【感想・ネタバレ】加藤周一著作集 2のレビュー

あらすじ

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マチネ・ポエティクのひとりとして『1946 文学的考察』で文壇に登場して以来、文学、芸術を中心にして政治、社会、思想など多方面にわたる評論・創作活動に従事し、戦後日本を代表する知性ともいうべき加藤周一(1919~ )の、旧制高校時代から1979年までの主な活動を集成する。本著作集は、収録著作を精選し、あらたに「追記」「あとがき」による註を加えた、著者自身の編集になる。

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Posted by ブクログ

戦後の西洋文学を紹介するとともに、とくに政治と文学のテーマにかかわる諸問題について考察した文章などが収録されています。

著者は、戦争中に日本の詩人たちが自然を歌うことで「ファシズム」に加担していたのに対して、フランスの詩人たちが詩を通して「ファシズム」と戦っていたことに感銘を受け、そうした詩人たちの仕事を紹介しています。他方、日本の同盟国だったドイツの文学者については、批判的な観点からの考察がおこなわれます。「ゴットフリート・ベンと現代ドイツの「精神」」という論考では、詩人である彼が政治について深い理解をもちあわせていなかったことを認めつつ、自我から出発して民族の運命にたどり着いた彼と、不条理から出発して「反抗的人間」にたどり着いたカミュを対比することで、批判の視座を見いだそうと試みています。そのうえで著者が、「おどろくべき類似が、われわれ自身の思想の内側を示唆しているように思われる……」ということばでこの文章を締めくくっているのは、小林秀雄のような日本の文学者や批評家を念頭に置いているように思われます。

そのほか、サルトルにかんする論考も収録されています。現代の観点からやや引っかかりをおぼえるのは、サルトル=カミュ論争をめぐる著者の議論です。ソヴィエト連邦の強制収容所を批判しないサルトルの態度をカミュが批判したのに対して、著者はまず、マルクス主義への理論的な関心にとぼしいフランスにあって、サルトルがスターリニズムを生み出した基礎的な条件についての考察をおこなったことの意義を指摘します。さらに、ナチスに反対しながらハンガリーの社会主義政府を批判しないカール・バルトと、そうした態度に一貫性が欠けていると批判したブルンナーの対立をかさねて、主体的で行動的な立場にたっていたバルトとサルトルの擁護を試みています。しかし、やはり本巻に収録されているフォースター論において、愛の原理と寛容の原理を区別することの意義を論じていた著者が、なぜ主体的なサルトルの立場が愛の原理と同様に「公的な事柄については役に立たない」のではないかと省みようとしなかったのかという疑問がつきまといます。

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2026年01月21日

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