あらすじ
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お金は資本主義社会の一つの約束事であり、手段に過ぎないのに、いつの間にかお金を増殖させること自体が人生の目的となり、働くことはそのための手段に成り下がってしまった。なぜこのような逆転が起こったのか。本書はヨーロッパ近現代の名だたる経済思想家たちがこの難題にどう取り組んできたかをとおして、人間と貨)の関係をとらえ直す。著作集収録にあたり、「贈与論」で有名なポランニーと「劣化する貨幣」のゲゼルにかかわる2章を書き下ろし。コミュニティビジネスや地域通貨に関心のある方にはとくにおすすめしたい。
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Posted by ブクログ
私たちは、おカネに対して、愛憎半ばする複雑な感情を持っている。
この本からは、経済学の勃興期には、フランソワ・ケネーにせよアダム・スミスにせよ、この「貨幣に対する両価的な眼差し」が存在していた、ということを教えられる。人間にとっての生きた有用性としての使用価値と、市場での道具としての交換価値との関係性をどう考えるかという難問の形でこの両価性は表現されていた。
リカード、ケインズらにより、使用価値の問題が捨象されることで、経済学は自立した学問になった、ということが、よく分かった。
国家と企業体は、生きる主体ではないから、モノの有用性=使用価値は必要ない。
そうして、貨幣の自立した増殖運動だけを語る学問が成立する。
著者の優れた視点は、資本主義において、私たちの労働の意味がどう変わったのか、について深く省察することで、私たち現代人の不安と虚しさの淵源を照射し、そこから抜け出す道を模索するところにあると思う。
本編の内容も秀抜だが、最後に付されている新聞と雑誌に掲載された小篇群の内容がまた素晴らしい。
かくも平易な言葉で、ここまで深い思索ができるものかと、唸らされ、頷かされ、そして癒される。