【感想・ネタバレ】戦後思想の旅からのレビュー

あらすじ

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

戦後に生まれ、高度成長期に少年時代を迎えた世代にとって、戦後社会・戦後思想とは何だったか。それは敗戦とその後の民主化を戦後の出発点とした人々の戦後思想史とも違うし、経済や技術の発展に未来の豊かな社会を夢見た世代の戦後思想史とも同じでない。一見すると豊かに見える現代社会のなかに広がる空白感や、「民主的」な戦後社会のなかで目にみえにくい管理が進み、自由な感性や精神を失っていくことをあぶり出す。ほかに「合理的思想の動揺」「日本の伝統的自然観について」を収録する。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

著者は書く。
自分とは何者なのかを一人自分自身のなかで探そうとしたのが1970年代の動きであったとすれば、今日(1990年前後)のそれは確かな関係を築くことによって、その関係の中にいる自己を目にみえるかたちでつくりだそうとしている。〜中略〜近代の歴史は、一面では、人間の生から直接的な関係性を喪失させていく歴史であった。自然と人間との直接的な結びつき、地域社会や労働集団のなかでの、そして生産者と消費者の間での、人間と人間との直接的なつながり、そういったものが希薄になり、かわって経済システムや社会システムが私たちの生をとりしきるようになった。いつの間にか私たちは、社会システムの前に立たされた裸の個人に、直接的な関係性を失って自分とは何者なのかさえわからない不安な個人になっていた。今日、直接的な関係、確かな関係を築くことによって、新しい自己をつくりだしていこうとする試みは、近代史のなかで失っていった人間直接的な関係の世界を回復しようとする思想のあらわれなのではないか。日本の戦後思想は、ようやく西欧思想の翻訳の段階を超えはじめたように思える、と。
戦後という時代を誠実に生き、自らの頭で思索することを貫いてきた著者の言葉は、身に染みる。

0
2026年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後の変革による思想の変遷がまとめられている。特に社会主義の説明は非常にわかりやすい。
現代でも多くの人が抱き社会的な問題として指摘される空虚さや孤独の問題が、すでに1960年代から議論が始まっていた問題だったとは。
結局、世界はこれらの問題に対する明確な対処ができないまま、今日を迎えているということになる。経済成長も鈍り、環境問題が先延ばしできない段階になった今、これらの問題はより切実になっている気がする。
昔は○○だった、というけれど、昔から状況が変わっていないことも事実。状況を変えられるのはいつだって現在の自分なのだと、強く感じた。

「大きな繁栄とともに大きな何かを失った」とあるけれど、実際、技術革新で、あらゆることが人間の身体感覚を超えてしまっているのだと思う。社会も生活も、あらゆる面で、ヒューマンスケールを取り戻した方が良いのではと思った。

消費者から創造者へ。大きなものに飲み込まれ消費者となった空虚な個が、充実した自己を感じられるようになるヒントが、この考察にはある気がする。

0
2024年04月19日

「学術・語学」ランキング