鈴木結生の作品一覧
「鈴木結生」の「ゲーテはすべてを言った」「携帯遺産」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「鈴木結生」の「ゲーテはすべてを言った」「携帯遺産」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
学問を突き詰めていくとは、さも険しく孤独な道なのか。しかし、統一を囲む学問に心酔している同志たちがいる環境に、もう手が届かないだろうという諦観とそうありたかったなという憧れが胸を打つ。
高校までの画一的な勉強には何も魅力は感じなかった。寧ろ大人になっていろいろな本を手に取るようになると、世界の彩りの鮮やかさに目がくらみ、もっともっと知りたいという欲求が高まっている。学ぶことは、知らない自分と出会いなおすことでもあるなと常々思う。
大学を主な舞台にする本作は、私の実体験とは乖離がある。私の大学とはお酒、サークル、恋愛といった具合である。これはこれで、大切な経験であったとは思うが、やはり自分の専門分野に真摯に向き合わなかったことがいつまでも悔やまれる。
本作に登場する人々は、アプローチの違いこそあれ自分の専門に本気で取り組み、そのことに魅了されているのである。学問の不気味さと計り知れない奥深さを、全編を通して味わえる作品である。
Posted by ブクログ
私の興味関心と合致しており、最後までとても楽しく読んだ。
作中には大量の引用と名言が出てくる。
あとで調べてみようと思い、付箋を貼りながら読んだのだが、その行為自体がこの作品と繋がっているように感じた。
現代に伝わってくる段階で、作られた物語が付随してきたものは多いと思うが、それをはっきりと「間違いだ」と言いきることはできないような気がしている。
何が正しくて何が正しくないのかを、本当の意味で確める術など、現代の我々には持ち得ないのではないかとも思ってしまう。
(それを突き止めるのが研究者の仕事、と言われるかもしれないが)
その付随した物語には、「そうだったらいい」と、当時の人々の願いが入っているように感じる。
現代に生きる、研究者でもない私は、それをそのまま受け取ってもいいのではないか。
作中に登場したゲーテの手紙も、結局本物かどうかは明確には分からない。
書かれていた言葉も、ゲーテのものではないかもしれない。
しかし、あの言葉を信じることで生まれた想いや出会いは確かにあり、それにとても胸を打たれた。
ただし、「伝承による逸話の変化」と「捏造」は区別したい。
この作品を読んで、その境目の不安定さ、危うさを改めて感じた。
Posted by ブクログ
知性に殴られるようなアカデミック冒険譚。
難解な部分もあるけどめちゃくちゃ楽しめた。一度読んだだけでは、ストーリーの流れくらいしか理解できてない。
作者の鈴木さん23歳なんかよ、すごすぎるわ。
【あらすじ】
主人公の博把統一(ひろば とういち)は、国立大学教授であり高名なゲーテ研究者。
ある日、結婚記念日の家族ディナーの席で、紅茶のティーバッグのタグに記された小さな一文に出会う。
『Love does not confuse everything but mixes. Goethe』(愛は、すべてを混乱させることなく、混ぜ合わせる。―ゲーテ)
ゲーテ学者としての誇りを持つ統一だったが、どれほど記憶を辿り原典を調べても、この言葉の明確な出典が思い出せない。「この言葉は本当にゲーテが言ったのか? 出典はどこにあるのか?」という問いに取り憑かれた統一は、膨大な原典を読み漁り、自身の研究生活や人間関係を掘り起こしていく名言探しの旅に出る。
その探求は、家族や同僚との対話、そして思わぬ事件を経て、「名言とは何か」「学問とは何か」という深遠なテーマへと読者を誘っていく。知的なアカデミック冒険譚。
【感想】
とにかく主人公一家のアカデミックな生活描写がすごい。娘と交わす会話のレベルが信じられない高さだし、妻の「私は私」感も異様なリアリティをもって浮かび上がってくる。自分の人生ではどう転んでもこんな家庭を築くことは絶対にないので、もはや異世界の覗き見感覚で、興味津々に読んでしまった。金銭的な心配が一瞬もなさそうな雰囲気も含めて、「まじでどこかに実在するんだろうな、こんな家族」と思わされる。
正直、難しくてヒイヒイ言いながら読んだ。作中で彼らが「ゲーテがどう」とか「エッカーマンがどう」と議論して笑い合っている姿は、僕らで言えば「芥川がどう」「太宰はそんなこと言わない」とか、「マラドーナの発言がどう」「ベッケンバウアーの守り方がどう」と言い合っているのと本質的には変わらないのかもしれない、とは思えた。
主人公たちが悩んでいる「名言の出典がどうこう」という問題も、端から見れば「本当にもうどうでもいいやん!どっちでもいいやん!」と思えることばかりだ。けれど、こういう狂気的なまでの情熱を持った人が実在し、泥臭く研究し続けてきてくれたからこそ今の学問があり、その派生で様々な作品が生まれ、語られる文化が存在するんだと深く気づかせてくれる。
もう一度書くけど、著者の鈴木結生さんが、とにかく凄すぎる。この一冊を書くためにゲーテ関連の本を500冊も読んだらしい。主人公に負けないレベルの恐ろしい執念だ。九段理恵さんや高山羽根子さん作品を読んだときにも感じた「知性のかたまりのようなアカデミック系純文学」だが、10年後にはどうなってしまうのか恐ろしいレベルの才能だと思う。 鈴木さんの漫才とか大喜利とか見てみたくなる。
何より、僕自身と著者の鈴木さん、そして登場人物たちの「面白い」と感じるポイントが被らなさすぎて、それが最高の体験だった。ファウストだけでなく、さらっと聖書などを引用してくる格好良さも含めて、これぞ文学が与えてくれる新鮮な体験だと感動した。 深い思考の深淵へ潜っていく純文学か……と思いきや、後半にかけてエンタメ的な展開が一気に加速していくのが素晴らしい。難解さと、思わず膝を打つエンタメ性が最高の形で融合した、傑作だと思う。