ネタバレ
Posted by ブクログ
2021年01月02日
〇交番シリーズ第4弾。主人公は物言わぬ中学生を救えるのか
実際に見たものではないものを、どのようにして描くか。
画家・ピカソの名言に
「私は対象が見えるようにではなく、私が思うように描くのだ」
という言葉がある。
見たものをそのまま描くのではなく、その画に画家自身の思いや理想、魂をどのように描き、込...続きを読むめていくかということが大事なのだ、とわかる。
文章ならさらなり、というところか。
字面でどう読者に想像させるか。
その点では、内藤了氏はリアリティ強く、情景がありありと浮かぶように、遺体の様子を書き続ける。
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本書は、内藤了氏の「東京駅・おもてうら交番シリーズ」の第4弾で、主人公・堀北が生活安全部に研修配属された時の事件を刑事の仲間たちと追っていく姿を描く。
酔っ払いの転落事故の事件経過を横耳に、生活安全課の防犯パトロールへ行くと、生理痛で出血した女子中学生と出会う。上司と対処し別れるが、翌日その子が死亡したとその友人から知らされる。彼女に話を聞くと、どうやら生理が原因ではなく、そして闇サイトで彼氏を見つけトラブルになっていたことがわかり・・・
堀北の人思いなところは先輩たちにとって眩しい存在だ。危なっかしくもあるが、それよりもキラキラしているように見えているはずだ。成長を続ける彼女をみなが応援し支えている。その点では堀北は素敵なチームに所属している。
そして、比奈子シリーズにも出てくる死神女史が出てくるところが、昔からの読者にとってはくすぐられる一部分でもあるはずだ!もちろん、単体でも楽しく読める本であるには違いない。
内藤了氏の本は好きで読み続けている。
以前まで「グロい」から想像される遺体の形はもっと少ないものだと思っていたが、この作者の作品を読み続けてると、こんなにも多くの表現方法、否、殺され方の形があるのだ、と思わざるを得ない。相当資料を読み込み、当時のその状況を想像しないと、なかなか書ききることはできないのだろう。
今回も、主人公が何かを戻しそうになった場面で、少しわたしも何かがこみ上げる気配を感じたのは、ここだけの話である。