「次にくるマンガ大賞2023」にノミネートされた注目作品です。
妹と兄の恋人が兄を偲び、その死に向き合う中で、仲を深めていく様子が描かれていくのかと思いきや…
いい意味で期待を裏切られました。
女子高生の鹿ノ子(かのこ)は、若くして病気で亡くなった兄・騎一郎(きいちろう)のお墓参りに来ていました。一緒に来たのは、兄の生前の恋人である聖(ひじり)。
そこで、鹿ノ子は見てしまったのです。おぞましい姿で、「トルナ…オレノダ…」と言いながら、聖の背中にまとわりつく兄の悪霊を。
聖に密かに恋心を抱いていた鹿ノ子は、悪霊となった兄から聖を守るため、そして、聖に恋愛対象として見てもらうために、聖が住んでいる広島に通うことを決心します。
それから、鹿ノ子と悪霊となった兄が聖を取り合う愛憎劇が始まるのです。
しかし、物語が進むとさらに別の展開を見せます。
聖へ狂信的に執着する人物や聖の元恋人の登場により、優しくて、無害そうに見えた聖の隠していた秘密や過去が明らかになっていき、サスペンスホラーの側面が露わになっていきます。
優しかった兄がどうしてこんな悪霊になってしまったのか?
なぜ兄の悪霊は聖に取り憑いているのか?
そもそも悪霊は本当に「兄」なのか?
気味が悪くて、おぞましい。でも読み進めずにはいられない。そんな作品です。
感情タグBEST3
まだ3巻なので、分かっていないことが多いですが、明らかになると同時にまた別の謎も。
鹿子は亡くなった兄の恋人の男性、聖に一目惚れをするが、優しかった鹿子の記憶の兄は怨霊として聖に執着し、鹿子を威嚇する。
ところが、この3巻では幼い鹿子の思い出の兄はまた別の一面を見せる。
小学生の妹が帰宅する時...続きを読む間まで、しょっちゅう女性を引っ張り込み、しかもそれが特定の女性ではない。
そして女性を送り出すや、妹の手を取って、アイスクリームを買いに行く。
口止めに、というには、他の兄が妹に見せるような表情ではなく、じっとりとした色を含んでいる。
母の反応も不思議なところがあり、本当に先が気になる…早く先を読みたい。
読み終わったあと、改めて表紙の絵を見てみると。兄亡き後の恋人の無自覚の死を、止めようとしているのでしょうか?!展開気になります。次巻も楽しみです!
生前の兄は妹に対してどんな感情を抱いていたんだろうか。回想パートが挟まれる度に今の状態と、否が応でも比較させられるから、読んでいて切ない気持ちになってしまう。続きが気になるのはもちろんですが、登場人物の表情ひとつひとつに奥行きが感じられるからすごい読み応えがあります。