【感想・ネタバレ】加藤周一著作集 4のレビュー

あらすじ

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マチネ・ポエティクのひとりとして『1946 文学的考察』で文壇に登場して以来、文学、芸術を中心にして政治、社会、思想など多方面にわたる評論・創作活動に従事し、戦後日本を代表する知性ともいうべき加藤周一(1919~ )の、旧制高校時代から1979年までの主な活動を集成する。本著作集は、収録著作を精選し、あらたに「追記」「あとがき」による註を加えた、著者自身の編集になる。

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Posted by ブクログ

著者の代表作である『日本文学史序説』の前半部分にあたる、古代から近世初頭までを収録しています。

本作は、批評家である著者によって書かれた、日本文学史の全体像の概説です。専門分化のいちじるしい現代では、特定の専門領域をもつ文学研究者がこうした試みをおこなうことはほとんど不可能となっています。日本文学の研究者である小西甚一には、『日本文学史』(1993年、講談社学術文庫)という、ひろく読まれている名著がありますが、これは「文芸」という観点に限定して、日本文学史をたどる内容となっています。また、批評家で詩人でもある大岡信にも『あなたに語る日本文学史』(2023年、角川ソフィア文庫)という作品がありますが、こちらは大岡の専門というべき和歌・俳句・詩などを中心とするものです。

これに対して、本作でとりあげられている「文学」のうちには、親鸞や道元といった思想家までもがふくまれているばかりか、世阿弥や雪舟、本阿弥光悦といった芸術家に分類される人びとにまで説きおよんで、文学を中心とする日本文化のたどってきた歴史の全体を概観する、ひとつの観点を提示しています。たとえば、本作の最初にとりあげられているのは、『古事記』でも『万葉集』でもなく、聖徳太子によって制定されたとつたえられる『十七条の憲法』です。

その観点とは、仏教や儒教に代表される外来の思想と、日本列島に暮らす人びとが伝統的に引き継いできた土着的世界観の混じりあいを解きほぐす見かたといってよいでしょう。たとえば『今昔物語集』には、仏教説話と呼ぶことのできるエピソードが多くふくまれていますが、それは仏教的世界観を理論的に解明することを目的としたものではありません。むしろそこには、因果応報の概念が庶民のうちに定着するために被ることになった変容のありようが示されています。このような変容をもたらす要因として、著者は日本の土着的世界観を浮き彫りにすることをめざしています。

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2026年01月23日

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