あらすじ
三島屋の黒白の間で行われている変わり百物語。語り手の年齢や身分は様々で、彼らは正しいことも過ちもすべてを語り捨てていく。十三歳の少女は亡者の集う家の哀しき顛末を、絶品の弁当屋の店主は夏場に休業する理由を、そして山陰の小藩の元江戸家老は寒村に潜む鬼の秘密を語る。聞き役に従兄の富次郎も加わり、怪異を聞き積んでいく中でおちかにも新たな出逢いと別れがあり―恐ろしいけど面白い三島屋シリーズ第四弾!
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Posted by ブクログ
三島屋百物語 その四
迷いの旅籠
鶴見川の北小森村の
13歳の女子おつぎが、名主さまに言われ語りにきた。
村の田畑を守る神あかり様のための行燈祭りを領主のお殿様の喪中のため禁じられた。田畑の凶作を恐れる小作人達と領主の怒りを恐れる名主、村長。間に入るふりをして自分の望みを叶えようとする絵描きが、あの世との道をあけてしまう。
食客ひだる神
三島屋の花見でとるお料理やの話。
秋から春の間だけ商いをするというだるま屋に興味を持ったおちかは、だるまやに話を聞く。
料理人を目指す房五郎は、旅の途中食い意地の張った「ひだる神」に憑かれてしまう。ひだる神を抱えて商売を広げる房五郎。
三鬼
取り潰しになった大名の江戸屋敷の家老を務めた村井清右衛門が語り手。
かつて藩主の栗山藩で小納戸役端という半端な役目を務めていた村井清右衛門は、妹を襲われてた恨みを晴らすための狼藉で、謎の山村洞ヶ森村の番役山番士として3年の役務につく。貧しい農村で訳ありの住人を須加利三郎とまとめる。
前任の番役の記録が一切なく、村長の欣吉からは何も聞き出せない。
そして前任の気のふれた番役の残したこの村には鬼がいると言う言葉。
3年目に鬼の姿を見て後をつけ、対峙する。
おくらさま
三島屋の時間富次郎が奉公先で怪我を負い三島屋に戻る。
久々の百物語を別室でお勝と聞くことに。
芝の香具屋の3人娘お藤、お菊、お梅は蔵座敷にて代々伝わるおくらさまの為に香をたく。おくらさまに店を守ってもらえると言う。
話し終えたところでおちかは目を回し気がつくと誰も居ない。幻だったのかを確かめる為に読んだ貸本屋の勘一の協力で香具屋の美仙屋を探す。
真違を確かめて落着したところで、おちかの思いを寄せる青野利一郎が藩もとの那須に戻ることになる。
Posted by ブクログ
三島屋変調百物語4巻目。4つの怪談を収録した600P超えで、読み応えばっちり。
「迷いの旅籠」と表題作「三鬼」がダーク、「食客ひだる神」がユーモラス、「おくらさま」はファンタジー色が一番強い上に本シリーズの主役、百物語聞き手のおちかにとって、大きなターニングポイントとなるテーマをはらんでいる内容。
良き…というか俺の好みの…怪談小説は「怖いのは人間弱いのは人間、でも強くて優しいのも人間」な内容をもっているものなんだけど、このシリーズはその条件をびったり当てはまっている上に、おちかちゃんを含めたシリーズ常連たちの人間成長小説になっていて、二層に味わいを楽しめる。
ここまでで22話、まだ78話の怪談が(本当に百やるなら)残っていて、非常に楽しみである。