月の洞窟から見つかったのは、五万年も前に死亡したと思われる死体。宇宙服を着たその死体は、現生人類と何ら変わらぬ特徴を備えていた。原子物理学者であり何でも透視できるスコープの開発者でもあるハントは、その謎の解明のために借り出される。死体は月で見つかったことからルナリアン、そして個体名としてチャーリーと名付けられる。チャーリーの装備品からも、ルナリアンは高い文明を築いていたことが窺える。果たしてルナリアンは地球外生命体なのか、それともかつての地球に存在していた人類なのか。さらに、ルナリアンや現代の人類とは似ても似つかないガニメアンなる巨人の存在も明らかになる。しかもガニメアンはルナリアンよりもさら...続きを読む に遡った時代から存在していたらしい。
ルナリアンのルーツを地球だと考え続けていた生物学者のダンチェッカーは、ガニメアンが遠い昔地球にやってきて、まだ進化前の段階だったルナリアンを自分たちの星であるミネルヴァに連れて帰ったのではないかとの仮説を立てた。つまり、ルーツは地球だがその後の進化はミネルヴァでのものだというのだ。しかしこれにも反証が出てくる。
言語学者によって、チャーリーが月で記した日記が解読されたのだ。それによるとルナリアンたちは二つの陣営に分かれて大規模な戦争をしていたという。彼らは月に設置した兵器によってミネルヴァの敵陣を攻撃していたのだ。だが、月とミネルヴァはあまりにも遠く離れているため月から攻撃を仕掛けるなど到底不可能。そこでハントは、ルナリアンたちが言うミネルヴァは遠く離れた太陽系の星などではなく、地球なのではないかと睨む。これは再び大きな論争を呼ぶことに。
ついにハントは、調査のために木星へと旅立つ。そこで真相を知る。
現在地球の周りを回っている月は、かつてミネルヴァの衛星だったのだ。ルナリアン同士の戦争によりミネルヴァが破壊されたことにより引力を失った月は、遠く離れた同じ太陽系に属する地球まで飛び、地球の引力に引かれて衛星となったのだった。
たがその仮説にも反論が出る。
現在地球にいる人類のルーツこそがルナリアンにあるというものだ。五万年前、月でチャーリーが死んだとき、一部のルナリアンは生き残った。ミネルヴァを失った月は地球に辿り着きそこで地球の衛星となった。わずかに生き残ったルナリアンは残った宇宙船で地球に降り立ったのだった。そしてネアンデルタール人らを駆逐し、現生人類として地球の支配者となったのだった。
仮説と検証を繰り返し、少しずつ真相に迫っていく。
チャーリーとコリエルの悲惨な行軍。プロフェッショナルたちによる熱い激論。反証という名のどんでん返しが心地良い。
この作品が刊行されたのが1977年、ハントたちの時代が2020年代後半。著者が思い描いた近未来を今自分たちは生きている。それだけでもワクワクする(残念ながら月旅行はまだまだお手軽ではない)