【感想・ネタバレ】パサージュ論 五のレビュー

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Posted by ブクログ

ベンヤミン『パサージュ論』の最終巻だが、そもそも未完の書物なので完結編という訳ではない。
だが、この書物は、未完の断章形式であるということそのものによって、永く生き延びるのではないだろうか。
一つのストーリーによって、全ての断章が論理的に並べられ、不要なものは刈り込まれ、首尾一貫した一冊の書物としての完成をみていたとしたら、あるいはこの書物は、とっくに古びて打ち棄てられていたかも知れない。
断章であるが故に、その一つ一つが、様々な角度からの光線に、いつまでも七色に煌めいているのではないだろうか?/


ここでも、想起されるのはタイムラプス撮影で撮影した雲の映像だ。
丘の上に固定されたカメラから、低速度撮影で、雲の動きを撮影する。
様々な雲が、生まれ、形を変え、流れては、あっという間に消えていく。
景色を観ているのだが、まるで時間そのものを観ているかのようだ。/

ここでは、カメラはあるパサージュを捉えている。
ショーウィンドウには、様々な商品が陳列され、大勢の人で賑わっている。
そこには数多の夢が生育し、種々の思想が繁茂している。
だが、時は流れる。
軒を並べていた商店の顔ぶれはいつしか移り変わり、賑わいも往時とは比べようもない。
当時の夢や思想もまた、打ち棄てられたポスターのように変色して、風に吹かれている。/


【上層階級のイデオロギーである倦怠にとって経済的下部構造をなす工場労働。「いくどもいくども同じ機械的工程が果たされていくだけで、いつまでも終わりなく続く苦しい労働の陰鬱な単調さはシジフォスの仕事にも似ている。労働の苦しみは、疲れ切った労働者の上にシジフォスの岩のように何度も何度も落ちてくる。」フリードリヒ・エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』(略)】/


【『天体による永遠』について。墓場に入るのも近いころ、トロー城塞が自分にとって最後の牢獄となることがわかっていたブランキ、この本を書いて、新たな牢獄の扉を開けようとしたブランキ。】

【ブランキが彼の最後の牢獄で、彼の最後の書として書いたこの書物は、私の見るところでは、今日まで完全に無視されてきました。これは宇宙論的な思弁です。
ー中略ー
もしも地獄が神学の対象であるなら、実際にこのブランキの思弁は神学的思弁と呼んでいいでしょう。】

【「彼〔ブランキ〕は、自らの運命を、天体の限りない数のなか、さらに時間の経過の全瞬間において記述している。彼の牢は、数え切れぬまでに増殖してゆく。地上に幽閉者として在る彼は、その反抗の力、その自由なる精神をもって、全宇宙のなかにそのまま在る。」ギュスターヴ・ジェフロワ『幽閉者』】/


【「この思想をそのもっとも恐ろしい形で考えて見よう。このあるがままの人生、それには意味もなく目標もない。しかしいやがおうにも繰り返される。無へのフィナーレもなく。つまり「永遠回帰」。(以下略)」フリードリヒ・ニーチェ『力への意志』】/


【「この本が実際ほんとうに何かを科学的に展開しているとすれば、それはパリのパサージュの死滅、ある建築様式の腐敗過程である。」】/


【「地獄の時間としての「現代」。この地獄の懲罰とは、いつでもこの一帯に存在している最新のことがらであり続けねばならないということだ。「繰り返し同じこと」が生じるということが問題なのではないし、ましてここで永遠回帰が問題なわけでもない。むしろ肝心なのは、まさしく最新のものにおいて世界の様相がけっして変貌しないということであり、この最新のものが隅々にいたるまでつねに同一のものであり続けるということだ。ーーこれこそが地獄の永遠を形づくっている。「現代」をありありと示す特徴の全体を規定するということは、この地獄を描き出すことにほかならないだろう。」】/


【「時代を越えた永遠の真理」などという概念とは、きっぱりとたもとを分つのが良い。】

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2022年01月09日

Posted by ブクログ

ベンヤミンの断片集であった。特に他の巻との関連があるかどうかはこの巻だけでは不明であった。メディア論と関係があると思って読んだが特には関連は見いだせなかった。スマホからの記載ができなかった。

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2021年11月08日

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