中上健次は気になる作家の一人だが、なぜかこれまでその作品に触れたことがなかった。
苦手な純文学、芥川賞作家、難解な表現、更に作家から匂う暴力的な風貌が自分の中で危険信号となって増幅し、
触れてはいけないイメージと重なって、ずっと敬遠していたのかもしれない。
中上の生涯を描いた高山文彦『エレクトラ』は
...続きを読む、このところの出張の友として鞄に入れていた。
作者は被差別部落で生まれ育った中上の少年時代から、作家として認められていく過程をあますことなく綴っていく。
46歳で逝く晩年では、中上が故郷・新宮の路地にこだわる心境を見事に分解、分析してみせる。
この手法は出世作となった『火花~北条民雄の生涯』で確立した、執拗なまでの取材が基盤となっている。
これまで中上作品を読んだことがない僕にも、すぐに手に取ってみたくなる魅力的な表現があふれているのだ。
あまたのノンフィクション作家がいるが、高山文彦は自分の中では格別の存在として位置づけたくなった。