作品一覧

  • トーマス・マンはなぜ日本で愛されるのか

    トーマス・マンはなぜ日本で愛されるのか

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,683円 (税込)
    生誕150年、没後70年記念出版 トーマス・マンの作品は日本で繰り返し翻訳されている。大長編『魔の山』はこれまでに七人の翻訳家によって訳出され、代表作のひとつ、『トーニオ・クレーガー』にいたっては、この100年間で日本で17人の訳者によって翻訳され、刊行されているという事実が本国ドイツで驚きをもって伝えられた。なぜこれほどまでに日本で人気があるのか。 23歳で初の短編集を出版したノーベル文学賞作家の魅力はなんなのか。同じく23歳で芥川賞を受賞した日本のふたりの小説家が、ドイツの記念式典にも招待される世界的に著名な研究者とともに、文豪マンの作品について語り尽くす。 マンは1875年に北ドイツのリューベックに生まれ、1955年にスイスのチューリヒで死去。2025年は生誕150年を祝う式典が世界各地で行なわれ、ドイツでは四日間開催され、大統領も出席したという。なぜそれほどまで愛されるのか。 本書には、九州大学で行なわれた生誕150年記念講演およびその後の鼎談を収録するほか、マンが日本の知人に宛てた五つの書簡の翻訳も掲載。略年表やブックガイドも完備。トーマス・マンを味わい尽くす一冊。 [目次] トーマス・マンについて 小黒康正 トーマス・マン略年譜 小黒康正 日本の一愛読者 トーマス・マンと三島由紀夫 平野啓一郎 トーマス・マン生誕一五〇年記念講演会  新訳『トーニオ・クレーガー』への挑戦 小黒康正  ゲーテに倣いて トーマス・マンと『ゲーテはすべてを言った』 鈴木結生  芸術とその〝重み〞『 ファウストゥス博士』より 平野啓一郎 鼎談 講演を終えて 小黒康正×鈴木結生×平野啓一郎 私のゲーテ(西日本日独協会講演) 鈴木結生 トーマス・マンの日本人宛て五書簡 小黒康正訳 新訳『魔の山』への挑戦? 小黒康正 おわりに 小黒康正  コラム 小黒康正   日本におけるトーマス・マン受容   トーマス・マン研究と九州大学   『トーニオ・クレーガー』か『魔の山』か?   トーマス・マン文学のための登山ガイド
  • ゲーテはすべてを言った

    ゲーテはすべてを言った

    小説・文芸

    3.8
    1巻1,760円 (税込)
    【第172回芥川賞受賞作】 高明なゲーテ学者、博把統一は、一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。 ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが……。 ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何か、学問とは何か、という深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。 若き才能が描き出す、アカデミック冒険譚!
  • 携帯遺産

    携帯遺産

    小説・文芸

    4.1
    1巻1,870円 (税込)
    小雨降る4月の晩、作家・舟倉按は知己の編集者から『文学的自叙傳』の執筆を依頼される。実家の焼失、父の失踪、震災。巡る記憶の果て、その「マイ・ブック」はloueを語りうるのか? たくらみと愛にあふれる、芥川賞受賞第1作!
  • 人にはどれほどの本がいるか

    人にはどれほどの本がいるか

    小説・文芸

    3.6
    1巻1,980円 (税込)
    四万冊を超える本に囲まれ、九官鳥にトルストイを読み聞かせる日々を送る唐蔵餅之絵。死に際して大量の蔵書を整理した彼は、切り刻んだ書物を身にまとって焼かれた。蔵書、辞書、聖書――知を求める得がたい歓びと、その果てを問う三篇

ユーザーレビュー

  • ゲーテはすべてを言った

    Posted by ブクログ

    学問を突き詰めていくとは、さも険しく孤独な道なのか。しかし、統一を囲む学問に心酔している同志たちがいる環境に、もう手が届かないだろうという諦観とそうありたかったなという憧れが胸を打つ。

    高校までの画一的な勉強には何も魅力は感じなかった。寧ろ大人になっていろいろな本を手に取るようになると、世界の彩りの鮮やかさに目がくらみ、もっともっと知りたいという欲求が高まっている。学ぶことは、知らない自分と出会いなおすことでもあるなと常々思う。

    大学を主な舞台にする本作は、私の実体験とは乖離がある。私の大学とはお酒、サークル、恋愛といった具合である。これはこれで、大切な経験であったとは思うが、やはり自分の専門分野に真摯に向き合わなかったことがいつまでも悔やまれる。

    本作に登場する人々は、アプローチの違いこそあれ自分の専門に本気で取り組み、そのことに魅了されているのである。学問の不気味さと計り知れない奥深さを、全編を通して味わえる作品である。

    0
    2026年10月20日
  • 人にはどれほどの本がいるか

    Posted by ブクログ

    2025年、「ゲーテはすべてを言った」で芥川賞を受賞した鈴木結生の第10回林芙美子文学賞佳作を受賞したデビュー作である表題作を含む3編を収録したもの。

    表題作は老年の蔵書家が蔵書の整理に雇った少女との交流を描いたもの。収録作はどれも趣向を凝らしたもので面白かった。

    0
    2026年10月16日
  • ゲーテはすべてを言った

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    私の興味関心と合致しており、最後までとても楽しく読んだ。

    作中には大量の引用と名言が出てくる。
    あとで調べてみようと思い、付箋を貼りながら読んだのだが、その行為自体がこの作品と繋がっているように感じた。

    現代に伝わってくる段階で、作られた物語が付随してきたものは多いと思うが、それをはっきりと「間違いだ」と言いきることはできないような気がしている。
    何が正しくて何が正しくないのかを、本当の意味で確める術など、現代の我々には持ち得ないのではないかとも思ってしまう。
    (それを突き止めるのが研究者の仕事、と言われるかもしれないが)

    その付随した物語には、「そうだったらいい」と、当時の人々の願いが入っているように感じる。
    現代に生きる、研究者でもない私は、それをそのまま受け取ってもいいのではないか。

    作中に登場したゲーテの手紙も、結局本物かどうかは明確には分からない。
    書かれていた言葉も、ゲーテのものではないかもしれない。
    しかし、あの言葉を信じることで生まれた想いや出会いは確かにあり、それにとても胸を打たれた。

    ただし、「伝承による逸話の変化」と「捏造」は区別したい。
    この作品を読んで、その境目の不安定さ、危うさを改めて感じた。

    0
    2026年10月13日
  • ゲーテはすべてを言った

    Posted by ブクログ

    知性に殴られるようなアカデミック冒険譚。
    難解な部分もあるけどめちゃくちゃ楽しめた。一度読んだだけでは、ストーリーの流れくらいしか理解できてない。
    作者の鈴木さん23歳なんかよ、すごすぎるわ。

    【あらすじ】

    主人公の博把統一(ひろば とういち)は、国立大学教授であり高名なゲーテ研究者。
    ある日、結婚記念日の家族ディナーの席で、紅茶のティーバッグのタグに記された小さな一文に出会う。
    『Love does not confuse everything but mixes. Goethe』(愛は、すべてを混乱させることなく、混ぜ合わせる。―ゲーテ)
    ゲーテ学者としての誇りを持つ統一だったが、どれほど記憶を辿り原典を調べても、この言葉の明確な出典が思い出せない。「この言葉は本当にゲーテが言ったのか? 出典はどこにあるのか?」という問いに取り憑かれた統一は、膨大な原典を読み漁り、自身の研究生活や人間関係を掘り起こしていく名言探しの旅に出る。

    その探求は、家族や同僚との対話、そして思わぬ事件を経て、「名言とは何か」「学問とは何か」という深遠なテーマへと読者を誘っていく。知的なアカデミック冒険譚。

    【感想】

    とにかく主人公一家のアカデミックな生活描写がすごい。娘と交わす会話のレベルが信じられない高さだし、妻の「私は私」感も異様なリアリティをもって浮かび上がってくる。自分の人生ではどう転んでもこんな家庭を築くことは絶対にないので、もはや異世界の覗き見感覚で、興味津々に読んでしまった。金銭的な心配が一瞬もなさそうな雰囲気も含めて、「まじでどこかに実在するんだろうな、こんな家族」と思わされる。

    正直、難しくてヒイヒイ言いながら読んだ。作中で彼らが「ゲーテがどう」とか「エッカーマンがどう」と議論して笑い合っている姿は、僕らで言えば「芥川がどう」「太宰はそんなこと言わない」とか、「マラドーナの発言がどう」「ベッケンバウアーの守り方がどう」と言い合っているのと本質的には変わらないのかもしれない、とは思えた。

    主人公たちが悩んでいる「名言の出典がどうこう」という問題も、端から見れば「本当にもうどうでもいいやん!どっちでもいいやん!」と思えることばかりだ。けれど、こういう狂気的なまでの情熱を持った人が実在し、泥臭く研究し続けてきてくれたからこそ今の学問があり、その派生で様々な作品が生まれ、語られる文化が存在するんだと深く気づかせてくれる。

    もう一度書くけど、著者の鈴木結生さんが、とにかく凄すぎる。この一冊を書くためにゲーテ関連の本を500冊も読んだらしい。主人公に負けないレベルの恐ろしい執念だ。九段理恵さんや高山羽根子さん作品を読んだときにも感じた「知性のかたまりのようなアカデミック系純文学」だが、10年後にはどうなってしまうのか恐ろしいレベルの才能だと思う。 鈴木さんの漫才とか大喜利とか見てみたくなる。

    何より、僕自身と著者の鈴木さん、そして登場人物たちの「面白い」と感じるポイントが被らなさすぎて、それが最高の体験だった。ファウストだけでなく、さらっと聖書などを引用してくる格好良さも含めて、これぞ文学が与えてくれる新鮮な体験だと感動した。 深い思考の深淵へ潜っていく純文学か……と思いきや、後半にかけてエンタメ的な展開が一気に加速していくのが素晴らしい。難解さと、思わず膝を打つエンタメ性が最高の形で融合した、傑作だと思う。

    0
    2026年10月07日
  • ゲーテはすべてを言った

    Posted by ブクログ

    恐らく、多くの人が教養主義的な文章が読みにくいといなると思うが、その文章こそが人文知の深淵にはまり、その世界に生きる住人の狂気さの表現になっている。

    現代社会で生きていくうえで人文科学は軽視されがちだが、人文科学こそが人を人とたらしめ、より良く生きるための羅針盤になると個人的には思っている。

    0
    2026年08月28日

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