あらすじ
野に伏す獣の野性をもって孤剣をみがいた武蔵が、剣の精進、魂の求道を通して、鏡のように澄明な境地へ達する道程を描く、畢生の代表作。若い功名心に燃えて関ケ原の合戦にのぞんだ武蔵と又八は、敗軍の兵として落ちのびる途中、お甲・朱実母子の世話になる。それから一年、又八の母お杉と許婚のお通が、二人の安否を気づかっている作州宮本村へ、武蔵は一人で帰ってきた。
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Posted by ブクログ
吉川英治先生の作品はいくつか読んではいますが
宮本武蔵は初めて読みます。ついつい機会を逸しており、
井上雄彦先生のバガボンドを読み返している今
読み比べてみるのも良いかと思いやっと手に取りました。
バガボンドは、タイトル通り野生の流浪者のような武蔵が魅力的で、
原作を大胆に改変したり肉付けしたりという井上先生の手腕が
また見物でもあります。
原作の趣旨を滅茶苦茶にするような改変は別として、
別の人が別の視点で、しかも別のメディアで焼き直すからには
やはり独創性があって欲しいと思うので、
バガボンドは大変素晴らしい作品だと思っています。
吉川版宮本武蔵は、姉がおり天涯孤独ではありません。
木に吊るされる武蔵を不憫に思って助けるのはお通であり、
お通はか弱く武蔵を怖がる可憐な女性ですが、
決めたことは通そうとする強さも併せ持っています。
お通はおばばの前ではっきり嫁入りの件を断れなかった上、
武蔵を助けて一緒に逃げてしまった以上、
二人を追おうとする理由はおばばにはあるので不憫です。
城太郎は非常に好きなキャラクターで、
天真爛漫でませているところがあるとは言え
子供らしく無邪気なところもあり
お通さんとは別の意味で物語に華を添える存在となっています。
お通が庄田に言われて柳生へ向かうというのも自然な流れに思えます。
誰を探しているのか、と城太郎に問われた時答えてさえいれば、
とは思うのですが、そこは物語の面白い所でしょう。
長編ではありますが、テンポもよく読みやすい物語です。