形態を読み取る試みであり、そうした系譜学的省察を通じての経済学批判・社会認識批判になっていると、著者は主張している。

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    2012年08月26日
  • アルチュセール全哲学

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    「再生産について」を読んでいたのですが、分かりやすかった!と同時に新たな理解も得られて良かった。むしろ本書の言葉でしか理解してないです(笑

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    2011年10月22日
  • マルクス入門

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    ネタバレ

    2006.6.15
    かつて一世を風靡したソビエト連邦や国内での学生運動は、得てしてマルクスの影響が多大であるとは一般常識だが、

    「そういやマルクスって何したの?」

    という単純な疑問から読みはじめたのだけれど。難しい。これ入門じゃない絶対。時代とともに尾ひれがつき歪められていってしまったマルクスの思想の核心を突きたかったみたいだけれど、突いていない。一章ではマルクスの思想を3つの類型に分けているのだけれど、これが本来マルクスが意図した考え方なのか、時代に因って歪められてしまったけれど世間一般が考えているマルクスの考え方なのか、わからない。ていうか論理が二転三転した上にいきなり飛躍するのだから全く追えない。俺の読みが甘いだけなのか。入門だと思って油断するなかれ。予備知識ゼロの人にとってこれは応用だ。世界史受験者とかならわかるんかなあ。

    2章の途中まで読み挫折。ときおりシェイクスピアの引用が載っており、乾いた文面に潤いが。論理と情緒のバランスって案外重要なのかも。

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    2011年07月15日
  • マルクス入門

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    ソ連の崩壊により忘れ去られたマルクス主義、、、しかし、ソ連が実践したのはマルクスが予想した社会ではない。
    マルクスは自由を、労働からの解放と自由時間の中に見ている。この考えは、先進的であり、労働時間の短縮よりに、労働からが労苦的から健康のための活動になり得る。この視点で見ると、共産主義の労働共同体がマルクスの精神からかけ離れているかがわかる。また、マルクスは貨幣を誠実を不誠実に、愛を憎しみに、憎しみを愛に、徳を悪徳に、悪徳を徳に、奴隷を主人に、主人を奴隷に、愚鈍を理知に、理知を愚鈍に転倒させる力として批判している。
    マルクスの考は、貨幣な支配されている資本主義からの脱却に、繋がる思想なのだとおもった。

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    2010年10月09日
  • マルクス入門

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    経済学批判の章しか読んでいないが、マルクスの顕微鏡的論理、いわゆるミクロロジックなるものが非常に興味深い。マルクスの、人間の経済活動全般を微に入り細に穿って探求しようとするその精神には素直に感嘆する。人間労働の中に社会的性格を見出したときのマルクスの気持ちというものはどんなものだったのだろうかと思った。

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    2010年07月27日
  • マルクス入門

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    このタイトルが間違ってる・・・


    これはどう考えても「入門」ではない気がする・・・


    マルクスは悪いのか?

    冷戦の終結とともに忘れさられたマルクス。

    しかし、マルクスは、マルクス主義は悪かったのか?

    マルクスとは何か・・


    って感じの「入門」書(笑)

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    2009年12月24日
  • 増補現代思想のキイ・ワード

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    何となく、増補がでてたから読んでみた。いわゆる「簡単な解説本」ではないから、それなりに面白い。しかし、もう少しちゃんと読まないと読んだそばから忘れていくな、ということを確認。

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    2009年10月04日