あらすじ
※2020年8月8日より、カバーが変更となりました。内容については変更ございませんので、ご注意くださいませ。
八咫烏が支配する世界〈山内〉を揺るがす危険な薬と人喰い大猿。
故郷の危機に敢然と立ち向かう世継ぎの若宮と元近習・雪哉は危険を顧みず――。
人気シリーズ第3弾!
2012年『烏に単は似合わない』で、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞した阿部智里。翌年に受賞作と対をなす『烏は主を選ばない』を上梓。人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界〈山内〉を舞台に、次の統治者である日嗣の御子の座をめぐり、東西南北の四家の大貴族と后候補の姫君たちを巻き込んだ権力争いを波乱万丈に描ききった。本作『黄金(きん)の烏』もやはり山内を舞台にした、壮大な和製ファンタジー。しかし宮中を飛び出し、そのスケール感は飛躍的にアップした。
物語は世継ぎの若宮と、郷長のぼんくら(とされる)次男坊が、危険な薬〈仙人蓋〉の探索にでかけるところからはじまる。不穏な気配を漂わせた旅先で、何と彼らが出会ったのは、人を喰らう大猿だった! 壊滅した村の中でたったひとり残されたのは、謎の少女・小梅。――いったい僕らの故郷で、なにが起こっているのだろう?
山内の危機に際し、若き主従は自らの危険を顧みず、事件のヒントを持つと思われる暗黒街の支配者のもとに出向く。そこで雪哉に課されたのは、未知の隧道の先にある物を持ち運ぶことだった。深い暗闇の底での冒険の末、雪哉が見たものとは?
スペクタクル満載の本作は三部作の最高傑作にして、新たな展開をも予感させる意欲的な書き下ろし大作。「世界に通じるファンタジー作家」を目指す、阿部智里の才能にますます心奪われる一冊となっている。
解説・吉田伸子
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Posted by ブクログ
様々な親子像がとても印象に残った。金烏と八咫烏もまた"親子"だが「親の心子知らず」な現状がもどかしく感じる。本作で顕になった外敵の存在や山内の身分格差は今後どのように描かれるのだろうか。
Posted by ブクログ
前作2作で登場人物たちの背景や、性格を知ったけれど、それぞれに桜花宮の姫たち、若宮と雪哉たち、という独立した世界で進行していました。
それが今作『黄金の烏』では、その登場人物が同じ軸を同じように進んで関わっていくことに、感動してしまう!
姫たちと雪哉、関わりがあったことはちゃんと前作までにも書かれているけど、
ここまでお互い認識するほどの関わりだとはという感動とかね!
この八咫烏シリーズが、まず八咫烏の世界であることなど、フィクションの世界観だということも分かって読んでいるので、その世界に合わせようと理解しながら読むわけです。
1巻目ではその世界の道理や言葉の意味を「あせび」と共に学びながら理解して、
2巻目でな雪哉と行動するように、若宮と若宮を取り巻く環境・朝廷を理解する。
その中で、フィクションの世界であると知っている読者は、その世界を現実だとして生きる雪哉とは違って『真の金烏』の意味に何かしらのフィクション性があると想像できるものが、
雪哉にとっては「宗家の方便」だとしか思えてなかった。
そこからの「真の金烏とは」が判明していく今作は、雪哉の気持ちを理解しながらも、フィクション世界だと知りながら読んでいる、その兼ね合いと齟齬にちょっとヤキモキします。
だって、若宮と雪哉ってめっちゃいいコンビで仲良くわかり合って欲しい2人だから!
↓ネタバレ入ってきます↓
p.356〜357、
ついに『真の金烏』とはが、若宮から雪哉に告げられますが、
読者が「そうだろう」と推測していた『真の金烏』というものの存在の確認とともに、衝撃的な正体についても知ることになります。
その衝撃な正体部分も確かに、
1巻での若宮出演ページを思い出すと納得ができるところ。
『真の金烏』が想像以上のものであると同時に、
山内と外界という、世界の構成も想像以上でした。
八咫烏シリーズという、「八咫烏」が「にんげん」と呼ばれる世界のファンタジー小説
という世界線だけで読んでいると、その深さに驚くのです。
真の金烏とはなんなのか、この世界とはなんなのか、その衝撃の2つの要素が今後のシリーズに展開していくと思うとワクワクです!
前作までがプロローグ
シリーズとしての起承転結の“起”
大きなうねりが、動き始めるシリーズ第3作でした。
Posted by ブクログ
面白かったです。
シリーズ3冊目ですが、どんどんこの世界観に引き込まれていきます。雪哉達八咫烏が人間のいる世界とつながっていることを意識する巻でもあります。
八咫烏が猿に襲われ食糧にされていると知った雪哉。日嗣の御子、金烏である若宮と共に調べるうちに、金烏とは何か少しずつ知らされることになります。それと共に若宮の奈月彦の印象が変わっていきます。
そして若宮に忠誠を誓うことを決意します。
これから雪哉は成長していくのでしょうね。続きが楽しみです。
Posted by ブクログ
やっとアニメの内容まで追いついた。
大猿との戦いは終わっていないし、人間も同時期に存在して、しかもそれは現代の世界っぽいし謎だらけだ。天狗という存在も気になる。この全体の世界がまだまだ見えてこない。
次回は雪哉が勁草院で訓練を積んで、正式に若宮にお仕えすると言うので心強い。
という事でまだ楽しみはたくさん残っている。
Posted by ブクログ
ラストが胸熱すぎる!!!!
雪哉ーーーーーー!!!!
P.368-369
「僕は、勝算のない勝負はいたしません」
「長束さまのおっしゃった通りだっあ。あなたを守るという事が、すなわち僕の故郷を守るという事だ。あなたの大切なものと僕の大切なものは、最初から同じだったんです山内を守るために僕は、僕の持っているもの全てを、あなたさまに捧げましょう」
「真の金烏陛下に伏してお願い申し上げます。これより後、わたくし垂氷の雪哉は、この命尽き、体朽ち果て、魂の最後の一片が消えて無くなるまで、あなたさまに忠誠をお誓い申し上げます」
(中略)
「……いずれお前は、わたしの懐刀となるだろう。だが、私の臣下になったせいで、辛い思いも、苦しい思いも味わう事になると思う。必要になれば、お前を切り捨てる事だってあるかもしれないし、いつでもお前にとって、最良の主ではないかもしれない」
それでも構わないかと問われて、雪哉は「はい」と答えた。
「どうか、配下の末席に加えて下さい」
その言葉を待っていたと、そう言った真の金烏は満足気に──そしてどこか寂しげに笑ったのだった。
Posted by ブクログ
良かった!
梓の話から垂氷(というより家族)に拘る雪哉への
理解が深まるし、雪馬が墨丸に伝えた事からは雪哉
がどれだけ皆から愛されてるかが伝わってきて、と
ても温かい気持ちになれた。
いつも飄々としてる若宮のあの態度の理由も、真の
金烏の事実として明かされ、シリーズの面白さは増
していく一方。
大猿との戦いは気味悪かったけど、興味深かったし、
おまけのような不知火の正体(雪哉には悪いけど
私は好き)も、最後の最後まで面白い。
雪哉が若宮に忠誠を誓う流れも凄く自然で良かった。
アニメがまだ続くと知らなくて、この3巻は後回し
にしてしまってました。あらすじがわかると本は十
分に楽しめないタイプなので焦りました。
続きも読みます。
雪哉の決意
読後、やっとここまできたか、と思った。難解な事件、雪哉の決意を固めるに十分な内容だった。が、一つ引っかかったのが水売りの男が最後に書いた手紙。老舗のボンボンだったから教育は受けていたのかなぁ。そんなに長い手紙を書くほど文字が書けたのなら、どこで生まれたかもしれない女を女房にするには反対もあっただろうに、とか。また、犯行現場にいたような娘が宮廷の桜花宮という場所で働けるのかなど、ささやかに気になるところが出てきてしまった。何より雪哉の義母が小梅を気にかけるところが嫌。これ伏線だったらどうしよう。雪哉には小梅はダメダメ!
Posted by ブクログ
相変わらず雪哉がかわいそうな扱いなんですけど(笑。
でも大きく歴史の歯車が動き出した感。
山内の外側ってそうなのかー!とか、新たなる脅威とか読み応えあったな~。
Posted by ブクログ
アニメの第二クール部分に対応する話。
転身ができる烏だけではなく、ニンゲンも猿もいる世界なのだとわかり、読み手からの世界観の見え方が変わってくる。
Posted by ブクログ
CL 2024.9.17-2024.9.19
アニメに合わせて文庫にて再読。
ここで雪哉は若宮に忠誠を誓うのか。
それが今ではあの雪斎か。
とにかくこのシリーズは再読するたびに頭から読み返したくなるから厄介だわー
Posted by ブクログ
「単」と「主」で人物紹介が終わり、いよいよ物語が動き出す感じ。すっかりきっちりどっぷり沼にハマってしまいました笑。さて今回は何やら意味深なプロローグから始まり、正気を失った烏が垂氷に現れる。仙人蓋という薬が原因らしい。調査の過程で人喰い猿、地下街の朔王とNo.2の鵄が登場。八咫烏の世界の外側に人間の世界があり、その境界に綻びが出始めているらしい。そしてその境界に住んでいる猿はどちらの世界にも綻びを通って行けるらしい。今回は通り道と目される穴を塞いでとりあえずではあるが難を逃れる。
Posted by ブクログ
この巻では、凄惨な事件が起こる。これまでのどこか優雅な雰囲気から流れが見事に変わった。
これをサスペンスというのかな?主人公達の外敵も出てきて、今後の波乱は必至。終わり方も不安を煽る…
さて、2作目の感想で雪哉が捻くれてると言ったけど、勘違いだった。大事なものを真っ直ぐに守ろうとする姿は清々しい。捻くれてるのは父親など、立場に追われて、守るべきものを必死に守ろうとしない、少し頼りないものに対してのよう。逆に、芯の通った人物に対しては素直に認める。自分の過ちも気づいた時点で、すぐに改めようとする。とても頼りになる少年だ。
この雪哉の心の成長が描かれた本巻は、その一点でこれまでの巻と比べ、ポジティブだった。
天才ぶりをほのめかす雪哉だけど、その才に溺れず、筋の通った人物に成長を続けてほしいですね。