あらすじ
三島屋の主人伊兵衛は、傷ついた姪の心を癒やすため、語り捨ての変わり百物語を始めた。悲しみを乗り越えたおちかが迎える新たな語り手は、なじみの貸本屋「瓢箪古堂」の若旦那勘一。彼が語ったのは、読む者の寿命を教える不思議な冊子と、それに翻弄された浪人の物語だった。勘一の話を引き金に、おちかは自身の運命を変える重大な決断を下すが……。怖いけれども癖になる。三島屋シリーズ第五弾にして、第一期の完結編!
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Posted by ブクログ
三島屋変調百物語其の五
開かずの間
口入屋の灯庵の案内で、飯屋どんぶり屋の慌て者の平吉が語り手。生家の金物屋三好屋での怪異。
松吉、竹蔵、梅吉、おゆう、おりく、おみち、平吉の兄弟で暮らすが、出戻りの姉おゆうが、生き別れた息子に会いたいが為に塩だちしたことで、神様を自称するあやしを引き入れてしまう。誰かの何かと引き換えに、願いを叶えてあげると納戸に住みついたあやかしに操られ、一家が不幸に見舞われる。話し終えた後、気丈な守役のお勝の黒髪が白髪になるほどの魔力だった。
けっこう真剣に怖い。日本にありそうな呪いとか憑き物の
類。人の弱みに漬け込んで取り憑く地縛霊、霊障も怖いが、追い詰められた人間の弱い心が不幸を招く様がリアルだった。
だんまり姫
美濃屋の婿の母、遠州からやってきて三島屋の百物語で語り捨てたいとやってきた。
遠州の漁師村でもんもん声と言われる特殊な力を持つおせいは、その力を使って、言葉を発せられない大名のお姫様を救う。
お城にいる一国という少年のあやかしと、おせいのやり取りがほっこりする。
面の家
神田に火事が起こり半焼がなりひびく。その翌日
薄汚い小娘がふてくされて語らせろと乗り込んでくる。
名はお種。性根が悪いものしか聞こえない、面の声を聞く役目として100両という給金を示されて女中奉公にあがる。その屋敷では面を隠していて、面を逃しては街中に災いがおこる。お種は面に唆されて逃してしまう。
お面の妖よりも、生きている人間の中に必ず悪の心を持った人がいるところの方が怖い。
あやかし草子
黒白の間で語られた百物語を絵にしたためる三島屋の次男富次郎。
その絵を、貸本屋の若旦那勘一の用意した桐箱に仕舞うお勝。今回は勘一が自身の怪しい話を始める。
貸本屋瓢箪古堂が写本を頼んでいる旗本十兵衛は、貸本屋の大店井泉堂から破格の100両という額を示されて写本を請け負うが、その本は読んではいけないという。
出来上がった写本と原本が必ず違うものになるという。
勘一は語り終えるが、おちかには腑に落ちない語り終わりだった。聞き終えたおちかのもとに灯庵の口利きで、6度嫁いで全員に先立たれたという老婆が語りにくる。
おちかは老婆の話を聞き終えて勘一の元に行く決心をする。
金目の猫
おちかの嫁入り前に三島屋の長男伊一郎が奉公先から里帰りし、富次郎と黒白の間で酒を飲みつつ語るうちに伊一郎の百物語が始まる。2人が10と8つの頃にあった白猫の繭と、お稲荷さんのあやかしの回顧話。
おちかが勘一のところに嫁入りして三島屋の百物語は富次郎に引き継がれる。
最後に富次郎のところに、あの世とこの世の間のあの男が現れておちかへ祝いの言葉を残す。
Posted by ブクログ
大好きなシリーズ。おちかの嫁入りがどんな風に決まるのかドキドキしながら読んだ。予想もしていなかった、まさかの逆プロポーズ!一筋縄ではいかない勘一を動かすにはこの方法しかなかったし、おちかも勘一のような男でなければ結婚を決意しなかったと思う。壮絶な過去を背負ったおちかが、百物語の聞き手を経て自分の夫を自分で決めるほど強く歩み出した姿に胸が熱くなりました。第一章ハッピーエンドの雰囲気も、怪しい商人が最後に登場して後を引き継ぐ富次郎への挨拶にゾクリさせられました。勘一の深層も大いに気になり、これからもずっとずっと読み続けていきたいです。
Posted by ブクログ
どの話も読み始めたら引き込まれた。
さすがストーリーテラー!!
「開かずの間」は最後良かったぁー。やっぱりすごい怨念だったのね。
「だんまり姫」はもんも声の女性の控えめな活躍が良き。
「金目の猫」、聞き手が交代するとの事でまだあまり馴染みが三島屋の息子達がぐっと身近に感じられて良かった。
まさか、おちかが逆プロポーズするとは…。瓢箪古堂さんとの今後も頻繁に話題にしてほしい。
どのお話も語り手の生い立ちから語られることによって話に深みが出て世界観が広がる。読者も感情移入しやすく一気に語り手の話に引き込まれてしまう。
Posted by ブクログ
565ページ
1800円
11月5日〜11月12日
三島屋の黒白の間、おちかのもとには語りたい人が訪れる。聞き手には、おちかに加えて三島屋の次男、富次郎も加わる。富次郎は、聞き終えた話を1枚の絵に表す。開けずの間の行き逢い神、だんまり姫のもとにいた一国様、面を封じている家、金目の猫、それぞれの話が悲しかったり苦しかったり、人情に溢れていたりする。おちかの縁談も決まり、これからの聞き手は富次郎が務めることになる。
一つ一つの話に引き込まれる。最後の富次郎と兄、伊一郎と語った金目の猫の話は、心温まりながらも少し悲しい話だった。おちかが瓢箪古堂の勘一に嫁ぐことになったのがスッと決まって、恋しいとか思い煩ってとかの表現がないままだったので、突然恋して突然嫁入りといった感じがした。
Posted by ブクログ
三島屋変調百物語シリーズ5巻目にして、第1期終了節目の1冊。表紙が表紙なのでもうネタバレしても良いと思うので書くが、次作より聞き手が交代する。
おちかちゃん好きだったんだけど、幸せになる道で退場なら仕方ないねぇ。殉職的な終わり方じゃないならよし。
今回も怖い話、コミカルな話を織り交ぜて5編。奇数が怖くて偶数がコミカルな構成が基本だけど、第5話だけは怖いというよりノスタルジック(元々江戸時代舞台なのに?)な話でこの話から聞き手が変わる予告編的な1話。
おめでたい1冊なのだが、不思議と奇数話の怖い話が冴えていたと思う。
Posted by ブクログ
主人公はどうなるんだろう、ではなくてどうするんだろう?と思いながら読むのは初めて。見届けたいから一緒にいたいという理由がすごく良かった。
嫌なキャラクターと好きになれるキャラクターの書き分けがすごい。従兄弟さんたちや瓢箪古堂の人々は一瞬で好きになってしまったし。話に出てきた嫌な人もそこまで非道じゃなかったり、逆に非道だったらサラッと書かれていたりで怪異が怖いこと以外は読んでいて辛くなるようなことはなかったかも。そういう塩梅がすごい。