【この本の核心:組織は「精神論」ではなく「仕組み」で変える】
組織を強くするために重要なのは、「頑張ろう」「もっと主体的に動こう」といった精神論ではない。人間の本質を理解したうえで、一人ひとりが組織にとって正しい行動を取る確率を高める、システマティックな仕組みを構築することが重要。
組織を変える個人に必要なのは、単に自分が頑張ることではなく、自分の提案を組織の上層部に通し、周囲を動かしていく力である。
【組織の生産性を上げる2つの視点】
チームの生産性を継続的に上げるために、常に次の2つを意識する。
1. ボトルネックを作らない
2. ボトルネックは動く
一つの問題を解決しても、次の場所がボトルネックになる。したがって、「今どこが組織全体の制約になっているのか」を継続的に見つけ、解消していくことが重要。
【人間の本質は「自己保存」】
人間は本能的に変化を嫌い、現状維持を選びやすい。その根底にあるのが「自己保存」である。
だからこそ組織を変えるには、単純に「変わりましょう」と言うのではなく、変わらなければ自分にとって不利益になる、変われば利益になるという必然性を仕組みとして作ることが重要。
例えば、会議で発言して成果を出せば評価される一方、発言しなければ評価が下がるような仕組みにすれば、人は自己保存のために行動を変える可能性が高くなる。
リーダーシップを増やしたい場合も同じで、期待されるリーダーシップ行動を取れば評価され、取らなければ評価が下がる仕組みにする。
精神論では組織は変わらない。人間の本能を理解し、それを利用した仕組みを作ることが重要。
【年齢差による「呪い」を壊す】
年齢差によって、若い人は「自分が意見を言っても仕方ない」、年長者は「若い人の意見はまだ未熟」といった固定観念が生まれ、組織の発想や発信を縛ってしまう。
本来は、若い世代にも年長世代にも、それぞれ異なる強みがあるため、お互いの意見を傾聴することが必要。
そのためには、年齢ではなく実力・成果を基準にすることが重要。実績を出した人間を年齢に関係なく重要なポジションへ抜擢するなど、年功序列ではなく「Pay for Performance(成果に応じた処遇)」へ変えていくことが有効。
【自分自身も変化を拒む】
人間の脳は、本能的に変化を拒むようにできている。
そのため、自分自身を固定化してしまわないように、毎年一つは新しいことに挑戦することが重要。
組織だけではなく、自分自身も「現状維持の罠」に陥らないようにする必要がある。
【会議とは「人を働かせるための儀式」】
会議は単なる情報共有の場ではなく、人を実際に働かせるための仕組みとして活用できる。
人間は「人前で恥をかきたくない」「組織の中で良く思われたい」という自己保存の欲求を持っている。
例えば、1か月後の会議で多くの役職者が参加することが分かっていれば、適当な資料や答えを持っていくと恥をかく。そのため、人は会議までに準備するようになる。
つまり、会議をオープンにし、誰が何を言ったのか、どのような結論になったのかを透明にすることで、自己保存の力を利用して仕事の質を高められる。
【会議の透明性と24時間以内のアクションサマリー】
会議終了後、24時間以内にアクションサマリーを作成し、参加者だけではなく関係者全員に共有することが重要。
議事録に必要なのは、基本的に以下の4点。
1. 会議の目的
2. 結論
3. 結論に至るまでに議論された主な理由
4. 結論に基づいて、誰が・何を・いつまでに行うのか
最後に「内容について認識と異なる点があればご一報ください」と添えておけば十分。
会議の結果がすぐに公開される仕組みがあれば、隠すことができなくなる。結果として、関係者は自己保存のために事前準備にも本番にも力を入れる。
意思決定プロセスを透明でオープンにすることは、将来的により良い提案がボトムアップされる組織の底力を強くする。
会議終了から1週間、10日経ってから議事録をまとめているようでは遅すぎる。
「ステゴザウルスよりも神経伝達が遅すぎる」くらいの感覚で、意思決定と情報共有を高速化する。
【意見を言うことは「攻撃」ではない】
相手に意見を言ったり質問したりすることは、相手を攻撃することではない。
それぞれが異なる専門性を持っているからこそ、意見を出し合い、より良いアイデアや成果物を作ることができる。
意見をぶつけ合った結果、折り合いがつかなければ、最終意思決定者が決める。そして、決定後は恨みっこなしで実行する。
重要なのは、**「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」**に集中すること。
【相対評価と成果主義】
著者は、絶対評価には否定的。
多くの人に「3」をつけるような評価制度では、頑張っている人と頑張っていない人の差がつきにくい。その結果、「頑張っても頑張らなくても評価が変わらない」という状態になり、誰も本気で努力しなくなる。
また、成果ではなく「上司に気に入られること」が重要になってしまう危険性もある。
そのため、リーダーシップスキルなどをコンピテンシーモデルに組み込み、それを基準とした相対評価制度を導入することが有効だと感じた。
【目標はできる限り数値化する】
業績目標はできる限り数値化する。
数値化されていなければ、結果をさまざまに解釈できてしまい、評価が曖昧になる。
また、部下の評価については、設定した目標に対してどの程度進捗しているのか、相対評価ではどの程度の位置にいるのかを、最低でも月1回は確認することが重要。
【上司は「耳の痛い話」ほど明確に伝える】
「もう少し頑張ろう」では不十分。
「このままだと3を取れず、2に落ちる可能性が高い」といったように、具体的に伝える必要がある。
曖昧なまま済ませようとする上司は、部下に優しいのではなく、自分に優しい上司。
部下が戦いから逃げないようにするには、逃げた方が損をする仕組みに変えることが重要。
【給与も成果に応じて変える】
ベース給与を下げないということは、働きに見合わなくなった人に対して、給与だけを維持し続けることにつながる。
年齢に関係なく、良い働きをすれば年収が上がる仕組みにする。
一方で、その職務グレードでパフォーマンスが一貫して低いのであれば、降格や給与の引き下げも必要。
JリーグのJ1・J2のように、一定の割合で人材を入れ替える仕組みによって、組織を適材適所に近づけていく。
厳格かつ明確に運用されていれば、人間は自己保存の本能によって、
* 会社の期待に沿うように行動を変える
* それが難しいと判断して転職する
というどちらかの行動を取る。
結果として組織の新陳代謝が活性化する。
ただし、相対評価制度は、評価する側の時間的負担が大きいことがデメリット。
【報酬には「意味のある差」が必要】
頑張って大きな成果を出しても、普通の人とほとんど評価や報酬が変わらないのであれば、「頑張らずにほどほどにやった方が楽」と考えるのが自己保存の原理。
だからこそ、成果を出した人には、「頑張ってよかった」と思えるだけの報酬差が必要。
営業課長と経理課長で年収が違っても構わない。自動車の部品も一つひとつ価格が違うように、人材も職能や市場価値に応じて価格が違って当然。
優秀な人材を引き留めるためには、市場に対抗できる報酬制度が必要。
優秀な人からヘッドハンターに抜かれていくのであれば、組織の問題は経営陣にある。
【社内マーケティングという考え方】
自分が売りたい提案を上司に買ってもらうことは、**「社内という市場を開拓するマーケティング」**と考えられる。
社長であっても人間であり、自己保存の本能から逃れることはできない。
上司が「売上を何とか上げたい」と悩んでいるのであれば、その上司の課題を解決する提案を出す。
上司のキャッチャーミットに成果につながる提案を投げ込めば、自分は「金の卵を産む鶏」として重要視される。
上司も、自分の自己保存を助けてくれる人間を評価し、好きになる傾向がある。
つまり、上司を動かすためには、上司の課題・欲求・自己保存を理解することが重要。
【人は「自分の自己保存を助けてくれる人」を好きになる】
人が相手を好きになることも、自己保存と大きく関係している。
自分を肯定してくれた人、自分を助けてくれた人、自分の成長や安全に貢献してくれた人に好意を持ちやすい。
そのため、社内で人を動かす際にも、「自分が何を伝えたいか」だけではなく、相手にとって何がメリットなのか、何が相手の自己保存につながるのかを考える必要がある。
【営業マンは「相手にできる客の幅」が重要】
優秀な営業マンと成績の良くない営業マンを比較すると、決定的な違いの一つは、対応できる顧客の幅。
優秀な営業マンは幅広いタイプの顧客に対応できる。一方、成績が悪い営業マンは、自分と相性の良い顧客ばかりを無意識に選んでしまう。
営業にとって商談は舞台であり、顧客によって自分のキャラクターを演じ分ける役者のようなもの。
重要なのは「自分が話しやすい客」ではなく、**「自社の商品を買う可能性がある客」**を相手にすること。
顧客との相性と、その顧客が商品を買う可能性は別の要素。営業マンが対応できる顧客の幅を狭めるほど、成功確率は大きく下がる。
だからこそ、自分の営業スタイルの幅を意識的に広げることが重要。
様々な相手や展開に対応できるようになることで、自信や余裕も生まれる