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Posted by ブクログ
重いものを断ち切ってすっきりしたという感じはなかった。現在付き合っている恋人というのは、もともとあるはずのないものだったのだ。
今、交際相手はいるのかと、誰かに尋ねられたいと思った。令祥はその状況を想像し、口に出してみた。自分はこう答えるのだ。
「前の彼女とちょっと揉めてね。もうしばらくはいいかなって感じ」
工藤のように。
腹部からの激烈な痛みが全身を痺れさせていく。視界の開から霞がかかっていく。
その中で、令祥は無意識のうちに口元を綻ばせていた。
(中略)
常に無数の新しい一面を覗かせる彼は、いつでも新鮮で、底が知れない。
自分も今晩からでもあの目つきを練習しよう。今まさにこの身に向けられている、冷たい目つきを。
意識が途絶える直前まで、令祥はそんなことを考えていた。
小さい頃、テレビドラマを観て脚本家になりたいと思っていた。観る人が一番盛り上がる展開を考え、ドラマにするのだ。だが、次第にわざわざ虚構の世界を借りる必要はないと考えるようになった。自分の実人生を使えばいい。
ためいきが洩れた。
自分という人間は。理央はつくづくと思う。
何といい女なのだろう。
常に正しくて優秀なのだ。
すべては母のために。三鷹が守るために。母を傷つけるものは、どんな些細なものでも取り除き続けなければならないのだ。
その理由は改めて述べるまでもない。
母親とは、至高の存在なのだ。自分がこの世に生を受けて初めて出会った人。世界中の誰よりも美しく、気高く、完璧な女性。
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