あらすじ
“砂の海を渡る船”を降りたキーリと<不死人>ハーヴェイそしてラジオの兵長は、炭鉱の街に住むことに……。キーリは初めてのアルバイト生活を楽しんでいたが、ハーヴェイはほとんどの時間をアパートの部屋で過ごしていた。 ――ある朝、アルバイトに出かけるキーリを狙うかのように、上の階からフォークが落ちてきた。なんとか防いだハーヴェイは、フォークを落とした張本人の部屋に向かう。しかし、そこは空き部屋になっていて――!?
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Posted by ブクログ
今回は旅ではなく、街に住む話。
旅をしていようが同居して住んでいようが二人(と一体)のテンションには一見違いはないですが、「普通の暮らし」をすることで、二人の間にある考えの違いが明確になってきます。考えの違いというよりは、理想と現実の溝を思い知らされて二人ともどうしたらいいか分からない、という感じかも。
一つ所に留まって、親のように優しい人に出会い、アルバイトもして、心のどこかで「ずっとこのままでいたい」と思っているキーリ。
そんなキーリを「普通の女の子」だと言って、なんとか「普通の暮らし」に帰してやりたいと思う反面、彼女への執着が抜けないハーヴェイ。
お互いにその素直な気持ちを言えないものだから、今作ではすれちがいがちで、別行動がとかく多いです。
今作は特に、ハーヴェイの「執着」を軸に読んでいくと、話全体が、もの・ひとに対する執着をテーマに書いているのだな、というのが浮かんできます。
中でも、「ホーンテッド・スターシップ」のダニールと妹の関係に、自分とキーリを重ねるハーヴェイが印象的でした。
そして、長期的な目的もない旅の話が、この巻から明確な目的意識を持って動き始めます。
今作は、その意味では繋ぎという位置付けなのでしょう。
"Let us go home"
章タイトルであり、クライマックスで繰り返されるこの言葉を信じて、完結まで読んでいこうと思います。