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医師たちが目の当たりにした地下鉄サリンの犠牲者・被害者たちの症状は、戦慄すべきものだった。約二か月後、教祖逮捕。公判が始まった。次々に明らかになる殺害事件の詳細、洗脳の恐怖、化学兵器の数々。教団の闇に迫った医師はついに証人尋問に臨んだ。精確で豊富な医学の知見と毅然とした態度で――。未曽有の事件の端緒から終結まで、医師として関与した目で描き上げた類を見ない大作。(解説・國松孝次)
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Posted by ブクログ
面白かった。オウム事件についての本は沢山読んできたけどこういった医者・学者の立場からの物はなかったので非常に楽しめた。ただ範囲サリンなどの化学兵器だけに収まらず一連の殺人事件などにも及んでいるので、事件の全体像についても描かれている。ただそれが主人公の衛生学者の視点なので、専門分野以外についても語っ...続きを読むていたり公判をすべて傍聴したかのような書きっぷりがどうにもちぐはぐな印象は受けた。ほぼノンフィクションなんだけども、実際主人公の沢井のモデルになったのは井上尚英という学者らしく、作中に登場するこの人の著書も読んでみたい。しかしこういった有識者は警察からの照会、メディアの取材、裁判の証人など大変な責任を負っているんだなと驚いた。作中の公判シーンでの麻原の発言に「子供たちと自由に生活できる」ってのがあって、麻原の人間的な部分がチラッと見えてしまってなんか悲しいような複雑な感情が湧き起こってる。これまでイカれた教祖とだけ捉えていたんだけど、親でもあるし子を愛しもしたんだなと。
和歌山砒素カレー事件を題材にした『悲素』は18年に読んだ。本作も、語り手は九州大の沢井教授。冒頭は、『悲素』のサリン事件回想の場面とほぼ同じ展開。現実の事件を基にした物語とは言え、テーマが変わったからといって関連する場面を変えたりしない、作者の姿勢が見えた気がする。 インチキ宗教に、高等教育を受けた...続きを読む優秀な人材が嵌まり込み、大量殺人を起こしたこと。その、状況的に真っ黒な、しかも前代未聞の凶悪犯罪を起こしたと思われる組織の広報担当が連日TVに出て、空疎な反論を吐き散らしたこと。それを視聴率が稼げるからとTV局が連日放送し、我々もそれを半ば面白がって見ていたこと。オウムも十分に異常な組織だったが、それをここまでのさばらせた世相も、その中に生きていた我々もまたなんと異常だったのだろうか? 異常というなら、今現在のネット社会だって、数十年先、どんな目で見られることか、とか脱線気味に考えてしまった。
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