中公新書作品一覧

  • トルコのもう一つの顔
    4.4
    言語学者である著者はトルコ共和国を一九七〇年に訪れて以来、その地の人々と諸言語の魅力にとりつかれ、十数年にわたり一年の半分をトルコでの野外調査に費す日々が続いた。調査中に見舞われた災難に、進んで救いの手をさしのべ、言葉や歌を教えてくれた村人たち。辺境にあって歳月を越えてひそやかに生き続ける「言葉」とその守り手への愛をこめて綴る、とかく情報不足になりがちなトルコという国での得がたい体験の記録である。
  • 紫禁城史話 中国皇帝政治の檜舞台
    4.0
    北京の紫禁城は明朝第三代の成祖永楽帝の命で、一四〇七年に着工され二〇年に完成した。翌年、成祖は北京に遷都し、一九一二年二月に清朝最後の宣統帝が退位するまで、紫禁城は明清両王朝を通じて二四人の皇帝が居住し、五〇〇年にわたり政治の檜舞台であった。この一群の建物は皇帝の住居であると共に、その絶対的権威を内外に誇示するための政治的建造物でもある。紫禁城での皇帝たちの動静に注目しつつ明清両王朝の歴史を描く。
  • 海の帝国 アジアをどう考えるか
    4.1
    「海のアジア」、それは外に広がる、交易ネットワークで結ばれたアジアだ。その中心は中国、英国、日本と移ったが、海で結ばれた有機的なシステムとして機能してきた。世界秩序が変貌しつつある今、日本はこのシステムとどうかかわっていくべきか。二世紀にわたる立体的歴史景観のなかにアジアを捉え、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイを比較史的に考察する。第一回読売・吉野作造賞受賞。
  • アメリカの20世紀〈上〉1890年~1945年
    3.5
    1~2巻814~858円 (税込)
    一九世紀末、アメリカは急速な工業化に起因する社会の混乱を克服し、政府・企業・研究機関の三者が協力する体制を確立した。このシステムの下で経済発展は加速し、未曾有の大恐慌と二度の世界大戦を経て、世界をリードする超大国にのし上がっていく――。自由と民主主義の理念、物質的な豊かさが一体となった「アメリカ文明」が世界を席捲する二〇世紀前半を、社会・文化的側面に光を当てながら叙述する。
  • 父性の復権
    3.8
    父の役割は家族を統合し、理念を掲げ、文化を伝え、社会のルールを教えることにある。この役割が失われると子どもは判断の基準、行動の原理を身につける機会を逸してしまう。いじめや不登校が起こり、利己的な人間、無気力な人間が増えるのもこの延長線上にある。独善的な権威を持って君臨する家父長ではなく、健全な権威を備えた父が必要だ。父性の誕生とその役割を家族の発生と社会の形成との関連から検証し、父性の条件を探る。

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  • 現代政治学の名著
    3.4
    ウォーラス『政治における人間性』、ウェーバー『職業としての政治』、リップマン『世論』、ミヘルス『政党の社会学』、メリアム『政治権力:その構造と技術』、ラスウェル『権力と人間』、ハイエク『隷従への道』、アーレント『人間の条件』、モーゲンソー『国際政治:権力と平和』、ダール『ポリアーキー』、ローウィ『自由主義の終焉』、ロールズ『正義論』、ハーバーマス『後期資本主義における正統化の諸問題』、丸山真男『現代政治の思想と行動』、辻清明『日本官僚制の研究』

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  • 「ストレス」の肖像
    3.0
    二十世紀末の現在、「ストレス」という言葉が蔓延している。一体、ストレスとは何か? 言葉の生みの親セリエは、生命法則の一部という。ストレスは、生体と環境との間に起こる「さざ波」であり、人間が生存していくための意思決定が複雑な社会にあっては「生きる証し」でもある。本書は、現代文明の必然的落し子「ストレス」誕生の謎から最新研究まで、時代背景と必然性の経緯を辿り、研究・臨床両面から、対応・解消法を探る。

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  • 発想法 改版 創造性開発のために
    3.6
    ここで語られる「発想法」つまりアイディアを創りだす方法は、発想法一般ではなく、著者が長年野外研究をつづけた体験から編みだした独創的なものだ。「データそれ自体に語らしめつつそれをどうして啓発的にまとめたらよいか」という願いから、KJ法が考案された。ブレーン・ストーミング法に似ながら、問題提起→記録→分類→統合にいたる実技とその効用をのべる本書は、会議に調査に勉強に、新しい着想をもたらす。
  • 詭弁論理学 改版
    3.8
    知的な観察によって、人を悩ます強弁・詭弁の正体を見やぶろう。言い負かし術には強くならなくとも、そこから議論を楽しむ「ゆとり」が生まれる。人食いワニのパラドックスや死刑囚のパラドックスなど、論理パズルの名品を題材に、論理のあそびをじっくり味わおう。それは、詭弁術に立ち向かうための頭の訓練にもなる。ギリシャの哲人からルイス・キャロルまでが登場する、愉快な論理学の本。「鏡と左右」問題の付録つき。
  • 部首のはなし〈2〉もっと漢字を解剖する
    3.8
    「匠」と「区」は同じ部首? 「法」にはなぜサンズイがついている? とても口に出せないある行為を形にした部首とは? 漢字を知るうえで部首の知識は欠かせないが、部首は全部で二百種類以上ある。「サンズイ」や「手偏」など有名なものから「音偏」「鼎」など知られざる部首まで、五二の部首について、その成り立ちやその部に属する漢字のエピソードなどを披露。楽しい部首ワールド第2弾。
  • 部首のはなし 漢字を解剖する
    4.0
    なぜ「卍」は《十》部6画なのか?「巨」はなぜ《工》部なのか? なぜ女ヘンがあって男ヘンはないのか……。漢字が誕生して三千年、漢字の字体はさまざまに変化していった。そのなかで、多くの部首が生まれ、消えていった。所属する部首を移動したり、部首が分からなくなってしまったものも多い。漢字を分解してみると、その合理性と矛盾がはじめて見えてくる。50の部首ごとにたどる楽しい漢字エッセイ。
  • 突然死の話 あなたの心臓に潜む危機
    3.0
    つい先ほどまで元気だった人が、一瞬にして命を失ってしまう-家族と最期の言葉も交わせないままに。「心臓性突然死」ほどやりきれない別れはない。本書では悲劇を避けるため、心臓の仕組みから突然死の最新予防法まで丁寧に説明する。先天性の病気による場合もあれば、風邪や下痢などの軽い病気、入浴やスポーツなど日常の活動が原因になることもあり、対策は一筋縄ではいかない。悲劇を避けるために、できること。
  • 足軽目付犯科帳 近世酒田湊の事件簿
    3.7
    庄内藩酒井家の所領である酒田は、蝦夷地や京・大坂を結ぶ海運の要地。大小様々な船の出入りで賑わい、豪商たちの蔵が建ち並ぶこの町の平穏は、本書の主人公、足軽目付たちによって守られていた。彼らが書き残した厖大な記録『御用帳』から、その活躍ぶりをうかがい知ることができる。本書は、盗難や殺人、詐欺、汚職から見世物興行まで、興味深い記事を選りすぐって紹介。近世湊町の雰囲気をいきいきと今に蘇らせる。
  • カエル 水辺の隣人
    4.0
    「最近カエルの声を聞かないね」という声を耳にするようになって久しい。この、間の抜けて愛嬌のある身近な生きものについては、よく知っているようで知らないことが多い。そこでまず、カエルの属する両生類の祖先から話を始め、日本に生息するカエルのすべてを紹介し、さらに世界中の変わったカエルを取り上げる。また、薄い皮膚を持つ、か弱いカエルが環境変化の犠牲となりつつある現状への警鐘をならす。
  • 日本の行政 活動型官僚制の変貌
    3.3
    近代国家を担う立法・司法・行政三権のうちでも行政は政治の中枢に位置する。とりわけ日本においては、追いつき型近代化を遂行する過程で行政の果たしてきた役割は大きかった。しかし明治以来の国家目標が達成され、自民党単独政権が崩壊した今日、行政もまた変革を迫られている。即ち、各省間の競争エネルギーを駆り立てた最大動員システムはセクショナリズムの弊害を露呈しているのである。新しいシステムはいかにあるべきか。
  • 大君の使節 幕末日本人の西欧体験
    3.5
    「西洋世界の挑戦に対してこの国が発した返答」の鮮やかなモデル・ケースとして、幕末日本のエリートの西欧文明に対するさまざまの知的・心理的・感性的反応と外国側の彼らに対する反響を探り出し、一八六二年の遣欧使節団の行動を評価し直す。従来、外交史家にしか顧みられなかった使節一行の諸記録は、ここに初めて興味深い記録文学としての姿を現わす。新文明に接して急激に自己変革を迫られる幕末日本の鼓動を伝える、比較文学徒の労作。
  • 会津落城 戊辰戦争最大の悲劇
    3.7
    慶應四年春、幕府軍は鳥羽伏見の戦いで敗れて瓦解した。江戸城無血開城を経て戦場は東北に移る。長岡での激戦、白河の攻防、日光口での戦い……、会津藩をはじめ奥羽越列藩同盟軍は各地で戦いつづけるが、薩長軍はついに国境を破り会津若松に突入、一カ月に及ぶ籠城戦がはじまる。なぜこれほどまで戦わねばならなかったのか。会津藩の危機管理、軍事・外交、人材育成を検証しつつ、戊辰戦争最大の悲劇を浮き彫りにする。
  • 自然再生 持続可能な生態系のために
    4.0
    二十世紀後半、人類は多量の資源を消費し、廃棄物を自然界にまき散らすライフスタイルをエスカレートさせた。そのため自然の多様性は失われ、固有種の絶滅、異常気象の発生など、多大な影響が地球規模で発生している。環境を改変する力を持つ唯一の生物であるヒトは、今こそ、持続可能な生態系を再生させるために叡智を結集しなければならない。里山再生や淡水生態系の復活など、自然再生の思想と方法をやさしく解説する。
  • 医学の歴史
    3.5
    医学は人類の歴史とともに古い。呪術にたよっていた古代人の薬草発見を医学のあけぼのとすれば、ヨーロッパにおける大学の誕生と人体解剖こそ近代医学の第一歩である。東洋医学の伝統をうけついできた日本の医学はまた、蘭学の伝来によって急速に近代医学へと発展した。本書は、日本の医学の歩みを東洋と西洋との接点としてとらえながら、異なる人命観によって独自の道を進んだ東洋医学と西洋医学の歴史を説く。毎日出版文化賞受賞。
  • ひとり旅は楽し
    3.6
    ひとり旅が自由気ままと思うのは早計というもの。ハードな旅の「お伴」は、厳選された品々でなければならない。旅の名人はみな、独自のスタイルをもっている。山下清の下駄や寅さんの革トランクにしても、愛用するには立派なワケがあるのだ。疲れにくい歩き方や良い宿を見つけるコツから、温泉を楽しむ秘訣、さらには土産選びのヒントまで、達人ならではのノウハウが満載。こころの準備ができたら、さあ旅に出かけよう。
  • 国土計画を考える 開発路線のゆくえ
    4.0
    列島改造、田園都市構想など時々のコンセプトを掲げて国土を開発してきた「全国総合開発計画」は日本の現在の豊かさの原動力となった。反面、中央主導、公共投資重視によって環境破壊、東京一極集中をもたらし、地価高騰、政官財界の癒着を生み出したのも国土計画であった。しかし98年に策定された新計画にこの反省は生かされていない。地方分権と行財政改革が迫られている現在にふさわしい国土計画とはどのようなものであるべきか。
  • 梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち
    -
    水滸伝の舞台となる梁山泊は黄河が作る水溜まりであった。そこに集まる大親分宋江をはじめとする天こう星三十六人、地さつ星七十二人、あわせて百八人の豪傑たち。彼らは皆、日本の豪傑とは異質な存在である。先ず梁山泊をはじめ水滸伝の四つの舞台を検証する。ついで大豪傑宋江、魔法使い公孫勝、花和尚魯智深、殺陣の達人李逵ほかの役柄と彼らの虚実おりまぜた活躍を紹介・分析し、現代の日本人が水滸伝の魅力に接近する道筋を探る。
  • 武家の棟梁の条件 中世武士を見なおす
    3.0
    現代の日本人がイメージする高潔で忠義を重んじる武士像は、近世に概念化され、明治以降、国家主義的教育の中で作られたものであり、本来、武士とは「政治史的にはこの上もなく」暴力的性格の社会集団で、「職業的な殺し屋」的存在だった。この集団を束ねた「棟梁」とはなにか。その条件は。なぜ武家政権がかくも長期にわたって存続し得たのか。武士の本質と肖像を社会史的職能論により捉え、そこに浮かび上がる日本の中世を考える。
  • 逃げる百姓、追う大名 江戸の農民獲得合戦
    3.3
    江戸時代初期、よりよい生活を求めて、生まれた村を離れた農民たちがいた。大名たちは大事な年貢を生み出す耕作者をより多く手元に置こうと、他領から来た者は優遇し、去っていった者は他領主と交渉して取り戻すべく躍起になった。藩主と隠居した先代とが藩内で農民を取り合うことさえあった。「村に縛りつけられた農民」という旧来のイメージを覆す彼ら「走り者」を通し、大名がどのように藩を切り盛りしたかみてみよう。
  • ケルト神話と中世騎士物語 「他界」への旅と冒険
    3.7
    古代ヨーロッパを支配していたケルト人は、文字こそ持たなかったものの、口承によって多くの神話や民話を伝えていた。なかでも、地底や海のかなたの彼岸の世界へと旅する物語群は、キリスト教の伝播とともに変容を重ね、遂には中世の騎士物語へと洗練されていった。ケルト人たちが思い描いていた「他界」とはいかなるもので、それは後世にどう受け継がれているのか。今も残る物語を紹介しながら、ヨーロッパ精神の源へ溯る試みである。
  • 生殖革命と人権 産むことに自由はあるのか
    3.5
    生殖行為は、人類の発生以来、長らく人的に操作できない神秘の過程であった。しかし、医療技術の進歩によって、体外受精が可能になり、さらに受精卵から細胞をとり出してその遺伝的特性を診断することさえ可能になろうとしている。また、代理母の登場により、かつては一致していた遺伝上の母、出産の母、社会的母が三人存在することも起きている。本書は、生殖技術の現状を報告し、問題点を検証するとともにその将来を展望する。
  • 在日韓国・朝鮮人 若い世代のアイデンティティ
    3.9
    さほど問題なく日本社会に適応しているかのようにいわれる在日韓国・朝鮮人の若者は、実際には、その多くが成長の過程で日本人側の偏見と差別にぶつかり、アイデンティティの葛藤を体験している。だが、彼らの存在と意識は、実に多様化し揺れ動いている。本書は、二世・三世と呼ばれる人々の聞き取り調査を通して、民族問題とそのアイデンティティを考えるとともに、日本社会の構成員としての九〇年代の「在日」の生き方を模索する。
  • 薬の話
    4.0
    近代医薬品の開発には、長い年月と莫大な経費、そして数知れぬ研究者たちの労苦の積み重ねが必要とされる。その結実は、人類をさまざまな病苦から解放すると同時に、“新しい”薬への過信の入り混じった、いわば薬の氾濫の時代を生み出してしまった。本書は、ペニシリン、モルヒネ、ビタミンB、インスリン、タカジアスターゼなどの身近な薬品開発のドラマと、効能や副作用のメカニズムを多彩なエピソードを混じえて語り警告する。
  • 義経伝説 歴史の虚実
    -
    古く『平家物語』や『源平盛衰記』など、軍記物で形象化した義経は、室町時代の『義経記』にいたって物語化の頂点に達し、さらにそこから色とりどりの大小の物語が派生した。「判官物」と称される一群のジャンルがそれである。ついには歴史と伝説のけじめさえつかなくなり、義経は一方では国民的英雄として、他方では白面の貴公子、においやかな遊冶郎として日本的美意識の具現者となる。義経伝説に結晶化した日本的心情の源流を探る。
  • 荘子 古代中国の実存主義
    4.3
    人間はだれでも自由でありたいと願う。昔から人類の教師とよばれ、哲人賢者とよばれる人びとは、人間の自由について多くのすぐれた思惟と叡智を示し、その教説をさまざまな著作に書き残してきた。特に荘子は、観念的な思考方法ではなく、いかに囚われることのない自由な自己をもちうるかを明らかにした。 荘子を敬愛し、 「荘子」 によって人生の苦境を乗りこえてきた著者が「生を善し」とし、「死を善し」とする思想を深い感動をもって伝える。
  • 赤十字とアンリ・デュナン 戦争とヒューマニティの相剋
    -
    赤十字の創設者アンリ・デュナンは、比類なき情熱で抜群の行動力を示す一方で、自らつくった組織から常に孤立してしまう独断的な性格の持ち主であった。そのため、赤十字以外にも、彼の手を離れてはじめて、存分にその機能を発揮しだした事業は数多く存在する。本書は、彼の生い立ち、彷徨生活から、破産、落魄の死までを辿ると同時に、彼を生んだ十九世紀ヨーロッパの、領土拡張主義と人道主義とが頂点に達した時代背景を描く。

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  • バーのある人生
    4.1
    バーの重い扉の向こうには、非日常の空間が待っている。そこは、酒だけを売っている場所ではない。客のひとりひとりが、バーテンダーと対面し、一期一会の時間を購い、空間に戯れる町の“秘境”である。そこには、シキタリもあれば、オキテもある。しかしそれらは、居心地をよくするものでこそあれ、がんじがらめの規則ではない。これから出かける人の背中をそっと押し、行き慣れた人をさらなる一軒へ向かわせる、体験的バー案内。

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  • 漂流民とロシア 北の黒船に揺れた幕末日本
    -
    女帝エカテリーナの命により特使ラクスマンに伴われて大黒屋光太夫が帰還した。ロシア漂流・抑留民として初めての生還であった。これよりロシアによる通商交渉は頻繁になり、北の黒船の出没に対する幕府の北方警護と、これに因む蝦夷地の領土化が急速に推し進められた。本書は、多くの漂流・抑留民の事蹟と、その送還を契機に、日本との通商関係樹立を画策するロシアの行動をとおして、江戸時代における日露交渉の実態をさぐる。

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  • 新聞記者で死にたい
    5.0
    年齢四十七、職業は週刊誌編集長。首相のスキャンダルを、オウム真理教の悪徳を暴いた、働き盛りの男が「地雷」を踏んだ。脳卒中である。右半身の自由を奪われ、言葉を無くした。暗澹たる絶望の淵。死の誘惑が胸をよぎる。だが、マスコミが混迷する世紀末、男は・もう一度社会悪と格闘するまで死ねない・と決意する。テーマソングは「上を向いて歩こう」。闘病六年。強いが優しい男が時代の現場に復活する。障害は「個性」だ。

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  • 現代歴史学の名著
    -
    津田左右吉『文学に現はれたる我が国民思想の研究』、ホイジンガ『中世の秋』、ピレンヌ『ヨーロッパ世界の誕生』、ブロック『封建社会』、ルフェーヴル『一七八九年』、大塚久雄『近代欧州経済史序説』、石母田正『中世的世界の形成』、コリングウッド『歴史の観念』、ブローデル『フェリペ二世時代の地中海と地中海世界』、カー『ボリシェヴィキ革命』、エリクソン『青年ルター』、ホブズボーム『反抗の原初形態』、テイラー『第二次世界大戦の起源』、フーコー『言葉と物』ほか

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  • ヴィクトリア朝の性と結婚 性をめぐる26の神話
    3.3
    ヴィクトリア文化は性を抑圧する文化であり、性に対するとりすました淑女ぶり、お上品主義である――このような考え方は、今世紀のみならず、当時からすでにあった。「中流階級の女たちは不感症に育てられる」「娼婦に落ちたら死ぬまで娼婦」「避妊を知らない」「未婚の母は召使に多い」など、本書は現在まで多くの人が受け入れている「神話」を26とりあげ、その虚構性を当時の日記や書簡、新聞の投書や漫画などの資料を通して検証する。

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  • ゲッベルス メディア時代の政治宣伝
    3.7
    ヒトラーを取り巻く人々の中でも、ゲッベルスの特異性は抜きん出ていた。軍隊経験を持たず、常に私服で通し、打算と無縁のヒトラー崇拝を貫き、必ず自らを「博士(ドクトル)」と呼ばせた女誑し。良識ある市民によって選ばれた政治家でも、伝統的保守主義者でもなく、いわばよくある極右崩れの妄想狂だった、ゆがんだ逆行的モダニストが、宣伝の技術と感覚と行動力のみによって大衆を動員していった経緯を、公刊された厖大な日記によって辿る。

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  • アボリジニーの国 オーストラリア先住民の中で
    -
    豊かな国オーストラリアに、迫害を受けつづけてきている先住民、アボリジニーがいる。日本人では初めて、彼らに友人として受けいれられた著者は、五百以上の部族、三百以上の言語をもつアボリジニーの内奥に入りこんで調査を続けてきた。最下層にあえぐ都市のアボリジニー、地方で酒を追放して繁栄するセツルメント、日本人との交流。複合民族国家の中で、伝統文化の復興をはかりつつ共存と自立をめざすアボリジニーの実態を紹介する。

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  • アタカマ高地探険記 風と砂とインカの道
    -
    南米・アンデス山中のアタカマは、「世界最悪の場所」と恐れられる未踏の高地である。強風、砂の猛威、異常乾燥、塩湖や死火山の強烈な原色……。本書はこの凄絶な高地を、砂に埋もれたインカの道を頼りに、地質・気象・植物・民俗の調査を行いながら徒歩とジープで縦断した著者を隊長とする男たちの記録である。人間の力の極限に挑む走行一千キロの旅は、現代生活で失われたものは何かという問いの中に向かって走り続ける。

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  • もうひとつのイギリス史 野と町の物語
    -
    野の支配権をめぐり幾多の民族が戦った時代を経て、イギリス最古にして最大の町ロンドンは富と権力を集中していった。シェイクスピアも描いた名君、商才にたけた市長らの活躍の一方で、対立が明らかになっていく町と農村。コベットに「おできの親玉」と呼ばれた町は、次第に野を呑み込んで、ついには国外にまで触手を伸ばす。ディケンズ、オーウェル、コンラッドらの作家にも登場願い、文学的色彩豊かに描き出した英国史。
  • 新動物生態学入門
    3.0
    生命もそれをめぐる環境も多様であるがゆえに活気を維持することができる。同一種の中でも個体差や集団差は著しく、群集や生態系についてもその差異は大きい。しかし従来の生態学はさまざまな多様性を充分にとり入れることができなかった。本書では、多種多様な動物を紹介しながら、種の多様性だけでなく、個体の生き方・性格・分布、個体群や群集の変化などを、空間的、時間的に考察し、その多様性の成立条件と守り方を考える。

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  • 実務家ケインズ
    5.0
    官僚、政治家、実業家、投機家――。ケインズは現実経済の渦中に身を置いて活躍する。そのなかで培われた実感ないし現実認識と、自らが学び、祖述してきた古典派の教義との間の亀裂は次第に深まり、ついに『一般理論』で革命的なマクロの貨幣経済学を創り上げる。ケインズ経済学形成の背景にあるのは、痛切な実務経験なのだ。金融界から学界に転じた著者が、実務家としての共感をこめて、ヴィヴィッドに描き出す新しいケインズ像。

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  • 道元の和歌 春は花 夏ほととぎす
    5.0
    曹洞宗の開祖道元は、すぐれた歌人でもあった。良寛や川端康成が愛誦した「春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえてすずしかりけり」も道元の作である。新古今集の歌人・慈円を大叔父に持ち、後鳥羽宮内卿らと親交を結んだ道元にとって、歌を詠むことは自らの人生に欠かせない営為であった。いまに伝わる四九首を、その生涯や思想をたどりながら解説し、鑑賞する。一見平易な歌の中に込められた道元の深遠な思いが浮かび上がる。
  • 精神科医になる 患者を〈わかる〉ということ
    4.0
    精神科医は患者が病気であることを本当に証明できるのか。病気か〈甘え〉かをどこで見極めるのか。精神科医療において一人の患者にカウンセリングと薬を処方しての治療が同時に行なわれるのはなぜか。本書は精神科に勤務する著者が、臨床の現場で行き当たった疑問に一つ一つ立ち止まり、本当の「精神科医」になるために重ねた思索の結晶である。現代の精神科医療が抱える問題を掘り起こし、対人関係の原点を見つめる。
  • ある明治人の記録 改版 会津人柴五郎の遺書
    4.5
    明治維新に際し、朝敵の汚名を着せられた会津藩。降伏後、藩士は下北半島の辺地に移封され、寒さと飢えの生活を強いられた。明治三十三年の義和団事件で、その沈着な行動により世界の賞讃を得た柴五郎は、会津藩士の子であり、会津落城に自刃した祖母、母、姉妹を偲びながら、維新の裏面史ともいうべき苦難の少年時代の思い出を遺した。『城下の人』で知られる編著者が、その記録を整理編集し、人とその時代を概観する。
  • 無意識の構造 改版
    4.1
    私たちは何かの行為をしたあとで「われ知らずにしてしまった」ということがある。無意識の世界とは何なのか。ユング派の心理療法家として知られる著者は、種々の症例や夢の具体例を取り上げながらこの不思議な心の深層を解明する。また、無意識のなかで、男性・女性によって異性像がどうイメージされ、生活行動にどう現れるのか、心のエネルギーの退行がマザー・コンプレックスに根ざす例なども含めて鋭くメスを入れる。
  • 疾走する精神 「今、ここ」から始まる思想
    4.1
    IT技術一つとってみても、米国を震源とするグローバリズムは強大な力を持つ。66億以上に人間が暮らす広い地球といえども、やがてどこもかしこも同じようになってしまうのではないか懸念もされている。だが「米国もone of themにすぎない」と気付くならば、世界は今までとは違う、多様性の宝庫=深い森に見えてくる。いま何を大切なものとして生きるべきなのか。横断する知を生きる、脳科学者が見つめた現代と未来とは。
  • 虫たちの生き残り戦略
    3.0
    四億年の歴史をもつ昆虫類は、環境へ巧みに適応し、姿形や生活様式をさまざまに進化させてきた。一見不可解なふるまいにも、生き残りをかけた驚くべき知恵が隠されている。殺虫剤を強壮薬にするゴミムシダマシ、光の輪をつくって卵を守るイリオモテボタル、植物の種を蒔くクロヤマアリ、大雪を予知するオオカマキリなど、最新の知見を交えながら虫たちの行動の謎に迫る。昆虫の世界への興味をかきたてる二四話。
  • ぼちぼち結論
    4.0
    「理性」に振り回される現代世界を憂い、社会「常識」の怪しさを指摘し、虫捕りの時間がないことをぼやく…。養老孟司の時評シリーズもついに完結篇。ホリエモン・村上ファンド騒動、NHK受信料、データ捏造問題、中国の経済脅威、自民党総裁選、団塊世代の定年…。さらに、幸せについて、文明についても考える。
  • 東京裁判〈上〉
    3.8
    1~2巻770~792円 (税込)
    ニュールンベルク国際軍事裁判とともに歴史上前例のない戦争犯罪人を裁く極東国際軍事裁判は、戦争に敗れた日本人に何を問うたか。昭和二十一年五月三日の開廷以来二年半余、三百七十回に及ぶ公判で「平和、人道、戦争に対する罪」の名のもとに、満州事変から太平洋戦争に至る“侵略”の事実を問い、七人の絞首刑を含む二十五人全員に有罪を宣した東京裁判の全容を、厖大な公判速記録、公刊資料、関係諸国・内外関係者の取材から解明する。
  • 民俗学の熱き日々 柳田国男とその後継者たち
    3.5
    柳田国男は、歿後四〇年を過ぎても、いまだに日本の学問・思想界に絶大な影響力を保っている。しかし、彼が独力で開拓したと言っても過言ではない民俗学は、その後、独創的な継承者を得られず、彼一代の学問として燦然と輝いているのである。本書は、民俗学の黎明期にあった柳田の詩的な精神が、民俗学者ではなく、むしろ異分野の研究者、思想家、作家などに受け継がれていった経過を、丹念に追跡する試みである。
  • 大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史
    4.3
    高い学歴を求める風潮と、それを可能にした豊かさに支えられ、戦後日本の教育は飛躍的な拡大をとげた。一方で、受験競争や学歴信仰への批判も根強くあるが、成績による序列化を忌避し、それこそが教育をゆがめる元凶だとして嫌う心情は、他国においてはユニークであるとみなされている。本書は、このような日本の教育の捉え方が生まれた経緯を探り、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。
  • 吉田松陰 変転する人物像
    3.5
    長州藩の兵学師範をつとめ、松下村塾を主宰して維新の俊傑たちを育てた吉田松陰は、安政の大獄を断行する幕府から政道批判を咎められ死罪となった。その思想的影響は没後も衰えることはなく、三十年の短い生涯にかかわらず、公刊された評伝は膨大な数にのぼる。「革命家」「憂国忠君の士」「理想の教育者」など、時代の状況によって描かれ方が目まぐるしく変化したのはなぜか。維新に先駆けた思想家の人物像を再構築する試み。
  • 百人一句 俳句とは何か
    3.0
    『小倉百人一首』は、万葉時代から新古今時代まで五百年余に作られた和歌から精選された名歌集だが、そののち、古代から当代までを通覧してのアンソロジーは普及しなかった。そのことはわが国の詩歌の中心が短歌から連歌、俳諧へと移っていったことと無縁ではない。本書は『古事記』から現代俳句まで、旋頭歌の片歌や連歌・俳諧の発句を含めた五七五の名作を通時代的に選んで、日本人の美意識の本質と変遷を探ろうとするものである。
  • 日本のイメージ 韓国人の日本観
    4.0
    多くの日本人には韓国人が今なお日本を怨嗟の目で見つめているかのような思いがある。しかし解放後の韓国においては、隣国に対する愛よりは憎悪の表出の方が容易であったのは事実であるが、このことはもう一つの感情や態度の存在を否定するものではない。本書は韓国人の日本に対する否定的な眺めや肯定的な眺めが韓国人の心の中にどのように共存し、どのように変化しているのかを多様な引用とともに明らかにしようとするものである。
  • 精神鑑定の事件史 犯罪は何を語るか
    4.0
    異常な犯罪が起きるたびに話題になるのが精神鑑定。しかし、精神鑑定は期待されるように、出来事の真相を明らかにできるのだろうか。本書は、レーガン元米大統領暗殺未遂事件、多重人格者の連続殺人、哲学者の妻殺し等々、社会を揺るがせ、鑑定人を悩ませた有名な事件を取り上げる。貴重な資料や証言をもとに犯行と裁判の経過をふり返り、精神鑑定のむずかしさを浮き彫りにしながら、異常な事件を生んだ心の世界を探る試みである。
  • まともな人
    -
    今回は「あたりまえ」について考えてみよう。こういう話題ならできるだけ具体的なほうがいい――。養老孟司が世の中の動きを定点観測。小泉内閣発足も、9・11同時多発テロや北朝鮮問題も、地球温暖化論や「新しい歴史教科書」問題も、何か通じるものがある。二一世紀最初の三年間の出来事とそれらをめぐる人々の姿から、世界と世間の変質をズバリ見通し、現代にはびこる「ああすれば、こうなる」式の考え方に警鐘を鳴らす。
  • 台湾 四百年の歴史と展望
    4.2
    一六二四年、大航海時代のオランダ支配に始まり、今日までの四百年に近い台湾の歴史は、「外来政権」による抑圧と住民の抵抗の記録である。外来政権はオランダ(スペイン)、鄭氏政権、清国、日本そして国民党政権である。では近年の目覚ましい経済発展の要因はどこにあったか。また急速な民主化の進捗は、対中国との関係で台湾をどのように変貌させるだろうか。一九九三年の「シンガポール会談」も踏まえ、歴史を描き、将来を展望する。
  • こまった人
    -
    コンビニ、スーパー、パチンコ、ファミレス……。これらを見れば、日本中どこも同じに見える。だが虫捕りにいけば、その土地によって虫は異なる。虫も人も実にさまざま。日本は広い。明日を予想できない世界だから「ああすればこうなる」式の思考では具合が悪い。イラク派兵、靖国問題、安全神話の崩壊など、話題の出来事を養老孟司が定点観測。世界と世間の本質を読み解く、好評「養老哲学」第二弾。
  • 肉食の思想 ヨーロッパ精神の再発見
    -
    ヨーロッパ人は、いったいなぜ動物を屠畜して食う一方で、動物を愛護するのか……。本書は、ヨーロッパ思想の原型を、きびしい歴史的・地理的条件が生み出した特有の食生活のパターンに求め、そのパターンにもとづいて形成されてきた思想的伝統を明らかにし、それによって規制される彼らの日常生活や心理・行動を、日本とも比較しながら平易に説く。食生活という新しい視点の導入によってヨーロッパの歴史を見直す、西洋史学究の問題作。
  • 胎児の世界 人類の生命記憶
    3.8
    赤ん坊が、突然、何かに怯えて泣き出したり、何かを思い出したようににっこり笑ったりする。母の胎内で見残した夢の名残りを見ているのだという。私たちは、かつて胎児であった「十{と}月{つき}十{とお}日{か}」のあいだ羊水にどっぷり漬かり、子宮壁に響く母の血潮のざわめき、心臓の鼓動のなかで、劇的な変身をとげたが、この変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演する。それは劫初いらいの生命記憶の再現といえるものであろう。
  • 沖縄の歴史と文化
    4.3
    沖縄は地理的に遠く、日本本土と趣きの異なる歴史と文化をもっているため、歴史を区切る概念も、文化を貫く美意識も、それらを表現する言語も、すべて本土的な尺度では計れない。本書は、単に日本列島の一島嶼群として捉えるのではなく、広く太平洋文化圏の中に位置づけ、日本人および日本文化のルーツの一つともいうべき沖縄の歴史と文化を、諸分野の研究成果を取り入れながら紹介する。沖縄の実相を識るための入門書である。
  • 児島惟謙(こじまこれかた) 大津事件と明治ナショナリズム
    4.0
    訪日したロシア皇太子を警護の日本人巡査が斬りつけ負傷させた事件に日本は朝野ともに震撼し、政府は「皇室に対する罪」を適用し犯人を極刑にしようとした。だが大審院長児島惟謙は毅然として反対し、司法権の独立を護った――これが大津事件と「護法の神」児島の伝説である。しかし、仔細に経緯を辿れば疑問は多い。児島にとって司法権独立とは何のためのものであったのか。明治国家形成期の時代精神の中で児島の全体像を検討する。

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  • 日米コメ交渉 市場開放の真相と再交渉への展望
    3.0
    一九九二年十二月にウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)がまとまったが、この交渉は、コメの市場開放という問題を抱えていたため、それまでのどの国際交渉よりも日本で注目を集めていた。部分開放という形で一応の決着をみたコメ交渉だが、そのプロセスは、当時もその後も殆ど明かされていない。アメリカは何を求め、日本はどう応じたのか。この経緯を、直接取材とアメリカ政府の内部文書から探り、再交渉への視座を提供する。

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  • 日本文化交流小史 東アジア伝統文化のなかで
    -
    日本文化は二千年に及ぶ東アジア世界の交流の中で形づくられ、展開してきた。渡来人による先端技術移転、遣唐使派遣、密教の伝来、禅僧がもたらした宋文化や朱子学の受容など、貪欲に先進文化を取り入れてきた。そのいっぽうで、科挙制度など、受け入れなかったものも数多い。交流の歴史という視点からはじめて見えてくる日本の国のすがたをエピソード豊かに綴り、前近代東アジア文化が備えていた先進性を再評価する。

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  • フリードリヒ大王 啓蒙君主のペンと剣
    4.3
    十八世紀なかばに、オーストリア、フランス、ロシアなどの大国を相手に七年戦争を戦い抜いた小国プロイセンの王フリードリヒ。彼は戦略の大家であると同時に、ヴォルテールを師として詩作に耽り、自らフルートを奏でる芸術家でもあった。しかし、彼にまつわる諸伝説の多くは、プロイセンがドイツ帝国となった十九世紀に成立したものであった。本書は、歪められた虚像の奥から、啓蒙君主の魅力的な人間性を引き出す試みである。

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  • 赤狩り時代の米国大学 遅すぎた名誉回復
    4.0
    一九九〇年、ミシガン大学の米国大学教授連合支部の機関誌に、赤狩りの犠牲者三名の名誉回復の記事が出た。これがきっかけで著者は、米国が今も後ろめたく感じているマッカーシーイズムの時代に、米国の教官、大学、そして団体が学問の自由にいかに対応したかを探り、米ソのデタントが成立し、共産主義に非寛容でなくなった時点まで跡づけている。同時に、民主主義の国=米国がもつ衆愚政治への危険性にも、目を向けさせてくれる。

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  • 麻酔と蘇生 高度医療時代の患者サーヴィス
    -
    十九世紀なかばに、アメリカ合衆国で初めてエーテル麻酔が行なわれるまで、手術室はまさに修羅場であった。しかし、それから一五〇年の間に、麻酔・蘇生学の領域は、単に痛みの軽減に留まらず、手術前から後への患者の全身的なケアまでを受け持つことになった。本書は、黎明期からの先人の苦心の跡を辿り、麻酔がかかる仕組みを探り、今後の手術室がより快適であるための方法と可能性を、大学病院の現場から報告するものである。

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  • フォークナー アメリカ文学、現代の神話
    -
    アメリカ深南部の伝統への根強い関わりと、近代性への熱い憧憬。二つの力の激しい葛藤から、『響きと怒り』『八月の光』『アブサロム、アブサロム!』など登場人物の語りが重層的に響き合う濃密な物語りが織り上げられた。サルトル、パヴェーゼ、マルケス、そして井上光晴、中上健次。二十世紀文学に深い影響を与え、新批評から新歴史主義に至る多様な批評に耐えて読み継がれるフォークナー文学の魅力を、社会的、歴史的背景の中に捉える。

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  • クレムリン秘密文書は語る 闇の日ソ関係史
    3.3
    一九九一年末のソ連邦解体後、新生ロシアは鉄の扉に覆われた秘密文書を積極的に公開した。日本関連の文書も明らかになり、秘められた真相公表が日ソ関係史の書き替えを迫っている。本書は、戦前の社会に衝撃を与えた女優・岡田嘉子の越境亡命事件、日本共産党と日本社会党のソ連資金疑惑、北方領土など日ソ交渉の舞台裏をソ連公文書を基に解明し、理想と幻想の国家・ソ連に憑かれた日本人の悲喜劇を描くノンフィクションである。

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  • 明末の文人 李卓吾 中国にとって思想とは何か
    4.0
    明末中国は既成の世界観が崩壊し、すべての価値観の再編が迫られる時代であった。五十歳を過ぎて「求道の巡礼」を志した李卓吾は、「知」と「言」の乖離する時代精神に抵抗して儒教の裏切者、異端と迫害され、ついに自刎した文人である。高踏的反俗性と草の根気質が合体した過激な言動は狂者を思わせたが、人間存在の意味を問う「性命の道」を貫いた後半生は中国哲学史の主流に連なり、そのラディカリズムは数百年を経て今日に蘇える。

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  • 母と子のマレーシア通信 娘のホームステイ体験から
    3.0
    マレーシアの首都クアラルンプールに在住する華人の家族と暮らし、現地のマレー系女子高校に通った娘と、心配しつつ遠くから見守った母親との交信の記録である。異国での体験や悩みを逐次手紙で送りつづけるように約束させられた娘と、それに応える母との間には、文章を通して互いの感情が論理化され、ともに成長していく様子が描き出される。と同時に、ホームステイ先の家族とのかかわり合いについて、貴重な示唆を与えてくれる。

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  • 文化の戦略 明日の文化交流に向けて
    3.0
    草の根交流から国家的プロジェクトまで、様々な分野で国際交流が広がっている。しかし明治以来続いてきた、「先進国」を上「途上国」を下と見る価値観に基づく「差別型交流」は跡を絶たない。文化はそれぞれの国に固有の価値観に根ざした体系であり、相対的なものである。無意識にまで染み透った西洋文化至上主義を脱却し、文化相対主義に基づく「誠実型交流」を進めるために今なにをなすべきか。世界文化への貢献を展望する、現場からの提言。

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  • 重光葵 上海事変から国連加盟まで
    3.5
    アメリカ戦艦ミズーリ号上で日本の降伏文書に調印した首席全権として有名な重光葵は、戦前・戦後を通じて、和平の調整役として東西を奔走しつづけた人であった。たとえば上海事変時の駐華公使、張鼓峰事件時の駐ソ大使、第二次世界大戦初期の駐英大使、太平洋戦争後期と戦後の日ソ交渉時、また国連加盟時の外相として外交の最前線にいて、国内外の懸案に常に真摯に対処した。その足跡を、残された膨大な手記、回想録を基に辿る。

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  • 原爆神話の五〇年 すれ違う日本とアメリカ
    5.0
    ワシントンのスミソニアン博物館で計画された「原爆展」をめぐって、アメリカでは原爆論争が再燃した。原爆が戦争終結を早め、多くの人命を救ったとする「神話」を考え直そうとする人々が、冷静な議論を提起したのである。結局「神話」の優位は揺るがなかったが、アメリカが持つ自己検証能力の健在ぶりは明らかになった。本書は、全米での幅広い声を取材し、戦後五〇年を経て、なお隔てある日米の歴史観の差の源を探るものである。

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  • ソフトウェアの法則 コンピュータの利用技術とは
    3.8
    コンピュータに関する話は一般の人には理解できないことが多い。ソフトウェア開発に携わるプログラマの苦労や悩みなどなおさらのことである。しかし、ソフトウェアのきまり(法則)と一般的な社会生活で出くわす出来事は非常に似ている。本書は、技術開発のプロが、「ソフトウェアとは何か」「コンピュータの利用技術」など、みずからの職場体験に、私生活のさまざまなエピソードをまじえて語る機知に富むテクニカルエッセイ。

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  • アメリカのジャポニズム
    -
    一八五一年の第一回ロンドン万博を契機に、十九世紀後半は、ヨーロッパで空前の日本ブームが沸き起こった。時を同じくしてアメリカでも同様の流行を見るが、その場合、際立っていたのは、日本趣味の及んだ範囲が、美術や文学といったハイ・カルチャーにとどまらず、服飾、造園、装飾品といった生活に密着した品々にも広がったことである。本書は多岐に亘る実例を示して、短いながらも広く深かった日本趣味流行の軌跡を辿るものである。

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  • 問題解決のための「社会技術」 分野を超えた知の協働
    3.2
    問題を解決するには、まず問題を把握しなければならない。だが現代社会において、問題の全体像はきわめて見えにくい。狂牛病やSARSをめぐる騒動、原発トラブルや医療ミスの隠蔽疑惑などを見ても、特定分野の専門家だけでは十全に対処できないことが明らかである。本書は、複雑化する社会問題を解決し、社会を円滑に運営する「社会技術」の概念を提唱。学問分野の枠を超えた、新たな取り組みを紹介する。
  • 地域再生の経済学 豊かさを問い直す
    3.8
    地方自治体は膨大な財政赤字を抱え、地方の都市は均一化して特色を失い、公共事業以外に雇用がない……。地域社会は生活の場としても労働の場としても魅力を失い荒廃している。本書ではその再生に成功したヨーロッパの事例を紹介しながら、中心的な産業や重視する公共サービスなどがそれぞれ異なる、めざすべき将来像を提示する。そして日本型の生活重視スタイルを財政・政策面からどのように構築するかを提言する。
  • 太平記 鎮魂と救済の史書
    4.0
    足利尊氏や新田義貞、楠木正成ら名だたる部将が活躍する『太平記』。しかしこの名高い戦記物がめざしたのは、英雄譚と言うよりも、南北朝動乱を生きた、名もなき人々への鎮魂と救済ではなかったか。怨霊の跋扈する、不条理にも見える物語世界が内包する『太平記』の精神とは。また、登場人物たちの体現する儒教的道義論や因果応報論が担ったものとは何なのか。単なる戦記物の枠を超えた『太平記』の世界への招待。
  • こころの作法 生への構え、死への構え
    4.0
    こころが定まらない――。こうした思いを抱きながら、わたしたちは日々を送っている。日本人のこころに衰えが兆しているのではないか。他者と共感する力。人間の背後に隠されている〈崇高さ〉あるいは〈凶悪さ〉への感受性。死に対する態度。定まらぬこころがこれらを不確かなものとしている。本書は、長年日本人のこころを見つめ思いを巡らせてきた著者による、揺るぎないこころを持つためのレッスンなのである。
  • 学習障害(LD) 理解とサポートのために
    3.8
    計算は速いのに文章題になると意味をつかめない。英会話は得意なのに簡単なつづりの間違いを繰り返す……。知的には遅れがないのに、特定の学習に困難を示す子どもたちがいる。学習障害(LD)といわれる範疇にあるか、それに近い子どもたちである。通常の学級で学習している彼らへの効果的な支援のためには、本人だけでなく親や教師ら周囲も対象とするサポート体制を築くことが必要だ。新しい教育への取り組みを模索する。
  • 聖書神話の解読 世界を知るための豊かな物語
    3.7
    かつて、科学技術も情報処理も未発達だったころ、人々はどのようにして、自分の周囲の事象を受けとめ、その仕組みを理解しようとしたのだろうか。そんな時、最も有効で普及可能だったのは、神話という物語を利用することだった。そこで語られるさまざまな事蹟は、自らと森羅万象とをつなぐ手がかりとなったのである。本書は、「本の中の本」とも呼ばれる聖書に描かれた事柄を、古代人が世界を映した神話として再読する試みである。
  • 子ども観の近代 『赤い鳥』と「童心」の理想
    4.5
    子どもを無垢な存在と見なすロマン主義的な子ども観は、日本では明治末に興り、大正中期の「赤い鳥」を中心にした「童話・童謡」運動で確立した。このイメージは、基本的には現在までも引き継がれているといえる。本書は、巌谷小波にはじまり、鈴木三重吉を経て多くの文壇作家たちが筆を染めた児童文学を素材として、近代特有の子どもに関する新しい「知」が、どのように生まれ、どのように普及していったかを辿る試みである。
  • 軍師・参謀 戦国時代の演出者たち
    2.7
    下剋上の世を生き抜く戦国大名の補佐役として、戦場の天候を占い、種々雑多なジンクスを統轄するなど、陰陽道をはじめさまざまな知識を駆使した軍師・参謀・・その実像はカリスマ性をもって語り継がれてきたため、いまだ謎につつまれている。戦国時代の名軍師とされる山本勘助、山中鹿介、真田幸村、竹中半兵衛、雪斎らの事績を洗い直し、果たした役割を明らかにするとともに、戦国武将にとって合戦とは何であったのかを解明。
  • 科挙 中国の試験地獄
    4.3
    かつて中国では、官吏登用のことを選挙といい、その試験科目による選挙を「科挙」と呼んだ。官吏登用を夢みて、全国各地から秀才たちが続々と大試験場に集まってきた。浪人を続けている老人も少なくない。なかには、七十余万字にもおよぶ四書五経の注釈を筆写したカンニング襦袢をひそかに着こんだ者もいる。完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら、試験地獄を生み出す社会の本質を、科挙制度研究の権威が解き明かす。
  • イギリスのいい子日本のいい子 自己主張とがまんの教育学
    3.8
    優しい子に育ってほしいけれど、自分の意見を言えないようでは困る。自分の意志を持ってほしいけれど、わがままなのはだめ。子どもが育つとき、自己主張と自己抑制が共にできることが大切なのはわかっていても、そのバランスは難しい。両者を等しく重視するイギリスと、自己抑制を尊重しがちな日本を比較教育学を用いて比べながら、子どもたちはどうやってこれらを身につけていくのか、親はそのためにどうすべきかを探る。
  • 対象喪失 悲しむということ
    4.0
    肉親との死別・愛の喪失・転勤・浪人等々、日ごろ馴れ親しんだ対象を失ったとき、その悲しみをどう耐えるかは、人間にとって永遠の課題である。ところが現代社会はいつのまにか、悲しむことを精神生活から排除してしまい、モラトリアム人間の時代を迎えて「悲しみを知らない世代」が誕生し、いたずらに困惑し、絶望にうちひしがれている。本書は具体例によって悲哀の心理過程と悲哀の意味を説き自立することへの関係に及ぶ。
  • ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学
    4.0
    動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
  • センスある日本語表現のために 語感とは何か
    3.5
    「語感」ほど、誰もが確信を持ちながら、逆に普遍的な説明の困難な言葉も珍しい。感覚的な言語論を超えた語感の整理・分析は、いかに行なわれ得るのか。本書は、言語行動の三つの要素、つまり、表現主体である人間、表現対象である物事、そして表現手段であることばから語感を分類し、さらに、語彙体系の影響、言語的環境のバランス、語の用法や使用頻度などにも言及しながら、豊かな言語生活を楽しむヒントを提供するものである。
  • 韓国済州島 日韓をむすぶ東シナ海の要石
    3.0
    朝鮮半島本土から南へ90キロ沖の東シナ海にあり、古代は耽羅と称した済州島だったが、地理的位置から日韓中三国が密接に絡み合う元寇や倭寇の基地となり、李朝時代は政治犯の流刑地、植民地時代は日本への労働供給地として、島の自主性は奪われていた。解放後も本土との軋轢から、その歴史は平坦ではなかったが、恵まれた自然と温暖な気候を活かした園芸、観光産業によって、韓国一豊かな島に変貌した。離島ゆえの宿命をたどる。

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  • 美術館の誕生 美は誰のものか
    4.0
    近代化に必要な施設として、あるいは経済活動の象徴としてつくられた日本の美術館は、王侯貴族・富豪の私的コレクションから出発した欧米の美術館とどう違うのか。美術館の歴史的位置付けと社会的役割の変化を辿りつつ、革命によって美術品を市民の手に勝ち取ったフランス、建国当初から美術品を公共財としてきたアメリカなどを軸に、日本の美術館の特質を問う。民主主義の発生と公共の美術館という概念の誕生をめぐる野心的考察。

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  • ドイツ近代科学を支えた官僚 影の文部大臣アルトホーフ
    -
    十九世紀後半、プロイセンを中心に国家統一を果たしたドイツ帝国は、自然科学の成果を国力増強に活用すべく、膨大な国家予算を科学研究に投入した。しかしながら、文部省と大学の間には、教授人事、予算配分などをめぐって、絶えざる緊張関係が生まれた。本書は、当時文部官僚として、絶大な権力をふるった一ドイツ人の思想と行動を追いながら、現在でもなおきわめて切実な、国家と大学をめぐる問題の起源を探るものである。

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  • テレビCMの青春時代 ふたりの名演出家の短すぎた生涯
    5.0
    民間放送開局後10年を経た1960~70年代、テレビコマーシャルは、商品名連呼の時代を脱し、フィルムがひとつの「作品」として完成度を高めていった。なかでも日本天然色映画の杉山登志と電通映画社の松尾真吾とは、その短くも華やかな活躍によって、伝説的な演出家といわれている。本書は、長年企業の広告担当者として大ヒットCMにも携わった著者が、多才な人々が触発しあった熱い時代の息吹を伝えようとするものである。

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  • コミュニケーション技術 実用的文章の書き方
    4.5
    “英文ドキュメント作成法”で知られる実用英語の第一人者が、今度は学生、ビジネスマンのために、日本語のわかりやすい文章を苦しまないで、早くまとめるコツを具体的に解説する。ワンワード/ワンミーニング、ワンセンテンス/ワンアイディア、ワンパラグラフ/ワントピックのルールを紹介し、そのルールを駆使した例題文を通じて、論文、レポート、説明書、提案書、カタログなどの実用的な文章の上達法を明快・簡潔に解説する。
  • 時間と自己
    4.4
    時間という現象と、私が私自身であるということは、 厳密に一致する。自己や時間を「もの」ではなく「こと」として捉えることによって、西洋的独我論を一気に超えた著者は、時間と個我の同時的誕生をあざやかに跡づけ、さらに、ふつうは健全な均衡のもとに蔽われている時間の根源的諸様態を、狂気の中に見てとる。前夜祭的時間、あとの祭的時間、そして永遠の今に生きる祝祭的時間――「生の源泉としての大いなる死」がここに現前する。
  • 軍事革命(RMA) 〈情報〉が戦争を変える
    3.0
    ナポレオンによって大兵力の殲滅戦が開始されてから、戦争は火力による殺傷と破壊を意味するようになった。これ以降、工業化時代の戦争は、双方が国力全体を消耗しあう形態となったのである。情報技術や精密誘導技術が極限まで発達したため軍の運用や編成・組織が劇的に変化しつつある今、もはやクラウゼヴィッツの唱えた消耗戦は主流ではなくなりつつある。これからの戦争はどうなるのかをシミュレートする。
  • 日本語の素顔
    3.0
    幕末から明治初年にかけて日本では、西欧の言語の吸収に熱心で素顔の日本語を恥じ、外国ふうの化粧をした日本語が生まれた。さらに敗戦によって日本的なすべてのものに対する否定的な態度が一般的になり、近年は、書く文章だけでなく話しことばもまた激しく変りつつある。幼児にことばを教える母親の役割の重要性を痛感する著者が外国語と比較して、日本語の素顔の美しさや味わいを数々の具体例によって見なおす。
  • 日本語が見えると英語も見える 新英語教育論
    4.0
    日本人にとって英語はなぜ苦手なのか。アメリカ人は「日本人は先ず世界観を変えなければならない」と言う。これを著者は、英語で書くとき話すとき、日本人が「やまとことば」で情動的、感覚的に未整理のままで切り取っていた対象世界を、論理的に整理した「中間日本語」で切り取る訓練が必要であると言いかえる。本書は日本人の英語苦手意識の原点に探針をおろして克服の方策を示し、日本の英語教育にコペルニクス的転換を迫る。
  • 不平等社会日本 さよなら総中流
    3.9
    実績主義や自由競争の市場社会への転換が声高に叫ばれている。だがその「実績」は本当に本人の力によるものか。著者は社会調査の解析から専門職や管理職につく知識エリートの階層相続が戦前以上に強まっていることを指摘。この「階級社会」化こそが企業や学校の現場から責任感を失わせ無力感を生んだ現在の閉塞のゆえんとする。一億総中流の果てに日本が至った新たな階級社会の実態を明かし真の機会平等への途を示す。

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