あらすじ
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マチネ・ポエティクのひとりとして『1946 文学的考察』で文壇に登場して以来、文学、芸術を中心にして政治、社会、思想など多方面にわたる評論・創作活動に従事し、戦後日本を代表する知性ともいうべき加藤周一(1919~ )の、旧制高校時代から1979年までの主な活動を集成する。本著作集は、収録著作を精選し、あらたに「追記」「あとがき」による註を加えた、著者自身の編集になる。
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Posted by ブクログ
中国とアメリカの政治や社会について、著者自身が現地で見聞した事実をまじえつつ論じた文章をまとめています。
中国との関係について著者は、アメリカに「一辺倒」の立場にもとづく非友好的な態度を示してきた日本の外交姿勢を批判し、国際情勢を踏まえて中国との友好が日本にとって経済的な利益においても道義的な評価においても望ましいことを主張します。それにもかかわらず日本政府は、頭越しにアメリカが中国と関係を結んだことにとまどうばかりだったことを著者はとりあげて、政府と国民の目を醒まそうと努めています。また、文化大革命についてまだじゅうぶんな情報がもたらされず、また断片的な情報に接してはいても論者の政治的立場によって補足される部分が大きく、その全貌が見えてこないなかで、けっして「一辺倒」になることのないように心がけつつ議論を進めていることがうかがえます。
他方アメリカでは、ソヴィエト連邦との冷戦の緩和や、ヴェトナム戦争の終結や黒人差別問題などがとりあげられ、とくに若い世代の人びとの意識に変化が生じつつあることに、著者は注目しています。
著者は丸山眞男とともに、戦後民主主義を代表する思想家と目されており、政治的にはリベラルな立場をとっていたというイメージが強く、またそれが誤っているとは思いませんが、本巻の「あとがき」に「私はどこの国に対しても、むろん私自身の国を含め、殊に政府とその政策に対しては、批判をもつことが多い。またどこの国に対しても、殊にその国の文化を、評価しないということはない」とあるように、バランスのとれた見かたを守ろうと努めていることがうかがえます。ただ率直にいうと、国家のようなきわめて規模の大きな組織では、方針を決定するエージェントが複雑だということへの認識が甘いのではないかと感じるところもあります。