あらすじ
百物語なんかしていると、この世の業を集めますよ――。江戸は神田の袋物屋・三島屋では、風変わりな百物語が続けられている。語り手一人に、聞き手も一人。主人の次男・富次郎が聞いた話はけっして外には漏らさない。少年時代を木賃宿で過ごした老人が三島屋を訪れた。迷える魂の水先案内を務める不思議な水夫に出会ったことがあるという――。三島屋に嬉しい報せも舞い込み、ますます目が離せない宮部みゆき流の江戸怪談。
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Posted by ブクログ
火焰太鼓
美丈夫な中村新之助が10の時里の城下を、守るお太鼓様の伝誦を語る。
一途の念
焼き団子屋台のおみよと3人の兄、団子屋台を始める前の端末と母の悲しい話。
魂手形
亀甲縞の浴衣着た鯔背な老人吉富が語る。
木賃宿の跡取りだが幼い頃母親が客と駆け落ちし、祖母に曲尺で折檻されでいるところを、ガタイがよく口が悪い女中のお竹が祖母を一括して守ってくれ、そのまま父の拌吉の後妻となる。
15になった吉富はお竹の三味線仲間の別嬪を嫁に貰うこととなり浮かれていると、盆の最中鳥目の男が宿に入る。
その日布団を片付ける吉富とお竹は幽霊を見、男の部屋から真夏なのに寒い空気が。
幽霊は男の連れだった。
男は成仏しきれない魂を成仏させる手形を持っている。
前の魂との失敗で体も力も弱る男、困っている幽霊を助けるため吉富はたつ。
Posted by ブクログ
三島屋変調百物語シリーズも7巻目、百物語としても三十四話と全体の1/3、前半を超えるところまでやってきた。
今回はいつもより1話少な目で本自体も薄めの3話収録…とはいえ、3作とも内容は薄くない…いや怖さは薄いか…中身はしっかり面白い。
荒神を彷彿とさせる1話目、人情妖怪話の3話目、しっかり読ませる中編の間にはさまる2話目の短編が一番好み。
舞台を昭和にして、怪奇大作戦の1話として撮ってほしいような良き話。母の愛を受け子供たちが素直に育ったというその結果だけでも、おじさんは涙する。
3作目の最後はマーベル映画の最後のような気の持たせよう…それもまた良し、早いこと八之続を読みたいもんだ。
Posted by ブクログ
2024/1/26
最後!怖い終わり方しないで。
確か前作は全体的に怖かった。
今作は悲しくも優しい読後感。
特に表題作が良くて読んでてニコニコしちゃった。
じいさまかっこいいんだもん。
じいさまの継母もめっちゃかっこいい。
Posted by ブクログ
シリーズ7 三島屋次男坊小旦那富次郎 第一話 火焔太鼓(美丈夫の侍 国許の兄夫婦と神器の秘密) 第二話 一途の念(富次郎の知り合った屋台の串団子売りの娘おみよ 不幸だった父母の話) 第三話 魂手形(鯔背な老人 子供の頃家である木賃宿に泊めた男と幽霊との奇妙な出来事) 不思議というより、複雑で辛い出来事の話が多かった。内容が複雑で読むのに少し手間がかかった。
Posted by ブクログ
今回も優しい感じのお話だった。最後は少し怖さを主人公に残しての終わり方だった。おちかに罰が当たるのか…。ただ全面的におちかが悪いわけじゃないと思う。悪さをしようと思って許嫁が死んだわけじゃない。誰にだって迷って悩んで、そして口に出せる勇気があるわけじゃない。全てを完璧にするなんて無理。しかし今後の動向が気になる。最後のおじいさんは素敵だった。素敵なお義母さんが居たから素敵なおじいさんに育ったんだなあと思った。やっぱり側にいる人の影響受けるし。私も粋に年を取りたい。
Posted by ブクログ
宮部さんのライフワークである「三島屋」シリーズの第7弾ですが、今回も面白かったです。
表題作の終盤で、義憤に燃えた吉富が葵の継母を懲らしめるシーンが爽快でした。
葵の継母は容姿は端麗ながら陰険な性格の持ち主で、葵が幼い頃から彼女を苛めていたのみならず、私利私欲のために、ごろつきを使って葵を貶めさせ、死に追いやってしまいます。その後、彼女は肥えた老婆となっていたので、きっと葵を殺したことを露ほども気に病んでいなかったんだと思います。
一方、吉富にも継母がいますが、彼の継母であるお竹は、吉富を苛める祖母に凄んで虐待を止めさせた大人物です。「おめえのはらわたには虫が湧いてる」だの「鉈で腕を切ってやる」だの、言動はおっかないですが、自分の感情次第で態度を変えないあたり、良識はあるんだと思います(多分)。
同じ継母でも、二人は対照的です。葵の継母を追い込む時、吉富は、お竹が使うような物騒な言葉をチョイスしていました。もちろん、その場にいるのは吉富だけですが、人でなしの成敗に、お竹も加勢してくれているような気がして、読んでいて心地よかったです。
もう1つ、印象に残っているのは、吉富が葵の仇討ちのため、水面に亡者の力を分けてもらうシーンです。
この時、吉富は、「魔につけ込まれちゃいけない」という理由で、自身の縁談相手であるお由宇がくれた念珠を左手に嵌めています。
読み進めていた時は、「魔」とは、ただ漠然とした禍々しい何かである、くらいしか考えていませんでしたが、改めて考えてみると、葵(水面)そのものを指していたのでは、と思えてきました。
吉富は、化け物である水面を怖がっていた一方、七之助を介抱する姿に優しさを見出したり、同時に、そんな彼女を見て悲しみを感じたりもしていました。
また、彼女が登場するシーンでは、しきりに白檀という言葉が出てきます。吉富自身も「いい香り」といっていますし、白檀の香りをまとった水面に対して、マイナスではない感情を抱いているように感じました。
もしかしたら、吉富は、水面という女性に、どこか惹かれていたのかもしれません。だからこそ、この不明瞭な気持ちが恋慕に転化してしまわないように、ちゃんとお由宇のもとへ帰るのだと言い聞かせるために、念珠を嵌めたのかな、と。
水面の成仏後、彼女の魂を包んでいた浴衣から白檀の香りを嗅ぎ取った瞬間に念珠は壊れてしまいました。水面が無事に成仏し、残り香を嗅いだ瞬間、念珠は自身の役目を終えたと悟り、自ら壊れた――考えすぎかもしれませんが。
思ったことを色々と垂れ流してしまいましたが、次回作も楽しみです。
Posted by ブクログ
三島屋シリーズ 7冊目
「火焔太鼓」は「荒神」を連想した。
どうもこの手の奇想天外特撮レベルなのは、好きになれない。
色々あっても、もがきながらも懸命に生きようとする人達によりそうような作風が
好きで読んでるんだけど、急に「特撮」風な物が入り込むと、萎える。
「魂手形」
徳を積むって、あるんだね。ちゃんとまっとうに生きるって、すごい。
優しい人ほど、強いんだわ。
Posted by ブクログ
1話目、火焔太鼓。火事を消す魔法の太鼓。使い方を間違うと火事を起こす太鼓。その秘密は化け物のような火の神様で、しかもその火の神様は元は村人、という話。
2話目、一途の念。母親/奥さんの一途な念が子供の顔さえ変えてしまっていた、という話。
3話目、魂手形。迷ったり、悲しんだり、怒ったり、恨んだりした魂の集まる里がある。悲しい殺され方をした魂のために復讐をする話。
1話目が印象深い。事故で大火傷を負い人生が変わってしまうというのも本当にやるせないし、1人の犠牲で村に恩恵がある、というあり方が大変悲しくてやるせないと思う。一度恩恵を得てしまった村がその恩恵をなかなか手放せないというのもやるせない。
2話目の女の子が、語った後どこかに行ってしまって悲しい。小旦那さんと一緒にいてくれたら良かったのに。
3話目は吉富さんとお竹さんが良い人だったことがとても良かった。冷んやりとした空気の温度や白檀の香りまで漂ってくる様な雰囲気のあるお話し。