【感想・ネタバレ】加藤周一著作集 1のレビュー

あらすじ

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マチネ・ポエティクのひとりとして『1946 文学的考察』で文壇に登場して以来、文学、芸術を中心にして政治、社会、思想など多方面にわたる評論・創作活動に従事し、戦後日本を代表する知性ともいうべき加藤周一(1919~ )の、旧制高校時代から1979年までの主な活動を集成する。本著作集は、収録著作を精選し、あらたに「追記」「あとがき」による註を加えた、著者自身の編集になる。

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Posted by ブクログ

文学にかんする著者の論考を収録しています。サブタイトルの「文学の擁護」というタイトルの論考では、ラブレーやモンテーニュをもふくむ「文学」の概念をめぐる考察です。著者は、プルーストの『失われた時を求めて』のなかの「ジルベルトは、政府があまりにしばしば変るので誰も敢えて同盟を結ぼうとしない国々のようであった」という一文を手がかりに、具体的なものを掘り下げることで現実全体を批判的に超えようとする文学の意義について考察しています。

また本巻には、著者の比較的若いころに書かれた、フランス文学にかんする批評も収録されています。とくに著者が関心を向けているのは、ルソーに代表されるロマン主義と、その伝統に対抗することで象徴主義の潮流を形成したボードレール、ヴァレリー、マラルメの文学です。古典主義とロマン主義の対立は、「完成と無限」ということばで簡潔にいいあらわすことが可能です。ルソーはその社会思想において、自然のなかに暮らす人間に理想を見ようとしましたが、彼がその理想を把握するための手がかりとしたのは、感性という開かれた能力でした。ここに、ルソーの大きな影響を受けつつも、実践理性の自律を原理とする倫理学を構築したカントとのちがいがあるといえるでしょう。著者は、経験論の立場にたちつつもロックのような反省の働きを認めず、あくまで感性のみに依拠して思索を展開したコンディヤックに注目し、その思想史的な意義について論じています。

他方象徴主義は、建築家が石を素材として建物をつくるように、ことばを素材として詩をつくることで、現実世界とは異なる詩と芸術の領域を切り開きました。このような意味で、ヴァレリーにとって詩は「創造の技術」にほかならなかったと著者は論じて、最後に「我国には知られざる、―全く知られざる海悲願の一私人に就いて、私は余りに長く言葉を費した。我々は我々の現実にもどらなければならない。そこには焼跡がひろがっている」と語ります。その後著者は、日本の文化と文学について考察を開始しますが、当時の著者の時代状況に対する態度がこの文章に示されているように感じます。

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2026年01月21日

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