武士論というと葉隠れだの忠臣だの何となく格好いいイメージではあるが、職能集団としての武士で考えるならば殺しを家業としたごろつき集団いわばやくざである。
中世以前の日本史認識には近世・近代のフィルターがかかっていると言うのが著者の主張でたとえば夫婦別姓とか男尊女卑というのも北条政子、日野富子といっ
...続きを読むた具合に中世ではありえない事である。
武家の棟梁というのも近世・近代のフィルターを通すと長子相続のイメージになるのだが源家の鎌倉将軍就任が三代で終わっているので判るよう血統の上に立脚しつつも武家としての才能がないと統領とはなれないのである。
源頼朝など昨年の歴史ドラマではずいぶん優男に描かれていたが、実際は武芸故実に秀でていたようである。何となく家元制度を思い浮かべてしまう。いくら家元の息子でも芸に秀でていないと家元はづけないのである。
中世武士の実像を描いて新たな視点を得ることができる書であるが、いかんせん論調が堅くどちらかというと興味の中心が古代史である私にしてみると少々読むのに骨が折れる本ではありました。