細見和之の一覧
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ユーザーレビュー
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決して在日コリアンを取り扱った本ではないですが、在日コリアンにとって重要な「自分は何者なのか?」すなわちアイデンティティの部分を哲学的に分析している本です。
なので、自分のアイデンティティの部分に接近できます。
考えるきっかけを作ってみてはいかがでしょうか??
Posted by ブクログ
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ベンヤミン『パサージュ論』の最終巻だが、そもそも未完の書物なので完結編という訳ではない。
だが、この書物は、未完の断章形式であるということそのものによって、永く生き延びるのではないだろうか。
一つのストーリーによって、全ての断章が論理的に並べられ、不要なものは刈り込まれ、首尾一貫した一冊の書物として
...続きを読むの完成をみていたとしたら、あるいはこの書物は、とっくに古びて打ち棄てられていたかも知れない。
断章であるが故に、その一つ一つが、様々な角度からの光線に、いつまでも七色に煌めいているのではないだろうか?/
ここでも、想起されるのはタイムラプス撮影で撮影した雲の映像だ。
丘の上に固定されたカメラから、低速度撮影で、雲の動きを撮影する。
様々な雲が、生まれ、形を変え、流れては、あっという間に消えていく。
景色を観ているのだが、まるで時間そのものを観ているかのようだ。/
ここでは、カメラはあるパサージュを捉えている。
ショーウィンドウには、様々な商品が陳列され、大勢の人で賑わっている。
そこには数多の夢が生育し、種々の思想が繁茂している。
だが、時は流れる。
軒を並べていた商店の顔ぶれはいつしか移り変わり、賑わいも往時とは比べようもない。
当時の夢や思想もまた、打ち棄てられたポスターのように変色して、風に吹かれている。/
【上層階級のイデオロギーである倦怠にとって経済的下部構造をなす工場労働。「いくどもいくども同じ機械的工程が果たされていくだけで、いつまでも終わりなく続く苦しい労働の陰鬱な単調さはシジフォスの仕事にも似ている。労働の苦しみは、疲れ切った労働者の上にシジフォスの岩のように何度も何度も落ちてくる。」フリードリヒ・エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』(略)】/
【『天体による永遠』について。墓場に入るのも近いころ、トロー城塞が自分にとって最後の牢獄となることがわかっていたブランキ、この本を書いて、新たな牢獄の扉を開けようとしたブランキ。】
【ブランキが彼の最後の牢獄で、彼の最後の書として書いたこの書物は、私の見るところでは、今日まで完全に無視されてきました。これは宇宙論的な思弁です。
ー中略ー
もしも地獄が神学の対象であるなら、実際にこのブランキの思弁は神学的思弁と呼んでいいでしょう。】
【「彼〔ブランキ〕は、自らの運命を、天体の限りない数のなか、さらに時間の経過の全瞬間において記述している。彼の牢は、数え切れぬまでに増殖してゆく。地上に幽閉者として在る彼は、その反抗の力、その自由なる精神をもって、全宇宙のなかにそのまま在る。」ギュスターヴ・ジェフロワ『幽閉者』】/
【「この思想をそのもっとも恐ろしい形で考えて見よう。このあるがままの人生、それには意味もなく目標もない。しかしいやがおうにも繰り返される。無へのフィナーレもなく。つまり「永遠回帰」。(以下略)」フリードリヒ・ニーチェ『力への意志』】/
【「この本が実際ほんとうに何かを科学的に展開しているとすれば、それはパリのパサージュの死滅、ある建築様式の腐敗過程である。」】/
【「地獄の時間としての「現代」。この地獄の懲罰とは、いつでもこの一帯に存在している最新のことがらであり続けねばならないということだ。「繰り返し同じこと」が生じるということが問題なのではないし、ましてここで永遠回帰が問題なわけでもない。むしろ肝心なのは、まさしく最新のものにおいて世界の様相がけっして変貌しないということであり、この最新のものが隅々にいたるまでつねに同一のものであり続けるということだ。ーーこれこそが地獄の永遠を形づくっている。「現代」をありありと示す特徴の全体を規定するということは、この地獄を描き出すことにほかならないだろう。」】/
【「時代を越えた永遠の真理」などという概念とは、きっぱりとたもとを分つのが良い。】
Posted by ブクログ
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ベンヤミン『パサージュ論』とのそもそもの出会いは、笠井潔の『群衆の悪魔―デュパン第四の事件』だ。
それは、パリの街を舞台に探偵オーギュスト・デュパン、ボードレール、バルザック、ブランキなどのビッグネームが活躍するミステリーで、その中でベンヤミンと『パサージュ論』について触れられていたのだ。
この巻は
...続きを読む、先日、『悪の花』、『ボードレール パリの憂鬱』の二冊の詩集を読んでもあまりピンと来なかったボードレールがテーマの巻ということで、案の定取り付く島もない感じではあったが、かろうじて心に残った断章を引用しておきたい。
《一八四〇年ころのユゴーについて。「同じころ、彼は、人間が孤独を好む動物だとすれば、孤独を好む者とは、群衆の人だということを次第に悟るようになる。ー以下略ー」ガブリエル・ブヌール「ヴィクトール・ユゴーの深淵」(略)》
《新しいものがどういったものであるか、そのことをもっともよく教えてくれるのは、おそらく遊歩者であろう。独自の運動をし、独自の魂を宿した群衆という仮象こそは、遊歩者の新しいものへの渇望を癒すものである。実際のところ、この集団は仮象以外のなにものでもない。遊歩者が享受するこの「群衆」は、七〇年後に民族共同体〔ナチズムを示唆している〕なるものが流し込まれる鋳型なのである。》
《大都市で売春がとった形態のもとでは、女性は商品として現われるだけでなく、明確な意味で大量生産品として現われる。化粧によって個人的感情を覆い隠し、職業的表情をするということから、その事態がわかる。後に、お揃いの衣装を着たレビューの踊り子たちがこうした事態をさらに強調することになる。》
Posted by ブクログ
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ベンヤミン(1892年〜1940年)は、ドイツの文芸批評家、哲学者、思想家、翻訳家、社会批評家。
代表作:『複製技術時代の芸術』、『写真小史』、『パサージュ論』。/
《1940年、ナチス・ドイツ軍はパリに侵攻した。亡命中のベンヤミンは膨大な未完草稿をジョルジュ・バタイユに託して、パリを脱出する。》
...続きを読むだが、アメリカへの脱出に失敗し、スペインの国境の町で服毒自殺を遂げた。/
『パサージュ論』の構成:
Ⅰ パリの原風景
Ⅱ ボードレールのパリ
Ⅲ 都市の遊歩者
Ⅳ 方法としてのユートピア
Ⅴ ブルジョワジーの夢
断章形式なので、驚くほど読みやすい。
僕でも読めるというか、むしろ、散漫な僕にはぴったりかも知れない。
その反面、どうにもとらえどころがない感じだ。
まあ、全巻読み終わったところで、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストに流れる数多のキスシーンように、僕の脳裏で何かが明滅してくれれば御の字だ。/
人は、なぜパリに憧れるのだろう?
パリはなぜ芸術の都と呼ばれるのか?
ベンヤミンは、なぜパリを「一九世紀の首都」と呼んだのか?
彼は、なぜパサージュにこだわったのか?
さまざまな疑問が渦巻いているが、フランスかぶれ、なかでもパリに心を奪われた者には、避けては通れない書物かも知れない。/
《『絵入りパリ案内』は言う。「産業による贅沢の生んだ新しい発明であるこれらのパサージュは、いくつもの建物をぬってできている通路であり、ガラス屋根に覆われ、壁には大理石がはられている。(略)光を天井から受けているこうした通路の両側には、華麗な店がいくつも並んでおり、このようなパサージュは一つの都市、いやそれどころか縮図化された一つの世界とさえなっている。」》
(パリーー一九世紀の首都(フランス語草稿))
《「(前段略)‥‥‥われわれが進歩と呼んでいるものは、各々の地球に閉じ込められ、その地球とともに消え去る。常に、そして、いたるところで、地球の基地においては、同じ狭い舞台の上で同じ悲劇(ドラマ)、同じ舞台装置である。自らの偉大さに自惚れた騒々しい人類。自らを宇宙と思い込み、はてしない広がりに住んでいるかのように自らの牢の内に住み、やがては、深い侮蔑のうちに人類の高慢さの重荷を背負ってきた地球を道連れに破滅するであろう。(略)永遠は、無限に同じ芝居の上演を恒常不変に行うのである。」
この希望のない諦観こそ、偉大な革命家ブランキの最後のことばである。》(同上)
《ここではモードは、女と商品の間にーー快楽と死体の間にーー弁証法的な積み替え地を開いた。モードに長く仕えているなまいきな手先である死は、世紀を物差しで測り、節約のためにマネキンを自分で作り上げ、自分の手で在庫一掃をはかろうとする。このことをフランス語では「革命〔=回転〕(レヴオリユシオン)」と言う。》(B モード)
《あるものは破壊と繁殖だ
あるものは再創造と断片だ
あるものは断片と断片のなかの断片だ
あるものは破片と破片のなかの破片》
(田村隆一「言葉のない世界」より。)
Posted by ブクログ
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カントの永遠平和論からハーバーマスの憲法パトリオティズムまで、ドイツの思想家たちが唱えてきた政治的ヴィジョンを「戦後」という軸を設定して比較しようとする試み。またドイツにおけるユダヤ人という問題も扱われており、ローゼンツヴァイクなどユダヤ教的思想とヨーロッパ思想に何とか折り合いをつけようとした思想家
...続きを読むの取り組みも紹介される。
Posted by ブクログ
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