【感想・ネタバレ】史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたかのレビュー

あらすじ

1年で稼いだ額、150億ドル。
ジョン・ポールソンはサブプライムローンの破綻を予測し、一世一代の取引によって、巨万の富を手にした。彼は、単に取引を成功させたというだけではない。不動産投資に全く縁のなかった無名の投資家が、金融史上最大の取引を成功させたのだ。思い上がったウォール街の金融家たちの失敗を尻目に、金融崩壊の真っただ中で大成功を収めた。なぜ政府やFRB、投資銀行はバブルに気づかなかったか? なぜポールソンはそれを見抜くことができたのか?
ウォール街の歴史を塗り替えた男の驚くべき舞台裏を、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のトップライターが見事に描き切った迫真のドキュメンタリー。

「まるで推理小説だ!」――ニューヨーク・タイムズ

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Posted by ブクログ

リーマンショックに至る金融バブルの最中、住宅価格の上昇が止まることにより破綻することに賭け、そして勝ったジョン・ポールソンの物語。

同じく金融バブルで反対に掛けて勝った人たちの物語をつづった本としてマイケル・ルイスの『世紀の空売り』があるが、マイケル・バーリやドイツ銀行のリップマンなど登場人物が重なる。最初に読んだ方ということもあるのか、やや変わった人たちを物語の軸に据えた『世紀の空売り』の方が面白かった。CDS (Credit Default Swap)などの仕組みも『世紀の空売り』の方が詳しい。ただ、この本もその結論はある程度知っているのに面白い。金融崩壊の物語が人をある意味惹きつける、慾や怖れを生々しくも炙りだしたということだろう。

『世紀の空売り』のマイケル・バーリらもそうであったが、彼らの賭けの反対側にいるものたち(CDOを買っている人たち=投資銀行)の正体と考え(インセンティブ)が見えた段階で確信を持ったことだろう。

そして、バブルはまた起る。アベノミクスが何らかのバブルであり、いつか崩壊するという可能性も十分ある。そして同時にその不均衡からマネーを引き出すために賭けを行っている人も、きっといるのだ。

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2014年02月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

先輩に勧められて。
読み物として面白く、非常に勉強にもなりました。
金融危機やCDS、世界を(ある意味)席巻するグローバル金融機関について関心があるのであれば非常に実り多いものになるかと。マーケットの仕事の関わる方であればまず無駄にはならないと思います。

本書には数々の成功者(金銭的な)も登場しますが、本当の成功、幸福が何かということも改めて考えさせられました。ウォールストリートや外資系金融機関の社員を羨望の目で眺めることもありますが、やはり自身が追い求めるものとは違うような気がします。

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2012年01月15日

Posted by ブクログ

ジョン・ポールソン。彼は思い上がったウォール街の金融家たちの失敗を尻目にサブプライムローンの破綻を予測し、一世一代の取引によって、1年で150億ドルという巨万の富を手にした。本書はその記録です。

僕がこの本を読むきっかけになったのは、ニューズウィークの日本語版で多くの誌面を割いて、この本の特集が組まれてあって、これはぜひ読みたいなと思い、先日手に入れて読んでいました。中身の難しさと、自分の金融に関する知識がまださび付いていないことを確認できただけでも、読んでよかったと思います。ただ、この本を読みこなすには、基本的な金融に関する知識がないと骨が折れるということは明記しておきます。

しかしサブプライム・ローン破綻の経済危機のダメージから、いまだ回復していない世界経済を見るうえには、それをチャンス捉え、1年間で150億ドルを稼ぎ出したといわれるジョン・ポールソンの記録を読んでおくことは決して損にならないと確信しております。彼がすごいところは、単に取引を成功させたというだけではなく、不動産投資やCDSなどのデリバティブ商品にに全く縁のなかった無名の投資家が、金融史上最大の取引を成功させたのだ、というところにあります。くわしい話は本書を参照してほしいのですが、右肩上がりで活況を催しているときに
「これは異常だ」
と気づいて、その読みがもし違っていれば、破産は確実ともいえる天文学的な負債を抱えなかればならない。そのリスクとプレッシャーに向き合う姿というのは、常人には計り知れない物があるのだろうなと感じました。

そして、この本にはポールソンだけではなく、先日ここでも紹介した「世紀の空売り」にも出てきたマイケル・バーリなども出てきて、『おっ』なんて思いながら僕は楽しく読み進めることができました。本書の後半になってサブプライムローンやCDSが破綻して、彼の懐に巨額の利益が転がり込んできたときの描写を読んでいたときはジョージ・ソロスがイングランド銀行を破綻させたとき以上の取引規模だったという話を聞いて、やっぱり彼のとったリスクはすさまじいものがあったんだと、表紙に写っているスーツ姿で穏やかな彼の姿のどこにそんなタフさがあるのだろうと、思いながら、今、この記事を書いております。もし、あのさなかにすさまじい儲けをたたき出した人がいて、その一人がどういう風にしてリスクをとり、そして決断を下したのか?それを知りたい方は、ぜひ一読をしていただけるとうれしいなと思っています。

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2011年12月02日

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大変面白かったので、ノンストップで一日で読み終えてしまった。
金融商品売買に関することだけでなく、それに関わる人物のドラマや、ジョン・ポールソン自身の生い立ちやキャリアヒストリーにも触れて話が展開されており、非常に綿密な取材で生み出された作品と分かる。
また、サブプライムの話だけでなく、金融史も振り返って著述されている。何度も何度も折りに触れ読み返して行きたい本である。

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2011年08月02日

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ネタバレ

個人的な金融危機4部作のうち1つ。アイズマン達と同様にサブプライム関連証券のCDSを買いまくっていたジョン・ポールソンは驚きの行動に出る。それは自らが危険なモーゲージ債券を選定し、それを基にCDOを作成し、そのCDOを投資家に売り、自分はそのCDOを対象にしたCDSを買い、ショート・ポジションを作る事であった。多くの投資銀行はそのような道徳性に欠ける彼の提案を却下するが、ゴールドマン・サックスは彼の提案を受けるのだが・・・

金融危機を当時のヘッジファンド史上最高益の利益を手にしたジョン・ポールソンの視点から描いた作品。

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2013年03月01日

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あとがきにも書いてあるとおり,これは金融史でもある。

構成も非常にスリリングな展開かつ金融素人でもわかるような内容でかいてある。
単純な気難しい本ではなくて,基本から理解しながら読めるのはとても面白かった。

この手の本ならどんどん読みたいと思った。

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2011年04月20日

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米国の住宅バブルの崩壊に賭けて、巨万の富を築いたヘッジファンドのジョン・ポールソンの話。綿密な調査から、住宅市場や金融システムの仕組みや行く末を見抜き、サブプライムローンを分析しCDSに目をつけていく過程は興味深い。金融システムが破綻するようなバブルがどのように発生して膨らんでいったか、当時の人々がどのような心理状態にあったか、学ぶところは多い。また、登場人物たちの人間的な弱さも上手く描かれており、読み物としても面白い。

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2011年04月07日

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サブプライム証券のデフォルトに端を発した金融危機では、リーマンブラザーズ、ベアースターンズ、メリルリンチ等の大手金融機関が倒産・救済に追い込まれた。いずれもかつては、サブプライム証券の組成・販売で多額の利益を享受していた金融機関である。
その混乱の最中、莫大な利益を上げウォール街の注目を一身に集めた男がいる。ジョン・ポールソン。本書はポールソンがいかにして一介のヘッジファンドマネジャーから、そのような成果・名声を得るに至ったかを丹念に叙述する。

本書の魅力の1つは、難解な金融用語を避け広範な読者にアピールする文章であることに加え、登場する人物のほとんどに生い立ちからのエピソードを付け、各人物毎のドラマを多層的に記述してあることだ。そのため、金融にさほど興味のない人でも小説のように楽しめる内容になっているように思われる。
一方、金融に興味のある人にとっても、いかにして住宅バブル崩壊への賭けが奏功したかについて、具体的な記述がされており、大いに参考になるだろう。取引内容は興を削ぐためここでは触れないが、ローリスク・ハイリターンな投資戦略は読んでいていい刺激になった。
最後に、ポールソンのファンドが投資アイデアを実現するまでに多くの時間・労力を要したことに触れておく。ポールソンのアイデアは優れたものだったが、当時の世間常識や住宅市場への楽観と真っ向から対立したものであったため、当初ファンドに思うように資金が集まらなかったのである。先が見えても、それだけではうまくいかない運用ビジネスの実態がわかり、非常に読み応えがあった。

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2011年01月10日

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あの100年に一度といわれた経済危機リーマンショックの裏側で、一世一代の取引で大儲けした男たちの物語。金融や投資の知識がなくても、のめり込んで読んでしまう。

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2021年11月07日

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キャッチーなタイトルから、読みやすい本であると思ってしまうが、確かに初回(今回は再読)よりも格段にこのからくりについての前知識も増えてそれが読んでいて登場人物それぞれの葛藤が目に取れるようにわかり面白かった。だが読み進む速度が遅く感じられた。総ページ数400にもなるから当然だと思いたいが、これを翻訳したの労力に驚きもある。

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2021年07月17日

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儲からないポジションを持ち続けるのはさぞかしタフな日々だったと思うけど、それが報われる日も来るんだなぁと思わせてくれた本。

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2020年10月26日

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サブプライムローンのインチキを見破り、1年で1兆5千億円稼いだおっさんのはなし。ジョージ・ソロスがジョン・ポールソンに教えを乞うシーンもあった。

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2014年02月07日

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ハラハラドキドキ手に汗握る金融ドキュメント。いかにジョン・ポールソンは巨額の富を手に入れたのか。この本を読む前にサブプライムローン・CDS・CDOといった証券化の内容を知っていおいた方がいいです。

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2014年01月02日

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アメリカ金融界の歴史の中で名もない投資家が、 しかも不動産投資に縁のない人物が、巨額の利益を手にした実話。様々な人が出てくるので、相関図が欲しいぐらいです。
マネー・ゲームそのもの。勝たなければ、ウォール街の波に飲み込まれてしまいます。
複雑なアメリカ金融の仕組み。
様々な名のついた証券を日本の年金基金、スイスの銀行、イギリスのヘッジファンド会社、アメリカの保険会社など世界中に売りさばきました。
いい商品だと喜びもつかの間、購入した国や人は損害を被る。
専門家だからと言われるがままだったのでしょか、わかりません。
投資家やウォール街に別れを告げる、アンドリュー・ラーデの手紙が印象深かったです。

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2013年10月14日

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サブプライム下落で設けたポールソンの話し。バブルはいつか弾けるけど、いつ弾けるのかを予測するのがどれだけ難しいか、そして下落に金をかけるのが凄まじく困難なのがよくわかる。

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2011年12月16日

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2007年、米住宅ローン市場をショートし年+600%という驚異的リターンを出したジョン・ポールソン。彼が、米住宅ローン業界の欺瞞に気づき、周囲の嘲りに耐えながらショートポジを積み増し、完璧なタイミングで利確するまでを、彼の部下や仲間、友人、競争相手といったウォール街の様々な役者達とのやり取りを交え、詳細に綴った本。

Michael Lewisの"THE BIG SHORT"と被る部分がかなり多くあるので、ここではBIG SHORTとの差異だけを記す(考察等については、"THE BIG SHORT"のレビューを参照):

①語り口に癖がない。Michael Lewisのほうは、Liar's Pokerの頃から変わらない、良く言えば臨場感溢れる、悪く言えば下品な表現が多いが、こちらは標準的な言い回しで、淡々と事実を述べていき、物語を紡いでいく。

②表紙にデカデカと本人の写真が使われ、副題にも名前が出ていることから分かる通り、物語の中心はジョン・ポールソン。一方、THE BIG SHORTのほうでは、ちょろっと1~2回ほど、名前が出てくるに過ぎない。多分、変人好きのMichael Lewisから見ると、Paulsonは「普通」すぎるからだと、勝手に推察(実際、アスペ持ちのマイケル・バーリのほうは、本書だけではなく、Lewisの著作でも中心人物として出てくる)

③THE BIG SHORTのほうは、金融業界の病理をシステム論的に炙り出すことを明確に意識して物語を紡いでいるが、こちらはどちらかと言えば、暴走した金融システムを所与のものとして与え、その中でポールソンを始めとする個人が如何に行動したか、を重視している印象。あくまで、個に焦点が当たっており、個々人が何を感じ、何を考え、どう行動して、どのように変わっていったか、を客観的に、淡々と綴る。その意味で、BIG SHORTは若干説教臭いが、こちらはそういう香りがほとんどない。

総じて、ポールソンが何者で、如何にしてヘッジファンド界における時代の寵児となったのかを知りたい、または未曾有の金融危機の前後で、クオンツ型ではなくファンダメンタル型の運用をしている人間達が具体的に何を感じ、何を想いながら、何をしてきたのかを知りたい人にとっては、お勧めの書。

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2011年09月19日

Posted by ブクログ

面白かった。
学び
・客観的な市場調査と揺るぎないジャッジ
・先を読み、信じるデータと自分自身
・執着心と諦めない行動
・パートナー
・野望

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2011年08月13日

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ネタバレ

人のボロ儲けの話で、面白かったのは初めてかもしれない。
マーケットを相手に、逆張りで勝ったからかもしれない。
マーケットから離れた仕事している現在、昔の狂乱の日々が懐かしくなっているのに気付かされた。
でもやっぱり長く踊り続けるのは、勇気がいるようなあ。運もいるし。
プロでさえ理解するのが難しい仕組み債の説明を、数行で判りやすく書いてあるのに関心した。

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2011年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サブプライムバブルの崩壊とともに巨額の儲けをつくった男の史実とその背景について、的確に語られた本。
わかりやすくおもしろい。
読む時間がなかったので、落ち着いたときにまたゆっくり読みたい。

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2011年07月13日

Posted by ブクログ

サブプライムローンの崩壊に賭けた投資家の物語。

今まで手堅くM&A系の投資を行って来た主人公のジョン・ポールソンが同僚と共に住宅市場の崩壊を予想する。
日本のバブルの時もそうだが、順調に右肩上がりの時には景気が悪化することなど微塵も考えない。 不動産の高騰で巨額な利益を稼ぎ続けている楽観論者のファンドからは、冷ややかな目で見られつつ、主人公は自分の信念を貫き通し、サブプライムローンの崩壊により最終的に巨額な利益を手にする。

アメリカのノンフィクション小説にありがちな平坦な語り口であること、また金融系の物語であることから、全般的には読み辛いかった。 しかし、クライマックスの住宅市場崩壊の部分からはかなり面白く読み進めることができた。
これは、小説よりも映画やドラマであれば十分面白いと思う。

この小説で学んだことは、

1) 世間の噂・評判ではなく、客観的な情報で正しく判断することの重要性
2) 少数派であることの「不安」にどの様に打ち勝つのか。

に尽きる。

株取引の経験があるが、まさしく同様の状況に陥る。 業界で有名な人の言葉を信じたり、多数派であることに安心したり。 また、利益が出ているからと売り急いだり。

真実を見極め、風評に流されること無く自分でしっかりとした判断基準を持てと教えられた一冊である。

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2011年04月09日

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米国住宅バブルの崩壊のタイミングを読み、CDSを買い続け、売り抜いたジョン・ポールソン。金融商品の解説もわかりやすく、バブルの発生と崩壊に対してウォール街が対応できなかった状況を活き活きと描いている。「音楽が鳴っている限り、立ち上がって踊り続けなければなりません」というシティグループCEOのチャールズ・プリンスの発言が象徴的。米国流資本主義の持つ問題点は考えさせる。良書。

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2011年03月13日

Posted by ブクログ

読むのが大変でした。
ジョンポールソン以外にもリーマンショックで運命を変えた登場人物がたくさんいて一人一人の性格や行動なども深掘りされています。そして忘れた頃に再登場するからもうわけがわからなくなり。相関図が欲しい

サブプライムローンやCDSなどの証券用語も解説されているのですが、サブプライムローンはともかく難しくて仕組みがわからずそのまま読み進めてしまいましたが、この本は理解して読んだほうが絶対に良いのだと思います。

本書半分くらいでやっとバブル崩壊...長かったしまだ続くのか。

感想としては、マネーゲームなんてデスクトップに張り付いて動向を監視してタイミングが合えばお金が稼げると思っていたのですが、徹底した調査とデータ分析が必要。優秀な人じゃないとできないし、プレッシャーによりメンタルも相当やられる厳しい世界だということを痛感しました。たとえバブルを予測して対策しても、タイミングによって台無しにされることもある。

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2024年11月18日

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2007年~2008年のリーマンショックで多くの投資銀行・ヘッジファンド・投資家が損失を被ったけれど、逆バリで莫大な利益を稼ぎ出した人達も一定数存在した。この本では、ジョン・ポールソンを中心に複数の勝者にスポットライトを当てている。マイケル・バリーもその一人。
 タイトルが「ボロ儲け」なので、彼らがいかに軽々と巨額の利益得たのか、という内容だと思って読み始めたけれど、実体は真逆だった。「住宅バブルの崩壊」にかけるという行為は、当時の投資環境にあった空気とは対する逆張り。故に、周囲からの反対や自信内部の葛藤を押し切ってポジションを構築・維持する必要があった。メンタル面がひたすら強靱でないと、「自分が間違っていた」とポジション解消だろう。市場が変化して利益が出始めたとしても、「やれやれ売り」ではなく十分に利益を伸ばす為には、投資方針を肯定し続ける必要がある。それを可能にしたのは、徹底的な市場調査のデータが示していた市場見通し、長期投資が可能な評価体系、それにしがみつくだけのそれぞれの個人的な理由。

 既に15年以上前の金融事故だけれど、米国が世界の金融市場を牛耳る構図や、投資銀行・ヘッジファンド・保険会社などの投資主体の影響力が高いことは変わっていないし、むしろより強化されているとも言える。四半期ベースの評価を重視する点も同じだろう。であれば、マクロ環境に対して1年以上の時間をかけて結果を求める投資スタイルは、今後も有効のはず。
 市場価値をもつ商品の評価額変更には、実際の価値変化から一定の時差が生じる。不動産と周辺商品はその傾向が強いようだ。足下では中国不動産大手のデフォルトをきっかけした中国不動産の低迷と、在宅ワーク進展による米国商業不動産価格下落が始まっている。特に米国商業不動産はそれを投資対象にしていた銀行が、評価替えにより巨額の貸倒引当金を計上して利益が圧迫されるケースが続いている。金融当局は2007ー2008年と同じように「市場全体に波及する見込みはない」と言ってはいるものの、実際のところどこまでが本当なんだ?
 

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2024年02月18日

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【概要】
住宅市場過熱時にサブプライムローン関連のCDSを安価に買い集める手法で、危機の発生により250億ドルもの利益を得たジョン・ポールソンのドキュメンタリー。綿密な取材に基づく、当時のマーケットや各社のスタンスが描かれている。
【人物】
パオロ・ペレグリーニ:もともと合併投資を専門的に行っていたポールソンに、住宅市場の下落にかけるよう助言したイタリア人のファンドメンバー。
パイケル・バリー:ポールソン同様住宅市場の下落、CDSに目をつけた西海岸の投資家。
ジェフリー・グリーン:西海岸の不動産王。以前に住宅価格が下落して危機に陥った経験から、住宅市場に対するヘッジ策を探り、ポールソンからCDSのアイデアを聞くと購入を進めた。
アンドリュー・ラーデ:ロス・キャピタルという投資会社に勤めてたが、住宅市場の見方から対立。独立しCDS取引を行った。
グレッグ・リップマン:ドイツ銀行のトレーダー。堅調な住宅市場を信じてやまない社内において、軋轢を起こしながらもCDS購入を進め、危機の中で多大な利益をドイツ銀行にもたらした。
【著者】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙のライター。「Heard on the Street」というコラムを担当。
【感想・印象に残った点】
・最初の2年間は金利を要求しないローンや、頭金なしのローン(頭金に対するローンを別で組む)など、過熱しすぎていた住宅市場だが、それでも大勢は住宅市場は伸び続ける(落ちても反発する、最悪に近い状態になっても政府の補助が入る)という見方をしていた。ポールソンがCDSを買い集めているときも、奇異な目で見られた。
・一番難しい問題はいつ住宅市場が下落するか、という点。問題のありそうなローンは2005年頃から見られていたが、様々な要因が影響する住宅市場では、それだけでは大きな問題とはならず、大勢の見方もなかなか変わらなかった。下落が始まるまでポールソンはいらだつことも多かった。
・住宅市場の下落を予測したポールソンが、CDSという商品に出会ったのは強運だった(CDSが開発される以前は、下落にかける手段があまりなかった。)。早い時期にCDSに対する研究をすすめ、欲しいCDOのために投資銀行にCDOを組成させるような取組もあった。
・後半には、CDSの相手方になっていたり、CDOの一部を抱えていた投資銀行や保険会社のリスクに気づき、CDSを購入していった。こうした取引は他の登場投資家には見られなかった動きであり、ポールソンの利益を高めた。

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2014年01月04日

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サブプライムローンの破綻は
決して予期できないものではなかった。
しかし、その予想に賭けるのは
また並大抵ではなかった。

リーマン・ショックと呼ばれる
サブプライムローンに端を発した
世界恐慌。
この出来事の最中に
サブプライムローンの破綻を予期し
そこに賭けた男たちのドキュメンタリーだ。

ミステリーを読むような緊迫感と
圧倒的なサスペンス。
事実はフィクションを凌駕している。

あの出来事を改めて
振り返ってみるのに
最適な一冊だ。

サブプライムローンの破綻は
予期できないものではなかった。
この本でも何人もの
ヘッジファンド系の投資家が
破綻を予測し、そこに投資しようとしていた。

しかし、その男たちすべてが
成功したわけではなかった。
データを分析し、自らの結論を導き出す。
そして、それを信じ続ける。
さらにタイミングによっては
同じように破綻を予期しても
成功者と失敗者に分かれる。
そうした、投資の厳しさを
目の当たりにする。


ちなみに成功した男たちが
買っていたのは
CDS(Credit default swap)と呼ばれる
デリバティブ取引の一種で
破綻にかける保険のようなものだ。

中でも大きく成功した
ジョン・ポールソンの
意志の強さと好機をを見定める目には
感心させられた。

一方、サブプライムローンの破綻を
予想できなかった
大手投資銀行の男たちには
大企業ゆえの膠着を感じた。

論理的に分析し
結論を導き出し
その結論を信じ切る。
そして、運命の女神の
好機を待ち続ける。
その強さと強運が
成功には必要なのだ。

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2013年08月27日

Posted by ブクログ

サブプライムとゴールドで有名になったポールソンを中心とした読み物。
小説風なので読みやすく、ポールソンの人物像も面白かった。

個人的にはその後のゴールドへと流れて行く過程も読みたがったがあくまでもサブプライム当時の話で終わっていた。

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2012年01月18日

Posted by ブクログ

長い一冊.
リーマンショックの際のさまざまな人の動きがドキュメンタリー風に書かれている.

あいかわらず翻訳された本は苦手.

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2011年10月02日

Posted by ブクログ

「リーマンショック・コンフィデンシャル」のように、読み易く、面白い。多少の脚色はあるだろうが、小説を読んでいるよう。まさしく事実は小説よりも奇なり。

「市場最大のボロ儲け」を読み終える。確かに面白い。登場人物が生き生きと描かれている。また、資金集めの苦労、投資銀行との駆け引きなど実際のヘッジファンド運営を垣間見ることができる。儲けた金額のあまりの大きさに、読んでいて痛快な気持ちになることさえある。しかし、儲けた人の数以上に損害を受けた人がいることを忘れてはいけない。自分の意思で積極的に賭けに参加し、それで損をしたなら自業自得である。しかし、賭けに参加したつもりはないのに、金融市場の混乱から回り回って悪影響を被った人は多い。そんな人々の存在を考えると、バブルの発生と崩壊を繰り返す資本主義や大金を稼いだ人々を妄信、崇拝することはできない。サブプライ問題が発生してから三年以上が過ぎた。しかし、マーケットの混乱、高い失業率と貧困、国家財政の悪化、世界中で見られる負の後遺症は根深く、その解決はまだまだ先のようだ。

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2011年08月12日

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