あらすじ
“すぐ目の前にあって――わたしをまっすぐ見つめかえしていたの”名探偵〈アティカス・ピュント〉シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。『愚行の代償』の舞台は1953年の英国の村、事件はホテルを経営するかつての人気女優の殺人。誰もが怪しい謎に挑むピュントが明かす、驚きの真実とは……。ピースが次々と組み合わさって、意外な真相が浮かびあがる――そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、ミステリ界のトップランナーによる傑作!/解説=酒井貞道
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Posted by ブクログ
イギリスの作家、言わずと知れたアンソニー・ホロヴィッツのアティカス・ピュントシリーズ第二弾。まさかの『カササギ殺人事件』の続編。
このシリーズは順番に読むことを強くお勧め。
『カササギ殺人事件』が未読なら、あらすじも読まない方が良い。それくらい何も言えない作品。
なのでまさかの続篇にも驚いたが、一度で二度美味しい前作同様の仕掛けが、どのタイミングで入ってくるか楽しみにしながら読めた。
これまで読んだホロヴィッツ作品では、驚き度やミステリとしての良さは他作品の方が上かもしれないが、総合的にはこの『ヨルガオ殺人事件』が一番。高品質という言葉がこれほどまでに合う作品はないかなぁと。三作目の『マーブル館』も好評そうなので楽しみ。
Posted by ブクログ
・作中作と実際に起きた殺人事件とのリンクを探していく、という主人公スーザンの追体験を楽しめる作品であり、これは探偵役がいわゆる「素人探偵」である作品の特権であると感じた。本作が読者に対して「フェア」に手がかりを配置する上でも重要な役割を果たしている。
作中作で、本物のミステリ小説よろしく表紙、帯にあるような煽り文、献辞等も挿入されていることを新鮮に感じたが、それが謎解きに一役買っていてかつ手がかりが巧みにカモフラージュされていることに感嘆した。ミステリにおけるセオリーである「『違和感』が気のせいである』ことなんてない」という感覚を自身で体験できたのも嬉しい。全て謎が解かれた今、改めて『愚者の代償』を読み直し、キーワードを彼女のように辿っていくのも一興だろう。
その一方で、物語の真相の一端を占めるキーワードの意味に、原書でなら種明かしの場面の前に気づけたかもしれないとも思った。原書でキーワードを再び追ってみるのも良いだろう。
「謎解きミステリほど再読の喜びが少ない形式もないだろう」とスーザンは作中で述べているが、今作からは再読の楽しみが大いに見出せそうだ。
Posted by ブクログ
前作同様ハイクオリティな作中作が鍵となる一粒で2度美味しい本格ミステリ。一作目が凄すぎて二作目なんか書けるんかと思ったが納得のクオリティ。
さすがに一作目ほど複雑な構造は再現されないが、現実の事件の方がパワーアップしてベタな本格ミステリの世界に。ネットやメールなど現代のツールも活かして捜査するが最後はお約束の謎解きショー。これにはピュントもニッコリ。
でも結局「闇が落ちて」の章だけローマ数字だったのはなんで?本物のミステリオタならわかるんやろか…
Posted by ブクログ
上巻から続いて、ピュント編「愚行の代償」で始まる下巻。2度殺される話(1度目の殺人が失敗している話)自体は割とあるけど、そこから復讐に繋がる展開が見事だった。狂気じみた人間が犯人だと面白い。不穏な世界観のなかでも、ピュントの温かみのある人柄にはほっとした。
スーザン編は、1番怪しそうな奴は犯人じゃないのかと思いきや、やっぱり犯人だったという展開。ピュント編と比較すると生々しさが増していて、「いや浮気しすぎやろ」「カスばっかり!」と言いたくなるけど、そんな泥沼人間模様も楽しい。
ピュントもそうだけど、スーザンも推理においてその人の些細な言動から情報を拾い上げることが多くて、かなり洞察力が優れていると思った。スーザンはピュントを師のような存在と語っていて、ここに次元を跨いだ不思議な師弟関係が成立しているのが素敵。聡明で勇敢な彼女に振り回されるアンドレアスは大変だ。
アンソニー・ホロヴィッツがこのシリーズの継続に前向きと巻末の解説で知って調べてみると、「マーブル館殺人事件」という続編が2025年に邦訳で刊行されるようで、本当に嬉しくて飛び上がってしまった。お焚き上げまでした2人には悪いけど、ピュントとスーザンにまた会える日が待ち遠しい!
Posted by ブクログ
カササギ殺人事件の続編。
またもや亡きアラン・コンウェイのアティカス・ピュントシリーズの本に纏わる騒動に巻き込まれる事になった元編集者の主人公。
報酬に釣られて居なくなった娘と八年前の事件の謎を解くことに。
作中作で現実と小説が今度は交互に描写される形。
相変わらず本編より小説の方が私の好みだった。あと登場人物が二倍になるからややこしい笑
前回の登場人物が出てきたりアランの人でなし感が更に凝縮されてた。嫌がらせに凝りすぎだろ。
本編のオチは思ったよりあっさりめ。
正直スーザンの私生活の悩みとかは個人的には無くてもいい。
フクロウは普通に死ねるだろ。
小説読んでて思うけどキャラ達の記憶力すごくない?
三作目以降も同じ様な骨組みなのかな?とりあえず続きも読みます。
Posted by ブクログ
作中作が単体で魅力的なのがすごい。
しかも現在の事件を解くのにほとんど内容は関わってこないのにこの手の入れようは恐ろしい。
そっちに入り込みすぎて、現在に戻ったときにどんな事件だったか少し忘れたくらい。
現在の事件の犯人を特定するのには、星占いと獅子座の情報だけで足りる。この単純な真相を隠すために、登場人物それぞれに意味ありげな秘密が用意されるが、このミスリードの塩梅が絶妙で、それぞれの秘密を調べるためにコミュニティに入っていくことで初めて単純な真相に気づくことができる。
同性愛を犯罪に結びつける傾向にある気もするがどうなんだろう
Posted by ブクログ
前作で、否応なしに巻き込まれてしまった素人探偵スーザンが、今回は自ら乗り込んでいく、大好きで大嫌いな作家・故アランの後始末をつけるため。このおっさん(架空の人物だけどさ)、何百万もの人々に楽しいひとときを与えたのと同時に、身近な人間を含めた何人を、不幸のどん底に陥れただろう。こんなクズの存在は、フィクションの中だけにしてもらいたいものだ。
最後の警視正の災難は、代理復讐だったのかねー。オマエがすること? とも思うけれど、奴なりの後始末をつけたのかも。
ともあれ、スーザンが幸せになってよかった。続きが読みたい、ドラマ化してほしい!(2023-12-15L)
待望のドラマ版を観終えました!
前作にもあった、小説では出来なくてドラマならではの表現、車が停車、もしくはドアが開閉するタイミングで小説内←→現代パートを行き来したり、スーザンがイマジナリーピュントと対話したりというシーンも勿論健在で、小説のモデルになった人物を、現代パートで同じ役者が演じていたりもする(やっぱり全然別の人物に見える…役者って凄い)。
原作は1年以上前に読んだから、細かいところはよく覚えていないんだけれど(あれ、こういう展開だっけ?)、脚本もホロヴィッツ本人が書いたとあって、とっても面白かったです。
ただ軸となるアナグラムは、外国人が読むにはちょいとネックかも。
またスーザンが大変な目に遭うのは気の毒だから、続編はもういいや。ホーソーンに頑張ってもらおう。(2025-3-27加筆、WOWOWにて録画視聴)