あらすじ
泥クジラの深層を進むチャクロたちは、過去の記録が壁を埋め尽くす“ミゼンの部屋”に辿り着く。そこで見つけたのは、かつてこの部屋で悪霊として誕生した“ミゼン”の記録…。小さな闇が光になろうとした、そんな悲しい記録だった。
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果てない砂の海を漂流する漂泊船「泥クジラ」。チャクロはその泥クジラの「記録係」であった。
泥クジラの住人の多くが、情念動(サイミア)と呼ばれる不思議な力を使い、そして彼らは短命であるという。
若い仲間の死に何度も傷つきながら、それでも彼らは穏やかで平和に暮らしていた。
しかし、ある日廃墟船に偵察に赴いたチャクロは、衰弱した少女・リコスに出会い、それにより状況は一変する。
泥クジラ以外の世界、そこに住まう人間を見たことがない住人たち。そんな彼らにとって残酷な真実を知るリコス。
外の世界はどうなっているのか、住人の祖先たちはなぜ泥クジラで生活していたのか、そもそも泥クジラとは一体なんなのか…。
すべての謎が明かされ、自分たちが短命である理由を知った住人たちは、新天地を目指し泥クジラの舵を取るのだった。
このお話はタイトル通り、「クジラの子」、すなわち泥クジラで生きる子どもたちを描いています。
「泥クジラ」という聞きなれない場所に住んでいることで、どこか遠いところの話に聞こえますが、彼らは楽しいも悲しいも感じる、感情を持った普通の人間でした。
というのも、外の世界には感情を持たない人間がいたからです。リコスもまたその1人でした。
そんな彼女ですが、チャクロやその仲間と過ごすうちに、自分の感情を取り戻していきます。
そしてクジラの子たちを助けたい、彼らと生きたい、そう願うようになるのです。
しかしそれは決して簡単な道ではなく、何度もクジラの子たちは絶望し、立ち尽くすのでした。
残酷な真実ばかりの世界で、悲しみがあふれる世界で、それでも人間は感情を持つのが正しいのでしょうか。
チャクロは言います。「痛みや苦しみすべてが俺たちの生きてきた記録だ」と。そしてだからこそ忘れることはできないと。
仕事や人間関係で嫌なことがあったとき、悲しくて泣きたいと思ったとき、何度でも読み返したくなる1冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
センス・オブ・ワンダーあふれる壮大な歴史のうねりの中に、ごく近い一個人のほんの一言まで繊細な描写。一人の作家が世界観を積み重ねてここまで作りあげられてしまうのか。一見して思いがちな人まねでは断じてない、新しい神話。
なんとも言えない世界観が、すごくいいです。だいぶ色々わかって次回は新章って感じだけど...
もーちょっとだったのにーとかなりつつ...
色々気になるもんもあるしで..
Posted by ブクログ
ミゼンの部屋にたどり着いたチャクロたち。その壁に書かれた記録から泥クジラの始まりを知り、そして初代首長ズィオと彼女が生み出した「デモナス」ミゼンについて知る。
いろいろな事が分かったが、新しい謎も出てきて終わりと始まりを感じさせた。
過去の泥クジラの話は最長老の言う通りミゼンは悪くないと。エカトが死んで狂ったズィオがミゼンを殺す道具として利用した上に子どもに全ての責任を押しつけて自殺した。そういう印象を受けた。
この過去の出来事を受けて新たな疑問が出てくる。ミゼンが死んでいるという事はオウニは何者?能力を考えるとデモナスだけど誰がなんの目的で生み出した?という事だ。なぜ泥クジラの面々はそこに疑問を持たないのかが謎だ。
しかも過去の泥クジラの長老会はなぜデモナスの悲劇を経験した上で人工のデモナスを作ろうとしたのだろうか?本人曰く失敗作の団長がオウニのなぜちょっかいを出していたのかの謎だけは解けた気がする。
そしてアモンロギアに着く直前でのマソオさんの死。嫌なものは全て持っていくと言った優しさと間に合わなかった悔しさとで切なかった。
不吉なのは帝国がまた泥クジラをオウニを狙っている事。アモンロギアについても困難が待ち受けていそうだ。
Posted by ブクログ
オウニと団長の誕生の秘密。なぜ長老会はまたデモナスを造ろうと思ったのだろう? 過去の災難を知っているのに? 帝国がいずれは攻めてくるとわかっていたから? でも攻めてきた時に無抵抗でいようとしたのは長老会だったような…??
ともかくも、アモンロギアに到着。泥クジラは廃棄されてしまうのか? 帝国のファレナ討伐隊はここまで追ってくるのか? 次巻を待ちます。