【感想・ネタバレ】加藤周一著作集 8のレビュー

あらすじ

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マチネ・ポエティクのひとりとして『1946 文学的考察』で文壇に登場して以来、文学、芸術を中心にして政治、社会、思想など多方面にわたる評論・創作活動に従事し、戦後日本を代表する知性ともいうべき加藤周一(1919~ )の、旧制高校時代から1979年までの主な活動を集成する。本著作集は、収録著作を精選し、あらたに「追記」「あとがき」による註を加えた、著者自身の編集になる。

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Posted by ブクログ

中村真一郎、福永武彦との共著である『1946・文学的考察』に収められた論考や、『言葉と戦車を見すえて―加藤周一が考えつづけてきたこと』(2009年、ちくま学芸文庫)に収録されることになった、同時代の世界情勢に対する批評などを収録しています。

巻頭に置かれている「戦争と文学に関する断想」という論考は、第一高等学校寄宿寮の主催で発行されていた学生新聞に掲載されたもので、林達夫を思わせるイロニーと韜晦による戦争の批判をおこなっています。本巻に収録するにあたって付された「追記」で著者ははこの文章の未熟さを恥じて、「私はこの文章を「著作集」に収めるのに、大いに躊躇した」と述べていますが、それでも著者の早熟ぶりには舌を巻くほかありません。とはいうものの、著者と林ではそもそも資質がちがっており、後年の明晰な文章こそが著者の本領だということが、この文章によって図らずも示されていることもたしかです。

「新しき星菫派に就いて」は、荒正人らとの論争を引き起こしたことで知られる文章で、太平洋戦争中に現実から逃避して文学や芸術の世界に隠遁した人びとを厳しく批判しています。著者は、フランスの詩人たちによる、ナチスの侵攻に対するレジスタンスと引きくらべて、日本の文学者たちの態度を糾弾したものと思われますが、のちの著者が自覚的に標榜することになる「高みの見物」の意義と限界について、いまだじゅうぶんな認識をもちあわせていなかったようにも感じます。

後半に収録されているのは、政治情勢に対する時評的な性格の論考です。「言葉と戦車」は、ソヴィエト連邦がチェコスロヴァキアの民主化運動を弾圧した事件を受けて書かれた文章です。ここには、民衆の立場にたつことを、知識人として自覚的にえらびとった著者の態度がはっきりと示されており、たとえば吉本隆明などの思想家たちと著者の立場のちがいがうかがえるように思います。

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2026年01月28日

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